上 下
241 / 318

異常との対面にて 杖の力と戦況の変化

しおりを挟む
「みんな、身体の調子はどう?」
「…………」

 誰も答えてくれない。なんか、また環境が変わったため驚いてるみたいだね。界気化かいきかした魔力でみんなの体調は確認してるけど、みんなの口から実感を聞いておきたい。

「みんな、調子は変じゃない?」
「お、おう‼︎ 息苦しさとだるさは無くなったぞ‼︎」

 ラカムタさんの言葉に、みんながうなずく。兄さん達の軽く跳ねる様子からも正しい事がわかった。

「それなら良かった。これでみんなも戦えるね」
「…………良いのか?」
「うん、この純粋なる緑の加護グリーンインパクトプロテクションから出ないでくれたら好きに動いて良いよ」
「そうか……」

 おお、みんなの戦意が一気高まった。僕はみんなの様子に納得してリザッバに視線を戻したら、ちょうどリザッバが三つの顔の口をガバッと開いていた。

「「「ガボッ‼︎」」」

 変態前の数十倍のヘドロと汚泥が吐き出される。さっきまでなら防ぐのに苦労したけど、今なら問題ない。僕は世界樹の杖ユグドラシルロッドから放たれる純粋なる緑の加護グリーンインパクトプロテクションを僕の正面に集めて壁を作った。…………よし、問題なく遮断できたね。

「「「ワガクウカンニ、ヨケイナモノヲッ‼︎」」」
「元々の空間を侵食してるお前の方が余計なものだよ」
「「「ザレゴトヲホザ、グビャッ‼︎」」」
「…………不愉快デス」
「ディグリ?」
「ガア?」
「ブオ?」

 僕とリザッバが小競り合いのような事をしていたら、突然ディグリが両手を一つの砲身にして大きな魔力弾を放ち、リザッバへ着弾させた。

「……えーと、ディグリ落ち着いて」
「ガ、ガア」
「ブオブオ」
「本当ニ心底不愉快デス。……消エナサイ‼︎」

 僕と鬼熊オーガベア破壊猪ハンマーボアの声はディグリに届いてないみたいで、ディグリは身体から膨大な魔力を発しながら魔力弾を撃ち続ける。

「消エナサイ‼︎ 滅ビナサイ‼︎ 死ニナサイ‼︎」
「「「コノ、グボッ‼︎ キサ、マギャッ‼︎ イイカゲ、ン‼︎ ニシロ‼︎」」」
「大人シク消エレバ良イモノヲ……」

 ディグリは、みんなが引くぐらいの全力を振り絞ったけど、リザッバが表面が凹むくらいで平気な様子にイラつき、身体から危険な植物を生やし始める。…………世界樹の杖ユグドラシルロッド宿り木の矢ミストルテアローから準備完了という意思が伝わってきたから、ちょうど良いと考えるべきだね。

「ディグリ、次は僕と合わせて」
「エ?」
「大丈夫?」
「大丈夫デス‼︎」
「わかった。いくよ。緑盛魔法グリーンカーペット純粋なる緑の魔弾グリーンインパクトショット
「ハアッ‼︎」
「「「キサマラノコウゲキハ、ムイミダトナゼワカラ、クベアッ‼︎」」」

 僕の純粋なる緑の魔弾グリーンインパクトショットとディグリの魔力弾が直撃したリザッバは、吹き飛びヘドロと汚泥の地面を転がった。ディグリも意外な結果に唖然としてたけど、僕がディグリを見るとすぐに気を取り直す。

「追撃だよ。純粋なる緑の魔弾グリーンインパクトショット
「ハイ‼︎」
「あ、攻撃できる人は続いてね」

 僕とディグリが追撃した時にみんなに呼びかけたら、みんなはニヤッと笑いリザッバに向け竜人息ドラゴニュートブレスや魔力刃や鼻息弾ノーズブレスを放った。

 ズドーンッ‼︎

 ほとんど同時にリザッバへと着弾した僕達の攻撃は、大きな衝撃波を生み出し地面を覆うヘドロと汚泥や空の赤黒い液体を爆煙とともに吹き飛ばす。僕達は純粋なる緑の加護グリーンインパクトプロテクションの内側にいるから問題ないんだけど……。

「……やり過ぎたかな?」
「コレクライデ、チョウド良イト思イマス」
「そう?」
「ヤート、俺達もディグリと同じ意見だから気にするな。というか、もっと攻撃を重ねるべきだ」
「「「キ、キサマラーー‼︎‼︎」」」
「おお、本当だ。あんなに元気なら、もっと攻撃をしておけば良かった」

 爆煙が晴れて姿を見せたリザッバは体積が減っていた。でも、すぐに周りのヘドロか汚泥を取り込み元の大きさに戻り三つの口からヘドロを吐き出してくる。僕は特に慌てる事なく純粋なる緑の加護グリーンインパクトプロテクションの壁で防ぎながら純粋なる緑の魔弾グリーンインパクトショットを放つ。…………うん、どっちもうまく働いてる。世界樹の杖ユグドラシルロッド宿り木の矢ミストルテアローが協力してくれたおかげで良い感じだね。

「「「グハッ‼︎ …………クッ」」」

 リザッバは僕の純粋なる緑の魔弾グリーンインパクトショットの直撃を受けヘドロと汚泥を撒き散らしながら吹き飛んだ後、困惑や疑問に少し恐怖を混ぜたような表情で僕を見てくる。

「「「ナゼダ⁉︎ ナゼ、コノクウカンノナカデ、ワレニソンショウヲアタエラレル⁉︎」」」
「この空間はお前自身の強化と、僕達の弱体化やお前への攻撃の無効化を両立したもので良くできてる。でも、その性質を解析して対策されたら意味はないよ」
「「「バカナ‼︎ ワレノチカラヲシラベルナドフカノウダ‼︎ シカモ、オマエハナニモシテイナイ‼︎」」」
「うん、僕は何もしてない」
「「「ナラバ、ドウヤッテ⁉︎」」」
世界樹の杖ユグドラシルロッドが材料を元に、お前の力を解析した」
「「「フザケタコトヲヌカスナ‼︎ ソンナザイリョウガドコニアル⁉︎」

 僕は人差し指を立ててリザッバに見せた。

「一度目は夢の中でお前が人形って言っていた人型のヘドロから宿り木の矢ミストルテアローが力を吸収した」

 次に中指を立てて見せる。

「二度目は、さっきお前から直接宿り木の矢ミストルテアローが力を吸収した。さて、ここで簡単な問題だよ。二度もお前の力を吸収した宿り木の矢ミストルテアローは、今どこにある?」
「「「マサカ……?」」」

 リザッバの六つの視線が世界樹の杖ユグドラシルロッドに集まった。

「うん、今お前が想像した通り、宿り木の矢ミストルテアロー世界樹の杖ユグドラシルロッドの中にいる。そして宿り木の矢ミストルテアロー世界樹の杖ユグドラシルロッドに、お前から吸収した力を渡して世界樹の杖ユグドラシルロッドがお前の力を解析した」
「「「グ……」」」
「もっと全力で攻撃してくれば解析が終わる前に勝てたかもね」
「「「ダカラ、ドウシタ‼︎ キサマラヲツブスホウホウハ、マダアル‼︎」」」

 リザッバの大声を発すると地面のヘドロと汚泥が波打ち形を持ち、僕達の周りにだけしかいなかったヘドロと汚泥の人形の数が増えていく。あっという間に見渡す限り全ての場所を人形が埋めた。…………今度はこう来たか。

「「「タトエ、ワガチカラヲシラベタトシテモ、コノクウカンガアルコトニカワリハナイ‼︎ ソノママ、ワガニンギョウドモニウモレロ‼︎」」」
「うん、数は力だから正しいと思う。でも、あんまり意味はないかな」

 リザッバの合図を受けて、一斉に全てのヘドロと汚泥の人形が僕達に向かってくる。でも、その僕達を潰すという望みは叶わず、僕達に一定の距離まで近づいた人形から次々と叩き潰された。

「「「ナニ⁉︎」」」
「そんなに驚く事? これだけの数だから、僕一人だとかなり苦労するのは事実。でも、見ての通り僕は一人じゃない。それにみんなは、ちゃんと実力を出せる環境なら、どれだけ数がいたとしてもお前の人形如きに負けないよ」

 純粋なる緑の加護グリーンインパクトプロテクションの光の圏内に入った人形を、みんなは嬉々として殴り蹴り突進したり踏み潰している。…………そういえばリザッバと戦い始めてから、みんなが本格的に動くのは初か。

「みんな、待たせてごめん。ところで純粋なる緑の加護グリーンインパクトプロテクションの光は狭くない?」
「ヤート殿、私達黄土は大丈夫です」
「俺とマルディも問題ないぞ」
鬼熊オーガベア破壊猪ハンマーボア、ディグリはどう? 広げた方が良い?」
「ガア‼︎」
「ブオ‼︎」
「ソレホド激シク動カナイノデ、今ノママデ構イマセン」
「兄さん達も戦いたくなったら無茶しない範囲で動いてね」
「気にすんな。今の俺はヤートの護衛だ」
「ガルの言う通りよ。ねえ、リンリー?」
「はい。ヤート君、私達がそばにいるのでやりたいようにしてください」
「ありがとう。それじゃあ、僕も攻撃に専念させてもらうよ。純粋なる緑の魔弾グリーンインパクトショット

 僕は今までとは違い百個くらいを空中に出現させる。

「お前は数で来たから、僕もマネさせてもらう。僕はお前みたいに手を抜いたりしないから覚悟しろ」
「「「フ、フザケルナアアアアーーーー‼︎」」」

 リザッバは僕の宣言を聞いて怒りで顔を歪ませた後、力むとヘドロと汚泥の塊だったリザッバの表面がボコッと四つ膨れ、そのまま伸びていく。そして、その伸びた部分を使って自分の身体を浮かせた。…………あれは足かな? あんな形態変化ができるなら、なんで初めからやらなかったんだろ? 戦いなのに手を抜く意味がわからない。まあ、仕切り直しと考えれば良いか。

 僕が発射した純粋なる緑の魔弾グリーンインパクトショットをリザッバが避ける事で戦いは再開された。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。

 感想や評価もお待ちしています。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

AI恋愛大戦争

星永のあ
恋愛
みなさんは、AIをご存知だろうか。 このAIの発達により、 今ある仕事の49%が10〜20年後には無くなると言われている。 人間の生活はどんどんAIに奪われていく  のかもしれない。 それは仕事だけではなく、恋愛も。 AIがモテる時代がすぐ目の前まで来ている。

~マーメイド~

はらぺこおねこ。
恋愛
 20XX年、性犯罪が多くなり泣き寝入りする女性が多くなった日本。  政府は、性犯罪抑制のため人間そっくりの生物を開発をする。  感覚は、人と同じで感情や表情もあるし知能まであった。  人間との違いは大差なかったのだ。  人々は、その生物をマーメイドと呼んだ。  最初は抵抗はあったものの、次第にそれに慣れ。  性欲を持て余した男たちは、通販で買物をする感覚でマーメイドを購入する日々。  人の遺伝子操作は、倫理上禁止されているがマーメイドは人でないため禁止されなかった。  その為、科学者はマーメイドの遺伝子操作を躊躇するなく開発を進め。  遂に、簡単に理想のマーメイドを開発することが可能になった。  注文方法は簡単。  容姿や体型、年齢から性格や声帯まで、全てカスタマイズ可能。  価格は200円からのお手軽価格。  雄雌ともに発注可能。  また、飽きたらマーメイドの日に拘束して捨てることも可能で捨てられたマーメイドの処理はどうされるかは、公開されてはいない。  ホームレスに拾われ飼われるマーメイドや、なんとか脱出して野生になるマーメイドもいる。  マーメイドの開発は日本だけでなく海外にも広まり、世界中の人への性犯罪の件数は、年間100件を下回っていた。  マーメイドを反対する女性たちもいたが、この件数を聞いた途端反対する人は少なくなった。  世界は、マーメイドによって救われていた。  そして、今……  ひとりの童貞の男が、マーメイドを注文しようとしている。  男は、事業に成功した30歳。  金は有り余るほどある。  金を稼ぐことに一生懸命になりすぎて、女性との出会いはなかった。  男は、童貞を捨てるべく。  マーメイドをマーマンで、注文する。  価格は、500円。  男は、マーメイドを購入することにより世界が変わるのだ。  マーメイドは、善か?悪か?  世界は、その問題を抱え今日も生きていく。 ※以前書いていたマーメイドを全年齢の方を対象に書き直します。

晴れ間のペトリコール

蒼井 狐
現代文学
左手を失い、憂鬱とした気持ちを抱いていた。 けれど、ふと病院のベッドから見たラーメン屋さんへ行きたいという欲求により心を救われる……。

「ずっと貴方だけを推し続けます」その言葉を信じても良いですか?

田々野キツネ
恋愛
──推し変なんてしない、ずっと君だけを推し続けていた 日々を無為にすごす、ロースペ社会人、田中貞雄。 ある日、奇跡の出会いを果たす。 バーチャルネットアイドル、天姫モノアとの出会いが、枯れた人生に彩を与えていく。 * この作品に登場する、存在/非存在は、現実/架空の人物、人格、地名、団体、その他と一切関係がありません。 * この作品に登場する、主人公、またはその他の人物の言動/思考は、作者の見解ではありません。 * この作品は、作者のにわか知識、及び妄想で書いています。  現実との齟齬の内、重大な事に関しては、指摘頂ければ、別途注釈を設ける等の対処をさせて頂きます。 アルファポリス初投稿です。 感想、お気に入り等頂けると、大変励みになります。 メンタルがガラスですので、お手柔らかにお願いいたします。 2024/06/22 カクヨム様で投稿している別名義で投稿する事に致しました。 こちらのアカウントは、今後削除予定です。 カクヨム様の作品ページ https://kakuyomu.jp/works/16818093079719861798

AIと彼女と俺の不思議な三角関係 どうしたらいいの 究極の選択 AI彼女と禁断の恋

fit2300get
恋愛
あらすじ ある日、大学生の健太郎は、叔父である福澤より、AIを搭載したアンドロイドを紹介される。福澤は、健太郎にAIアンドロイドを紹介した。 健太郎には、今付き合ってる彼女、美咲がいた。断ろうとする健太郎に、福澤は、この子に感情を教えてくれと頼まれる。 果たして、AIは恋を、できるのか?

処理中です...