上 下
6 / 15

第6話

しおりを挟む
「「「「「…………」」」」」

 私がグレスオリオ様に返礼して姿勢を戻した後、謁見の間には沈黙が流れる。

 こういう場合は位の上のものが話すまで待つしかないので、私はもとよりお父様も陛下かグレスオリオ様が話すまでは黙っているしかない。

 それにしても、あのグレスオリオ様の私を見てニコニコしてるのは何なのかしら?

 この先の展開が読めなくて、対策を考える事もできないのは厄介だわ。

「あー……、コホン……」

 陛下が軽く咳をすると、グレスオリオ様以外の全員の身体がピクっと動いてしまう。

 とうとう話が進むみたいね。

「ロアンド候爵家長子のリリスリエッタよ。まずは昨日こちらにいるサベリュヤ教帯剣者であるグレスオリオ殿を歓待してくれた事、誠に大儀であった」
「ありがとうございます」

 私が陛下へ最敬礼をすると、陛下や王妃様が小さくため息をついた。

「もし、グレスオリオ殿と衛兵とのいざこざが公になっていれば我が国は大陸中から孤立するところだった……、一度、衛兵達の教育を見直さねばならんな」
「私はリリス嬢から、この国でのサベリュヤ教の認識を聞いて理解したから大事にする気はないと宣言しておくよ。あの時の従者を連れず一人で行動していた私にも非があるし、誰だって自分の知らない事を正しい対応をして解決しろと言われたら無理だからね」
「グレスオリオ殿、感謝いたす」

 …………グレスオリオ様、さらっと一人でいた事を言っていますが、それはグレスオリオ様が従者の方々を気絶させたためですよね?

「それでリリスリエッタよ、そなたの大義に応えたい。何か望みはあるか?」
「私はたまたま居合わせただけですので大丈夫です」
「そうなのか? 国を救ったに等しい事をしたのだ。たいていの願いは叶えられるぞ?」
「いえ、本当に大丈夫です」
「そうか、それならば何か望みができた時に言うが良い」
「ありがとうございます」

 この流れで何か言ったら、それこそ変な厄介事を背負いかねない。

 お父様も私が余計な事を言うなと思ってるでしょうし、ここは無欲に徹して一刻も早くこの場から立ち去ろうと思ってたけど、そんな私の考えは次の瞬間崩れ去る。

「それじゃあ、私から一つ提案がある。リリスリエッタ嬢、君さえ良ければ私とサベリュヤ教の聖地へ行ってみないかい?」
「は?」

 グレスオリオ様の爆弾発言で、また謁見の間に沈黙が降りた。

 いやいや、他国の女性を婚姻以外の目的で国外に連れ出すのは非常識ですよ、グレスオリオ様。

「今回の事はひとえにお互いの相手に対する無理解が招いた事だ」
「そうですね……」
ならば、その無理解や溝を埋めるための人材が必要だとなる。ぜひ、君のような知識があり機転も効く優秀な人にサベリュヤ教を知ってもらいたんだ。どうかな?」
「ええと……」

 これは、どう答えるべきかしら……?



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
 最後まで読んでいただきありがとうございます。

「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「今後どうなるのっ……!」

と思ったら

 お気に入りの登録を、ぜひお願いします

 また感想や誤字脱字報告もお待ちしています。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。

木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。 そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。 ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。 そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。 こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

【完結】もうやめましょう。あなたが愛しているのはその人です

堀 和三盆
恋愛
「それじゃあ、ちょっと番に会いに行ってくるから。ええと帰りは……7日後、かな…」  申し訳なさそうに眉を下げながら。  でも、どこかいそいそと浮足立った様子でそう言ってくる夫に対し、 「行ってらっしゃい、気を付けて。番さんによろしくね!」  別にどうってことがないような顔をして。そんな夫を元気に送り出すアナリーズ。  獣人であるアナリーズの夫――ジョイが魂の伴侶とも言える番に出会ってしまった以上、この先もアナリーズと夫婦関係を続けるためには、彼がある程度の時間を番の女性と共に過ごす必要があるのだ。 『別に性的な接触は必要ないし、獣人としての本能を抑えるために、番と二人で一定時間楽しく過ごすだけ』 『だから浮気とは違うし、この先も夫婦としてやっていくためにはどうしても必要なこと』  ――そんな説明を受けてからもうずいぶんと経つ。  だから夫のジョイは一カ月に一度、仕事ついでに番の女性と会うために出かけるのだ……妻であるアナリーズをこの家に残して。  夫であるジョイを愛しているから。  必ず自分の元へと帰ってきて欲しいから。  アナリーズはそれを受け入れて、今日も番の元へと向かう夫を送り出す。  顔には飛び切りの笑顔を張り付けて。  夫の背中を見送る度に、自分の内側がズタズタに引き裂かれていく痛みには気付かぬふりをして――――――。 

処理中です...