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・断章⑫【1971年、組織日本支部基地。マスクドラグーン誕生前夜】
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「彼が新型生機幽合体・バイクカティディットの実験体?」
「その通りだ。同じ事を繰り返すくらいなら死んでしまえ。これまで以上の設計思想、これまでにない新たな生機幽合体となるだろう」
1971年。組織日本支部基地。
何処の国のものでもない飾り気の少ない軍服を着た引き締まった体つきの美女……作家・四島君緒にして組織日本支部長である生機幽合体バラセンガラスに対し、偏屈さと剽軽さとふてぶてしさが入り交じった灰汁の濃い顔をした、目と太陽と貌を象った呪具をじゃらじゃらと全身に付けた異教の大神官じみた装束の壮年男性……芸術家・岡元太郎にして芸術探究の過程で縄文呪術の才能に目覚めた大呪術師でもある日本支部大幹部、普段は外郭組織【まつろわぬもの】に出向している生機幽合体ヒトデボンバーは頷いた。
「彼が……紅血党や欧州支局の潜入戦力による作戦行動に遭遇し、交戦を?」
内部に無数の自動手術機械を備えた透明な棺めいたカプセルベッド。そこに寝かせられた青年の姿を眺めながら、どこかときめきを感じさせる口調で四島はカプセルの滑らかな表面に指を這わせ彼がここに至った経緯を反芻する。
日本支部が管轄する外郭組織だけでは無く、他支部の勢力も日本には入ってきている。紅血党と欧州支局はそれぞれ支部の機密を持って東南アジアとヨーロッパから逃げてきたプラチナマスクとキジンダーを追って、彼女らが結果的に持ち逃げした技術を取り戻して自分達の支部の戦力を完全化し組織内において他支部に優越し覇を唱える事を目的としており、日本支部としては先に日本人自体に対し敵対的だった黄禍論団体・黄滅の刃を正義の味方ジュエルセブンとあえて共闘して殲滅したように、同じ組織と言っても時に争い合う中。
「全く驚くべき男や。正義感で咄嗟に飛び込む事ならありえる。やけど生機幽合体より技術的に劣るとはいえ、紅血党の粗製巨大超人共が狩った怪獣細胞を移植し人間大の劣化怪獣と化した獣纏者や闇の怨霊欧州支局が主力とする殺人に枷の無い重武装の非三原則械人兵器である破戒部隊と戦って、襲われた者達を助け逃がしただけでなく、こうして命を留めて我々に回収されるとはの」
そんな物々しく仰々しい戦力共と、この青年は生身で渡り合った。最終的には瀕死となった所を日本支部が介入、両陣営に戦闘を停止させ回収する事となったが、それでも尚巻き込まれた彼以外の民間人を守り逃がしてのけたのだと、第三の声がそれを肯定する。
今は人間の姿の二人と違い、戦闘介入に参加した為生機幽合体としての姿を露にしている。北米先住民を思わせる意匠を帯びた鋼鉄の外骨格を持つ蟻人間。外郭組織超人類帝国幹部を兼ねる日本支部大幹部、元々金属を食べ金属の肉体を持つという特性を持つ先天変異超人日本イロコイ族であったのを更に改造を受け生機幽合体アイアントとなった小杉右京。
彼こそが戦闘によって混乱の中から実験体の青年を回収してきた人物でその為に今変身後の姿をしているわけだが、日本再興を大義とする四島とは方針を異にし、真に残るべきものを探求する為に破壊を厭わず、超能力での特殊障壁形成による【首都消失計画】、人工地震による【日本沈没計画】、細菌兵器により優秀な人類を選別する【復活の日計画】】を推進する危険人物だ。
一歩間違えば己が再興せんとする日本を破壊するアイアント=小杉右京の行動を、しかし四島は是認している。その程度を御せず乗り越えられずして、何が日本征服・日本再興かと。四島は新左翼を世の危機感と不安を煽る尖兵として活用するように、日本破壊を目論む男もまた用いていた。
「武士だな。そして端正だ。イタリア旅行をした時に見たアンティノーの大理石像を思わせる」
端的に最大限の賛辞を青年の精神と肉体に対して与え、カプセルの中で生命を維持される青年を四島は熱心に眺めた。
「藤郷猛弘。確かに彼こそ、最新型生機幽合体バイクカティディットたるに相応しい。他の支部と戦う為に手を取り合えれば幸いだ。調べさせて聞けば若くして身寄りを無くすも城北大学で文武両道に長け、過激派学生の暴力から老教授を守った仁義の青年と好評との事……どんな時代になろうと、権力の最も深い実質は若者の筋肉だ。故に、我々と共にその実質を担い、理想を遂げる戦友とならん事を祈るよ」
調べさせたパーソナルデータを口ずさむ。勇士を好む故に、彼と轡を並べる可能性を夢見る。
……もしもそうならず彼が敵に回ったとしても、それはそれで日本に最高の正義の味方をもたらす事が出来る。それはそれで良い。己の勝利以外の手段でも日本が救済される可能性が増えるのであれば構わぬと、超然と四島は胸の内思いを巡らせた。
「その通りだ。同じ事を繰り返すくらいなら死んでしまえ。これまで以上の設計思想、これまでにない新たな生機幽合体となるだろう」
1971年。組織日本支部基地。
何処の国のものでもない飾り気の少ない軍服を着た引き締まった体つきの美女……作家・四島君緒にして組織日本支部長である生機幽合体バラセンガラスに対し、偏屈さと剽軽さとふてぶてしさが入り交じった灰汁の濃い顔をした、目と太陽と貌を象った呪具をじゃらじゃらと全身に付けた異教の大神官じみた装束の壮年男性……芸術家・岡元太郎にして芸術探究の過程で縄文呪術の才能に目覚めた大呪術師でもある日本支部大幹部、普段は外郭組織【まつろわぬもの】に出向している生機幽合体ヒトデボンバーは頷いた。
「彼が……紅血党や欧州支局の潜入戦力による作戦行動に遭遇し、交戦を?」
内部に無数の自動手術機械を備えた透明な棺めいたカプセルベッド。そこに寝かせられた青年の姿を眺めながら、どこかときめきを感じさせる口調で四島はカプセルの滑らかな表面に指を這わせ彼がここに至った経緯を反芻する。
日本支部が管轄する外郭組織だけでは無く、他支部の勢力も日本には入ってきている。紅血党と欧州支局はそれぞれ支部の機密を持って東南アジアとヨーロッパから逃げてきたプラチナマスクとキジンダーを追って、彼女らが結果的に持ち逃げした技術を取り戻して自分達の支部の戦力を完全化し組織内において他支部に優越し覇を唱える事を目的としており、日本支部としては先に日本人自体に対し敵対的だった黄禍論団体・黄滅の刃を正義の味方ジュエルセブンとあえて共闘して殲滅したように、同じ組織と言っても時に争い合う中。
「全く驚くべき男や。正義感で咄嗟に飛び込む事ならありえる。やけど生機幽合体より技術的に劣るとはいえ、紅血党の粗製巨大超人共が狩った怪獣細胞を移植し人間大の劣化怪獣と化した獣纏者や闇の怨霊欧州支局が主力とする殺人に枷の無い重武装の非三原則械人兵器である破戒部隊と戦って、襲われた者達を助け逃がしただけでなく、こうして命を留めて我々に回収されるとはの」
そんな物々しく仰々しい戦力共と、この青年は生身で渡り合った。最終的には瀕死となった所を日本支部が介入、両陣営に戦闘を停止させ回収する事となったが、それでも尚巻き込まれた彼以外の民間人を守り逃がしてのけたのだと、第三の声がそれを肯定する。
今は人間の姿の二人と違い、戦闘介入に参加した為生機幽合体としての姿を露にしている。北米先住民を思わせる意匠を帯びた鋼鉄の外骨格を持つ蟻人間。外郭組織超人類帝国幹部を兼ねる日本支部大幹部、元々金属を食べ金属の肉体を持つという特性を持つ先天変異超人日本イロコイ族であったのを更に改造を受け生機幽合体アイアントとなった小杉右京。
彼こそが戦闘によって混乱の中から実験体の青年を回収してきた人物でその為に今変身後の姿をしているわけだが、日本再興を大義とする四島とは方針を異にし、真に残るべきものを探求する為に破壊を厭わず、超能力での特殊障壁形成による【首都消失計画】、人工地震による【日本沈没計画】、細菌兵器により優秀な人類を選別する【復活の日計画】】を推進する危険人物だ。
一歩間違えば己が再興せんとする日本を破壊するアイアント=小杉右京の行動を、しかし四島は是認している。その程度を御せず乗り越えられずして、何が日本征服・日本再興かと。四島は新左翼を世の危機感と不安を煽る尖兵として活用するように、日本破壊を目論む男もまた用いていた。
「武士だな。そして端正だ。イタリア旅行をした時に見たアンティノーの大理石像を思わせる」
端的に最大限の賛辞を青年の精神と肉体に対して与え、カプセルの中で生命を維持される青年を四島は熱心に眺めた。
「藤郷猛弘。確かに彼こそ、最新型生機幽合体バイクカティディットたるに相応しい。他の支部と戦う為に手を取り合えれば幸いだ。調べさせて聞けば若くして身寄りを無くすも城北大学で文武両道に長け、過激派学生の暴力から老教授を守った仁義の青年と好評との事……どんな時代になろうと、権力の最も深い実質は若者の筋肉だ。故に、我々と共にその実質を担い、理想を遂げる戦友とならん事を祈るよ」
調べさせたパーソナルデータを口ずさむ。勇士を好む故に、彼と轡を並べる可能性を夢見る。
……もしもそうならず彼が敵に回ったとしても、それはそれで日本に最高の正義の味方をもたらす事が出来る。それはそれで良い。己の勝利以外の手段でも日本が救済される可能性が増えるのであれば構わぬと、超然と四島は胸の内思いを巡らせた。
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