48 / 128
第二章 前編
第二十話
しおりを挟む
翌朝、私達は少しばかり早めに起床し、手早く準備を済ませ、西へと向かった。
城壁を抜けて一時間ほど馬を走らせていると、辺りは殆ど畑ばかりになってきた。
木製の門が見えた所で馬を止めた。
「ここです」
ラーラは地図を片手に言った。
私達はすぐに村長のもとへ通された。
「よく来てくだすった」
”ここの”村長は物腰柔らかだった。
このような辺境の村にしては珍しく、私達には茶が出された。
「秘密のラーラ」は立場を考慮してか、断ったが、私はこの高級品を堪能させてもらった。
その間、相手は今回の事件について、柔らかな口調で内に秘めたる思いの丈を語ってくれた。
今回帰らぬ人となった村民二人のことを慮ると、意欲は轟々と沸き立ち、彼の話が終わりに「必ず解決します!」と意気揚々叫んでしまった。
私達は村の奥、森の中へと入っていった。
「まるで『勇者』でしたね。『魔王』じゃなくて」
彼女はフードを取り、にやけながら言った。
私は赤くなった顔をなるべく彼女から背け、「別にいいじゃないですか」と言って悪あがきをするほかなかった。
そんなこんなでしばらく歩いていると、前方に巨大な影が見えた。
私達は警戒を強めた。
「わかっていますね?」
ラーラは囁いた。
「私は後ろで見ています。貴女がこの数日間で得たものを見せてください」
私は頷き、一人敵に向かっていった。
そして、程よい距離で「火球」を両手に生成し、撃ち込んだ。
次の瞬間、「影」に着弾し、爆炎と衝撃波とが響いた。
だが、対象は沈黙せず、こちらの位置を突き止めると、凄まじい勢いで近付いてきた。
私は左手側に走り、比較的木々が少なく、広い場所に敵を誘導した。
日光が敵の全貌を映し出す。
背丈は三メートルほど。半透明な黒色の身体を持ち、下半身はなく、顔もなく、ただ大きな穴が真ん中に空いていて、頭には長い髪の毛を生やし、片手には魔法生成の刃こぼれして錆びた大剣を持つ。
死霊系「戦士霊」。
志半ばで死した戦士の魂が集合したモノ。霊は純粋な物理攻撃を無視するため、討伐は魔法使いの専業となる。
敵は剣を構えると、一瞬にして距離を詰めてきた。
私は指先から風を吹き出し、浮遊して後方へと逃げた。
「風」魔法の「風射」だ。
魔法を解除し、即座に「火球」をその腹部にぶち当てる。
直撃後、遠目からでも、その体色が薄くなったのを感じた。
思った以上に楽な「初仕事」だなと感じていた。
その時だった。
周辺から、敵へと、灰色の帯のようなものが集まってきた。
城壁を抜けて一時間ほど馬を走らせていると、辺りは殆ど畑ばかりになってきた。
木製の門が見えた所で馬を止めた。
「ここです」
ラーラは地図を片手に言った。
私達はすぐに村長のもとへ通された。
「よく来てくだすった」
”ここの”村長は物腰柔らかだった。
このような辺境の村にしては珍しく、私達には茶が出された。
「秘密のラーラ」は立場を考慮してか、断ったが、私はこの高級品を堪能させてもらった。
その間、相手は今回の事件について、柔らかな口調で内に秘めたる思いの丈を語ってくれた。
今回帰らぬ人となった村民二人のことを慮ると、意欲は轟々と沸き立ち、彼の話が終わりに「必ず解決します!」と意気揚々叫んでしまった。
私達は村の奥、森の中へと入っていった。
「まるで『勇者』でしたね。『魔王』じゃなくて」
彼女はフードを取り、にやけながら言った。
私は赤くなった顔をなるべく彼女から背け、「別にいいじゃないですか」と言って悪あがきをするほかなかった。
そんなこんなでしばらく歩いていると、前方に巨大な影が見えた。
私達は警戒を強めた。
「わかっていますね?」
ラーラは囁いた。
「私は後ろで見ています。貴女がこの数日間で得たものを見せてください」
私は頷き、一人敵に向かっていった。
そして、程よい距離で「火球」を両手に生成し、撃ち込んだ。
次の瞬間、「影」に着弾し、爆炎と衝撃波とが響いた。
だが、対象は沈黙せず、こちらの位置を突き止めると、凄まじい勢いで近付いてきた。
私は左手側に走り、比較的木々が少なく、広い場所に敵を誘導した。
日光が敵の全貌を映し出す。
背丈は三メートルほど。半透明な黒色の身体を持ち、下半身はなく、顔もなく、ただ大きな穴が真ん中に空いていて、頭には長い髪の毛を生やし、片手には魔法生成の刃こぼれして錆びた大剣を持つ。
死霊系「戦士霊」。
志半ばで死した戦士の魂が集合したモノ。霊は純粋な物理攻撃を無視するため、討伐は魔法使いの専業となる。
敵は剣を構えると、一瞬にして距離を詰めてきた。
私は指先から風を吹き出し、浮遊して後方へと逃げた。
「風」魔法の「風射」だ。
魔法を解除し、即座に「火球」をその腹部にぶち当てる。
直撃後、遠目からでも、その体色が薄くなったのを感じた。
思った以上に楽な「初仕事」だなと感じていた。
その時だった。
周辺から、敵へと、灰色の帯のようなものが集まってきた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
ただしい異世界の歩き方!
空見 大
ファンタジー
人生の内長い時間を病床の上で過ごした男、田中翔が心から望んでいたのは自由な世界。
未踏の秘境、未だ食べたことのない食べ物、感じたことのない感覚に見たことのない景色。
未だ知らないと書いて未知の世界を全身で感じることこそが翔の夢だった。
だがその願いも虚しくついにその命の終わりを迎えた翔は、神から新たな世界へと旅立つ権利を与えられる。
翔が向かった先の世界は全てが起こりうる可能性の世界。
そこには多種多様な生物や環境が存在しており、地球ではもはや全て踏破されてしまった未知が溢れかえっていた。
何者にも縛られない自由な世界を前にして、翔は夢に見た世界を生きていくのだった。
一章終了まで毎日20時台更新予定
読み方はただしい異世界(せかい)の歩き方です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる