魔王メーカー

壱元

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第二章 前編

第十五話

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 私は、目の前に座るいたいけな美少女に共感していた。

「同じですね」

私がそう言うと、

「ね? 私達、分かり会えそうじゃありませんか?」

と彼女はあどけなく笑った。

そして、ベッドから下りた。

「一つ訊きたいことがあります」

窓の方へとぺたぺた歩きながら、彼女は切り出した。

「私とそっくりなグレア様、貴女は私のように『世界を憎んで』いらっしゃいますか? いえ、正確には『”今のこの世界”を憎んで』いらっしゃいますか?」

こちらの魂まで見通すようなその双眸には、不思議な光沢があった。

私が返答するのに時間はそれほど掛からなかった。


現在の私には何もない。

人も物も頼れない。

ある一つを除外すれば。


「はい」

私は答えた。

「私は、無情で野蛮な『この世界』を心の底から憎んでいます」

「でしたら」と彼女は言った。

「素敵な提案があります。…私達でー」

次に私の鼓膜を震わせたのは、忌々しく甘美な名前。

「『魔王』をやりませんか?」


 「魔王」。

その何たるかについて、私の脳内には、教養なき農民の伝聞に基づく大まかなイメージしかない。

昔に現れたという「魔物の王」。

あらゆる種類の魔物を従え、人間と大きな戦争を行ったという。

しかし、最後は「勇者」とその仲間によって討ち取られたらしい。


「貴女はご自身の才について、どう評価していますか? 私は何人かの試験を担当したことがあると言いましたが、弟子は一人もとったことがありません。での、実は、貴女とお手合わせした時、伯爵に半年の無休労働を願い出てでも、貴女を手に入れたいと思いました。もし『研磨』が成功し、扱いこなすことさえ出来れば、全てを可能にする最高品質の『原石』が出土したとさえ思ったのです。私達二人の力が合わされば第二の『魔王』になれるのです」

「それもまた一興ですね」

私は答えた。

「いいですね。乗ってもいいですか?」

ラーラは嬉しそうな笑みを浮かべ、私に手を差し出した。

私はしっかりと握手した。

ここに、ラーラとグレアの血盟が完成した。


私が魔王になるまでの物語が始まった。



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