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青の村への旅にて 誘いとあふれる楽しみ
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みんなの食事がひと段落して思い思いに過ごしてる中で、僕はラカムタさんや水守達が集まってるところに行きタキタさんに話しかける。
「タキタさん、聞きたい事があるんだけど、今って大丈夫?」
「ええ、構いませんよ。それで聞きたい事とは?」
「タキタさんは僕以外の欠色に会った事ある?」
「ふむ、欠色ですか。……かなり昔に獣人族の里の一つで会いましたな」
「その人と話した?」
「少しだけですが話しました」
「そうなんだ。どんな感じの人だった? 僕とは違う感じ?」
「ヤート殿とは雰囲気がだいぶ違っていて、……なんというか陰という感じでした」
「陰? 暗いって事?」
「嫉妬、諦め、絶望といった印象を受けましたな」
「僕にも諦めてる事はあるんだけどね」
僕が言うとラカムタさんが顔を強張らせて、タキタさんは少し驚いた顔になった。
「ほう、例えばどのような事でしょう?」
「焼いた肉を食べてみたい」
「なるほど、他にもありますかな?」
「他? 他には……特に無いね。前は兄さん達と狩りに行くのを諦めてたんだけど今は違う」
「なぜですか?」
「準備は必要だけど今なら兄さん達に着いていけるから」
なんでかラカムタさんは安心したみたいにフーッてため息をついて、タキタさんは顎に手を当てて何かに納得するようにうなずいた。
「やはり、ヤート殿とわしが昔に会ったものは同じ欠色でも違いますな」
「そうなの?」
「はい、先ほども言った通りわしが昔に会ったものは陰で、ヤート殿は不惑といった感じでしょうか」
「不惑?」
「何にも惑わされず囚われていないという意味です」
「タキタさんには僕がそういう風に見えるんだね。そうだ、もっといろいろ聞きたいから二人で散歩しない?」
僕がタキタさんを散歩に誘うと周りのみんなは驚いた顔をする。そんなに僕が散歩に誘うのは変な事かな? タキタさんも同じで始めは驚いてたけど、すぐに近づいてくるイリュキンの方を見た。ああ、そうだった。
「タキタさんはイリュキンのそばにいるのが役目なのに離れるのは違うよね。考え足らずだった。イリュキン、タキタさん、ごめん」
「ヤート君、タキタ、構わないから散歩に行ってきたら良い。交流を深めるのは大事な事だし、それがヤート君から誘われての事なら是非ともいくべきだよ」
「良いの?」
「私に遠慮する必要はないさ。その代わりと言ってなんだが今度は私を散歩に誘ってくれると嬉しいな。もちろんヤート君と私の二人でだ」
「それぐらいならいつでも良い「ヤート君」……リンリー、どうかした?」
イリュキンに返事していると、その返事をさえぎるように僕の後ろにいたリンリーが僕に声をかけてきた。
「私もヤート君と二人で散歩したいです」
「イリュキンにも言おうとしたけど、それぐらいならいつでも「リンリー」……」
今度はイリュキンに遮られた。イリュキンがリンリーに近づいていく。
「わかってると思うけど、先にヤート君と散歩に行くのは私だ」
「……わかってます。出遅れたのは確かなので今回は譲ります。今回はですけど」
……リンリーとイリュキンは仲が良いはずだけど、こういう雰囲気が険しい時があるのは何で? しかも二人に何かあったのって聞いても何でも無いって言われるんだよね。僕が悩んでると肩を軽く叩かれたから振り向くとタキタさんがいて小声で話しかけてきた。
「ヤート殿、姫さまとリンリー殿は落ち着くのにしばらくかかりそうなので散歩に行くとしましょう」
「……二人はあのままで良いの?」
「あのままにしておくしかないという感じですな。譲れぬ事があるもの同士がにらみ合っている場合、落ち着くには時間が必要ですし第三者が仲立ちするのも難しいものです。それに……」
タキタさんがスッと静かに指差した方を見るとラカムタさんが早く行けと言わんばかりにクイって顔を動かしてた。一応リンリーとイリュキンの様子を伺ったけど僕達のやり取りに気づいてない。……うん、完全に二人の世界に入っていて僕がここにいてもできる事はなさそうだから、ここは年長者のラカムタさんとタキタさんの言う通りにしよう。
「タキタさん行こう」
「のんびり散歩と行きましょう」
僕はラカムタさんに行ってきますっていう意味で手を振ってタキタさんと歩き出した。あと三体にも手を振ったら鬼熊と破壊猪はうなずいてその場に眠り始め、ディグリも僕にうなずいてから河に身体の一部を浸しだした。どうやら今回はタキタさんと二人で散歩させてくれるみたいだ。
「ヤート殿を見てるといろいろ考える事が浮かびます」
「やっぱり僕の行動って変?」
「いえいえ、姫さまを始めとした若いものや、もちろんこの老体にも良い刺激になりますよ」
「そう言ってもらえると嬉しい」
「ヤート殿の事をいろいろ聞かせてください」
「僕に答えれる事なら何でも聞いてよ」
「ヤート殿もわしに聞きたい事があればどうぞ」
「もちろんそうするつもり。楽しい散歩になりそうだね」
「わしも年甲斐もなくワクワクしています」
タキタさんの足取りがどことなく軽い気がするから、もしかしたら気を良くしたタキタさんがいろんな片鱗を見せてくれるかもしれない。良い観察の機会が巡ってきた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
「タキタさん、聞きたい事があるんだけど、今って大丈夫?」
「ええ、構いませんよ。それで聞きたい事とは?」
「タキタさんは僕以外の欠色に会った事ある?」
「ふむ、欠色ですか。……かなり昔に獣人族の里の一つで会いましたな」
「その人と話した?」
「少しだけですが話しました」
「そうなんだ。どんな感じの人だった? 僕とは違う感じ?」
「ヤート殿とは雰囲気がだいぶ違っていて、……なんというか陰という感じでした」
「陰? 暗いって事?」
「嫉妬、諦め、絶望といった印象を受けましたな」
「僕にも諦めてる事はあるんだけどね」
僕が言うとラカムタさんが顔を強張らせて、タキタさんは少し驚いた顔になった。
「ほう、例えばどのような事でしょう?」
「焼いた肉を食べてみたい」
「なるほど、他にもありますかな?」
「他? 他には……特に無いね。前は兄さん達と狩りに行くのを諦めてたんだけど今は違う」
「なぜですか?」
「準備は必要だけど今なら兄さん達に着いていけるから」
なんでかラカムタさんは安心したみたいにフーッてため息をついて、タキタさんは顎に手を当てて何かに納得するようにうなずいた。
「やはり、ヤート殿とわしが昔に会ったものは同じ欠色でも違いますな」
「そうなの?」
「はい、先ほども言った通りわしが昔に会ったものは陰で、ヤート殿は不惑といった感じでしょうか」
「不惑?」
「何にも惑わされず囚われていないという意味です」
「タキタさんには僕がそういう風に見えるんだね。そうだ、もっといろいろ聞きたいから二人で散歩しない?」
僕がタキタさんを散歩に誘うと周りのみんなは驚いた顔をする。そんなに僕が散歩に誘うのは変な事かな? タキタさんも同じで始めは驚いてたけど、すぐに近づいてくるイリュキンの方を見た。ああ、そうだった。
「タキタさんはイリュキンのそばにいるのが役目なのに離れるのは違うよね。考え足らずだった。イリュキン、タキタさん、ごめん」
「ヤート君、タキタ、構わないから散歩に行ってきたら良い。交流を深めるのは大事な事だし、それがヤート君から誘われての事なら是非ともいくべきだよ」
「良いの?」
「私に遠慮する必要はないさ。その代わりと言ってなんだが今度は私を散歩に誘ってくれると嬉しいな。もちろんヤート君と私の二人でだ」
「それぐらいならいつでも良い「ヤート君」……リンリー、どうかした?」
イリュキンに返事していると、その返事をさえぎるように僕の後ろにいたリンリーが僕に声をかけてきた。
「私もヤート君と二人で散歩したいです」
「イリュキンにも言おうとしたけど、それぐらいならいつでも「リンリー」……」
今度はイリュキンに遮られた。イリュキンがリンリーに近づいていく。
「わかってると思うけど、先にヤート君と散歩に行くのは私だ」
「……わかってます。出遅れたのは確かなので今回は譲ります。今回はですけど」
……リンリーとイリュキンは仲が良いはずだけど、こういう雰囲気が険しい時があるのは何で? しかも二人に何かあったのって聞いても何でも無いって言われるんだよね。僕が悩んでると肩を軽く叩かれたから振り向くとタキタさんがいて小声で話しかけてきた。
「ヤート殿、姫さまとリンリー殿は落ち着くのにしばらくかかりそうなので散歩に行くとしましょう」
「……二人はあのままで良いの?」
「あのままにしておくしかないという感じですな。譲れぬ事があるもの同士がにらみ合っている場合、落ち着くには時間が必要ですし第三者が仲立ちするのも難しいものです。それに……」
タキタさんがスッと静かに指差した方を見るとラカムタさんが早く行けと言わんばかりにクイって顔を動かしてた。一応リンリーとイリュキンの様子を伺ったけど僕達のやり取りに気づいてない。……うん、完全に二人の世界に入っていて僕がここにいてもできる事はなさそうだから、ここは年長者のラカムタさんとタキタさんの言う通りにしよう。
「タキタさん行こう」
「のんびり散歩と行きましょう」
僕はラカムタさんに行ってきますっていう意味で手を振ってタキタさんと歩き出した。あと三体にも手を振ったら鬼熊と破壊猪はうなずいてその場に眠り始め、ディグリも僕にうなずいてから河に身体の一部を浸しだした。どうやら今回はタキタさんと二人で散歩させてくれるみたいだ。
「ヤート殿を見てるといろいろ考える事が浮かびます」
「やっぱり僕の行動って変?」
「いえいえ、姫さまを始めとした若いものや、もちろんこの老体にも良い刺激になりますよ」
「そう言ってもらえると嬉しい」
「ヤート殿の事をいろいろ聞かせてください」
「僕に答えれる事なら何でも聞いてよ」
「ヤート殿もわしに聞きたい事があればどうぞ」
「もちろんそうするつもり。楽しい散歩になりそうだね」
「わしも年甲斐もなくワクワクしています」
タキタさんの足取りがどことなく軽い気がするから、もしかしたら気を良くしたタキタさんがいろんな片鱗を見せてくれるかもしれない。良い観察の機会が巡ってきた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
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