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決戦後にて イーリリスさんと大髭様
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少しして僕達がいるところの湖面が落ち着いた。緑葉船を追い越していった大波を見ると、まだまだ勢いが落ちておらず、むしろ加速してる気がするから大霊湖の湖岸まで届くと思う。
青の村は大丈夫なのか心配してると、イーリリスさんがガクッと体勢を崩して緑葉船に手をついたので、すぐにイーリリスさんに触り同調した。
……呼吸が荒いし疲労が激しいから大波を切るのに全精力を振り絞ったんだね。僕は腰の小袋から薬草団子を取り出し水生魔法で生み出した水球に溶かして薬水を作り出す。
「イーリリスさん、疲労回復の効果があるから、これを少しずつゆっくり飲んで」
「あ……とう……ます」
イーリリスさんがお礼を言っているみたいだけど、かすれてところどころが声になっていない。それに動くだけでも辛いらしく身体も震えてるから、僕の方からイーリリスさんの口元に薬水の水球を持っていく。
……少しずつ身体に染み渡らせるように飲んでくれてる。この感じなら最悪の事態にはならずに済みそうだ。薬水を飲み干して少しするとイーリリスさんは、身体の震えが止まり呼吸も整って、かなり体調が良くなってきた。
「ヤート殿、もう大丈夫です」
「無理しないで良いよ」
「いえ、それよりも……」
イーリリスさんが遠くを見るから、そっちに目を向けると大髭様が僕達の方に近づいてきていた。ここは大髭様にきちんと言っておこう。
僕達の近くに来た大髭様は、僕達の気配が刺々しくなってる事に気づき、一瞬キョトンとした感じになる。
「バフ?」
「どうかしたのか、じゃないよ。大髭様が起こした大波で僕達は転覆しかけたし、転覆を回避するためにイーリリスさんが力を振り絞って、かなり危険な状態になった」
「バフ……」
「大髭様以外の生物は大髭様ほど大きくも頑丈でもないんだから気をつけないとダメ。大髭様と会ったばかりの僕はともかく、ずっと大霊湖に寄り添って暮らしてて大髭様とも面識のある青のイーリリスさんを危険に晒すのは軽率すぎるよ」
「……バフ」
「はい。私は大丈夫ですので気になさらないでください。何より大髭様の雄大さを近くで感じれたのは、貴重な良い経験になりました。青の村のものに話せる事が増えて嬉しいです」
大髭様は僕が言った事を受け止めてくれてイーリリスさんに謝り、イーリリスさんも大髭様の謝罪を受け入れた。こういう大髭様の自分の非を素直に認めれるところも、イーリリスさんの前向きな感じも大人だなって思えるね。その後も僕・イーリリスさん・大髭様で話してたんだけど、僕はふと気になった事を大髭様に聞いた。
「そういえば大髭様は僕達に何か用があったの?」
「バフ、バフ」
「え……」
大髭様の要件は、かなり意外なもので僕はどう判断して良いのかわからないから、イーリリスさんを見るとイーリリスさんは軽くうなずいてきた。
「ヤート殿、ここは大髭様のお誘いを受けましょう」
「本当に良いのかな?」
「バフ」
「大髭様も、おっしゃっていますし遠慮しなくて大丈夫ですよ」
「……わかった。大髭様にお願いするね」
「バフ!!」
少しして緑葉船も運び上げて準備が整う。
「イーリリスさん、もう動いても大丈夫?」
「私は、いつでも構いませんよ」
「わかった。……えっと、それじゃあ大髭様、青の村の近くまでお願い」
「バフ」
僕の言葉に大髭様が答えると風景が後ろに流れ出す。感じとしては源泉の島から緑葉船で進んでる時と同じだけど、一つ決定的に違うところがある。それは僕達がいるところから水面までの高さだ。今僕達は水面から、かなり高い位置に座っている。別に空中に座っているわけじゃなくて、ある生物の上に座っている。
「バフ?」
「うん、見晴らしも良いし、大髭様の頭の上は少し柔らかい地面みたいな感じで適度に沈むから、しっかり座れて乗りごごちも良いよ」
「バフ!!」
そう、僕とイーリリスさんは大髭様の頭の上に座っている。大髭様の僕達を青の村まで送るから頭の上に乗るようにという提案を聞いた時は、青が神聖視してる大髭様に乗って良いのかなって困惑したけど、イーリリスさんからも賛成されて大髭様の頭に上った。
本当にこの世界に生まれて、前世ではできなかった経験ができてる。たぶん、前世の世界で遊覧船や豪華客船に乗って船首とか舳先に行ったら、この水面から離れたところで風を受ける感じになるんだろうね。……そうだ。緑葉船を小型化したらマリンスポーツが再現できるかもしれない。青の村に戻ったら試してみよう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
青の村は大丈夫なのか心配してると、イーリリスさんがガクッと体勢を崩して緑葉船に手をついたので、すぐにイーリリスさんに触り同調した。
……呼吸が荒いし疲労が激しいから大波を切るのに全精力を振り絞ったんだね。僕は腰の小袋から薬草団子を取り出し水生魔法で生み出した水球に溶かして薬水を作り出す。
「イーリリスさん、疲労回復の効果があるから、これを少しずつゆっくり飲んで」
「あ……とう……ます」
イーリリスさんがお礼を言っているみたいだけど、かすれてところどころが声になっていない。それに動くだけでも辛いらしく身体も震えてるから、僕の方からイーリリスさんの口元に薬水の水球を持っていく。
……少しずつ身体に染み渡らせるように飲んでくれてる。この感じなら最悪の事態にはならずに済みそうだ。薬水を飲み干して少しするとイーリリスさんは、身体の震えが止まり呼吸も整って、かなり体調が良くなってきた。
「ヤート殿、もう大丈夫です」
「無理しないで良いよ」
「いえ、それよりも……」
イーリリスさんが遠くを見るから、そっちに目を向けると大髭様が僕達の方に近づいてきていた。ここは大髭様にきちんと言っておこう。
僕達の近くに来た大髭様は、僕達の気配が刺々しくなってる事に気づき、一瞬キョトンとした感じになる。
「バフ?」
「どうかしたのか、じゃないよ。大髭様が起こした大波で僕達は転覆しかけたし、転覆を回避するためにイーリリスさんが力を振り絞って、かなり危険な状態になった」
「バフ……」
「大髭様以外の生物は大髭様ほど大きくも頑丈でもないんだから気をつけないとダメ。大髭様と会ったばかりの僕はともかく、ずっと大霊湖に寄り添って暮らしてて大髭様とも面識のある青のイーリリスさんを危険に晒すのは軽率すぎるよ」
「……バフ」
「はい。私は大丈夫ですので気になさらないでください。何より大髭様の雄大さを近くで感じれたのは、貴重な良い経験になりました。青の村のものに話せる事が増えて嬉しいです」
大髭様は僕が言った事を受け止めてくれてイーリリスさんに謝り、イーリリスさんも大髭様の謝罪を受け入れた。こういう大髭様の自分の非を素直に認めれるところも、イーリリスさんの前向きな感じも大人だなって思えるね。その後も僕・イーリリスさん・大髭様で話してたんだけど、僕はふと気になった事を大髭様に聞いた。
「そういえば大髭様は僕達に何か用があったの?」
「バフ、バフ」
「え……」
大髭様の要件は、かなり意外なもので僕はどう判断して良いのかわからないから、イーリリスさんを見るとイーリリスさんは軽くうなずいてきた。
「ヤート殿、ここは大髭様のお誘いを受けましょう」
「本当に良いのかな?」
「バフ」
「大髭様も、おっしゃっていますし遠慮しなくて大丈夫ですよ」
「……わかった。大髭様にお願いするね」
「バフ!!」
少しして緑葉船も運び上げて準備が整う。
「イーリリスさん、もう動いても大丈夫?」
「私は、いつでも構いませんよ」
「わかった。……えっと、それじゃあ大髭様、青の村の近くまでお願い」
「バフ」
僕の言葉に大髭様が答えると風景が後ろに流れ出す。感じとしては源泉の島から緑葉船で進んでる時と同じだけど、一つ決定的に違うところがある。それは僕達がいるところから水面までの高さだ。今僕達は水面から、かなり高い位置に座っている。別に空中に座っているわけじゃなくて、ある生物の上に座っている。
「バフ?」
「うん、見晴らしも良いし、大髭様の頭の上は少し柔らかい地面みたいな感じで適度に沈むから、しっかり座れて乗りごごちも良いよ」
「バフ!!」
そう、僕とイーリリスさんは大髭様の頭の上に座っている。大髭様の僕達を青の村まで送るから頭の上に乗るようにという提案を聞いた時は、青が神聖視してる大髭様に乗って良いのかなって困惑したけど、イーリリスさんからも賛成されて大髭様の頭に上った。
本当にこの世界に生まれて、前世ではできなかった経験ができてる。たぶん、前世の世界で遊覧船や豪華客船に乗って船首とか舳先に行ったら、この水面から離れたところで風を受ける感じになるんだろうね。……そうだ。緑葉船を小型化したらマリンスポーツが再現できるかもしれない。青の村に戻ったら試してみよう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
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