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異常を見つけ出す旅にて 力づくの治療と物理的反省
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村を出発した僕達は大神林を抜けようと爆走していた。まあ、僕とリンリーが鬼熊の背に、兄さんと姉さんは破壊猪の背にのせてもらっているから全員が走っているわけじゃない。今のところは鬼熊・破壊猪・ラカムタさん・父さん・狩人四人・ディグリの順で一列に並び森の中を進んでいる。
「鬼熊、次はあっちに進んで」
「ガア」
僕は後ろの破壊猪に進行方向をズラすという合図を手を上げて示した。……うん、何度かこのやり取りをして進路変更をしたけど、問題なく進んで来れてる。やっぱり森の中の事は植物達に聞くのが一番だね。
僕達は植物達に聞いた進みやすいところを爆走して思った以上に距離を稼げたので、完全に日が暮れて森の中が暗くなる前に野営の準備を始めた。
「お前達、あまり離れすぎない場所で何か獲物を狩ってきてくれ」
周りの安全を確認し火を起こした後、ラカムタさんの指示で食料の調達に出かけた狩人達を見て、僕は休んでいる三体に話しかける。
「三体はどうする? 僕が何か食べる物を出そうか?」
「ガア」
「ブオ」
「私モ食事ハ必要ナイノデ気ニシナイデクダサイ」
「わかった。でも、何か食べたくなったら言ってね」
どうやら鬼熊と破壊猪は常に食い溜めしているみたいで、しばらくは食べなくて大丈夫らしい。それにディグリは日中の日差しで光合成していて今も地面に根を刺して水分と栄養を吸収してるから、常に食べているのと同じ状態のようだ。こういう強靭さは羨ましいなって思いつつ、無い物ねだりと割り切り兄さん達のもとへ歩いて行った。
「兄さん、姉さん、ケガの治療をするから状態を同調で確認させて」
「いらねえよ」
「私も治療は構わないわ」
「ガル君、マイネさん、ヤート君の治療を受けてください」
「「必要ない」」
実は兄さんと姉さんはケガをしている。でも、このケガは移動中に負ったものじゃなく、村を離れる前に負ったものだ。いきなり二人が出発前に、お互いの顔を殴り合った時は驚いたよ。しかも、すぐに僕が二人を治療しようとしても、二人は治療を拒否して頬をボコッと腫らしたまま破壊猪の背にのろうとするから、みんなどう反応して良いかわからなかった。
そんなわけで兄さんと姉さんの頬を治療できてないからしたいけど、また拒否された。前の青のヌイジュの時みたく、治療を無理矢理するべきかな? 僕が悩んでると、ラカムタさんが兄さんと姉さんの後ろに回り込み、右腕で兄さんを左腕で姉さんを抱き込んだ。
「バカやろう。さっさとヤートの治療を受けてケガを治せ」
「おっさん、離せ‼︎」
「離してよ‼︎」
「…………」
「ヤート」
ラカムタさんの腕から抜け出ようとバタバタ動く兄さんと姉さんを見て戸惑っていたら、父さんに呼びかけられた。見ると父さんは僕に向かってはっきりとうなずいてきた。やって良いみたいだね。僕は兄さんと姉さんに優しく触れて同調した後に、腰の小袋から薬草を加工した丸薬を取り出し魔法を唱える。
「水生魔法」
そして丸薬と水生魔法で生み出した少量の水を混ぜて塗り薬を作った。準備が整ったので、まずは兄さんの頬に塗ろうとしたら、兄さんは顔を僕の手から背ける。本当にどうしようかなって悩んでると、横から出てきた手が兄さんの顔をつかんで固定した。
「ガル君、ヤート君の治療を受けたくないっていう我がままはダメです」
「リ、リンリー……」
「ヤート君、どうぞ」
「あ、うん、ありがとう」
リンリーの助けを借りて兄さんのボコッと腫れた頬に塗っていく。塗り終わりリンリーが兄さんの顔から手を離したのを確認して姉さんの方を見ると、すでに父さんが姉さんの顔を固定していた。
「ムギギ……」
「ヤート、遠慮せず、たっぷりと塗ってやれ」
「わかった。ありがとう、父さん」
よし、姉さんの腫れた頬にも塗り込めた。あとは経過を見守れば大丈夫だね。治療が終わった事をラカムタさんに伝えようとしたら、兄さんがビクンッと身体を痙攣させた。
「兄さん?」
「に……」
「に?」
「苦ええええーーーー‼︎」
「……元は薬草なんだから苦いのは当たり前だよ。というか、せっかく塗ったのに拭こうとしないで」
兄さんは塗り薬を肩で拭い取ろうとして口に入ったみたいだ。姉さんは姉さんで、ちょっとホッとしてるのは兄さんみたいにやろうと考えてたから?
「リンリー、塗り直すから、もう一回兄さんの顔を固定してくれる?」
「わかりました」
再度、リンリーに固定してもらった兄さんの顔に塗り薬を塗っていく。……うーん、一応、兄さんと姉さんに注意をしておこうかな。
「兄さん、姉さん、塗り薬が効いてケガが治るまでラカムタさん達に拘束してもらう? それとも僕の魔法で動けなくなる? それとも自分達の意思でジッとしてる?」
「「…………」」
兄さんと姉さんは、僕とラカムタさん達の本気具合を感じて身体から力を抜いた。ラカムタさん達も二人に騒ぐ気がないと判断して解放したけど、一応二人が暴れたら取り押さえるぞっていう圧力はかけている。
そんな中、ラカムタさんは兄さんと姉さんに問いかけた。
「それで、何でそんな態度を取ったんだ?」
「……ヤートや、みんなにカッコ悪いところを見せたから……」
「父さんとのやり取りの後、自分が情けなくなったの……」
つまり兄さんと姉さんは、お互いに殴られて反省してた? 極端過ぎない? 僕と同じ思いが浮かんだのか、リンリーは困惑してラカムタさんと父さんはため息をついていた。
「何も物理的に反省する必要はなかったと思います……」
「変に激しく落ち込まれるよりはマシだが……」
「反省するのは良いとして、それでさらに俺達に手間を取らせて、どうする……。まあ、とにかく今は異常事態の発見と対応が最優先だ。諸々が終わったら反省でも鍛錬でも好きなだけ付き合ってやるから、ケガが治るまでに切り替えろ。ガルもマイネも良いな?」
「……わかった」
「ええ……」
こんなに沈んでる兄さんと姉さんを見るのは初めてかもしれない。でも、なんとなく二人なら大丈夫だと思うから少しの間静かに見守ろう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
「鬼熊、次はあっちに進んで」
「ガア」
僕は後ろの破壊猪に進行方向をズラすという合図を手を上げて示した。……うん、何度かこのやり取りをして進路変更をしたけど、問題なく進んで来れてる。やっぱり森の中の事は植物達に聞くのが一番だね。
僕達は植物達に聞いた進みやすいところを爆走して思った以上に距離を稼げたので、完全に日が暮れて森の中が暗くなる前に野営の準備を始めた。
「お前達、あまり離れすぎない場所で何か獲物を狩ってきてくれ」
周りの安全を確認し火を起こした後、ラカムタさんの指示で食料の調達に出かけた狩人達を見て、僕は休んでいる三体に話しかける。
「三体はどうする? 僕が何か食べる物を出そうか?」
「ガア」
「ブオ」
「私モ食事ハ必要ナイノデ気ニシナイデクダサイ」
「わかった。でも、何か食べたくなったら言ってね」
どうやら鬼熊と破壊猪は常に食い溜めしているみたいで、しばらくは食べなくて大丈夫らしい。それにディグリは日中の日差しで光合成していて今も地面に根を刺して水分と栄養を吸収してるから、常に食べているのと同じ状態のようだ。こういう強靭さは羨ましいなって思いつつ、無い物ねだりと割り切り兄さん達のもとへ歩いて行った。
「兄さん、姉さん、ケガの治療をするから状態を同調で確認させて」
「いらねえよ」
「私も治療は構わないわ」
「ガル君、マイネさん、ヤート君の治療を受けてください」
「「必要ない」」
実は兄さんと姉さんはケガをしている。でも、このケガは移動中に負ったものじゃなく、村を離れる前に負ったものだ。いきなり二人が出発前に、お互いの顔を殴り合った時は驚いたよ。しかも、すぐに僕が二人を治療しようとしても、二人は治療を拒否して頬をボコッと腫らしたまま破壊猪の背にのろうとするから、みんなどう反応して良いかわからなかった。
そんなわけで兄さんと姉さんの頬を治療できてないからしたいけど、また拒否された。前の青のヌイジュの時みたく、治療を無理矢理するべきかな? 僕が悩んでると、ラカムタさんが兄さんと姉さんの後ろに回り込み、右腕で兄さんを左腕で姉さんを抱き込んだ。
「バカやろう。さっさとヤートの治療を受けてケガを治せ」
「おっさん、離せ‼︎」
「離してよ‼︎」
「…………」
「ヤート」
ラカムタさんの腕から抜け出ようとバタバタ動く兄さんと姉さんを見て戸惑っていたら、父さんに呼びかけられた。見ると父さんは僕に向かってはっきりとうなずいてきた。やって良いみたいだね。僕は兄さんと姉さんに優しく触れて同調した後に、腰の小袋から薬草を加工した丸薬を取り出し魔法を唱える。
「水生魔法」
そして丸薬と水生魔法で生み出した少量の水を混ぜて塗り薬を作った。準備が整ったので、まずは兄さんの頬に塗ろうとしたら、兄さんは顔を僕の手から背ける。本当にどうしようかなって悩んでると、横から出てきた手が兄さんの顔をつかんで固定した。
「ガル君、ヤート君の治療を受けたくないっていう我がままはダメです」
「リ、リンリー……」
「ヤート君、どうぞ」
「あ、うん、ありがとう」
リンリーの助けを借りて兄さんのボコッと腫れた頬に塗っていく。塗り終わりリンリーが兄さんの顔から手を離したのを確認して姉さんの方を見ると、すでに父さんが姉さんの顔を固定していた。
「ムギギ……」
「ヤート、遠慮せず、たっぷりと塗ってやれ」
「わかった。ありがとう、父さん」
よし、姉さんの腫れた頬にも塗り込めた。あとは経過を見守れば大丈夫だね。治療が終わった事をラカムタさんに伝えようとしたら、兄さんがビクンッと身体を痙攣させた。
「兄さん?」
「に……」
「に?」
「苦ええええーーーー‼︎」
「……元は薬草なんだから苦いのは当たり前だよ。というか、せっかく塗ったのに拭こうとしないで」
兄さんは塗り薬を肩で拭い取ろうとして口に入ったみたいだ。姉さんは姉さんで、ちょっとホッとしてるのは兄さんみたいにやろうと考えてたから?
「リンリー、塗り直すから、もう一回兄さんの顔を固定してくれる?」
「わかりました」
再度、リンリーに固定してもらった兄さんの顔に塗り薬を塗っていく。……うーん、一応、兄さんと姉さんに注意をしておこうかな。
「兄さん、姉さん、塗り薬が効いてケガが治るまでラカムタさん達に拘束してもらう? それとも僕の魔法で動けなくなる? それとも自分達の意思でジッとしてる?」
「「…………」」
兄さんと姉さんは、僕とラカムタさん達の本気具合を感じて身体から力を抜いた。ラカムタさん達も二人に騒ぐ気がないと判断して解放したけど、一応二人が暴れたら取り押さえるぞっていう圧力はかけている。
そんな中、ラカムタさんは兄さんと姉さんに問いかけた。
「それで、何でそんな態度を取ったんだ?」
「……ヤートや、みんなにカッコ悪いところを見せたから……」
「父さんとのやり取りの後、自分が情けなくなったの……」
つまり兄さんと姉さんは、お互いに殴られて反省してた? 極端過ぎない? 僕と同じ思いが浮かんだのか、リンリーは困惑してラカムタさんと父さんはため息をついていた。
「何も物理的に反省する必要はなかったと思います……」
「変に激しく落ち込まれるよりはマシだが……」
「反省するのは良いとして、それでさらに俺達に手間を取らせて、どうする……。まあ、とにかく今は異常事態の発見と対応が最優先だ。諸々が終わったら反省でも鍛錬でも好きなだけ付き合ってやるから、ケガが治るまでに切り替えろ。ガルもマイネも良いな?」
「……わかった」
「ええ……」
こんなに沈んでる兄さんと姉さんを見るのは初めてかもしれない。でも、なんとなく二人なら大丈夫だと思うから少しの間静かに見守ろう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
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