上 下
103 / 318

大神林にて 決着と残る疑問

しおりを挟む
 リンリーとイリュキンがお互いに改めて名乗り宣言すると、リンリーは姿と気配が消えていきイリュキンは水帯ブルーベルト一本一本を太く密度の濃いものにして水圏ブルーフィールドもはっきりと霧として認識できるくらい強めていく。そしてイリュキンから見て左前方の水圏ブルーフィールドが、ブワッと子供一人分の穴が空いて直ぐに塞がった。

 どうやらリンリーがイリュキンの水圏ブルーフィールドに飛び込んだみたいだけど、向こう側が見えないくらい濃い霧の水圏ブルーフィールド内の事は僕の目には見えないから植物達の感覚を借りよう。…………よし、リンリーとイリュキンの足元にある下草の感じてる事に同調したら二人の状況が頭に浮かんできた。

「シッ」

 まず、イリュキンは自分の左前方から近づいてくるリンリーを水帯ブルーベルト三本を横薙に払って迎え撃ち、それを察知したリンリーは瞬間的に強化魔法パワーダを発動させ水帯ブルーベルトを無視して一気にイリュキンの懐に入り込んだ。まあ、リンリーからしたらイリュキンの間合いで戦う必要なんて無いから当然と言えば当然だね。

 あれ? これで接近戦になったから明らかにイリュキンが不利になってるけど、イリュキンからは焦りは感じられない。むしろリンリーに接近されるのは想定済みだったみたいだ。その証拠に残りの二本の水帯ブルーベルトが茨状に変化しリンリーが攻撃しようとしていた場所を守っていて、リンリーが別の場所を攻撃しようとしても直ぐにその場所も水の茨が覆う。

 リンリーがその対応の早さに攻めあぐねている内にイリュキンは横薙ぎに使った水帯ブルーベルト三本を操作して槍のようにリンリーを背後から襲う。当然、リンリーはその場を飛び退いて少し離れた場所に着地し構えた。

「距離があっても接近しても本当に厄介ですね。その水帯ブルーベルトは……」
「お褒めに預かり光栄だよ。ところでお互いの目的は果たしてると思うけど、まだ続けるかい?」
「目的が果たせてるのは認めますが、このまま終わるのは嫌ですね」

 目的? 何の事だろ? 僕が不思議に思ってたら、リンリーは構えを解き脱力すると静かに目を閉じた。

「今のところは完全なものではないので使いたくありませんが、これはしょうがないと考えましょう。青のイリュキンさん」
「何かな?」
「それほどケガもしないでしょうけど、うまく避けるなり防ぐなりしてください」
「なんだって?」

 リンリーが深く呼吸をし始めると、リンリーが変わった。何が変わったかをはっきりと言う事はできないけど確かに変わった。イリュキンも僕と同じようで一見棒立ち状態のリンリーに攻撃はせず、水帯ブルーベルト五本を何があっても反応できる位置に置いていた。そしてリンリーは閉じていた目を細く開けてイリュキンに告げる。

「行きます」
「…………グハッ!!」

 ……起こった事をそのまま言えば、リンリーの身体がフッと消えてイリュキンから三歩くらい離れた場所に両手をイリュキンの方に伸ばした状態で現れたらイリュキンが吹き飛んだけど、イリュキンが自分の正面に移動させてた水帯ブルーベルトも吹き飛んでた。何、今の?

「やっぱり威力も力の集中もまだまだですね。そう思いませんか?」

 リンリーは両手の具合を確かめるように曲げ伸ばした後、ポツリとつぶやきイリュキンに問いかける。いけない。突然の事に驚いたけどイリュキンは吹き飛んでるんだ。ケガの状態とかを確かめないと不味いって僕がイリュキンに駆け寄ろうとしたらイリュキンが身体を起こした。

「……リンリー、君の言う通り擦り傷と多少の打撲くらいだった。何をしたか聞いても?」
「フフフ、自分の手の内を説明なんてしませんよ」
「それもそうか。さて、ここまでという事で良いかな?」
「はい、大丈夫です。イリュキンさんも、ここまでで良いですか?」
「私も大丈夫だ。目的は十分に果たせたよ」
「そうですね。イリュキンさんとなら私はかまいません」
「私もだ。リンリーなら相手にとって不足はない」
「イリュキンさん、よろしくお願いします」
「ああ、こちらこそよろしく。リンリー」

 僕は二人が近づいてがっちり握手してるのを唖然と見てた。……あれだけピリピリしてたのに、和やかに会話しだした。なんでこんなに自然に会話してるの? それに二人の目的って何? 僕は二人が最悪の事態になるかもしれないから、できるだけ静かに急いで来たんだよね? あれ? なんか最終的に疑問だけが残った。女の人……だからなのかな? 二人の言動がよくわからない。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◎後書き
 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。

 感想や評価もお待ちしています。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

AI恋愛大戦争

星永のあ
恋愛
みなさんは、AIをご存知だろうか。 このAIの発達により、 今ある仕事の49%が10〜20年後には無くなると言われている。 人間の生活はどんどんAIに奪われていく  のかもしれない。 それは仕事だけではなく、恋愛も。 AIがモテる時代がすぐ目の前まで来ている。

~マーメイド~

はらぺこおねこ。
恋愛
 20XX年、性犯罪が多くなり泣き寝入りする女性が多くなった日本。  政府は、性犯罪抑制のため人間そっくりの生物を開発をする。  感覚は、人と同じで感情や表情もあるし知能まであった。  人間との違いは大差なかったのだ。  人々は、その生物をマーメイドと呼んだ。  最初は抵抗はあったものの、次第にそれに慣れ。  性欲を持て余した男たちは、通販で買物をする感覚でマーメイドを購入する日々。  人の遺伝子操作は、倫理上禁止されているがマーメイドは人でないため禁止されなかった。  その為、科学者はマーメイドの遺伝子操作を躊躇するなく開発を進め。  遂に、簡単に理想のマーメイドを開発することが可能になった。  注文方法は簡単。  容姿や体型、年齢から性格や声帯まで、全てカスタマイズ可能。  価格は200円からのお手軽価格。  雄雌ともに発注可能。  また、飽きたらマーメイドの日に拘束して捨てることも可能で捨てられたマーメイドの処理はどうされるかは、公開されてはいない。  ホームレスに拾われ飼われるマーメイドや、なんとか脱出して野生になるマーメイドもいる。  マーメイドの開発は日本だけでなく海外にも広まり、世界中の人への性犯罪の件数は、年間100件を下回っていた。  マーメイドを反対する女性たちもいたが、この件数を聞いた途端反対する人は少なくなった。  世界は、マーメイドによって救われていた。  そして、今……  ひとりの童貞の男が、マーメイドを注文しようとしている。  男は、事業に成功した30歳。  金は有り余るほどある。  金を稼ぐことに一生懸命になりすぎて、女性との出会いはなかった。  男は、童貞を捨てるべく。  マーメイドをマーマンで、注文する。  価格は、500円。  男は、マーメイドを購入することにより世界が変わるのだ。  マーメイドは、善か?悪か?  世界は、その問題を抱え今日も生きていく。 ※以前書いていたマーメイドを全年齢の方を対象に書き直します。

晴れ間のペトリコール

蒼井 狐
現代文学
左手を失い、憂鬱とした気持ちを抱いていた。 けれど、ふと病院のベッドから見たラーメン屋さんへ行きたいという欲求により心を救われる……。

「ずっと貴方だけを推し続けます」その言葉を信じても良いですか?

田々野キツネ
恋愛
──推し変なんてしない、ずっと君だけを推し続けていた 日々を無為にすごす、ロースペ社会人、田中貞雄。 ある日、奇跡の出会いを果たす。 バーチャルネットアイドル、天姫モノアとの出会いが、枯れた人生に彩を与えていく。 * この作品に登場する、存在/非存在は、現実/架空の人物、人格、地名、団体、その他と一切関係がありません。 * この作品に登場する、主人公、またはその他の人物の言動/思考は、作者の見解ではありません。 * この作品は、作者のにわか知識、及び妄想で書いています。  現実との齟齬の内、重大な事に関しては、指摘頂ければ、別途注釈を設ける等の対処をさせて頂きます。 アルファポリス初投稿です。 感想、お気に入り等頂けると、大変励みになります。 メンタルがガラスですので、お手柔らかにお願いいたします。 2024/06/22 カクヨム様で投稿している別名義で投稿する事に致しました。 こちらのアカウントは、今後削除予定です。 カクヨム様の作品ページ https://kakuyomu.jp/works/16818093079719861798

AIと彼女と俺の不思議な三角関係 どうしたらいいの 究極の選択 AI彼女と禁断の恋

fit2300get
恋愛
あらすじ ある日、大学生の健太郎は、叔父である福澤より、AIを搭載したアンドロイドを紹介される。福澤は、健太郎にAIアンドロイドを紹介した。 健太郎には、今付き合ってる彼女、美咲がいた。断ろうとする健太郎に、福澤は、この子に感情を教えてくれと頼まれる。 果たして、AIは恋を、できるのか?

処理中です...