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第2章
ご家老様の苦悩 四巻
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しばらくすると
たくさんの城に仕える家来達が
河原へ現れた。
「ご家老様!!」
数人の家来達は
ご家老に肩を貸し
駕籠へと乗せた。
「お前達
誰の命令でここへ来た?」
駕籠に乗り込んだご家老は
そもそもの疑問をぶつけた。
「はっ。朝早く若君が
城下に下りると申されまして
ご家老様には内緒にするようにと…
そして、夕刻頃に駕籠と共に
河原まで来るようにと…
申されておられました」
朝から城内で
散々走り回り
家来達にも若君の所在を
確認していた時点で
ご家老以外の者は皆
知っていたのだった。
「ホントに呆れたお方だ……」
ご家老はそう小さく呟きながら
優しく微笑んだ。
若君はわざわざ目立つ店ばかり
立ち寄りそれこそ
城下で鬼ごっこをしているかのように
ご家老と戯れていたのだろう。
それは幼き頃から
ずっと共にいるご家老にだけ
見せる心の安息を求める行為。
何か行き詰まる事や
悩むことがあると
こうして逃げているように
見せて最後は癒される為の場所を探す。
今回は
オレンジ色に染め上げられた
河原を見るため。
若君は優と手を繋ぎながら
じっとその景色を見つめていた。
ご家老も駕籠の中から
その景色を見つめる。
ふと振り返った若君は
ご家老を見つめた。
「じぃよ!綺麗な夕日だろう!
そなたと優にどうしても
見せたかったのだ!」
そう言って
満面の笑みを浮かべた。
ご家老は釣られて微笑み返す。
幼き頃から
破天荒ではあったが
その破天荒ぶりの中にも
人を思い遣る優しさを
常に持ち合わせている若君。
ご家老はそんな若君に
やはり計り知れない程
深い器量を感じずには
いられなかった。
(きっと……若君が
この地を納めれば
さらに安泰となろうぞ……)
そう思うのであった。
夕日を眺めた後
優を団子屋へ送り届け
ご家老が乗って来た馬を引くと
若君とご家老御一行は
城に帰って行った。
数日後
反物屋からは
二つの着物が
届けられた。
一つは若君の元へ。
もう一つは
ご家老の元へ。
実は
反物屋も共謀者だった。
一反だけ優の着物を
見繕っていたのだと
ご家老は思い込んでいたが
あの日
若君はいつも世話になっている
ご家老の分も見繕っていた。
着物を手にしたご家老は
やはり若君には
一生敵わないと改めて思ったのだった。
そして
その日もやはり城には
「若君ー!若君はどこじゃー!?」
ご家老様の声が響き渡るのでした。
たくさんの城に仕える家来達が
河原へ現れた。
「ご家老様!!」
数人の家来達は
ご家老に肩を貸し
駕籠へと乗せた。
「お前達
誰の命令でここへ来た?」
駕籠に乗り込んだご家老は
そもそもの疑問をぶつけた。
「はっ。朝早く若君が
城下に下りると申されまして
ご家老様には内緒にするようにと…
そして、夕刻頃に駕籠と共に
河原まで来るようにと…
申されておられました」
朝から城内で
散々走り回り
家来達にも若君の所在を
確認していた時点で
ご家老以外の者は皆
知っていたのだった。
「ホントに呆れたお方だ……」
ご家老はそう小さく呟きながら
優しく微笑んだ。
若君はわざわざ目立つ店ばかり
立ち寄りそれこそ
城下で鬼ごっこをしているかのように
ご家老と戯れていたのだろう。
それは幼き頃から
ずっと共にいるご家老にだけ
見せる心の安息を求める行為。
何か行き詰まる事や
悩むことがあると
こうして逃げているように
見せて最後は癒される為の場所を探す。
今回は
オレンジ色に染め上げられた
河原を見るため。
若君は優と手を繋ぎながら
じっとその景色を見つめていた。
ご家老も駕籠の中から
その景色を見つめる。
ふと振り返った若君は
ご家老を見つめた。
「じぃよ!綺麗な夕日だろう!
そなたと優にどうしても
見せたかったのだ!」
そう言って
満面の笑みを浮かべた。
ご家老は釣られて微笑み返す。
幼き頃から
破天荒ではあったが
その破天荒ぶりの中にも
人を思い遣る優しさを
常に持ち合わせている若君。
ご家老はそんな若君に
やはり計り知れない程
深い器量を感じずには
いられなかった。
(きっと……若君が
この地を納めれば
さらに安泰となろうぞ……)
そう思うのであった。
夕日を眺めた後
優を団子屋へ送り届け
ご家老が乗って来た馬を引くと
若君とご家老御一行は
城に帰って行った。
数日後
反物屋からは
二つの着物が
届けられた。
一つは若君の元へ。
もう一つは
ご家老の元へ。
実は
反物屋も共謀者だった。
一反だけ優の着物を
見繕っていたのだと
ご家老は思い込んでいたが
あの日
若君はいつも世話になっている
ご家老の分も見繕っていた。
着物を手にしたご家老は
やはり若君には
一生敵わないと改めて思ったのだった。
そして
その日もやはり城には
「若君ー!若君はどこじゃー!?」
ご家老様の声が響き渡るのでした。
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