魔王メーカー

壱元

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第三章

第八話

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 私達は宿屋で夕食を取ってから、早めに就寝した。

翌朝、私は一足早く目を覚ました。

ここ数日間で最高の寝覚めだった。

傷のことを打ち明けてからの私を、ラーラは「憑き物が落ちたように見える」と形容したのだが、やはり私は安心しているようだ。

ラーラには感謝したい。

そんなラーラは今安らかな顔で静かに寝息を立てている。

そういえば、城を発ってから毎夜彼女と添い寝している訳なのだが、彼女があの夜のようにうなされることはない。私が手を握っていなくても。

その要因は定かではないが、私が常に傍に居ることが多少なりとも助けになっているなら嬉しい。

 せっかくの爽快な朝なので外に出てみることにした。

顔を洗い、口を濯ぎ、念のために書置きを残し、抜かりなく髪や顔をフードで覆い隠してから朝色のタイルの上に一歩踏み出した。

「はあ」

もう秋も中盤。さすがに早朝は冷え込む。

身体を温めるのと、この街の「探検」を限られた時間で効率的に進めることを兼ねて走ってみることにした。

 閑静な街に私の足音だけが響く。

左手側にパン屋、右手側に仕立屋と肉屋。

どの建物も扉や窓を閉め切っているが、ここら一帯は商店街のようだ。

大通りを右手側に曲がり、しばらく進むと、中央にオベリスク聳え立つ大広場に出た。

そこには何やら人が集まっている。

皆揃って勇ましい掛け声とともに木剣を振るっている。

私も一剣術家として飛び入り参加しようかと思ったが、男子は上半身裸、女子も胸に布を巻いているのみという恰好であったので諦めて走り去った。

ローブを脱げと言われ、正体がバレかねないように思われたのだ。

 さらにしばらく進むと、役所や商館が立ち並ぶやや落ち着いた通りに入った。

建物が影を作り、薄暗くなっている。その為、すぐ気付くことはできなかった。

薄暗がりの中に役人や貴族何人かが集まって会議をしているのだ。

ただ事とは思えないその様子を見て私は身を潜め、聞き耳を立てた。

私は一人目を丸くした。

すぐさまその場を去り、宿まで走った。

やはりただ事ではなかった。

ラーラに伝えなければ。

我らの「同胞」に危険が迫っていることを。


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