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決戦にて 全力の本気と開幕戦の最後
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指輪に刻まれた記憶を読み終わった後、魔石だった欠片をギュッと握り込む。すると、欠片は粉々に崩れてなくなり僕の手の中には指輪だけが残る。僕は指輪を握った右手を額に当てて、この指輪の持ち主が次に世界に生まれたら何気ない日常を送れるように祈った。そして指輪を腰の小袋の一つに入れて保管する。
「くだらない感情だな」
砦のような町の外壁上にいる三人の内の一人が、僕の行動に対して吐き捨てるような声が聞こえた。…………本当に不愉快だ。ちょうど魔石を全て倒し終わったから、外壁上の三人への攻撃をさらに強めていく。
「緑盛魔法・純粋なる緑を纏う魔槍」
魔法の詠唱が終わると僕達の頭上に数十本の深緑色の槍が生まれ、僕が世界樹の杖を振り下ろすと外壁上の三人へ高速で飛ぶ。
ボシュン……。
純粋なる緑を纏う魔槍が外壁上の三人を貫こうとした時、突然かき消えた。
「今のはなんだ? あいつらが魔法を発動したようには見えなかったぞ」
「ラカムタさん、あれは僕達と同じだよ」
「……ヤート、どういう事だ?」
「僕達も合流地点から純粋なる緑を纏う遮断膜の中にいるでしょ。あいつらも始めから、こっちの攻撃を無効化する場所にいる」
「あの町か」
「そう」
「そんなに重要な場所なんだな」
「あの町は魔石だからね」
「何?」
「指輪の持ち主の記憶は町の中の地面に沈んだところで終わってる。それにさっき魔石は外壁の内側から飛び出てきた。つまり町に見えるあそこは、難民とかを内部に連れ込んでつかまえて魔石に捕食させるところだよ」
僕が説明すると、みんなは不快な気持ちになっているのが一目でわかる。でも、僕はもっと気持ち悪い事実を言う。
「ここから見える門や外壁も、中の建物と地面も全部魔石だよ。なかなかの擬態能力だね」
「…………クソガ」
ミックが正に激情っていう感じのすごい表情になってる。でも、自分の特性と同じ事をされたら誰だってイラつくものだからしょうがない。
「そこまで、この場所の事を理解しているなら話が早い」
「そう。ここは神の卵の生育地」
「ここで育った神の卵が世界を支配する」
「「「確かに貴様は神の卵を壊した。だが、神の卵は不滅。まだまだ、この地に眠っているのだ‼︎」」」
外壁上の三人が叫び外壁から飛び降りると外壁を含めた町全てが魔石に変わり、次々に空中へと飛び出してくる。ふーん、一つの町になってただけあって数が多いな。総数は百や二百は越えてそうで数えるのが面倒くさいな。
「下賎な存在のものがそれだけの魔法を発動させたのは褒めてやろう‼︎ だが、もはや何もできまい‼︎」
「貴様らも神の卵の贄となれ‼︎」
「それこそが貴様らの役目だ‼︎」
空中に浮かんでる全ての魔石がニタアと笑って僕達を見てくる。相手が攻めてくるなら、こっちも準備しよう。
「みんな、止まってから防御陣形になって」
「ヤート?」
「シールと全力でやるから、たぶん問題ないと思うけど余波に巻き込まれても耐えれるようにして」
「ちょっと‼︎ ヤート君‼︎」
「ちゃんと言ったからね。シール、いける?」
『はい、いつでも大丈夫です。主人の思うままにどうぞ』
「うん、ありがとう。それじゃあ、みんなやるから」
「あなた達、陣形の変更よ‼︎ 急いで‼︎」
僕が破壊猪の背から降りて世界樹の杖を構えると、みんなが慌てて陣形を変えていく。急かして悪いなって思いつつも、シールが現れて世界樹の杖の先端に座り祈り始めたのでいっしょに魔法の詠唱をする。
「緑よ」
『緑よ』
「緑よ」
『緑よ』
「『実をここに』」
「は……?」
僕の誰かのつぶやきが聞こえた。まあ、深緑色の実が突然百個出現したら驚くのは当たり前か。
「ヤート、待て……。いくら何でも、これは……」
「循環をここに」
「全員、最優先で自分の身を守れ‼︎」
『加速をここに』
「「「あの忌々しいものを殺せ‼︎」」」
「励起をここに」
「「「何をしている⁉︎」」」
『臨界をここに』
あの三人が叫ぶけど魔石は動かない……というより動けないみたいだね。あ、何体かの魔石がちりになった。…………魔石の数に対抗したんだけど百個はやりすぎだったかもしれない。でも攻めると決めたなら全力の本気でやるべきだから気にしないでおこう。
「「「下賎なものが、なぜそれほどの力を……?」」」
「それは僕が植物達の力を貸してもらってるからだよ。僕だけじゃ、こんな桁外れの事はできないよ」
『主人に力を貸すのは当然の事です』
「いまだに、何で植物達が僕に力を貸してくれるのかわかってないんだよね」
『それは、主人が主人だからです』
「……答えになってないよ。まあ、良いや。とりあえず、やる事をやるだけだ」
「「「動け‼︎ 動いてあのものを殺せ‼︎」」」
「魔石と、どういう関係かは知らないけど周りに動けというなら、まず自分達が動け。口先だけは、ただの役立たずだ」
「「「貴様‼︎ よくも我らにそのような口を‼︎」」」
「僕はお前らに何の興味もない。シール」
『はい。いつでもいけます』
魔法を発動させる前に一度、僕達の頭上の実を確認する。……うん、何も問題はないね。
「「「やめろおおおおおーーーーー‼︎」」」
「『緑盛魔法・純粋なる緑を纏う大浄化』」
百個の深緑色の実が光り地面に落ちた。すると見渡す限り全ての地面が深緑色に輝いた。深緑色の光に触れたあの三人が口から黒いものを吐いて倒れる様子を見ていると、すぐに次の変化があり空と地面が数回拍動した後、地面から空へ深緑色の光が上がり全ての空間を深緑色の光で満たす。
…………うーん、リザッバの時より光は強いな。あの時は五個で今は百個だから強くなって当たり前なんだけど、やっぱりやり過ぎたかも。光がおさまった後に、どうなるかちょっと怖いな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
「くだらない感情だな」
砦のような町の外壁上にいる三人の内の一人が、僕の行動に対して吐き捨てるような声が聞こえた。…………本当に不愉快だ。ちょうど魔石を全て倒し終わったから、外壁上の三人への攻撃をさらに強めていく。
「緑盛魔法・純粋なる緑を纏う魔槍」
魔法の詠唱が終わると僕達の頭上に数十本の深緑色の槍が生まれ、僕が世界樹の杖を振り下ろすと外壁上の三人へ高速で飛ぶ。
ボシュン……。
純粋なる緑を纏う魔槍が外壁上の三人を貫こうとした時、突然かき消えた。
「今のはなんだ? あいつらが魔法を発動したようには見えなかったぞ」
「ラカムタさん、あれは僕達と同じだよ」
「……ヤート、どういう事だ?」
「僕達も合流地点から純粋なる緑を纏う遮断膜の中にいるでしょ。あいつらも始めから、こっちの攻撃を無効化する場所にいる」
「あの町か」
「そう」
「そんなに重要な場所なんだな」
「あの町は魔石だからね」
「何?」
「指輪の持ち主の記憶は町の中の地面に沈んだところで終わってる。それにさっき魔石は外壁の内側から飛び出てきた。つまり町に見えるあそこは、難民とかを内部に連れ込んでつかまえて魔石に捕食させるところだよ」
僕が説明すると、みんなは不快な気持ちになっているのが一目でわかる。でも、僕はもっと気持ち悪い事実を言う。
「ここから見える門や外壁も、中の建物と地面も全部魔石だよ。なかなかの擬態能力だね」
「…………クソガ」
ミックが正に激情っていう感じのすごい表情になってる。でも、自分の特性と同じ事をされたら誰だってイラつくものだからしょうがない。
「そこまで、この場所の事を理解しているなら話が早い」
「そう。ここは神の卵の生育地」
「ここで育った神の卵が世界を支配する」
「「「確かに貴様は神の卵を壊した。だが、神の卵は不滅。まだまだ、この地に眠っているのだ‼︎」」」
外壁上の三人が叫び外壁から飛び降りると外壁を含めた町全てが魔石に変わり、次々に空中へと飛び出してくる。ふーん、一つの町になってただけあって数が多いな。総数は百や二百は越えてそうで数えるのが面倒くさいな。
「下賎な存在のものがそれだけの魔法を発動させたのは褒めてやろう‼︎ だが、もはや何もできまい‼︎」
「貴様らも神の卵の贄となれ‼︎」
「それこそが貴様らの役目だ‼︎」
空中に浮かんでる全ての魔石がニタアと笑って僕達を見てくる。相手が攻めてくるなら、こっちも準備しよう。
「みんな、止まってから防御陣形になって」
「ヤート?」
「シールと全力でやるから、たぶん問題ないと思うけど余波に巻き込まれても耐えれるようにして」
「ちょっと‼︎ ヤート君‼︎」
「ちゃんと言ったからね。シール、いける?」
『はい、いつでも大丈夫です。主人の思うままにどうぞ』
「うん、ありがとう。それじゃあ、みんなやるから」
「あなた達、陣形の変更よ‼︎ 急いで‼︎」
僕が破壊猪の背から降りて世界樹の杖を構えると、みんなが慌てて陣形を変えていく。急かして悪いなって思いつつも、シールが現れて世界樹の杖の先端に座り祈り始めたのでいっしょに魔法の詠唱をする。
「緑よ」
『緑よ』
「緑よ」
『緑よ』
「『実をここに』」
「は……?」
僕の誰かのつぶやきが聞こえた。まあ、深緑色の実が突然百個出現したら驚くのは当たり前か。
「ヤート、待て……。いくら何でも、これは……」
「循環をここに」
「全員、最優先で自分の身を守れ‼︎」
『加速をここに』
「「「あの忌々しいものを殺せ‼︎」」」
「励起をここに」
「「「何をしている⁉︎」」」
『臨界をここに』
あの三人が叫ぶけど魔石は動かない……というより動けないみたいだね。あ、何体かの魔石がちりになった。…………魔石の数に対抗したんだけど百個はやりすぎだったかもしれない。でも攻めると決めたなら全力の本気でやるべきだから気にしないでおこう。
「「「下賎なものが、なぜそれほどの力を……?」」」
「それは僕が植物達の力を貸してもらってるからだよ。僕だけじゃ、こんな桁外れの事はできないよ」
『主人に力を貸すのは当然の事です』
「いまだに、何で植物達が僕に力を貸してくれるのかわかってないんだよね」
『それは、主人が主人だからです』
「……答えになってないよ。まあ、良いや。とりあえず、やる事をやるだけだ」
「「「動け‼︎ 動いてあのものを殺せ‼︎」」」
「魔石と、どういう関係かは知らないけど周りに動けというなら、まず自分達が動け。口先だけは、ただの役立たずだ」
「「「貴様‼︎ よくも我らにそのような口を‼︎」」」
「僕はお前らに何の興味もない。シール」
『はい。いつでもいけます』
魔法を発動させる前に一度、僕達の頭上の実を確認する。……うん、何も問題はないね。
「「「やめろおおおおおーーーーー‼︎」」」
「『緑盛魔法・純粋なる緑を纏う大浄化』」
百個の深緑色の実が光り地面に落ちた。すると見渡す限り全ての地面が深緑色に輝いた。深緑色の光に触れたあの三人が口から黒いものを吐いて倒れる様子を見ていると、すぐに次の変化があり空と地面が数回拍動した後、地面から空へ深緑色の光が上がり全ての空間を深緑色の光で満たす。
…………うーん、リザッバの時より光は強いな。あの時は五個で今は百個だから強くなって当たり前なんだけど、やっぱりやり過ぎたかも。光がおさまった後に、どうなるかちょっと怖いな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
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