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01、母の日
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俺が学校を卒業すると同時に両親は離婚した。
元々若き日に遊びでいたしたらできちゃったということで籍を入れただけの関係で、夫婦仲は冷え切っていたし、俺が卒業するときに別れてお互い新しい人生を楽しもうと円満な離婚。
前々からそれは決まっていたことだったらしいが、父はとにかく家庭に無関心。仕事をして金を入れるだけの存在。禄に家に帰ってこなかったし、遊んでもらった記憶もない……きっと余所に女が居て、そこに帰っていたのだろう。たまたま帰ってきた時、俺に言った言葉は『お前ができなかったら、俺はもっとイイ女と結婚したのに』という最悪な言葉くらい。
母はぽっちゃりムッチリした可愛い系。
髪は手入れが簡単だからと短くして、色も染めていないから黒だけど、同級生達の母より若いのに所々に白が混じって苦労してきたことが伺える。
服装も実用性重視の地味で瓶底メガネ。
まじめな性格なのに、どうして父のような屑に引っかかってしまったのか……自分にはない物に憧れたからとかか、それとも地味子は手込めにしやすいからで狙われたとかか?
そのぶん母は俺に愛情を注ぎ、家庭を守ってくれていたのに、父はあっさりと切り捨てた。
俺を育てるために一生懸命頑張ってくれた母に一切感謝せず、しばらくの生活費だけ残して家を出ていった。
家は元々母の実家で、亡くなった祖父母が母に残してくれたもの。そこにアパート暮らしだった父が家賃節約のために入り込んだ形なので父が家を出て行くのは当たり前な話だし、父のお金が入らなくなっても生活費は母の両親の遺産が残っているので気にするなと言われているが、俺は母に負担をかけさせたくないから、卒業と同時に就職することを選んだ。
幸いなことに、学生時代のバイト先が俺の家庭環境を知って『お前はよく働くからうちに就職しろ』とそのまま拾ってくれた。
先輩や上司は母親を大事にしろと言ってくれる。女性陣も母親を大事にしようとする俺に好意的で、繁忙期以外は残業なしで帰れるホワイトな職場だ。
実家暮らしだからそれほど出費もないので母を養うくらい問題はない。
仕事もバイトのうちから色々やらせてくれたおかげで問題無くこなすことができている。
無事初任給を受け取って、初めての母の日。
仕事帰りにプレゼントの花束とエプロンと女性でも飲みやすいワインとそれに合うらしいチーズケーキを買って帰る。
今から帰ることと何分後に家に着く予定なのかの連絡も忘れない。
「ただいま」
「お帰りなさい。今日もお疲れ様……って、樹(いつき)……その花束、どうしたの?」
帰る時間を伝えていたから、母が玄関まで出迎えに来て、真っ先に俺の手荷物を確認してくる……まぁ、いきなり息子が花束抱えて帰ってきたら確認したくなるよな。
「あー、これは、その……日曜日、母の日でしょ? だから、さ……はい、母さん。いつもありがとう。こうして無事に社会人になれたのも、お母さんのおかげです。日頃の感謝の気持ちなので、これ、受け取ってください」
そう言って、花束を差し出す。
「え、えっと……これを、私に?」
「うん。花は詳しくないから、何が良いのか解らなくてお店の人にお任せしちゃったんだけどさ。オススメされたので母さんが好きな色を選んだんだ。1本じゃ寂しいから束にしてもらったんだ」
母の好きな赤と黄色とオレンジの三色で、合計12本のチューリップの花束。
母の日の定番であるカーネーションやバラは残念ながら売り切れていたのでこれにしたのだが、
「ありがとう……嬉しい。本当に嬉しいわ」
母は声を震わせて花束を受け取ると、頭を撫でてきた。
「ごめんね。お母さんに大切なお金、使わせちゃって。ずっと我慢させちゃってたから、お給料は好きなことに使ってくれて良かったのよ?」
「い、いやいや。これは最初から決めてたんだから。初任給は、母さんに感謝を伝えるために使うって。だから、俺がしたかったことにちゃんと使ってるから気にしないで」
「ああ……本当に、いい子に育ってくれて。お母さん、あなたを産んで、本当に良かった」
「ちょっ、恥ずかしいって……ほら、お酒も買ってきたから。家事に追われてほとんど飲んでないでしょ? たまには飲んで、日頃の不満とかスッキリさせなよ。今日は俺が、母さんをもてなすからさ。デザートにケーキも買ってきたんだよ? 母さんの好きなチーズケーキ」
さすがに面と向かって言われると恥ずかしいので強引に話題を切り替える。
「あらあら、お母さんが好きなもの、覚えててくれたんだ……至れり尽くせりねぇ。ふふふ、嬉しいわ。それじゃあ、夕飯の準備しちゃうから、荷物を置いて、部屋着に着替えてきちゃいなさい」
「了解!」
母にケーキとワインを預けたら自室に戻り、さっさと着替えて食卓につくと、花束が花瓶に入れられていて、氷を入れた鍋に買ってきた酒瓶が冷やされていた。
「女性が好むお酒だっていう店員のおすすめで買ってきたけど、母さんの口に合うかな……ダメだったら、無理して飲まなくて良いからね?」
ポートワインっていう、甘めのワインで女性にも飲みやすくておすすめなんだと言われたが、味見していないからどんなものか解らない。
「あらあら、そんな勿体ないことできないわよ。あなたが私のためにって買ってきてくれたお酒なんだもの……一滴も残さず、お母さんがいただくわ」
「そこまで気負わなくても良いんだけど……まぁ、母さんのために買ってきた酒だから、俺は飲まないつもりで小さい瓶にしたんだけど。無理はしないでよ?」
「無理なんてしないわ。あなたの気持ちがこもっているんだもの……全部、ちゃんと受け止めるわ」
ボトルを嬉しそうに見つめ、俺が贈った花を撫でる母……俺の気持ちって、俺はただ、日ごろの感謝の気持ちを伝えたいだけで、そこまで気負うものじゃないと思うんだけどな。
「そういえば、花屋と酒屋の店員が『頑張ってください』って言ってたのが意味深なんだけど。何か意味があったりするの?」
「サプライズを頑張ってって意味じゃないかしら? ちゃんと成功してるから、安心して。それより、ご飯食べちゃいましょう。せっかく頑張って作ったのに冷めちゃうわ」
「そうだね。それじゃあ、いただきます!」
母の態度に違和感を感じるが、きっと気のせいだろうといつものように食事を開始。
その日にあったことや、仕事の愚痴を言いながら母の料理を食べ、食器を片づけ、デザートと酒を用意する。
「あ、この酒、アルコール度数22ってなってる……けっこうキツそうだけど、大丈夫?」
この時、初めてこのワインがアルコール度数が高い酒であることに気づいた……しまったな、女性にはきつい度数だよな。
「量を飲まなかったら大丈夫よ。グラス半杯だけにするとか、割って飲むとか工夫したらいいのよ」
「ワインって、割って飲んでもいいんだ?」
「炭酸で割るとか言うのもあるらしいわよ? この前薬局で『割って美味しい!』ってポップに書いてあったから。あと、氷割りっていうのも良いらしいわよ? ほら」
そう言って、スマホで検索した情報を見せてくる。
母は解らないことは調べるが口癖だからな。いろんなことを知っていて、子供の頃はそれに何度も助けられた。
「へぇー。いろんな飲み方があるんだ」
「色々試せばすぐに無くなっちゃうわよ。だから、あなたは心配しなくても大丈夫よ。冷蔵庫で1ヶ月は保つみたいだし、それまでには飲み切っちゃうわ」
ワイングラスに氷を入れて、中身を注ごうとするので「ちょっと待って、お酌は俺がするから」と待ったをかける。
「あらあら、お酌してくれるだなんて」
「まぁ、職場の飲み会に何度も呼ばれて、『目上の人に手酌させるな』って仕込まれてるから。バイト時代だからまだ未成年で酒飲めないって断ってるのに大人のマナーを教えてやるって連れて行かれてさ……実際には体の良い酔っ払いの介護要員だったし……タダ飯はありがたかったけど、俺は母さんの飯が一番好きだし」
「まぁ! ほんと、今日はどうしちゃったの? お母さんをそんなに喜ばせても、何もでないわよ?」
「いやいや、日ごろの感謝を伝える場なんだからさ、普段言えないことを言おうと思ってさ。やっぱこう、恥ずかしいんだよ……母親が大好きですってさ」
「そう? お母さんは嬉しいわよ? 大切な息子に好きって言ってもらうの。もちろん、私もあなたが大好きよ? 愛してるもの。嫌いって思われてて、悪態つかれたら……とても悲しいし」
「嫌いなんてことは絶対ないから安心して」
「そっか。良かった。それじゃあ、お酒とケーキ、いただくわね。乾杯」
母はワイングラスを、俺は母が酔いつぶれたら介護するつもりなので普通のグラスにジュースを注いで乾杯する。
「はぁ、美味しい……甘くて、良い香りがして、飲みやすい……うん。ケーキにも合うわ。ありがとう、樹」
「喜んでもらえたようでなによりだよ」
酒もケーキも母の口にあったようで、終始美味しいと繰り返し、笑顔をみせてくれた。
「ふぅ……お酒飲んだら、体が熱くなってきちゃったわ……お風呂、どうしよう」
ゆっくり時間をかけて味わっていくうちにアルコールが回ってきたのか、顔を赤らめながらもキレイに完食してくれた。じんわり汗ばんでいるのがエロい……じゃなくて、風呂か。
「酔ってるときにはいるのは危ないよ。上司が酒のんだ後に風呂入って、うっかりうたた寝して溺れかけたって言ってたし。たまたま物音に気づいた家族が助けてくれたらしいけど」
飲酒後の入浴は血液の流れが良くなって、アルコールの周りが早くなり、血圧が低下して意識を失うことがあるらしい。
「そうなのよね……体を拭くだけが無難なんだけど、やっぱり湯船につかってサッパリしたいし……そうだ。樹と一緒に入ればいいのよ!」
「……はい? え、なんで?」
「だって、樹はお酒飲んでないし。こう言うときのために飲まないでいてくれたんでしょ? もしお母さんが溺れても、助けてくれるでしょ?」
「そりゃ、まぁ、そうだけど……まじ?」
「良いじゃない、母子なんだから。今日のために色々計画してくれたお礼に、樹の背中流してあげるから。それから、日ごろの感謝の気持ちがまだあるなら、お母さんの身体も洗ってほしいなぁー」
昔は確かに一緒に入ってたし、母子だけどさ……それは性に無頓着で幼かったから許容されていたわけで、思春期を過ぎ、母の身体がエロいことに気づいて意識しちゃっている今、その対象と一緒に風呂に入るというのは色々まずいわけで、拒否しないと俺は新聞の一面を飾ってしまう。母の日に母親を酔わせてレイプした息子として報道されちゃう。
「今日はすっごく気分がいいから、昔みたいにお母さんのおっぱい触っても怒らないわよ?」
「しょ、しょうがないなー。危ないから酔っ払いを独りで風呂に入れるわけにはいかないし、仕方ない、うん」
はは、おっぱいには勝てなかったよ。
たゆんたゆんのたわわなオッパイは童貞の俺に効く。憧れのオッパイを触っても良いとか、そんなの勝てるわけがない。完敗だ。
「ふふふ、素直でよろしい♪ それじゃあ、お風呂場いこうかぁ」
「行こうかって……まだ洗ってないでしょ」
「大丈夫ー。ケーキ食べる前にこのくらいかなって、予めセットしておいたから、もうお湯張りもしてあるわ。それより、なんだかふわふわしてるから、連れてってぇー」
用意周到すぎだろ……相変わらず先読みがすごい。
それでも酔いが回っているのか、母の言葉が間延びしている。しかもめっちゃ甘えん坊口調。
「はいはい。わかりましたよ。エスコートさせていただきますよ、お姫様」
気障なセリフを吐いて、手を差し出して立たせようとしてみたが、
「お姫様かぁ~。なら、抱っこしてー。お姫様だっこーー」
「えぇ……」
「……ダメ?」
「仰せのままに」
余計なことを言ったせいで状況が悪化した。
なんでお姫様とか言っちゃったんだ俺。
母といえども、上目遣いで涙目な爆乳熟女のお願いはさすがに断れない。
先輩達から『常に体は鍛えておけ』『鍛えておけば絶対役に立つ』『人を抱えれる程度にはしておけ』と言われ続けて、仕事の隙間時間に先輩と筋トレしているのがまさかここで役に立つとは……先輩はこの展開を予想していたのか? それとも、いつも奥さんをお姫様だっこして夜の大運動会を繰り広げているのか……羨ましい。俺も早く卒業したい。
「うわぁ、すごい。本当にしてくれるんだ」
「そりゃ、鍛えているし。母さんにおねだりされたら叶えてあげたいから」
ムチムチでぽっちゃりだけど、抱えれない程じゃない。比較対象がマッチョな先輩だから、それと比べるなと言われそうだけど。
見た目に反して軽い。
全身が柔らかくて、甘いニオイがする。
「えへへ、嬉しすぎて顔がにやけちゃう。こんなに幸せで良いのかなぁ~」
顔をすり付けてくるのが可愛い。
めっちゃ甘えてくる。愛おしい。
心拍数がめっちゃあがってる。
「……可愛い」
「ふぇっ? 樹、今なんて?」
ヤバい、つい声に出してしまった。
しかも聞かれた。
「な、なんでもない! ほら、移動するからしっかり掴まってて。落としたくないから」
「はぁい。ぎゅーってするね?」
そう言って密着してくる母。
「心臓、ドクドク言ってる……えへへ」
おっぱいが押しつけられて、心音を聞かれている。
こんな状態で平静を保てない。
きっと平静じゃないから、邪な発想が浮かぶんだ。
この人とセックスしたいって。
母さんで、童貞を卒業したいって。
願っちゃイケないことを、願ってしまうんだ。
元々若き日に遊びでいたしたらできちゃったということで籍を入れただけの関係で、夫婦仲は冷え切っていたし、俺が卒業するときに別れてお互い新しい人生を楽しもうと円満な離婚。
前々からそれは決まっていたことだったらしいが、父はとにかく家庭に無関心。仕事をして金を入れるだけの存在。禄に家に帰ってこなかったし、遊んでもらった記憶もない……きっと余所に女が居て、そこに帰っていたのだろう。たまたま帰ってきた時、俺に言った言葉は『お前ができなかったら、俺はもっとイイ女と結婚したのに』という最悪な言葉くらい。
母はぽっちゃりムッチリした可愛い系。
髪は手入れが簡単だからと短くして、色も染めていないから黒だけど、同級生達の母より若いのに所々に白が混じって苦労してきたことが伺える。
服装も実用性重視の地味で瓶底メガネ。
まじめな性格なのに、どうして父のような屑に引っかかってしまったのか……自分にはない物に憧れたからとかか、それとも地味子は手込めにしやすいからで狙われたとかか?
そのぶん母は俺に愛情を注ぎ、家庭を守ってくれていたのに、父はあっさりと切り捨てた。
俺を育てるために一生懸命頑張ってくれた母に一切感謝せず、しばらくの生活費だけ残して家を出ていった。
家は元々母の実家で、亡くなった祖父母が母に残してくれたもの。そこにアパート暮らしだった父が家賃節約のために入り込んだ形なので父が家を出て行くのは当たり前な話だし、父のお金が入らなくなっても生活費は母の両親の遺産が残っているので気にするなと言われているが、俺は母に負担をかけさせたくないから、卒業と同時に就職することを選んだ。
幸いなことに、学生時代のバイト先が俺の家庭環境を知って『お前はよく働くからうちに就職しろ』とそのまま拾ってくれた。
先輩や上司は母親を大事にしろと言ってくれる。女性陣も母親を大事にしようとする俺に好意的で、繁忙期以外は残業なしで帰れるホワイトな職場だ。
実家暮らしだからそれほど出費もないので母を養うくらい問題はない。
仕事もバイトのうちから色々やらせてくれたおかげで問題無くこなすことができている。
無事初任給を受け取って、初めての母の日。
仕事帰りにプレゼントの花束とエプロンと女性でも飲みやすいワインとそれに合うらしいチーズケーキを買って帰る。
今から帰ることと何分後に家に着く予定なのかの連絡も忘れない。
「ただいま」
「お帰りなさい。今日もお疲れ様……って、樹(いつき)……その花束、どうしたの?」
帰る時間を伝えていたから、母が玄関まで出迎えに来て、真っ先に俺の手荷物を確認してくる……まぁ、いきなり息子が花束抱えて帰ってきたら確認したくなるよな。
「あー、これは、その……日曜日、母の日でしょ? だから、さ……はい、母さん。いつもありがとう。こうして無事に社会人になれたのも、お母さんのおかげです。日頃の感謝の気持ちなので、これ、受け取ってください」
そう言って、花束を差し出す。
「え、えっと……これを、私に?」
「うん。花は詳しくないから、何が良いのか解らなくてお店の人にお任せしちゃったんだけどさ。オススメされたので母さんが好きな色を選んだんだ。1本じゃ寂しいから束にしてもらったんだ」
母の好きな赤と黄色とオレンジの三色で、合計12本のチューリップの花束。
母の日の定番であるカーネーションやバラは残念ながら売り切れていたのでこれにしたのだが、
「ありがとう……嬉しい。本当に嬉しいわ」
母は声を震わせて花束を受け取ると、頭を撫でてきた。
「ごめんね。お母さんに大切なお金、使わせちゃって。ずっと我慢させちゃってたから、お給料は好きなことに使ってくれて良かったのよ?」
「い、いやいや。これは最初から決めてたんだから。初任給は、母さんに感謝を伝えるために使うって。だから、俺がしたかったことにちゃんと使ってるから気にしないで」
「ああ……本当に、いい子に育ってくれて。お母さん、あなたを産んで、本当に良かった」
「ちょっ、恥ずかしいって……ほら、お酒も買ってきたから。家事に追われてほとんど飲んでないでしょ? たまには飲んで、日頃の不満とかスッキリさせなよ。今日は俺が、母さんをもてなすからさ。デザートにケーキも買ってきたんだよ? 母さんの好きなチーズケーキ」
さすがに面と向かって言われると恥ずかしいので強引に話題を切り替える。
「あらあら、お母さんが好きなもの、覚えててくれたんだ……至れり尽くせりねぇ。ふふふ、嬉しいわ。それじゃあ、夕飯の準備しちゃうから、荷物を置いて、部屋着に着替えてきちゃいなさい」
「了解!」
母にケーキとワインを預けたら自室に戻り、さっさと着替えて食卓につくと、花束が花瓶に入れられていて、氷を入れた鍋に買ってきた酒瓶が冷やされていた。
「女性が好むお酒だっていう店員のおすすめで買ってきたけど、母さんの口に合うかな……ダメだったら、無理して飲まなくて良いからね?」
ポートワインっていう、甘めのワインで女性にも飲みやすくておすすめなんだと言われたが、味見していないからどんなものか解らない。
「あらあら、そんな勿体ないことできないわよ。あなたが私のためにって買ってきてくれたお酒なんだもの……一滴も残さず、お母さんがいただくわ」
「そこまで気負わなくても良いんだけど……まぁ、母さんのために買ってきた酒だから、俺は飲まないつもりで小さい瓶にしたんだけど。無理はしないでよ?」
「無理なんてしないわ。あなたの気持ちがこもっているんだもの……全部、ちゃんと受け止めるわ」
ボトルを嬉しそうに見つめ、俺が贈った花を撫でる母……俺の気持ちって、俺はただ、日ごろの感謝の気持ちを伝えたいだけで、そこまで気負うものじゃないと思うんだけどな。
「そういえば、花屋と酒屋の店員が『頑張ってください』って言ってたのが意味深なんだけど。何か意味があったりするの?」
「サプライズを頑張ってって意味じゃないかしら? ちゃんと成功してるから、安心して。それより、ご飯食べちゃいましょう。せっかく頑張って作ったのに冷めちゃうわ」
「そうだね。それじゃあ、いただきます!」
母の態度に違和感を感じるが、きっと気のせいだろうといつものように食事を開始。
その日にあったことや、仕事の愚痴を言いながら母の料理を食べ、食器を片づけ、デザートと酒を用意する。
「あ、この酒、アルコール度数22ってなってる……けっこうキツそうだけど、大丈夫?」
この時、初めてこのワインがアルコール度数が高い酒であることに気づいた……しまったな、女性にはきつい度数だよな。
「量を飲まなかったら大丈夫よ。グラス半杯だけにするとか、割って飲むとか工夫したらいいのよ」
「ワインって、割って飲んでもいいんだ?」
「炭酸で割るとか言うのもあるらしいわよ? この前薬局で『割って美味しい!』ってポップに書いてあったから。あと、氷割りっていうのも良いらしいわよ? ほら」
そう言って、スマホで検索した情報を見せてくる。
母は解らないことは調べるが口癖だからな。いろんなことを知っていて、子供の頃はそれに何度も助けられた。
「へぇー。いろんな飲み方があるんだ」
「色々試せばすぐに無くなっちゃうわよ。だから、あなたは心配しなくても大丈夫よ。冷蔵庫で1ヶ月は保つみたいだし、それまでには飲み切っちゃうわ」
ワイングラスに氷を入れて、中身を注ごうとするので「ちょっと待って、お酌は俺がするから」と待ったをかける。
「あらあら、お酌してくれるだなんて」
「まぁ、職場の飲み会に何度も呼ばれて、『目上の人に手酌させるな』って仕込まれてるから。バイト時代だからまだ未成年で酒飲めないって断ってるのに大人のマナーを教えてやるって連れて行かれてさ……実際には体の良い酔っ払いの介護要員だったし……タダ飯はありがたかったけど、俺は母さんの飯が一番好きだし」
「まぁ! ほんと、今日はどうしちゃったの? お母さんをそんなに喜ばせても、何もでないわよ?」
「いやいや、日ごろの感謝を伝える場なんだからさ、普段言えないことを言おうと思ってさ。やっぱこう、恥ずかしいんだよ……母親が大好きですってさ」
「そう? お母さんは嬉しいわよ? 大切な息子に好きって言ってもらうの。もちろん、私もあなたが大好きよ? 愛してるもの。嫌いって思われてて、悪態つかれたら……とても悲しいし」
「嫌いなんてことは絶対ないから安心して」
「そっか。良かった。それじゃあ、お酒とケーキ、いただくわね。乾杯」
母はワイングラスを、俺は母が酔いつぶれたら介護するつもりなので普通のグラスにジュースを注いで乾杯する。
「はぁ、美味しい……甘くて、良い香りがして、飲みやすい……うん。ケーキにも合うわ。ありがとう、樹」
「喜んでもらえたようでなによりだよ」
酒もケーキも母の口にあったようで、終始美味しいと繰り返し、笑顔をみせてくれた。
「ふぅ……お酒飲んだら、体が熱くなってきちゃったわ……お風呂、どうしよう」
ゆっくり時間をかけて味わっていくうちにアルコールが回ってきたのか、顔を赤らめながらもキレイに完食してくれた。じんわり汗ばんでいるのがエロい……じゃなくて、風呂か。
「酔ってるときにはいるのは危ないよ。上司が酒のんだ後に風呂入って、うっかりうたた寝して溺れかけたって言ってたし。たまたま物音に気づいた家族が助けてくれたらしいけど」
飲酒後の入浴は血液の流れが良くなって、アルコールの周りが早くなり、血圧が低下して意識を失うことがあるらしい。
「そうなのよね……体を拭くだけが無難なんだけど、やっぱり湯船につかってサッパリしたいし……そうだ。樹と一緒に入ればいいのよ!」
「……はい? え、なんで?」
「だって、樹はお酒飲んでないし。こう言うときのために飲まないでいてくれたんでしょ? もしお母さんが溺れても、助けてくれるでしょ?」
「そりゃ、まぁ、そうだけど……まじ?」
「良いじゃない、母子なんだから。今日のために色々計画してくれたお礼に、樹の背中流してあげるから。それから、日ごろの感謝の気持ちがまだあるなら、お母さんの身体も洗ってほしいなぁー」
昔は確かに一緒に入ってたし、母子だけどさ……それは性に無頓着で幼かったから許容されていたわけで、思春期を過ぎ、母の身体がエロいことに気づいて意識しちゃっている今、その対象と一緒に風呂に入るというのは色々まずいわけで、拒否しないと俺は新聞の一面を飾ってしまう。母の日に母親を酔わせてレイプした息子として報道されちゃう。
「今日はすっごく気分がいいから、昔みたいにお母さんのおっぱい触っても怒らないわよ?」
「しょ、しょうがないなー。危ないから酔っ払いを独りで風呂に入れるわけにはいかないし、仕方ない、うん」
はは、おっぱいには勝てなかったよ。
たゆんたゆんのたわわなオッパイは童貞の俺に効く。憧れのオッパイを触っても良いとか、そんなの勝てるわけがない。完敗だ。
「ふふふ、素直でよろしい♪ それじゃあ、お風呂場いこうかぁ」
「行こうかって……まだ洗ってないでしょ」
「大丈夫ー。ケーキ食べる前にこのくらいかなって、予めセットしておいたから、もうお湯張りもしてあるわ。それより、なんだかふわふわしてるから、連れてってぇー」
用意周到すぎだろ……相変わらず先読みがすごい。
それでも酔いが回っているのか、母の言葉が間延びしている。しかもめっちゃ甘えん坊口調。
「はいはい。わかりましたよ。エスコートさせていただきますよ、お姫様」
気障なセリフを吐いて、手を差し出して立たせようとしてみたが、
「お姫様かぁ~。なら、抱っこしてー。お姫様だっこーー」
「えぇ……」
「……ダメ?」
「仰せのままに」
余計なことを言ったせいで状況が悪化した。
なんでお姫様とか言っちゃったんだ俺。
母といえども、上目遣いで涙目な爆乳熟女のお願いはさすがに断れない。
先輩達から『常に体は鍛えておけ』『鍛えておけば絶対役に立つ』『人を抱えれる程度にはしておけ』と言われ続けて、仕事の隙間時間に先輩と筋トレしているのがまさかここで役に立つとは……先輩はこの展開を予想していたのか? それとも、いつも奥さんをお姫様だっこして夜の大運動会を繰り広げているのか……羨ましい。俺も早く卒業したい。
「うわぁ、すごい。本当にしてくれるんだ」
「そりゃ、鍛えているし。母さんにおねだりされたら叶えてあげたいから」
ムチムチでぽっちゃりだけど、抱えれない程じゃない。比較対象がマッチョな先輩だから、それと比べるなと言われそうだけど。
見た目に反して軽い。
全身が柔らかくて、甘いニオイがする。
「えへへ、嬉しすぎて顔がにやけちゃう。こんなに幸せで良いのかなぁ~」
顔をすり付けてくるのが可愛い。
めっちゃ甘えてくる。愛おしい。
心拍数がめっちゃあがってる。
「……可愛い」
「ふぇっ? 樹、今なんて?」
ヤバい、つい声に出してしまった。
しかも聞かれた。
「な、なんでもない! ほら、移動するからしっかり掴まってて。落としたくないから」
「はぁい。ぎゅーってするね?」
そう言って密着してくる母。
「心臓、ドクドク言ってる……えへへ」
おっぱいが押しつけられて、心音を聞かれている。
こんな状態で平静を保てない。
きっと平静じゃないから、邪な発想が浮かぶんだ。
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母さんで、童貞を卒業したいって。
願っちゃイケないことを、願ってしまうんだ。
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