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決戦にて みんなの反応とまだまだ続く予感
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百個の深緑色の実を触媒にした純粋なる緑を纏う 大浄化の光がおさまった。…………これは想像以上だな。前の泥人形に対して純粋なる緑の祓いを使った時も魔法の効果がおさまった後に森ができた。今回も森ができたのは同じ。でも、まさか、大神林の奥に近い巨樹が乱立する状態にまで植物達が成長すると思わなかったね。
「ちょっとやりすぎたな」
「ちょっとどころじゃない‼︎ ヤート‼︎ 何がどうなったら、何もないかった荒地が大神林みたいな森になるんだ⁉︎」
「黄土の村に行く途中と似たような感じだよ。覚えてない?」
「覚えてはいる。覚えてはいるが……、さすがにこの規模はおかしいだろう」
「魔石の数が多かったから、それに合わせたつもりだったんだけど過剰だったみたい。たぶん、半分でも余裕だったね」
「これだけの現象を起こしたんだ。身体は大丈夫なのか?」
「うん、あの三人にも言ったけど、魔法の発動に必要な魔力は世界樹の杖に蓄えてたもので、制御もシールと協力してやってたから僕の負担はあんまりない」
「……それなら良い。それと良くやった」
「うん、ありがとう」
ラカムタさん達が頭を撫でてきて、鬼熊と破壊猪は鼻辺りで触れてくる。少しムズムズけど、褒められるのは悪い気はしないな。…………あ、そうだ。僕はナイルさんに聞いておきたい事を思いついてナイルさん達の方を見ると、ナイルさん達はまだ呆然と立ちすくんでいた。聞いて良い状態なのか一瞬まよったものの、とりあえず近づいて話しかけてみる。
「ナイルさん」
「…………」
「ナイルさん?」
「…………」
「ナイルさん‼︎」
「ハッ‼︎ な、なにかしら? ヤート君」
「聞きたい事があるんだけど良い?」
「え、ええ、大丈夫よ。私に答えられる事なら」
「ここって、どこかの国の領土になってる?」
「一応、アムゼム帝国の領土内だけど重要度はかなり低かったはずよ。イン‼︎ ここはどういう扱いになってるの⁉︎」
ナイルさんが呼びかけると気を取り直したインダスさんが来た。他の人達は、まだまだ唖然としてたり自分の頬をつねったりしている。…………夢だと思ってるのかな?
「ナイルの認識であっている。ここは帝都からも遠すぎて管理や巡回が簡単にはできない場所なんだ。それゆえに教団の占有を許してしまったとも言えるが、その点は許してもらいたい……」
「あ、責めるつもりは全然ないから気にしないで。ここに植物達がいて良いのか聞きたかっただけだから」
「……ヤート君、どうするつもりなの?」
「とりあえず、今はこのままで教団関係の問題が片付いてから移動してもらうつもり」
「移動……? 植物が……?」
「うん、そうだよ。あー、説明するより見てもらった方がわかりやすいかな。みんな、町のあった場所まで道を開けて」
「ヤート殿、何を……?」
僕の呼びかけに答えて森が揺れ始める。ナイルさん達は驚いて武器を構えたりした。しまったな。オイリス以外の黒曜馬 や六足馬もビクついてるから、やっぱり少しは説明するべきだったね。まあ、やり始めた事はしょうがないから、このまま終わるまで見ていよう。
そんなわけで見守っていると、植物達は音を立てながら左右に分かれていった。さすがに見上げる高さの物体が、それも一体二体じゃなく視界にある全ての存在が動くと迫力がある。一応、植物達が動いてる最中に界気化した魔力を放ち確認しても、僕の感知範囲では異常を見つけられなかった。急激な変化にはそれなりの危険が伴うものだけど、植物達は柔軟に急激な変化へ対応してくれるから頼もしい。…………よし、植物達の移動が終わって、僕達の正面からまっすぐ伸びた道ができた。
「インダスさん、こんな感じでこの場所に森があるのがまずいなら大神林まで移動してもらうから」
「え……? ええ……?」
「インダスさん?」
「馬鹿な……。こんな事が……?」
あれ? インダスさんは僕の声が耳に入ってないみたいだ。うーん……、ナイルさん達も同じ感じだな。あの砦みたいな町の跡とあの叫んでた三人を探してたいんだけど、どうしよう。とりあえずラカムタさんに相談するか。僕はラカムタさんのもとへ戻った。
「ラカムタさん、あの魔石が町に化けてた場所に行きたいんだけど良い?」
「あー……、まあ、確認は必要だから良いだろう。ナイル殿達には俺から声をかけるから少し待ってろ」
「うん、わかった」
ラカムタさんがナイルさん達のところへ行くのを見ていたら、破壊猪が僕の股の間に鼻先を入れて僕を空中に跳ね上げた。そして落ちてきた僕をディグリが受け取り破壊猪の背にのせる。
「……破壊猪、ディグリ、何?」
「ブオ」
「アナタガ先走リソウナ気ガシタノデ念の為デス」
「そうなんだ……」
なんか納得できずにいると肩をリンリーが触ってきた。
「ヤート君、あれだけの大規模な魔法を発動させたんです。少し休んでください」
「リンリー、僕は休むほど疲れてないから大丈夫。それよりも世界樹の杖の状態確認だね」
「わかりました。静かにしてます。何かあったら言ってくださいね」
「ありがとう」
僕は目を閉じて世界樹の杖を同調と界気化で調べていく。…………よしよし、連続で高出力な魔法を発動した割には世界樹の杖には何の影響も出てない。やっぱり大神林の奥の世界樹のもとで強化されただけあった。そうやって僕が世界樹の杖の状態に満足していると僕に対して殺意がある視線を感じる。とっさに界気化した魔力を周りへ流すと視線の主がいるところがわかる。視線の主は、魔石が化けていた町の向こうにある教団の本拠地からだった。
油断するつもりは元々ないけど、まだまだ戦いは続くみたいだから、もう一度気を引き締めよう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
「ちょっとやりすぎたな」
「ちょっとどころじゃない‼︎ ヤート‼︎ 何がどうなったら、何もないかった荒地が大神林みたいな森になるんだ⁉︎」
「黄土の村に行く途中と似たような感じだよ。覚えてない?」
「覚えてはいる。覚えてはいるが……、さすがにこの規模はおかしいだろう」
「魔石の数が多かったから、それに合わせたつもりだったんだけど過剰だったみたい。たぶん、半分でも余裕だったね」
「これだけの現象を起こしたんだ。身体は大丈夫なのか?」
「うん、あの三人にも言ったけど、魔法の発動に必要な魔力は世界樹の杖に蓄えてたもので、制御もシールと協力してやってたから僕の負担はあんまりない」
「……それなら良い。それと良くやった」
「うん、ありがとう」
ラカムタさん達が頭を撫でてきて、鬼熊と破壊猪は鼻辺りで触れてくる。少しムズムズけど、褒められるのは悪い気はしないな。…………あ、そうだ。僕はナイルさんに聞いておきたい事を思いついてナイルさん達の方を見ると、ナイルさん達はまだ呆然と立ちすくんでいた。聞いて良い状態なのか一瞬まよったものの、とりあえず近づいて話しかけてみる。
「ナイルさん」
「…………」
「ナイルさん?」
「…………」
「ナイルさん‼︎」
「ハッ‼︎ な、なにかしら? ヤート君」
「聞きたい事があるんだけど良い?」
「え、ええ、大丈夫よ。私に答えられる事なら」
「ここって、どこかの国の領土になってる?」
「一応、アムゼム帝国の領土内だけど重要度はかなり低かったはずよ。イン‼︎ ここはどういう扱いになってるの⁉︎」
ナイルさんが呼びかけると気を取り直したインダスさんが来た。他の人達は、まだまだ唖然としてたり自分の頬をつねったりしている。…………夢だと思ってるのかな?
「ナイルの認識であっている。ここは帝都からも遠すぎて管理や巡回が簡単にはできない場所なんだ。それゆえに教団の占有を許してしまったとも言えるが、その点は許してもらいたい……」
「あ、責めるつもりは全然ないから気にしないで。ここに植物達がいて良いのか聞きたかっただけだから」
「……ヤート君、どうするつもりなの?」
「とりあえず、今はこのままで教団関係の問題が片付いてから移動してもらうつもり」
「移動……? 植物が……?」
「うん、そうだよ。あー、説明するより見てもらった方がわかりやすいかな。みんな、町のあった場所まで道を開けて」
「ヤート殿、何を……?」
僕の呼びかけに答えて森が揺れ始める。ナイルさん達は驚いて武器を構えたりした。しまったな。オイリス以外の黒曜馬 や六足馬もビクついてるから、やっぱり少しは説明するべきだったね。まあ、やり始めた事はしょうがないから、このまま終わるまで見ていよう。
そんなわけで見守っていると、植物達は音を立てながら左右に分かれていった。さすがに見上げる高さの物体が、それも一体二体じゃなく視界にある全ての存在が動くと迫力がある。一応、植物達が動いてる最中に界気化した魔力を放ち確認しても、僕の感知範囲では異常を見つけられなかった。急激な変化にはそれなりの危険が伴うものだけど、植物達は柔軟に急激な変化へ対応してくれるから頼もしい。…………よし、植物達の移動が終わって、僕達の正面からまっすぐ伸びた道ができた。
「インダスさん、こんな感じでこの場所に森があるのがまずいなら大神林まで移動してもらうから」
「え……? ええ……?」
「インダスさん?」
「馬鹿な……。こんな事が……?」
あれ? インダスさんは僕の声が耳に入ってないみたいだ。うーん……、ナイルさん達も同じ感じだな。あの砦みたいな町の跡とあの叫んでた三人を探してたいんだけど、どうしよう。とりあえずラカムタさんに相談するか。僕はラカムタさんのもとへ戻った。
「ラカムタさん、あの魔石が町に化けてた場所に行きたいんだけど良い?」
「あー……、まあ、確認は必要だから良いだろう。ナイル殿達には俺から声をかけるから少し待ってろ」
「うん、わかった」
ラカムタさんがナイルさん達のところへ行くのを見ていたら、破壊猪が僕の股の間に鼻先を入れて僕を空中に跳ね上げた。そして落ちてきた僕をディグリが受け取り破壊猪の背にのせる。
「……破壊猪、ディグリ、何?」
「ブオ」
「アナタガ先走リソウナ気ガシタノデ念の為デス」
「そうなんだ……」
なんか納得できずにいると肩をリンリーが触ってきた。
「ヤート君、あれだけの大規模な魔法を発動させたんです。少し休んでください」
「リンリー、僕は休むほど疲れてないから大丈夫。それよりも世界樹の杖の状態確認だね」
「わかりました。静かにしてます。何かあったら言ってくださいね」
「ありがとう」
僕は目を閉じて世界樹の杖を同調と界気化で調べていく。…………よしよし、連続で高出力な魔法を発動した割には世界樹の杖には何の影響も出てない。やっぱり大神林の奥の世界樹のもとで強化されただけあった。そうやって僕が世界樹の杖の状態に満足していると僕に対して殺意がある視線を感じる。とっさに界気化した魔力を周りへ流すと視線の主がいるところがわかる。視線の主は、魔石が化けていた町の向こうにある教団の本拠地からだった。
油断するつもりは元々ないけど、まだまだ戦いは続くみたいだから、もう一度気を引き締めよう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
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