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第一部
第二十七話 剣を鍛える話(2)
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やがて、空からファキイルがゆっくり舞い降りてきた。
銀色の髪がふわりと広がり、朝日を受けて輝く。
「傷はないか」
これはファキイルなりの心遣いだろうか。
「大丈夫だ」
「ならよかった」
ファキイルは表情を変えずに言った。
「ここはどこなんですか?」
「さあな」
ファキイルは関心なさそうだった。
「何千年も生きているんだったら、それぐらいわかるでしょ」
図々しくオドラデクは訊いた。
「人間の付ける名前に関心はない。ただ、何度かは来たことあるな」
「頼りになりませんねえ」
オドラデクはお手上げした。
「またすぐに飛び立てばいいだけの話だ」
フランツは言った。
「旅の風情を楽しむって心の余裕がない人ってつまらないですよねえ」
オドラデクは皮肉っぽく言った。
「風情も何も、こんな砂浜だぞ?」
フランツは呆れた。
「いいじゃないですか。ぼく、実はこんな場所行ったことないんですよ」
「そりゃお前は長らく鞘の中だしな」
「ちょっと歩かせて貰いますよーだ」
オドラデクは勝手に歩き出してしまった。
「まるで三歳児だ」
頭を抱えたくなったが、そうしてもいられない。
「行くか」
ファキイルに合図して、オドラデクを追うことにした。
しばらく歩くと小さな集落が見えてきた。
漁村と言った感じだ。
魚を入れた網を担ぐ漁師の影もちらほらと見受けられる。
「ねえねえ、この街はなんて名前なんですか?」
オドラデクは躊躇わずに話しかけていた。
――こういうとこはやつの良いとこだな。
自分ならしばらく様子を見て動くだろうとフランツは思った。
オドラデクは戻ってきた。
「マッコルランって言うらしいですよ。牡蠣がえらく美味しいとかで」
聞いたことのない名前だった。だが、携帯していた『海路道しるべ』を見ると確かに記載がある。
――存在しない幻の村、とかではなさそうだな。
かつて事実だと思い込んでいた記憶が全て幻だった経験をして以来、フランツは疑り深くなっていた。
「ともかく休む場所を探しましょー。足がクタクタですよぉ。あ、でもこの村には宿屋がないとかで」
「なぜだ」
フランツはそんな場所に行ったことがなかったので驚いた。
「そもそも人が来る自体が珍しいんですよ。ここには市場もなくて、近くの街に行商にいくようですからね」
「こんなところで泊まるのは止めよう」
――やはり、さっさとファキイルに連れていって貰う方が良かったのだ。
「まあ待ってくださいって。何とか話を付けてきますよ」
オドラデクは元気よく引き返していった。
フランツはイライラしてきた。
「お前に迷惑を掛けてしまったな」
「そんなことはない」
ファキイルは黙っていた。
自分がそうだからわかるが、人間の中には自分が傷付きたくないから、あえて何事にも冷淡な態度をとる者がいる。
しかし、ファキイルはそうではない。その無関心さには優しさすら感じされるほどだった。
――これが、数千年の時を生きることなのか。
フランツは感心するばかりだった。
やがて、人を連れてくるオドラデクの姿が見えた。いつの間にか女に変わっている。
中年の女性でいかにも無愛想な顔をしていた。関わりたくなさそうな表情をしている。
「あんたらは何なのさ?」
「おほほほほほほほほ! わたくしたち親子三人連れですわよ!」
あからさまにオドラデクが艶めかしい声を出すので、フランツは気持ち悪く思った。
銀色の髪がふわりと広がり、朝日を受けて輝く。
「傷はないか」
これはファキイルなりの心遣いだろうか。
「大丈夫だ」
「ならよかった」
ファキイルは表情を変えずに言った。
「ここはどこなんですか?」
「さあな」
ファキイルは関心なさそうだった。
「何千年も生きているんだったら、それぐらいわかるでしょ」
図々しくオドラデクは訊いた。
「人間の付ける名前に関心はない。ただ、何度かは来たことあるな」
「頼りになりませんねえ」
オドラデクはお手上げした。
「またすぐに飛び立てばいいだけの話だ」
フランツは言った。
「旅の風情を楽しむって心の余裕がない人ってつまらないですよねえ」
オドラデクは皮肉っぽく言った。
「風情も何も、こんな砂浜だぞ?」
フランツは呆れた。
「いいじゃないですか。ぼく、実はこんな場所行ったことないんですよ」
「そりゃお前は長らく鞘の中だしな」
「ちょっと歩かせて貰いますよーだ」
オドラデクは勝手に歩き出してしまった。
「まるで三歳児だ」
頭を抱えたくなったが、そうしてもいられない。
「行くか」
ファキイルに合図して、オドラデクを追うことにした。
しばらく歩くと小さな集落が見えてきた。
漁村と言った感じだ。
魚を入れた網を担ぐ漁師の影もちらほらと見受けられる。
「ねえねえ、この街はなんて名前なんですか?」
オドラデクは躊躇わずに話しかけていた。
――こういうとこはやつの良いとこだな。
自分ならしばらく様子を見て動くだろうとフランツは思った。
オドラデクは戻ってきた。
「マッコルランって言うらしいですよ。牡蠣がえらく美味しいとかで」
聞いたことのない名前だった。だが、携帯していた『海路道しるべ』を見ると確かに記載がある。
――存在しない幻の村、とかではなさそうだな。
かつて事実だと思い込んでいた記憶が全て幻だった経験をして以来、フランツは疑り深くなっていた。
「ともかく休む場所を探しましょー。足がクタクタですよぉ。あ、でもこの村には宿屋がないとかで」
「なぜだ」
フランツはそんな場所に行ったことがなかったので驚いた。
「そもそも人が来る自体が珍しいんですよ。ここには市場もなくて、近くの街に行商にいくようですからね」
「こんなところで泊まるのは止めよう」
――やはり、さっさとファキイルに連れていって貰う方が良かったのだ。
「まあ待ってくださいって。何とか話を付けてきますよ」
オドラデクは元気よく引き返していった。
フランツはイライラしてきた。
「お前に迷惑を掛けてしまったな」
「そんなことはない」
ファキイルは黙っていた。
自分がそうだからわかるが、人間の中には自分が傷付きたくないから、あえて何事にも冷淡な態度をとる者がいる。
しかし、ファキイルはそうではない。その無関心さには優しさすら感じされるほどだった。
――これが、数千年の時を生きることなのか。
フランツは感心するばかりだった。
やがて、人を連れてくるオドラデクの姿が見えた。いつの間にか女に変わっている。
中年の女性でいかにも無愛想な顔をしていた。関わりたくなさそうな表情をしている。
「あんたらは何なのさ?」
「おほほほほほほほほ! わたくしたち親子三人連れですわよ!」
あからさまにオドラデクが艶めかしい声を出すので、フランツは気持ち悪く思った。
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