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出発にて 真剣な言葉と貫く事
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僕は村長から村を出発する前に、きちんと準備を整えるよう言われたので家の子供部屋や作業場を回って保管していた、いろんな植物達の種・薬草を加工した丸薬・苔玉・木の枝なんかを袋に小分けにして、樹皮を加工して作った背負い袋にまとめて入れる。……多すぎかな? いや、足りないものが出るよりマシだね。多少重くなった足取りで門に向かうと、すでにみんながいた。
「遅くなってごめん」
「かまわんよ。それだけの荷物を準備するなら時間がかかって当然じゃな」
「何が起きるかわからないから念には念を入れてみた」
「うむ、それで良い。こちらも今回ヤートと同行するもの達が決まった。お前達、集まるんじゃ‼︎」
村長が言うと、ラカムタさん・父さん・兄さん達と黒の村の精鋭の狩人四人が近づいてきた。
「父さん、いっしょに来てくれるんだ」
「そうなんだが、俺の事は基本的にガル達の監督が主な役割だと思ってくれ」
「……兄さん達の監督?」
「本来なら緊急事態ゆえに、ヤートの同行者はラカムタと狩人達になるはずだった。しかしだ。エステアから、ガル達はヤート達が出発した後に村を抜け出しヤートを追うかもしれないという意見が出て議論した結果、あとあと起きる混乱の可能性を予め無くそうと言う事になった」
「そうなんだ」
「ガル達には道中や異常事態と遭遇した時、足手まといになるようなら叩きのめして連れ帰ると宣言している。だから、ヤートは他の事を考えず異常事態の発見と解決に意識を集中するんだ。わかったな?」
「…………覚えておくよ」
兄さん達を見ると、ちょうど母さんやエメスナさんに注意を受けていた。遠目から見る限り緊張や不安はないな。変にガチガチに固くなるよりは全然良い。それなら僕は僕で、ちゃんと話をしておこう。
「村長、ちょっと三体と話してくるね」
「わかった」
みんなの間を抜けて門の外に出ると三体がいた。匂いや植物達の連絡とかで僕達が動こうとしてるのを認識したのかな? 僕は三体に近づき話しかける。
「ゆっくりしてたところ、ごめん」
「ガ」
「ブオ?」
「何カアリマシタカ?」
「うん、実は……」
これまでに僕が感知したヌメッした嫌な気配とその変化について話し、さらにその気配がもしかしたら魔石に近い存在なのかもしれないという事を話した。すると、三体の身体からラカムタさんよりも遥かに莫大な魔力が放たれ、その勢いで僕の身体は吹き飛ばされる。
「ヤート‼︎」
「……驚いた。ありがとう、ラカムタさん」
「驚いたのは俺の方だぞ」
ラカムタさんに受け止めてもらった僕は地面に降ろしてもらい、また三体へと近づいていった。
「落ち着いた?」
「……ガア」
「……ブオ」
「……取リ乱シマシタ。スミマセン」
「僕も魔石について考えてたらイラッとするからしょうがないよ。それで相談なんだけど、嫌な気配を確かめるのに協力してくれない?」
「ガア」
「ブオ」
「モチロンデス。必ズ、アノモノヤ近イ存在ハ滅ボシマス。絶対ニデス」
「ありがとう。お前達が来てくれたら心強いよ。あ、あといっしょに僕達と行くみんなを呼ぶね。ラカムタさん」
「おう。ヤートに力を貸してもらい感謝する。今回もよろしく頼む」
「ガア」
「ブオ」
「コチラコソ」
問題なく顔合わせが終わったから、これで出発だと思ってると父さんが手をあげた。
「マルディ、どうした?」
「鬼熊と破壊猪に聞きたい。ガル、マイネ、リンリーを背に乗せてもらえないか?」
「ガア」
「ブオ」
「二体とも大丈夫だってさ」
「感謝する。ガル、マイネ、リンリー、鬼熊と破壊猪に別れてのれ」
父さんの指示に兄さんと姉さんが慌てて反論した。
「父さん、私達だって走れるわよ‼︎」
「そうだ‼︎ なんで、そんな事を言うんだ⁉︎」
「用件が、ただ他の村に行くとかならガル達も走るのは問題ない。だが、今回はヤートの話を聞く限り、かなりの緊急事態だ。現地へは可能な限り最速で向かうべきと考えればおかしくはない」
「父さん達と同じ速さで走れば良いだけだろ⁉︎ 強化魔法でいける‼︎」
「強化魔法の連続使用は身体に負担と消耗を与える。何が起こるかわからない場所への移動の道中に疲れを溜めるのは論外だ」
「う……」
「それともヤートに回復してもらえば良いとでも考えてるのか?」
「それは……」
二人は父さんに指摘されるごとに勢いを失くしていく。
「ヤートの役割は異常の確認と異常発見後の対応で、俺達の役割はヤートの護衛だ。その護衛する側の俺達がヤートに負担をかけてどうする」
「「…………」」
「時間が惜しいから選べ。素直に鬼熊と破壊猪にのせてもらう。自分から村に残る。俺に叩きのめされて村に残る。どれだ?」
「「…………」」
兄さんと姉さんは父さんに厳しい事を言われ、俯き手に爪が食い込むくらい握りしめている。反論できない自分達への悔しさが伝わってきた。
「どうするんだ?」
「……背中にのせてもらう」
「……私も」
「わかった。二人に言っておく。理由はどうあれ、いっしょに行く以上お前達は戦力として見られている。その意味を考えろ。我を、意地を、自分のやりたい事を貫くのは重要だ。しかし貫いた結果、全体の不利益になるなら、それは間違いだ」
父さんは冷静に荒げる事なく言葉を続けていく。少し言い過ぎな気もするけど、村長や母さんが父さんを止めないから筋は通ってるみたいだね。
「良いか、状況を判断して貫くべきかどうか判断できるようになれ。そしてもし、どうしても貫きたいならどんな時でも貫けるだけの実力や実績を示すか、貫こうとする自分が排除される事を覚悟しろ。わかったな?」
「「…………」」
父さんの言葉は重いな。いろいろと感覚がズレて感情が薄い僕でも、そう思うんだから兄さんと姉さんには、さらに重く感じたはず。でも、それだけの事を父さんから言われたのは、言うだけの価値が二人にあるためだと思う。……僕も任された役割を完璧にこなせるよう気持ちを切り替えるか。
パンッ‼︎
突然頬を両手で叩いた僕に、みんな驚いたけど気合を入れたって説明したら感心して応援された。よし、それじゃあ移動した先で遭遇した問題を解決するっていう、いつもの事を始めよう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
「遅くなってごめん」
「かまわんよ。それだけの荷物を準備するなら時間がかかって当然じゃな」
「何が起きるかわからないから念には念を入れてみた」
「うむ、それで良い。こちらも今回ヤートと同行するもの達が決まった。お前達、集まるんじゃ‼︎」
村長が言うと、ラカムタさん・父さん・兄さん達と黒の村の精鋭の狩人四人が近づいてきた。
「父さん、いっしょに来てくれるんだ」
「そうなんだが、俺の事は基本的にガル達の監督が主な役割だと思ってくれ」
「……兄さん達の監督?」
「本来なら緊急事態ゆえに、ヤートの同行者はラカムタと狩人達になるはずだった。しかしだ。エステアから、ガル達はヤート達が出発した後に村を抜け出しヤートを追うかもしれないという意見が出て議論した結果、あとあと起きる混乱の可能性を予め無くそうと言う事になった」
「そうなんだ」
「ガル達には道中や異常事態と遭遇した時、足手まといになるようなら叩きのめして連れ帰ると宣言している。だから、ヤートは他の事を考えず異常事態の発見と解決に意識を集中するんだ。わかったな?」
「…………覚えておくよ」
兄さん達を見ると、ちょうど母さんやエメスナさんに注意を受けていた。遠目から見る限り緊張や不安はないな。変にガチガチに固くなるよりは全然良い。それなら僕は僕で、ちゃんと話をしておこう。
「村長、ちょっと三体と話してくるね」
「わかった」
みんなの間を抜けて門の外に出ると三体がいた。匂いや植物達の連絡とかで僕達が動こうとしてるのを認識したのかな? 僕は三体に近づき話しかける。
「ゆっくりしてたところ、ごめん」
「ガ」
「ブオ?」
「何カアリマシタカ?」
「うん、実は……」
これまでに僕が感知したヌメッした嫌な気配とその変化について話し、さらにその気配がもしかしたら魔石に近い存在なのかもしれないという事を話した。すると、三体の身体からラカムタさんよりも遥かに莫大な魔力が放たれ、その勢いで僕の身体は吹き飛ばされる。
「ヤート‼︎」
「……驚いた。ありがとう、ラカムタさん」
「驚いたのは俺の方だぞ」
ラカムタさんに受け止めてもらった僕は地面に降ろしてもらい、また三体へと近づいていった。
「落ち着いた?」
「……ガア」
「……ブオ」
「……取リ乱シマシタ。スミマセン」
「僕も魔石について考えてたらイラッとするからしょうがないよ。それで相談なんだけど、嫌な気配を確かめるのに協力してくれない?」
「ガア」
「ブオ」
「モチロンデス。必ズ、アノモノヤ近イ存在ハ滅ボシマス。絶対ニデス」
「ありがとう。お前達が来てくれたら心強いよ。あ、あといっしょに僕達と行くみんなを呼ぶね。ラカムタさん」
「おう。ヤートに力を貸してもらい感謝する。今回もよろしく頼む」
「ガア」
「ブオ」
「コチラコソ」
問題なく顔合わせが終わったから、これで出発だと思ってると父さんが手をあげた。
「マルディ、どうした?」
「鬼熊と破壊猪に聞きたい。ガル、マイネ、リンリーを背に乗せてもらえないか?」
「ガア」
「ブオ」
「二体とも大丈夫だってさ」
「感謝する。ガル、マイネ、リンリー、鬼熊と破壊猪に別れてのれ」
父さんの指示に兄さんと姉さんが慌てて反論した。
「父さん、私達だって走れるわよ‼︎」
「そうだ‼︎ なんで、そんな事を言うんだ⁉︎」
「用件が、ただ他の村に行くとかならガル達も走るのは問題ない。だが、今回はヤートの話を聞く限り、かなりの緊急事態だ。現地へは可能な限り最速で向かうべきと考えればおかしくはない」
「父さん達と同じ速さで走れば良いだけだろ⁉︎ 強化魔法でいける‼︎」
「強化魔法の連続使用は身体に負担と消耗を与える。何が起こるかわからない場所への移動の道中に疲れを溜めるのは論外だ」
「う……」
「それともヤートに回復してもらえば良いとでも考えてるのか?」
「それは……」
二人は父さんに指摘されるごとに勢いを失くしていく。
「ヤートの役割は異常の確認と異常発見後の対応で、俺達の役割はヤートの護衛だ。その護衛する側の俺達がヤートに負担をかけてどうする」
「「…………」」
「時間が惜しいから選べ。素直に鬼熊と破壊猪にのせてもらう。自分から村に残る。俺に叩きのめされて村に残る。どれだ?」
「「…………」」
兄さんと姉さんは父さんに厳しい事を言われ、俯き手に爪が食い込むくらい握りしめている。反論できない自分達への悔しさが伝わってきた。
「どうするんだ?」
「……背中にのせてもらう」
「……私も」
「わかった。二人に言っておく。理由はどうあれ、いっしょに行く以上お前達は戦力として見られている。その意味を考えろ。我を、意地を、自分のやりたい事を貫くのは重要だ。しかし貫いた結果、全体の不利益になるなら、それは間違いだ」
父さんは冷静に荒げる事なく言葉を続けていく。少し言い過ぎな気もするけど、村長や母さんが父さんを止めないから筋は通ってるみたいだね。
「良いか、状況を判断して貫くべきかどうか判断できるようになれ。そしてもし、どうしても貫きたいならどんな時でも貫けるだけの実力や実績を示すか、貫こうとする自分が排除される事を覚悟しろ。わかったな?」
「「…………」」
父さんの言葉は重いな。いろいろと感覚がズレて感情が薄い僕でも、そう思うんだから兄さんと姉さんには、さらに重く感じたはず。でも、それだけの事を父さんから言われたのは、言うだけの価値が二人にあるためだと思う。……僕も任された役割を完璧にこなせるよう気持ちを切り替えるか。
パンッ‼︎
突然頬を両手で叩いた僕に、みんな驚いたけど気合を入れたって説明したら感心して応援された。よし、それじゃあ移動した先で遭遇した問題を解決するっていう、いつもの事を始めよう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
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