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第一部
第六話 童貞(7)
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その時だった。
一発。
鋭い銃声が聞こえた。
ルナとズデンカは身構えた。二人にはそれが何の音か聞き分けられたからだ。
やがて、その音は数を増して聞こえた。
鳴き叫ぶ声、逃げ惑う声。
とても近い場所で、何者かが乱射しているのだ。
「講義室の方です!」
ガタガタと震えながら理事長が言った。
だが、その声を待たずにルナとズデンカは駆け出していた。
「さっきイヴォナさんが入っていった教室だ!」
二人は急いで中へ入った。
ライフルを構えた取り立てて特徴のない平凡な顔立ちの男が立っていた。
床にはたくさんの生徒が血を流して倒れている。
中にはイヴォナの姿もあった。
「イヴォナさん!」
ルナは悲痛な声を上げて駆け寄った。
「ペルッツさま……」
蒼白になったイヴォナは口から血を流しながらルナを見つめた。
「私、もっと勉強がしたかった……ペルッツさまとお仕事したかったです……」
「それ以上言わないで! 血が出てしまう!」
ルナは流れるイヴォナの血を押さえようと胸を手で押さえた。
でも、止めることが出来ず、血はルナの掌から溢れ服を紅く染めた。
イヴォナはことりと顎を落とした。
「また……守れなかった」
ルナは項垂れ、ぽつんと呟いた。
「女がまた来やがったか。死ねよぉ!」
男はルナ目掛けて発砲した。
しかし、弾は前に立ち塞がったズデンカに防がれた。その胸元に吸い込まれたのだ。
「死ね。死ね。何で死なねえんだよ!」
男は顔を歪ませながら何発も何発もズデンカに撃ち込んだ。
「死ね。死ね。女は死ね!」
だがズデンカは平然と男に向かって歩いていく。
一撃の下に爪で首を落とそうとするズデンカ。
だが男はそれを素早くかわし、講義用の黒板の端に両の手足を絡めると、素早く天井に這い登った。
「なんなんだ、こいつ?」
ズデンカは呆れてそれを見上げた。
男はよだれを垂らしながら銃を担ぎ、天井を這い進む。
ヤモリのようにその手足は湿り気を帯び、天井に張り付いていたのだ。
「待てよ!」
ズデンカは座席に上がって跳躍し、天井に張り付く男の脚に縋り付いた。
男はわめき声を上げ、身を揺すってズデンカを振り放そうとした。
「離れろ! 離れろよぉ!」
ズデンカは男の背中に爪を立てた。男はズデンカをおぶったまま、ズルズルと講義室の向かい側へと這っていく。
ズデンカは男が背負っていた銃をもぎ取り、床へ放り投げた。
「何をしやがるっ!」
男は叫んで背中のズデンカを殴り付けた。
しかし、ズデンカはビクとも動かない。
「女は死ねよぉ!」
男の顔が引き歪み、眼は飛び出して黄色い光を帯びた。
服が破れ、背中はなめらかな鱗で覆われ始めた。尾っぽがズボンを突き破って伸びる。
五本指の先が綿棒のように膨れ上がり、より強く天井へ張り付いた。
本当に巨大なヤモリへと変わりつつあったのだ。
思わず滑りそうになったズデンカは、爪を尖らせてその隙間の皮膚へ食い込ませた。
「ぎゃああ、ぎゃああ」
もはや人の声ではない音を上げながら、男だったものはズデンカに噛み付いた。
一発。
鋭い銃声が聞こえた。
ルナとズデンカは身構えた。二人にはそれが何の音か聞き分けられたからだ。
やがて、その音は数を増して聞こえた。
鳴き叫ぶ声、逃げ惑う声。
とても近い場所で、何者かが乱射しているのだ。
「講義室の方です!」
ガタガタと震えながら理事長が言った。
だが、その声を待たずにルナとズデンカは駆け出していた。
「さっきイヴォナさんが入っていった教室だ!」
二人は急いで中へ入った。
ライフルを構えた取り立てて特徴のない平凡な顔立ちの男が立っていた。
床にはたくさんの生徒が血を流して倒れている。
中にはイヴォナの姿もあった。
「イヴォナさん!」
ルナは悲痛な声を上げて駆け寄った。
「ペルッツさま……」
蒼白になったイヴォナは口から血を流しながらルナを見つめた。
「私、もっと勉強がしたかった……ペルッツさまとお仕事したかったです……」
「それ以上言わないで! 血が出てしまう!」
ルナは流れるイヴォナの血を押さえようと胸を手で押さえた。
でも、止めることが出来ず、血はルナの掌から溢れ服を紅く染めた。
イヴォナはことりと顎を落とした。
「また……守れなかった」
ルナは項垂れ、ぽつんと呟いた。
「女がまた来やがったか。死ねよぉ!」
男はルナ目掛けて発砲した。
しかし、弾は前に立ち塞がったズデンカに防がれた。その胸元に吸い込まれたのだ。
「死ね。死ね。何で死なねえんだよ!」
男は顔を歪ませながら何発も何発もズデンカに撃ち込んだ。
「死ね。死ね。女は死ね!」
だがズデンカは平然と男に向かって歩いていく。
一撃の下に爪で首を落とそうとするズデンカ。
だが男はそれを素早くかわし、講義用の黒板の端に両の手足を絡めると、素早く天井に這い登った。
「なんなんだ、こいつ?」
ズデンカは呆れてそれを見上げた。
男はよだれを垂らしながら銃を担ぎ、天井を這い進む。
ヤモリのようにその手足は湿り気を帯び、天井に張り付いていたのだ。
「待てよ!」
ズデンカは座席に上がって跳躍し、天井に張り付く男の脚に縋り付いた。
男はわめき声を上げ、身を揺すってズデンカを振り放そうとした。
「離れろ! 離れろよぉ!」
ズデンカは男の背中に爪を立てた。男はズデンカをおぶったまま、ズルズルと講義室の向かい側へと這っていく。
ズデンカは男が背負っていた銃をもぎ取り、床へ放り投げた。
「何をしやがるっ!」
男は叫んで背中のズデンカを殴り付けた。
しかし、ズデンカはビクとも動かない。
「女は死ねよぉ!」
男の顔が引き歪み、眼は飛び出して黄色い光を帯びた。
服が破れ、背中はなめらかな鱗で覆われ始めた。尾っぽがズボンを突き破って伸びる。
五本指の先が綿棒のように膨れ上がり、より強く天井へ張り付いた。
本当に巨大なヤモリへと変わりつつあったのだ。
思わず滑りそうになったズデンカは、爪を尖らせてその隙間の皮膚へ食い込ませた。
「ぎゃああ、ぎゃああ」
もはや人の声ではない音を上げながら、男だったものはズデンカに噛み付いた。
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