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第14章 夢を叶えるために
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その後、3日がたち、火曜日の朝。
結月は鏡の前で、打ちひしがれていた。
なぜなら、土曜の夜に付けられた、あのキスマークが、いまだに消えていないからだ!
(こ……こんなに消えないものなの?)
制服に着替えながら、結月は、軽く衝撃を受けた。
だいぶ薄くはなっているが、まだ完全には消てない。何より、結月はとっては初めての経験。
知らなかった。
キスマークが、こんなにも長く残るものだなんて!(←個人差があります)
(消す方法は、ないのかしら?)
今日は、体育があるから、着替える時が心配だ。結月は、顔を赤らめ、そのあとに触れる。
(もし、こんな跡を誰かに見られたりしたら)
いくらお嬢様学校とはいえ、まったくセキララな話が飛びかわない訳ではない。
それに、キスマークなんて見られたら、明らかにそういう行為を経験済みだと思われる。
それは、絶対にさけたい。
というか、本当に経験してないから、変な誤解は抱かれたくないし、万が一父や母の耳に入ったりしたら、最悪だ。
(あとで、五十嵐に、消し方知らないか聞いてみようかしら?)
あの万能すぎる執事なら、キスマークの消し方も、知ってるかもしれない。
と、おもったのだが……
(あ、でも、つけた本人に消し方を聞くのは失礼かしら?)
なにが失礼にあたるのかは、自分でも分からないが、これが手紙や絵だとしたら、本人に消してくれは、あまりにも失礼。
それに、下手なことをいえば、消すどころか、もっと付けられる。ただでさえ、隙あらばスキンシップをはかろうとしてくる執事だ。
逆鱗に触れたら、次は何をされるか……
(っ……やっぱり、五十嵐に聞くのはやめましょう)
肩から手を離すと、結月は諦め、手早く着替えを終わらせた。だが、その瞬間、ふと気になった。
(そういえば……五十嵐って、今までどのくらい女性と付き合ってるのかしら?)
見た目もかっこいいし、何より優しいし、執事だけあってなんでも出来る。
前に、デパートに買い物に行った時も、女性に声をかけられていたから、きっと、それなりにモテたのではないかと思う。
女性経験なんてあって当たり前だろうし、自分の以外の女性に、こうしてキスマークをつけたことも、あるのかもしれない。
例えば──
(ルイさん……とか?)
不意に、あの美人な外国人女性のことを思い出した。
五十嵐は「彼女ではない」と言っていたが、今は付き合ってなくても、元カノだった可能性もある。
(あんなに綺麗な方だもの。男性なら、きっと、ほっとかないわ)
女として、軽く敗北感を味わう。なによりルイさんは、五十嵐のことを、とても、よく知っていた。
それはきっと、自分以上に──
「やっぱり、そういう関係だったのかしら?」
「なにがですか?」
「きゃ!?」
だが、その瞬間、真横から声をかけられて、結月は跳ね上がった。見れば、そこには、普段と変わらない執事の姿があって
「い、五十嵐!?」
「失礼致します、お嬢様。ノックをしても返事がなかったもので」
「あ、うそ、ごめんなさい!」
「それより、なにか悩み事ですか?」
「え?」
「少し、思い詰めていらしたようなので……」
軽く小首を傾げながら、執事が問いかけると、結月は、ほのかに頬を赤くした。
自分が、彼の彼女だなんて、まだ信じられない。目が覚める度に、夢だったのではと思う。だけど……
「あの、その……ルイさんは、本当に五十嵐の彼女ではないの?」
「……え?」
結月が恐る恐る聞けば、執事はキョトンと首を傾げ
「何を悩んでいるのかと思えば、俺の事なの?」
と、どこか嬉しそうな笑みを浮かべた執事は、その後、遊ぶように結月の髪に触れた。
「まだ、信じらない?」
「だ、だって、あんなに綺麗な方、なかなかいないし、五十嵐のことも、すごく分かってるみたいだったし、私よりもお似合いというか……もしかして、元カノだったのかなとか、それに、ルイさんじゃなくて、私を選ぶ意味がよく分からないわ」
(わからないも、なにも、あいつ男だし)
あんなに綺麗でも、レオからしたら、ただの男。だが、女と思い込んでる結月にとっては、切実な話なのかもしれない。
とはいえ、ルイの存在にヤキモチをやく結月は、見ていて、とても気分がよかった。
そして、ここ数日、結月の思考が、自分のことで、いっぱいなことが……
「ルイは、ただの悪友ですよ。アイツを女としてみたことなんて、一度もありません」
「ほんとに?」
「はい。それに、私は今も昔も、お嬢様だけをお慕いしております。ほかの女の入る余地など、ありませんよ。……しかし、朝から、そんなことで悩んでいるなんて」
くるくると結月の髪を弄んでいたレオの指先が、頬に移動した。……かと、思えば、そのまま、くいっと顎を持ち上げられ
「このまま、キスをしても宜しいですか?」
「えぇぇ!? なんでそうなるの!?」
いきなり、とんでもない了承を得に来た執事に、結月は顔を真っ赤にしてうろたえた。
「ダ、ダメに決まってるでしょ! ここは屋敷の中で、ちゃんと隠す気あるの!?」
「そう、申されましても……お嬢様が、朝っぱらから、こんなにも可愛らしく誘ってくるので」
「誘ってないわ! 私は、ルイさんのことを聞いただけじゃない!」
「ああ、無自覚なんですね? それは、またタチが悪い」
でも、そこがまた可愛いとでもいうように、そっと頬に口付けられた。
唇はダメだと思ったのか、頬にだけ繰り返しキスをする執事を、結月も恥じらいつつ受け入れる。
だが、そのキスは、気を抜けば、すぐにでも唇に触れてしまいそうで……
「ちょ……もう、いいでしょ……っ」
「ダメです。あと、少しだけ」
「ん……っ」
唇が頬に触れる度に、鼓動はどんどん早くなる。
だが、そうして素直に受け入れる結月に、レオも内心参っていた。
せっかく執事の仮面をつけて出てきたのに、こうもあっさり外されてしまうなんて……これでは、執事としての業務にも差し支える。
だが、もうあの夜から、自分の理性というストッパーは、壊れたまま治る兆しがない。
さすがのレオも、それには軽い危機感を抱いていた。
今、この屋敷には、まだ使用人が二人残ってる。
彼女たちに見られる訳にはいかないのに、結月の言動ひとつで、こうも心を揺さぶられる。
触れたくて、たまらなくなって、気がつけば、いつもこうして、ちょっかいをかけてしまう。
(……早いところ、あの二人を追い出さないとな)
結月の頬に口付けながら、レオは、そんなことを思う。
残るターゲットは、二人。
まず、一人目は
最近、彼氏と別れたといっていた
───冨樫 愛理。
結月は鏡の前で、打ちひしがれていた。
なぜなら、土曜の夜に付けられた、あのキスマークが、いまだに消えていないからだ!
(こ……こんなに消えないものなの?)
制服に着替えながら、結月は、軽く衝撃を受けた。
だいぶ薄くはなっているが、まだ完全には消てない。何より、結月はとっては初めての経験。
知らなかった。
キスマークが、こんなにも長く残るものだなんて!(←個人差があります)
(消す方法は、ないのかしら?)
今日は、体育があるから、着替える時が心配だ。結月は、顔を赤らめ、そのあとに触れる。
(もし、こんな跡を誰かに見られたりしたら)
いくらお嬢様学校とはいえ、まったくセキララな話が飛びかわない訳ではない。
それに、キスマークなんて見られたら、明らかにそういう行為を経験済みだと思われる。
それは、絶対にさけたい。
というか、本当に経験してないから、変な誤解は抱かれたくないし、万が一父や母の耳に入ったりしたら、最悪だ。
(あとで、五十嵐に、消し方知らないか聞いてみようかしら?)
あの万能すぎる執事なら、キスマークの消し方も、知ってるかもしれない。
と、おもったのだが……
(あ、でも、つけた本人に消し方を聞くのは失礼かしら?)
なにが失礼にあたるのかは、自分でも分からないが、これが手紙や絵だとしたら、本人に消してくれは、あまりにも失礼。
それに、下手なことをいえば、消すどころか、もっと付けられる。ただでさえ、隙あらばスキンシップをはかろうとしてくる執事だ。
逆鱗に触れたら、次は何をされるか……
(っ……やっぱり、五十嵐に聞くのはやめましょう)
肩から手を離すと、結月は諦め、手早く着替えを終わらせた。だが、その瞬間、ふと気になった。
(そういえば……五十嵐って、今までどのくらい女性と付き合ってるのかしら?)
見た目もかっこいいし、何より優しいし、執事だけあってなんでも出来る。
前に、デパートに買い物に行った時も、女性に声をかけられていたから、きっと、それなりにモテたのではないかと思う。
女性経験なんてあって当たり前だろうし、自分の以外の女性に、こうしてキスマークをつけたことも、あるのかもしれない。
例えば──
(ルイさん……とか?)
不意に、あの美人な外国人女性のことを思い出した。
五十嵐は「彼女ではない」と言っていたが、今は付き合ってなくても、元カノだった可能性もある。
(あんなに綺麗な方だもの。男性なら、きっと、ほっとかないわ)
女として、軽く敗北感を味わう。なによりルイさんは、五十嵐のことを、とても、よく知っていた。
それはきっと、自分以上に──
「やっぱり、そういう関係だったのかしら?」
「なにがですか?」
「きゃ!?」
だが、その瞬間、真横から声をかけられて、結月は跳ね上がった。見れば、そこには、普段と変わらない執事の姿があって
「い、五十嵐!?」
「失礼致します、お嬢様。ノックをしても返事がなかったもので」
「あ、うそ、ごめんなさい!」
「それより、なにか悩み事ですか?」
「え?」
「少し、思い詰めていらしたようなので……」
軽く小首を傾げながら、執事が問いかけると、結月は、ほのかに頬を赤くした。
自分が、彼の彼女だなんて、まだ信じられない。目が覚める度に、夢だったのではと思う。だけど……
「あの、その……ルイさんは、本当に五十嵐の彼女ではないの?」
「……え?」
結月が恐る恐る聞けば、執事はキョトンと首を傾げ
「何を悩んでいるのかと思えば、俺の事なの?」
と、どこか嬉しそうな笑みを浮かべた執事は、その後、遊ぶように結月の髪に触れた。
「まだ、信じらない?」
「だ、だって、あんなに綺麗な方、なかなかいないし、五十嵐のことも、すごく分かってるみたいだったし、私よりもお似合いというか……もしかして、元カノだったのかなとか、それに、ルイさんじゃなくて、私を選ぶ意味がよく分からないわ」
(わからないも、なにも、あいつ男だし)
あんなに綺麗でも、レオからしたら、ただの男。だが、女と思い込んでる結月にとっては、切実な話なのかもしれない。
とはいえ、ルイの存在にヤキモチをやく結月は、見ていて、とても気分がよかった。
そして、ここ数日、結月の思考が、自分のことで、いっぱいなことが……
「ルイは、ただの悪友ですよ。アイツを女としてみたことなんて、一度もありません」
「ほんとに?」
「はい。それに、私は今も昔も、お嬢様だけをお慕いしております。ほかの女の入る余地など、ありませんよ。……しかし、朝から、そんなことで悩んでいるなんて」
くるくると結月の髪を弄んでいたレオの指先が、頬に移動した。……かと、思えば、そのまま、くいっと顎を持ち上げられ
「このまま、キスをしても宜しいですか?」
「えぇぇ!? なんでそうなるの!?」
いきなり、とんでもない了承を得に来た執事に、結月は顔を真っ赤にしてうろたえた。
「ダ、ダメに決まってるでしょ! ここは屋敷の中で、ちゃんと隠す気あるの!?」
「そう、申されましても……お嬢様が、朝っぱらから、こんなにも可愛らしく誘ってくるので」
「誘ってないわ! 私は、ルイさんのことを聞いただけじゃない!」
「ああ、無自覚なんですね? それは、またタチが悪い」
でも、そこがまた可愛いとでもいうように、そっと頬に口付けられた。
唇はダメだと思ったのか、頬にだけ繰り返しキスをする執事を、結月も恥じらいつつ受け入れる。
だが、そのキスは、気を抜けば、すぐにでも唇に触れてしまいそうで……
「ちょ……もう、いいでしょ……っ」
「ダメです。あと、少しだけ」
「ん……っ」
唇が頬に触れる度に、鼓動はどんどん早くなる。
だが、そうして素直に受け入れる結月に、レオも内心参っていた。
せっかく執事の仮面をつけて出てきたのに、こうもあっさり外されてしまうなんて……これでは、執事としての業務にも差し支える。
だが、もうあの夜から、自分の理性というストッパーは、壊れたまま治る兆しがない。
さすがのレオも、それには軽い危機感を抱いていた。
今、この屋敷には、まだ使用人が二人残ってる。
彼女たちに見られる訳にはいかないのに、結月の言動ひとつで、こうも心を揺さぶられる。
触れたくて、たまらなくなって、気がつけば、いつもこうして、ちょっかいをかけてしまう。
(……早いところ、あの二人を追い出さないとな)
結月の頬に口付けながら、レオは、そんなことを思う。
残るターゲットは、二人。
まず、一人目は
最近、彼氏と別れたといっていた
───冨樫 愛理。
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