魔王メーカー

壱元

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第二章 後編

第三十三話

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    城下町の住人達は城の方で起こっている何かしらの異変を感じ取っていた。

曇り無き晴れ空に突如轟く雷鳴、下層から吹き出す炎、人の移動や金属の音…

そうしたものに比べたら些末なものかもしれないが、どうした訳か、城下町の空気も今までよりもずっと澄んでいて、呼吸も楽に感じられるのであった。


   グレアはバセリアの死骸を静かに見下ろしていた。

既に皮膚や肉は灰塵となって、骨格だけが辛うじて遺されていた。

「グレア様」

声のする方に目をやると、そこにはラーラが居た。

「ラーラ様!    無事だったのですね!」

「はい。貴女こそ、無事で本当に良かったです。私は幸い無傷なのですが、貴女は大丈夫ですか?」

「何とか重症にはなっていません。ちょっと肩を切られちゃいましたけれど」

すると、それを聞いたラーラの顔はフードの下で僅かに青ざめた。

「『腕輪』の魔力が切れたのですか?」

「いや…」

グレアはどこか誇らしげな表情で首を振った。

「バセリアの全力の一撃でした」

「…なるほど」

ラーラも納得して頷き、二人は横に並んで屍と血潮だらけの廊下を歩いていった。


    ホーバは四階にて、同じく屍と血潮だらけの廊下で近衛兵と対峙していた。

「驚いたぞ」

ホーバが言う。

近衛兵の持つ大斧の刃には、水色の宝石が埋め込まれていた。

「それは我々『キリカナム教団』でさえ辿り着く事を神に許されなかった境地だ。一撃で結界を破壊出来る魔具の設計など考えもしなかった」

「そうかよ、ありがとさん。『主君』が聞いたら喜ぶぜ」

近衛兵は盾すら持っていないのに迷い無く特攻してくる。

ホーバは掌を前に突き出すと、「ローゼン」を発動して敵を濃厚な闇の中に閉じ込めた。

「…ほう」

暗闇が晴れて見えたのは、水色に輝く見事な結界。

「貴様は魔法使いのようには見えない。その結界も魔具によるものなら、またも脱帽せねばならん」

振り下ろされた斧を「影渡りヌイコーゼ」で回避し、相手の背中を取りながら教祖は話を続ける。

「『結界魔法』は魔法使いにとってさえ発動の困難な魔法である。そして基本的に魔具が生身の魔法使いに勝る事はない。勿論『魔具にしか発動しえない魔法』もあるがな」

「ははっ、おもしれえ先生だ」

近衛兵は一気に接近し、一瞬で二度斬りかかった。

ホーバはそれを右前腕で受け止め、腕はバラバラと崩れた。神経も「接木レジドーア」された今、激痛にも関わらず顔色一つ変えない。

「脅威」と「距離」が無ければ、結界は発動しない。だからこそ、ホーバはゆるりと手を伸ばし、敵に触れた。そして、その首を掴むと、躊躇いなく「喰」を発動して斬首した。

「だが」

断面から吹き出す鮮血を顔面に浴びながら、一人話続ける。

「魔具がそんな「結界魔法」を発動している。我が教団でさえ唯一つしか創り出せなかった魔具を、お前達は少なくとも二つは持っているという」

「お前の『主君』だったか?」と、床に転がる頭部と視線を交わした。

「会ってみたいものだな」

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