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大神林の奥にて 緑の一撃と執念
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「それ」は身体から怒りがあふれそうになっていた。支配していた植物達の反抗や自分の身体を壊していく見た事のない植物、それに何より許せないのがそれらの植物と共に自分に攻撃してくる白くて小さい奴。そしてついに自分の身体は、根本を食われて地面に倒れた。屈辱だった。怒りしかない。そしてその怒りは触手を巻きつけて耐えるという態勢に追い込まれた事で、さらに大きくなった。もはや魔石にあるのは目の前にいる白い奴を食らうという執念だけだった。
僕が純粋なる緑の弾丸と多重射種草で魔石を攻撃して、周りの植物達も枝・蔓・根で攻撃しているのに、いくら触手を壊しても壊された分だけ生やしているようで、こっちの攻撃が効いてる実感がわかない。ただ触手を生やすにも魔力を使ってるはずだし、僕の魔法で吹き飛ばないように地面に突き刺して身体を固定している触手も常に攻撃してるから土中から補給する暇はあたえてないから消耗はさせてるはず。完全に我慢比べになった。頭痛がヒドいし身体が怠くなってきてるから、なんとか僕の方が先にへばる前に今の攻撃で押し切るのが理想だけど無理っぽい。……強力な一撃にかけるしかないか。
「ギ、ギィィ……」
パッと見で魔石が自分に巻きつけている触手の量は半分ぐらいになってるという事は、僕と植物達の攻撃が魔石の触手の再生速度に勝ってるという事だ。それに本気かどうかわからないけど魔石が呻き声を上げてる。……よし、今の内にできるだけ強力な奴を叩き込もう。
「みんな、今から強力な一撃を準備したいから攻撃を任せても良い?」
僕が周りの植物達に聞くと植物達の気配がザワリと強まり「我らは気にせず好きにやれ」という意思が伝わってきて、魔石を攻撃する枝・蔓・根が今まで以上の強さで槍・鞭となって魔石に何度も襲いかかる。植物達の気合の入り方に驚いたけど、僕はすぐに気を取り直して準備に入った。
理想は魔石の防御を貫く一撃。……それだったらこれだな。僕は純粋なる緑の弾丸として無数の魔弾に分けていた緑の魔力を一つにまとめ理想の形に圧縮していく。そして生まれたのは緑の魔槍。魔石を見ると、僕への怒りや憎しみの中に少しだけ焦りが混じってる気がする。うん、これならいけそうだね。
「緑盛魔法・純粋なる緑の魔槍!!!」
魔法名を宣言して手を魔石に向けると緑の魔槍が解き放たれ魔石に緑色の尾を引きながら疾って行く。それを見た魔石はすぐに反応して残った触手の内のほとんどを自分の目の前に隙間なく寄せていき壁を作ると、その壁に緑の魔槍が突き刺さった。
「ギィアアアァァアア!!!」
ビシビキキバキンっていう耳障りな音とともに緑の魔槍が硬質化した触手の壁を突き進んで行く。それを魔石は叫びながら少しでも壁を厚くして耐える。そして音がしなくなり純粋なる緑の魔槍が触手の壁に受け止められた。クソッ、ダメだったか。
「ギィイ」
「甘いよ」
「ギア!!」
壁となっていた触手が少しずつバラけて隙間から魔石の目が見えてギラリと光る。すぐさま僕は魔石が攻撃してこようした時に触手の壁に埋もれている純粋なる緑の魔槍を炸裂させた。できれば純粋なる緑の魔槍で貫きたかったけど、至近距離から爆撃できたから良しとしよう。……そういえば僕ってよく爆発させてるな……って、今考える事じゃない。
緑の光と煙が収まって魔石を探すと右半分が砕けた状態で力なく地面に転がっていた。しばらく様子を見てても魔石が動かない。…………なんとか倒せたかな。ほんの少しだけ気が緩んだのか、ズキンと強い頭痛がして僕はフラつく。そしてそんな僕へ周りの植物達の注意が逸れた時を待っていたように魔石が飛び起き僕に向かってくる。あ……、ちゃんと追い打ちをかけるべきだった。失敗したな。
周りから僕を逃がそうと、枝や蔓や根が伸びてくるけど間に合わない。僕は何とか樹根魔盾を発動させて身体を覆い、魔石の体当たりの直撃は避けた。でも衝撃で吹き飛び今度は僕が地面に転がる。なんとか僕が起き上がろうとしたらガンッて音がして地面に樹根魔盾ごと押さえつけられた。しかもガリゴリ音がするから魔石が樹根魔盾を噛み砕こうとしてる。そこで僕は盾の強度を上げる。
「ギィ!! ギィアアア!!」
よし、魔石がイラついてる。この稼げた時間で体調を少しでも回復させたい。僕は魔石の声と盾の破砕音を聞きながら深呼吸して練薬草を取り出しかじる。……ふー、さてこれからどうしようかな。今の体調じゃ純粋なる緑系は無理。でもそれ以外の攻撃用の魔法は決め手にならない。本当にどうしよう。考え込んでいたら、とうとう樹根魔盾が噛み砕かれる。そして出来た穴から魔石が僕を見ていた。
「ギィィィ」
魔石がニタリと笑って牙を剥くを見て、僕は魔石を今倒すのを諦める事にする。魔石にわからないように腰の別の小袋からある種を出して埋め、すぐに魔法を発動させた。
「緑盛魔法・超育成・硬金樹」
「ギィッ!!」
樹根魔盾に開けた穴から入り込もうとした魔石を巻き込んで硬金樹がバキバキと音を立てて急速に成長していき、硬金樹の上の方で魔石が動けなくなった。あとは僕が体調を整えて動けなくなってる魔石に一番強力な一撃を食らわせるだけなんだけど、まだ最低限の回復もできてないから鎧と盾を解除して魔石を見張りながら今は休む。そうしていると見知った気配が近づいてくる。
「スバラシイ戦イブリデシタ」
「ガァ」
「ブオブオ」
「負けてはないけど、勝ててない」
「生キ残ル事ガ重要デス」
「そうかな……」
「ハイ」
「とりあえず礼を言っておくね。ありがとう」
「ナゼ、ソンナ事ヲ言ウノデスカ? 私達ハ何モシテマセンヨ?」
「僕が戦ってるのを、手を出さずに見ててくれたお礼」
「……気ヅイテマシタカ」
いくら戦闘中でも三体の強い気配を見逃す事はないよ。
「うん」
「アナタハ戦イヌク覚悟ガアリ頑固ナトコロガアルノデ、今ハ手ヲ出サナイホウガ良イト我ラデ話し合ッタ結果デス」
「ガア」
「ブオ」
「そうしてくれて嬉しかった。ただ疲れた」
「アトハ我ラニ任サテ、休ンデイテクダサイ」
「…………そうも言ってられないみたい」
「ハ?」
僕の詰めが甘かった。少し考えれば分かる事なのに最悪だ。魔石は魔樹の中から出てきた。魔樹の核として魔石ができたのか、魔石が樹に寄生してたのかわからないけど、魔石は元々樹の身体があって操っていた。ものすごく硬いとは言え、硬金樹も樹だ。魔石が寄生できないわけがない。
「ギィィィアアアァァアア!!!!!!」
硬金樹の表面に魔石の顔が浮かび上がり今日一番の大声で叫んだ。ここまで来ると執念深さに感心する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
僕が純粋なる緑の弾丸と多重射種草で魔石を攻撃して、周りの植物達も枝・蔓・根で攻撃しているのに、いくら触手を壊しても壊された分だけ生やしているようで、こっちの攻撃が効いてる実感がわかない。ただ触手を生やすにも魔力を使ってるはずだし、僕の魔法で吹き飛ばないように地面に突き刺して身体を固定している触手も常に攻撃してるから土中から補給する暇はあたえてないから消耗はさせてるはず。完全に我慢比べになった。頭痛がヒドいし身体が怠くなってきてるから、なんとか僕の方が先にへばる前に今の攻撃で押し切るのが理想だけど無理っぽい。……強力な一撃にかけるしかないか。
「ギ、ギィィ……」
パッと見で魔石が自分に巻きつけている触手の量は半分ぐらいになってるという事は、僕と植物達の攻撃が魔石の触手の再生速度に勝ってるという事だ。それに本気かどうかわからないけど魔石が呻き声を上げてる。……よし、今の内にできるだけ強力な奴を叩き込もう。
「みんな、今から強力な一撃を準備したいから攻撃を任せても良い?」
僕が周りの植物達に聞くと植物達の気配がザワリと強まり「我らは気にせず好きにやれ」という意思が伝わってきて、魔石を攻撃する枝・蔓・根が今まで以上の強さで槍・鞭となって魔石に何度も襲いかかる。植物達の気合の入り方に驚いたけど、僕はすぐに気を取り直して準備に入った。
理想は魔石の防御を貫く一撃。……それだったらこれだな。僕は純粋なる緑の弾丸として無数の魔弾に分けていた緑の魔力を一つにまとめ理想の形に圧縮していく。そして生まれたのは緑の魔槍。魔石を見ると、僕への怒りや憎しみの中に少しだけ焦りが混じってる気がする。うん、これならいけそうだね。
「緑盛魔法・純粋なる緑の魔槍!!!」
魔法名を宣言して手を魔石に向けると緑の魔槍が解き放たれ魔石に緑色の尾を引きながら疾って行く。それを見た魔石はすぐに反応して残った触手の内のほとんどを自分の目の前に隙間なく寄せていき壁を作ると、その壁に緑の魔槍が突き刺さった。
「ギィアアアァァアア!!!」
ビシビキキバキンっていう耳障りな音とともに緑の魔槍が硬質化した触手の壁を突き進んで行く。それを魔石は叫びながら少しでも壁を厚くして耐える。そして音がしなくなり純粋なる緑の魔槍が触手の壁に受け止められた。クソッ、ダメだったか。
「ギィイ」
「甘いよ」
「ギア!!」
壁となっていた触手が少しずつバラけて隙間から魔石の目が見えてギラリと光る。すぐさま僕は魔石が攻撃してこようした時に触手の壁に埋もれている純粋なる緑の魔槍を炸裂させた。できれば純粋なる緑の魔槍で貫きたかったけど、至近距離から爆撃できたから良しとしよう。……そういえば僕ってよく爆発させてるな……って、今考える事じゃない。
緑の光と煙が収まって魔石を探すと右半分が砕けた状態で力なく地面に転がっていた。しばらく様子を見てても魔石が動かない。…………なんとか倒せたかな。ほんの少しだけ気が緩んだのか、ズキンと強い頭痛がして僕はフラつく。そしてそんな僕へ周りの植物達の注意が逸れた時を待っていたように魔石が飛び起き僕に向かってくる。あ……、ちゃんと追い打ちをかけるべきだった。失敗したな。
周りから僕を逃がそうと、枝や蔓や根が伸びてくるけど間に合わない。僕は何とか樹根魔盾を発動させて身体を覆い、魔石の体当たりの直撃は避けた。でも衝撃で吹き飛び今度は僕が地面に転がる。なんとか僕が起き上がろうとしたらガンッて音がして地面に樹根魔盾ごと押さえつけられた。しかもガリゴリ音がするから魔石が樹根魔盾を噛み砕こうとしてる。そこで僕は盾の強度を上げる。
「ギィ!! ギィアアア!!」
よし、魔石がイラついてる。この稼げた時間で体調を少しでも回復させたい。僕は魔石の声と盾の破砕音を聞きながら深呼吸して練薬草を取り出しかじる。……ふー、さてこれからどうしようかな。今の体調じゃ純粋なる緑系は無理。でもそれ以外の攻撃用の魔法は決め手にならない。本当にどうしよう。考え込んでいたら、とうとう樹根魔盾が噛み砕かれる。そして出来た穴から魔石が僕を見ていた。
「ギィィィ」
魔石がニタリと笑って牙を剥くを見て、僕は魔石を今倒すのを諦める事にする。魔石にわからないように腰の別の小袋からある種を出して埋め、すぐに魔法を発動させた。
「緑盛魔法・超育成・硬金樹」
「ギィッ!!」
樹根魔盾に開けた穴から入り込もうとした魔石を巻き込んで硬金樹がバキバキと音を立てて急速に成長していき、硬金樹の上の方で魔石が動けなくなった。あとは僕が体調を整えて動けなくなってる魔石に一番強力な一撃を食らわせるだけなんだけど、まだ最低限の回復もできてないから鎧と盾を解除して魔石を見張りながら今は休む。そうしていると見知った気配が近づいてくる。
「スバラシイ戦イブリデシタ」
「ガァ」
「ブオブオ」
「負けてはないけど、勝ててない」
「生キ残ル事ガ重要デス」
「そうかな……」
「ハイ」
「とりあえず礼を言っておくね。ありがとう」
「ナゼ、ソンナ事ヲ言ウノデスカ? 私達ハ何モシテマセンヨ?」
「僕が戦ってるのを、手を出さずに見ててくれたお礼」
「……気ヅイテマシタカ」
いくら戦闘中でも三体の強い気配を見逃す事はないよ。
「うん」
「アナタハ戦イヌク覚悟ガアリ頑固ナトコロガアルノデ、今ハ手ヲ出サナイホウガ良イト我ラデ話し合ッタ結果デス」
「ガア」
「ブオ」
「そうしてくれて嬉しかった。ただ疲れた」
「アトハ我ラニ任サテ、休ンデイテクダサイ」
「…………そうも言ってられないみたい」
「ハ?」
僕の詰めが甘かった。少し考えれば分かる事なのに最悪だ。魔石は魔樹の中から出てきた。魔樹の核として魔石ができたのか、魔石が樹に寄生してたのかわからないけど、魔石は元々樹の身体があって操っていた。ものすごく硬いとは言え、硬金樹も樹だ。魔石が寄生できないわけがない。
「ギィィィアアアァァアア!!!!!!」
硬金樹の表面に魔石の顔が浮かび上がり今日一番の大声で叫んだ。ここまで来ると執念深さに感心する。
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◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
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