魔王メーカー

壱元

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第二章 後編

第五話

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    翌週、予定通り新人と顔合わせした。

服を着崩し、片手に杖を持ち、もう一方の手の指は鼻に突っ込んである。

やや太り気味。顔は美しくない。

髪の毛は逆立ち、網膜を痛めそうなぎらぎらした黄色に染まっている。

魔力は「キリカナム教団」の雑兵より少なく、さらに、使えるのは三種類のみで、全て威力・精密性共に不安定で、とても実戦に持ち込めたものでは無い。

口を開けば自分と父親と、もうそこの所属ではなくなった魔法学校の自慢ばかり。

内外全てが伯爵の運営の美学と相容れない所を見るに、この「ジェテム・ゲーレント」が頼る所は、その「ゲーレント」姓のみなのだろう。

“偶然’’権力者の元に産まれただけで他の努力も才能も凌駕してしまう。

いただけないが、これが現実である。


「僕の学校は選ばれた天才にしか入れない所だ」

ジェテムが加入して三日後、新体制で初めての討伐依頼へ向かう道中、彼は無神経にもそう断言した。

「お前達は入れなかったんだよな。才能が無いからだ」

この悪夢の三日間で痛感したが、やはりこの男は何も知らなかった。


他人に訳もなく殴られなければ、自分がかつて身勝手な理由で殴った人物の感じていた痛みを理解できないように、理不尽の側にしか立ったことの無い者に、理不尽に押し潰された者の苦しみは分かり得ない。

下界に興味を持ったとしても、「弱者」が「弱者」たる原因特定の際には、その発想さえ生まれず、さも理路整然として潔白な法則のもと世界が動いているのだと錯覚する。


私個人の感情に基準を置いても、この男にいつまでも大口を叩かせてはおけなかった。

    しばらく森の中を歩いた後、接敵した。

現れたのは、液状に近い身体構造を持つ「スライム」。

その中でも大型種。

体高2mを超えるやや青みがかった半透明な身体は常時流動しつつ、広い範囲を覆っている。

スライムは一瞬の静止の後、進行方向を変え、こちらに向かってくる。


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