魔王メーカー

壱元

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第一章

第二十四話

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 敵はさらなる斧一本を投げつけてきた。

私は一か八か、振り返りながら腕を振り回し、掌から「火球パシア」を放射した。

斧と炎とが衝突し、燃え上がり、対消滅を起こした。

敵はこれ以上飛び道具を持たないと見えたので、反撃に転じた。

再び立ち止まり、「大火球ビシア」を二つ生成する。

だが、今度狙いを定めたのは、より装甲が薄弱な頸部だった。

火球は狙撃箇所に正確に飛んでいった。

敵は両腕を使って防御した。

石の小手が攻撃の威力を殆ど無効化してしまった。

再び距離を取ろうと走った。

すると、トロールが最初に投げた石の大斧が目に映った。

廃屋の壁に深々と刺さっている。

敵の武器の奪取がもたらす優位性は計り知れない、と即座判断した私は、それに直ぐ駆け寄り、引き抜こうとした。

 しかし、びくともしなかった。

次の瞬間、巨大な影が眼前に出現し、私は蹴られた。

私は反射的に上体を反らし、辛うじて直撃は免れた。

だが地獄は続く。

赤子の手をひねるように軽々得物を壁から抜き取り、私に体勢を整える隙も与えず薙ぎ払った。

私はすかさず地面に向けて火球を放ち、着弾時の衝撃を利用して左後方へと吹き飛ぶと、地面の上を転がった。

「くっ…」

回避には成功したが、奇策は諸刃の剣。

目に侵入した砂やら泥やらに視界が奪われた上、脛や頬には微細な石が刺さって痛む。

仕切り直しを目的に、私は立ち上がり目を擦りながら左の道を疾走した。

敵は追いかけてくるが、その距離は縮まらない。懸念すべきは必殺の投擲だ、と見て、「迎撃用」の「大火球」を準備する。

 アルクの家が見え始めた時、敵は案の定、石斧を振り被った。

私は即座に足を止めた。そして、全身の神経を研ぎ澄まし、敵と相対する。

あんな重い斧が当たれば、私は間違いなく即死する。

この迎撃の成否が命運に直結するのだ。

私は静かに敵の動向を見守った。

敵は手を後ろに引いた。

…だが、炸裂の直前で動作を止め、間合いを詰めようとした。

私はすかさず火球を撃ち出したが、それは振りかざした斧刃に当たって爆ぜた。

再び距離を取る為、私は走り出した。

とりあえず、敵も武器の消失を危惧している事、そしてそれが困難である事が分かった。


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