199 / 318
青の村にて いつの間にか決まっていた事と急展開
しおりを挟む
ヌイジュとの立ち会いから三日が経った日の朝食後、ラカムタさんに呼ばれた。
「ラカムタさん、僕に用があるって聞いたけど何?」
「来たか。まあ、こっちに座れ」
「うん、わかっ……」
僕はその場から飛び退きラカムタさんから離れる。いきなりで少し驚きながらラカムタさんを見ると、僕を見てうなずいていた。
「なかなか良い反応だな」
「……ラカムタさん?」
「ヤート、続けるぞ」
ラカムタさんは座ったままで、僕はしゃがんだり回転する。周りのみんなには僕が突然一人で動いているように見えてるかも知れないけど、僕は真剣そのもの。
なぜなら僕が常に身体から放っている界気化した魔力で感知した、ラカムタさんが頭の中で浮かべた攻撃を避けているからだ。今のところラカムタさんはジッと僕を見ながら攻撃を意識してるだけなんだけど、僕が回避行動を鈍らせた場合には本当に攻撃してくるみたいだから動きを止めれない。
そうして僕が制御しながら強化魔法を発動させつつ十分くらい避けていると、だんだん周りのみんなも僕のしている事に気づいてくる。そんな中、兄さん達がラカムタさんの方へ走り寄ろうとした次の瞬間、ラカムタさんは座ってる状態からフッと消えて僕の後ろに移動し、右拳を振り下ろしてきた。
ちょうど僕の顔を正面から蹴るっていうラカムタさんが想像した攻撃を避けるために、身体を反らしている最中だったから結構辛い。とはいえ泣き言を言ってる暇は一切ないから、のけぞった勢いのまま地面に倒れる。そして、あと少しで地面に身体が着くという時に右手で地面を叩き、その反動を利用して左に転がった。
バカンッ‼︎
数瞬前に僕の立っていた地面から破壊音が響き、衝撃波や破片が僕の身体に当たる。少しして煙が晴れると、振り下ろした右拳を地面に埋めたラカムタさんが僕を見ていた。
「ヤート……」
ラカムタさんが僕を見ながら右拳を地面から引き抜き身体を起こす。そして僕に向かって掌を拳にしたまま右手を伸ばしてきた。周りのみんなは緊張で張り詰め、兄さん達はすぐに動けるよう強化魔法を発動させている。
……あれ? なんかラカムタさんから嬉しさとか、よくやったっていう僕を褒める感情が伝わってきた。僕がどう反応するべきかわからないでいると、ラカムタさんは伸ばした拳の親指を立てるとニヤリと笑い口を開く。
「合格だ‼︎ ヤート、よくやった‼︎」
ラカムタさんの嬉しそうな大声が辺りに響いたけど、僕を含めて誰も反応できない。……いや、例外がいた。ハインネルフさん・イーリリスさん・タキタさんが、ラカムタさんに近づいていく。
「なかなかに見応えのあるやり取りでしたね」
「強化魔法の使い方にも目を見張るものがありましたな」
「ヤート殿も良い体捌きだった。おっと、まずは祝福するべきか。ヤート殿、おめでもう」
「……えーと、ありがとう?」
本当にどう反応したら正解なんだろ? あっ、イリュキンがイーリリスさんに近づいていく。
「お、お祖母様、これはいったい……?」
「ああ、混乱させてしまいましたね。実は、ここ数日の間で私達は話し合いを続けていました。内容はヤート殿についてです」
「僕の事?」
「はい。鍛錬開始時は私の崩しや投げの技術の習得を目指していましたが、諸々の事情によってヤート殿の鍛錬は、界気化と強化魔法の精度向上へと方針の変更をしました」
僕は今までの事を思い出してうなずく。
「そうだね。それがイーリリスさん達の話し合いに繋がるの?」
「私達が話し合っていたのは、ヤート殿の鍛錬期間についてです」
「というと?」
「私の技術の習得ならば私が教える事もできるのですが、正直なところ界気化に関しては基本は修めヤート殿自身で深める段階ですし、強化魔法については私でなくとも指導は可能となれば、現状すでに青の私達がヤート殿に教えれる事がないのです」
「ですが、お祖母様」
「イリュキンの言いたい事はわかっています。界気化と強化魔法の鍛錬をある程度終えた後、私の技術の習得に移れば良い、ですね?」
「はい。それではダメなのですか?」
「ダメというわけではありませんが、さすがにこの村いるのが長くなりすぎます」
僕はイーリリスさんの説明で疑問に思った事をラカムタに聞いてみる。
「ラカムタさん、青の村に長くいたらダメなの?」
「青の村に滞在するのは良いんだが、そろそろ青の村で起こった事を報告しにいったん戻りたいと思っている」
「…………今、ラカムタさんとイーリリスさんが言ったのと、僕がラカムタさんに攻撃されたのは何の関係が?」
「ヤートの鍛錬の成果を見るためだな。もし鍛錬の成果が目に見える形で出ていれば、良い区切りになるだろ?」
「なるほど、そういう事か」
「そうだ。突然俺に攻撃されても対応できるくらいに、界気化と強化魔法も仕上がっている。良い報告事項が増えて嬉しいぞ」
「あ……」
イリュキンがラカムタさんの言葉を肩を落としてる。ラカムタさんは、そんなイリュキンに気づいて僕へと振り向く。
「よし、ヤート、大髭様へイリュキンといっしょにあいさつしてこい」
「「え?」」
ラカムタさんから唐突な提案を聞いて僕とイリュキンの口から困惑の声が漏れた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
「ラカムタさん、僕に用があるって聞いたけど何?」
「来たか。まあ、こっちに座れ」
「うん、わかっ……」
僕はその場から飛び退きラカムタさんから離れる。いきなりで少し驚きながらラカムタさんを見ると、僕を見てうなずいていた。
「なかなか良い反応だな」
「……ラカムタさん?」
「ヤート、続けるぞ」
ラカムタさんは座ったままで、僕はしゃがんだり回転する。周りのみんなには僕が突然一人で動いているように見えてるかも知れないけど、僕は真剣そのもの。
なぜなら僕が常に身体から放っている界気化した魔力で感知した、ラカムタさんが頭の中で浮かべた攻撃を避けているからだ。今のところラカムタさんはジッと僕を見ながら攻撃を意識してるだけなんだけど、僕が回避行動を鈍らせた場合には本当に攻撃してくるみたいだから動きを止めれない。
そうして僕が制御しながら強化魔法を発動させつつ十分くらい避けていると、だんだん周りのみんなも僕のしている事に気づいてくる。そんな中、兄さん達がラカムタさんの方へ走り寄ろうとした次の瞬間、ラカムタさんは座ってる状態からフッと消えて僕の後ろに移動し、右拳を振り下ろしてきた。
ちょうど僕の顔を正面から蹴るっていうラカムタさんが想像した攻撃を避けるために、身体を反らしている最中だったから結構辛い。とはいえ泣き言を言ってる暇は一切ないから、のけぞった勢いのまま地面に倒れる。そして、あと少しで地面に身体が着くという時に右手で地面を叩き、その反動を利用して左に転がった。
バカンッ‼︎
数瞬前に僕の立っていた地面から破壊音が響き、衝撃波や破片が僕の身体に当たる。少しして煙が晴れると、振り下ろした右拳を地面に埋めたラカムタさんが僕を見ていた。
「ヤート……」
ラカムタさんが僕を見ながら右拳を地面から引き抜き身体を起こす。そして僕に向かって掌を拳にしたまま右手を伸ばしてきた。周りのみんなは緊張で張り詰め、兄さん達はすぐに動けるよう強化魔法を発動させている。
……あれ? なんかラカムタさんから嬉しさとか、よくやったっていう僕を褒める感情が伝わってきた。僕がどう反応するべきかわからないでいると、ラカムタさんは伸ばした拳の親指を立てるとニヤリと笑い口を開く。
「合格だ‼︎ ヤート、よくやった‼︎」
ラカムタさんの嬉しそうな大声が辺りに響いたけど、僕を含めて誰も反応できない。……いや、例外がいた。ハインネルフさん・イーリリスさん・タキタさんが、ラカムタさんに近づいていく。
「なかなかに見応えのあるやり取りでしたね」
「強化魔法の使い方にも目を見張るものがありましたな」
「ヤート殿も良い体捌きだった。おっと、まずは祝福するべきか。ヤート殿、おめでもう」
「……えーと、ありがとう?」
本当にどう反応したら正解なんだろ? あっ、イリュキンがイーリリスさんに近づいていく。
「お、お祖母様、これはいったい……?」
「ああ、混乱させてしまいましたね。実は、ここ数日の間で私達は話し合いを続けていました。内容はヤート殿についてです」
「僕の事?」
「はい。鍛錬開始時は私の崩しや投げの技術の習得を目指していましたが、諸々の事情によってヤート殿の鍛錬は、界気化と強化魔法の精度向上へと方針の変更をしました」
僕は今までの事を思い出してうなずく。
「そうだね。それがイーリリスさん達の話し合いに繋がるの?」
「私達が話し合っていたのは、ヤート殿の鍛錬期間についてです」
「というと?」
「私の技術の習得ならば私が教える事もできるのですが、正直なところ界気化に関しては基本は修めヤート殿自身で深める段階ですし、強化魔法については私でなくとも指導は可能となれば、現状すでに青の私達がヤート殿に教えれる事がないのです」
「ですが、お祖母様」
「イリュキンの言いたい事はわかっています。界気化と強化魔法の鍛錬をある程度終えた後、私の技術の習得に移れば良い、ですね?」
「はい。それではダメなのですか?」
「ダメというわけではありませんが、さすがにこの村いるのが長くなりすぎます」
僕はイーリリスさんの説明で疑問に思った事をラカムタに聞いてみる。
「ラカムタさん、青の村に長くいたらダメなの?」
「青の村に滞在するのは良いんだが、そろそろ青の村で起こった事を報告しにいったん戻りたいと思っている」
「…………今、ラカムタさんとイーリリスさんが言ったのと、僕がラカムタさんに攻撃されたのは何の関係が?」
「ヤートの鍛錬の成果を見るためだな。もし鍛錬の成果が目に見える形で出ていれば、良い区切りになるだろ?」
「なるほど、そういう事か」
「そうだ。突然俺に攻撃されても対応できるくらいに、界気化と強化魔法も仕上がっている。良い報告事項が増えて嬉しいぞ」
「あ……」
イリュキンがラカムタさんの言葉を肩を落としてる。ラカムタさんは、そんなイリュキンに気づいて僕へと振り向く。
「よし、ヤート、大髭様へイリュキンといっしょにあいさつしてこい」
「「え?」」
ラカムタさんから唐突な提案を聞いて僕とイリュキンの口から困惑の声が漏れた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
2
お気に入りに追加
867
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第二章シャーカ王国編
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
異世界に転生!堪能させて頂きます
葵沙良
ファンタジー
遠宮 鈴霞(とおみやりんか)28歳。
大手企業の庶務課に勤める普通のOL。
今日は何時もの残業が無く、定時で帰宅途中の交差点そばのバス停で事件は起きた━━━━。
ハンドルを切り損なった車が、高校生3人と鈴霞のいるバス停に突っ込んできたのだ!
死んだと思ったのに、目を覚ました場所は白い空間。
女神様から、地球の輪廻に戻るか異世界アークスライドへ転生するか聞かれたのだった。
「せっかくの異世界、チャンスが有るなら行きますとも!堪能させて頂きます♪」
笑いあり涙あり?シリアスあり。トラブルに巻き込まれたり⁉
鈴霞にとって楽しい異世界ライフになるのか⁉
趣味の域で書いておりますので、雑な部分があるかも知れませんが、楽しく読んで頂けたら嬉しいです。戦闘シーンも出来るだけ頑張って書いていきたいと思います。
こちらは《改訂版》です。現在、加筆・修正を大幅に行っています。なので、不定期投稿です。
何の予告もなく修正等行う場合が有りますので、ご容赦下さいm(__)m
拝啓神様。転生場所間違えたでしょ。転生したら木にめり込んで…てか半身が木になってるんですけど!?あでも意外とスペック高くて何とかなりそうです
熊ごろう
ファンタジー
俺はどうやら事故で死んで、神様の計らいで異世界へと転生したらしい。
そこまではわりと良くある?お話だと思う。
ただ俺が皆と違ったのは……森の中、木にめり込んだ状態で転生していたことだろうか。
しかも必死こいて引っこ抜いて見ればめり込んでいた部分が木の体となっていた。次、神様に出会うことがあったならば髪の毛むしってやろうと思う。
ずっとその場に居るわけにもいかず、森の中をあてもなく彷徨う俺であったが、やがて空腹と渇き、それにたまった疲労で意識を失ってしまい……と、そこでこの木の体が思わぬ力を発揮する。なんと地面から水分や養分を取れる上に生命力すら吸い取る事が出来たのだ。
生命力を吸った体は凄まじい力を発揮した。木を殴れば幹をえぐり取り、走れば凄まじい速度な上に疲れもほとんどない。
これはチートきたのでは!?と浮かれそうになる俺であったが……そこはぐっと押さえ気を引き締める。何せ比較対象が無いからね。
比較対象もそうだけど、とりあえず生活していくためには人里に出なければならないだろう。そう考えた俺はひとまず森を抜け出そうと再び歩を進めるが……。
P.S
最近、右半身にリンゴがなるようになりました。
やったね(´・ω・`)
火、木曜と土日更新でいきたいと思います。
転生したら幼女だったので取り敢えず”運”極振りでお願いします。
iroha
ファンタジー
就活失敗から引きこもり。引きこもり歴6年の残念女子が異世界転生!ごーいんぐまいうぇいで周囲を巻き込み珍道中?脱引きこもり幼女の異世界転生譚ここに開幕!?
ヒナ「幼女のかちゅ舌舐めんなよ!」
※他サイトさんでも投稿中。
(初心者の初投稿作品です。深く考えずに、気軽に読んでいただけたらと思います!)
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる