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大神林にて 戦闘と頭の中の音
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僕がリンリー・鬼熊・破壊猪・ディグリのにらみ合いを見てると戦いはすぐに始まり、先手をとったのはディグリだった。
「ハッ!!」
ディグリが敵意を込めた声を放ち手を上げると、リンリー・鬼熊・破壊猪の足もとから、ズババババババッと足をからめとろうと樹の根が生えてくる。リンリーはすばやくその場から飛び退いて避けたけど、鬼熊・破壊猪は特に動かない。
「すぐに切り裂きます!!」
「ガァ。ガ?」
「ブオ」
リンリーが魔力で強化した手刀で根を切ろうとしたら、二体は見るからに頑丈そうな太い樹の根を無造作に引きちぎる。さすがの怪力だね。……前に二体を緑盛網で縛った時は手加減してくれてたのかな?
「サスガニ、コノ程度デハダメデスカ」
ディグリの方も、すぐに決着がつくとは思ってなかったみたいで動揺してない。次はどうなるのか見ていると、鬼熊の右前足がメキメキと音がして太くなり、鬼熊が立ち上がってブンッと力と魔力を溜めた右前足を振るうと、魔力の刃がディグリに向かって飛んでいく。ディグリは根を壁のように生やしたけど、魔力の刃はあっさりと切り裂いて弱まる事なく進む。それを見て根だと無理と判断したディグリは、眼前に迫った魔力の刃に自分の腕を叩きつけて強引に相殺した。
「……多少ハ、シビレマスネ」
ペキッと腕を鳴らして状態を確かめたディグリがつぶやく。鬼熊はそんなディグリを見ても予想してたのか無反応だった。うん、どっちもすごいな。鬼熊は普通、技や魔法として放つような魔力の刃をただの腕の一振りで放つのはさすがは高位の魔獣って感じで、ディグリの方も物理で押すような前衛型じゃないのに、魔力の刃を強引に打撃で相殺できるんだからさすがだ。
「ブオ」
「チッ」
鬼熊とディグリのにらみ合いになったところで、ディグリに影がかかる。何の影かと思ったら、破壊猪が上から降ってきてズドーン!!! と地面を割りながら着地した。あの巨岩と間違えそうな巨体で、樹よりも高く跳ぶとかとんでもないな。ディグリが鬼熊と破壊猪をにらみつける。どうやら改めて倒すべき敵として判断したようだ。……あれ?
「イマイマシイデスネ」
「それはこっちのセリフです」
「ナッ!!」
いつの間にかリンリーが、二体をにらんでいるディグリの正面に右拳を腰に引いた構えで立っていた。その事に驚いて身体を硬直させたディグリに、リンリーが拳を叩き込みディグリの身体が少しよろめく。
「グッ、……気配ヲ消セルヨウデスネ。トコロデ、次ハナイカモシレナイノニ、ナゼ、手加減ヲ? コノ程度デ倒セルト、私ヲ下ニ見テイルノデスカ?」
「私が気配を消せるという事を見せるための、ただのあいさつみたいなものです。次は無いかもしれない? そんな事はあり得ません。次も確実に叩き込みます」
宣言するとリンリーは、スーと風景に紛れて消えていく。ほとんどの事を身体能力と魔力でゴリ押しできる竜人族だと、基本的に気配を消す必要がないからやろうと思えばみんなできるだろうけどしない。ちなみに僕の場合は元々存在感というか気配が薄いから、みんなとは別の意味で消す必要がない。でも、今のリンリーを見てたら、いろいろ便利そうだからちゃんとできるように練習しよう。
改めて考えてみると鬼熊・破壊猪が力技で攻め立てて相手の隙を強引に作り、リンリーが一撃を叩き込むっていうリンリー・鬼熊・破壊猪の組み合わせは強いな。広場のどこからかリンリーの声が聞こえてくる中で、二体がディグリに向かっていく。
「あなたはヤート君みたい強くない。だから怖くない」
「ナメルナ!!」
ディグリが手を振り下ろすと、周りの樹々がザワリと震えて木の葉が大量に舞い落ちる。でも、そのまま地面に落ちる事なく空中に浮かび、ディグリの手の横に振る動きに合わせて動き木の葉の濁流となって広場を埋め尽くした。しかも、僕が使う緑葉飛斬のように木の葉一枚一枚が鋭い刃になっている。
消えてるリンリーへの対策に空間を制圧するような攻撃はあってるはずだし、ディグリ自身の身体も隠せるから二体からの攻撃への対策にもなって一石二鳥だね。あとなんでリンリーは僕が強いと言ったんだろ? ……そういえば前にラカムタさんにも僕は強いって言われたな。今でもどういう意味なのかよくわかってない。そんな事を考えてると、いつの間にかリンリーが僕のすぐ近くにいた。本当にリンリーは気配を消すのうまいな。
「ヤート君、大丈夫ですか?」
「ディグリが僕の近くは避けてくれてるみたいだから、特に問題ないよ」
「……そうですか。できるだけ早く決着をつけるので、もう少しだけ見ててください」
「わかった。でも無理しなくて良い」
「私も特に問題ないので大丈夫です。それでは行ってきます」
リンリーは僕の無事を確認すると、またスーと消えていく。リンリーは大丈夫みたいだけど、木の葉に包まれてて見えない二体の様子が気になり周りの樹々に同調して探ると、二体は顔に当たる木の葉をうっとうしそうにしていた。……けっこう鋭い木の葉の刃がずっと当たってるのに、なんで平気なんだろ?
「ガァ?」
「ブ。ブオ?」
「……ガア」
木の葉を操っているディグリを見つけれないみたいだ。破壊猪が匂いで見つけようとしても、高速で動き回っている木の葉が風を起こしディグリの匂いを消している。というかディグリは身体が木だから、ディグリの匂いは木の葉に紛れる気がする。あとディグリの発する音も高速で動き回っている木の葉のザアアアという音でかき消される。二体はお互いを見て小さくうなずくと大きく息を吸い始める。僕はまずいって思ってリンリーに向かって地面に伏せながら叫ぶ。
「リンリー!! 離れて!!」
そして僕が叫んだすぐ後に、それは来た。
「ガアアアアア!!!!!!」
「ブオオオオオ!!!!!!」
鬼熊と破壊猪の大声という名の衝撃波が木の葉を吹き飛ばす。ちなみに僕も地面に伏せてたけど後ろに飛ばされた。耳というか身体中が痛くてクラクラしつつも、なんとか気つけの薬草を取り出して食べて広場を見る。ディグリは衝撃波をくらって痺れて動けないのか片膝をついて二体をにらんでいた。
二体はそんなディグリを見て決着をつけようと全身に力を溜め始める。僕はリンリーを探したけど広場のどこにも見当たらなかった。僕があれだけの衝撃波を避けたんだって驚いてると僕の手に何かが当たる。見てみるとリンリーがピクリともせず倒れていた。手を僕の方に伸ばしながら倒れてるから、たぶん僕を守ろうとしたのかな?
…………頭の中でブチって音が聞こえた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
「ハッ!!」
ディグリが敵意を込めた声を放ち手を上げると、リンリー・鬼熊・破壊猪の足もとから、ズババババババッと足をからめとろうと樹の根が生えてくる。リンリーはすばやくその場から飛び退いて避けたけど、鬼熊・破壊猪は特に動かない。
「すぐに切り裂きます!!」
「ガァ。ガ?」
「ブオ」
リンリーが魔力で強化した手刀で根を切ろうとしたら、二体は見るからに頑丈そうな太い樹の根を無造作に引きちぎる。さすがの怪力だね。……前に二体を緑盛網で縛った時は手加減してくれてたのかな?
「サスガニ、コノ程度デハダメデスカ」
ディグリの方も、すぐに決着がつくとは思ってなかったみたいで動揺してない。次はどうなるのか見ていると、鬼熊の右前足がメキメキと音がして太くなり、鬼熊が立ち上がってブンッと力と魔力を溜めた右前足を振るうと、魔力の刃がディグリに向かって飛んでいく。ディグリは根を壁のように生やしたけど、魔力の刃はあっさりと切り裂いて弱まる事なく進む。それを見て根だと無理と判断したディグリは、眼前に迫った魔力の刃に自分の腕を叩きつけて強引に相殺した。
「……多少ハ、シビレマスネ」
ペキッと腕を鳴らして状態を確かめたディグリがつぶやく。鬼熊はそんなディグリを見ても予想してたのか無反応だった。うん、どっちもすごいな。鬼熊は普通、技や魔法として放つような魔力の刃をただの腕の一振りで放つのはさすがは高位の魔獣って感じで、ディグリの方も物理で押すような前衛型じゃないのに、魔力の刃を強引に打撃で相殺できるんだからさすがだ。
「ブオ」
「チッ」
鬼熊とディグリのにらみ合いになったところで、ディグリに影がかかる。何の影かと思ったら、破壊猪が上から降ってきてズドーン!!! と地面を割りながら着地した。あの巨岩と間違えそうな巨体で、樹よりも高く跳ぶとかとんでもないな。ディグリが鬼熊と破壊猪をにらみつける。どうやら改めて倒すべき敵として判断したようだ。……あれ?
「イマイマシイデスネ」
「それはこっちのセリフです」
「ナッ!!」
いつの間にかリンリーが、二体をにらんでいるディグリの正面に右拳を腰に引いた構えで立っていた。その事に驚いて身体を硬直させたディグリに、リンリーが拳を叩き込みディグリの身体が少しよろめく。
「グッ、……気配ヲ消セルヨウデスネ。トコロデ、次ハナイカモシレナイノニ、ナゼ、手加減ヲ? コノ程度デ倒セルト、私ヲ下ニ見テイルノデスカ?」
「私が気配を消せるという事を見せるための、ただのあいさつみたいなものです。次は無いかもしれない? そんな事はあり得ません。次も確実に叩き込みます」
宣言するとリンリーは、スーと風景に紛れて消えていく。ほとんどの事を身体能力と魔力でゴリ押しできる竜人族だと、基本的に気配を消す必要がないからやろうと思えばみんなできるだろうけどしない。ちなみに僕の場合は元々存在感というか気配が薄いから、みんなとは別の意味で消す必要がない。でも、今のリンリーを見てたら、いろいろ便利そうだからちゃんとできるように練習しよう。
改めて考えてみると鬼熊・破壊猪が力技で攻め立てて相手の隙を強引に作り、リンリーが一撃を叩き込むっていうリンリー・鬼熊・破壊猪の組み合わせは強いな。広場のどこからかリンリーの声が聞こえてくる中で、二体がディグリに向かっていく。
「あなたはヤート君みたい強くない。だから怖くない」
「ナメルナ!!」
ディグリが手を振り下ろすと、周りの樹々がザワリと震えて木の葉が大量に舞い落ちる。でも、そのまま地面に落ちる事なく空中に浮かび、ディグリの手の横に振る動きに合わせて動き木の葉の濁流となって広場を埋め尽くした。しかも、僕が使う緑葉飛斬のように木の葉一枚一枚が鋭い刃になっている。
消えてるリンリーへの対策に空間を制圧するような攻撃はあってるはずだし、ディグリ自身の身体も隠せるから二体からの攻撃への対策にもなって一石二鳥だね。あとなんでリンリーは僕が強いと言ったんだろ? ……そういえば前にラカムタさんにも僕は強いって言われたな。今でもどういう意味なのかよくわかってない。そんな事を考えてると、いつの間にかリンリーが僕のすぐ近くにいた。本当にリンリーは気配を消すのうまいな。
「ヤート君、大丈夫ですか?」
「ディグリが僕の近くは避けてくれてるみたいだから、特に問題ないよ」
「……そうですか。できるだけ早く決着をつけるので、もう少しだけ見ててください」
「わかった。でも無理しなくて良い」
「私も特に問題ないので大丈夫です。それでは行ってきます」
リンリーは僕の無事を確認すると、またスーと消えていく。リンリーは大丈夫みたいだけど、木の葉に包まれてて見えない二体の様子が気になり周りの樹々に同調して探ると、二体は顔に当たる木の葉をうっとうしそうにしていた。……けっこう鋭い木の葉の刃がずっと当たってるのに、なんで平気なんだろ?
「ガァ?」
「ブ。ブオ?」
「……ガア」
木の葉を操っているディグリを見つけれないみたいだ。破壊猪が匂いで見つけようとしても、高速で動き回っている木の葉が風を起こしディグリの匂いを消している。というかディグリは身体が木だから、ディグリの匂いは木の葉に紛れる気がする。あとディグリの発する音も高速で動き回っている木の葉のザアアアという音でかき消される。二体はお互いを見て小さくうなずくと大きく息を吸い始める。僕はまずいって思ってリンリーに向かって地面に伏せながら叫ぶ。
「リンリー!! 離れて!!」
そして僕が叫んだすぐ後に、それは来た。
「ガアアアアア!!!!!!」
「ブオオオオオ!!!!!!」
鬼熊と破壊猪の大声という名の衝撃波が木の葉を吹き飛ばす。ちなみに僕も地面に伏せてたけど後ろに飛ばされた。耳というか身体中が痛くてクラクラしつつも、なんとか気つけの薬草を取り出して食べて広場を見る。ディグリは衝撃波をくらって痺れて動けないのか片膝をついて二体をにらんでいた。
二体はそんなディグリを見て決着をつけようと全身に力を溜め始める。僕はリンリーを探したけど広場のどこにも見当たらなかった。僕があれだけの衝撃波を避けたんだって驚いてると僕の手に何かが当たる。見てみるとリンリーがピクリともせず倒れていた。手を僕の方に伸ばしながら倒れてるから、たぶん僕を守ろうとしたのかな?
…………頭の中でブチって音が聞こえた。
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