魔王メーカー

壱元

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第二章 後編

第二十八話

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    背後に立つ影が耳元で囁く。

その声を聞いた瞬間、グレアは上半身を回転させ、左腕を振り回してぶつけようとした。

だが、その腕はセインの両手によってがっちりと抑えられ、膝蹴りによって容易くへし折られた。

「ぐうっ…!!」

グレアは歯を食いしばり、残る右手から「火球パシア」を零距離発射した。

しかしセインは咄嗟に距離を取りながら上半身を大きく反らし、回避した。

グレアは敵の姿をしかと視界内に収めつつも、腕に走る痛みに顔をしかめている。

「閣下」

いつの間にか遠ざかっていた辺境伯に向け、セインが声を掛ける。

「円卓の部屋から廊下を通って『錠前の間』へお逃げ下さい。『主君』の恩人に死んで頂く訳にはいきません」

「ああ。…やはり君の言っていた通りだったな」

伯爵はドアを開け、死の空間から逃れた。

「さて」

セインは真っ直ぐ立ち、後ろで手を組んでいる。

その手中では音もなく何かが展開されていた。

「一つ示しておきましょう。貴方は我々の掌の上で踊らされていたのです」

「…どういうことだ?」

その美貌にそぐわぬ眼光を差し出しているグレアの両手にもまた、着実に魔力が溜まっていた。

「この一ヶ月間、我々は貴方の『相方』ばかりを愚かな『反逆者』として徹底的に警戒していました。貴方に自分だけは疑惑から無縁である、と錯覚させて誘い出す為に」

「へえ」

次の瞬間、両者が同時に動く。

セインが小型の可変式ナイフ二本を眼目掛けて投擲し、グレアが「絹糸セーア」で応戦する。

グレアの腕輪とセインの左目が同時に発光し、両者の前に揃いの結界が展開されて攻撃を無効化する。

互いに追撃の準備をしながら距離を取り合う。

その刹那、一瞬の隙を突いたグレアの「死天メメンエスク」によってセインは背中から壁に叩きつけられ、さらに白い刃のようなものが壁から飛び出した。

作業机の上の花瓶が転がり落ち、ばらばらに割れる。

セインは脅威的な反射神経によって背中に結界を発生させ、無効化する。

続けて右手側の壁に「落下」し、壁からまたもや白い剣が突き出す。

これにも結界を発生させて対応しつつ、水色の宝石が埋め込まれたナイフを投擲する。

グレアは危機を感知し、水色の結界による防御ではなく「雲歩」による回避を選択した。

その一瞬の隙を突いて、セインは全身の筋肉を総動員して凹凸の少ない床を’’よじ登り’’、飛び上がって水色の「魔宝石入り」ナイフを突き立てた。

その瞬間、骨折していた筈の左腕が完全な状態ですっと起き上がる。その手首から壁と同じ白い剣が飛び出して、ナイフを持つ手を切断する。

超高圧で水を吹き出し続ける「キリカナム教団」の秘技「深淵刀ドスポールアサーレ」。

セインは結界を発動する間もなく床を「落下」し、壁に身体を叩きつけられた。

それと同時に壁から再び「深淵刀」が吹き出してセインの首を切断し、真紅を激しく吹き付けた。

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