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第5章 異世界の男は斬る
第23話
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さっきまでの激しい攻防と違い、今の俺と才歪と紋綴りは静かににらみ合っている。
まあ、静かと言っても動きがないだけで、お互いに先制する機会を狙って相手の動き出そうとした時の隙をうかがっている状況だ。
俺もあの二人も一瞬で間合いを潰せる速さを持っているため、全く油断ができない。
ただこのにらみ合っている時間は長く続かないとあいつらも理解しているだろう。
なぜなら、まず俺の立場からするとにらみ合いを続ける時間は、そのまま異能力図鑑が切り札の準備を完了させるために使える時間という事になるから異能力図鑑を邪魔する意味でもこの状況を打破しなければならない。
また才歪と紋綴りからすれば、異能力図鑑が自滅と叫んでしまうほどの無茶な強化と調整を自分達に施した状態なわけで、何もせず立っているだけで高負荷が身体を押し潰しかねない状態だ。
俺を倒すための無茶な強化と調整を無駄にしないためにも、このまま棒立ちで終わらせる気はないだろう。
「才歪、紋綴り、体感で残り五分ほどである」
「…………わがっだわ」
「ようやくかよ……」
本当に時間がないな。
しょうがない、俺からきっかけを作るか。
そう決めた俺は深呼吸をして音と色のない世界へ入ろうとした。
ボッ、ボボッ‼︎
ズガンッ‼︎
予想通り才歪が異常に太く長くなった腕を伸ばして突きを連続で放ってきて、紋綴りも俺のそばまで接近し拳を振り下ろしてくる。
俺は跳び退きながら全てを避け着地と同時に身体を前に倒しながら踏み込み加速して、拳を振り下ろした体勢の紋綴りに斬りかかった。
ニイ……。
加速している俺の目に俺の方を向いて笑っている紋綴りが写る。
チッ、俺と同等の速さを手にしている紋綴りには、いくら加速しても音と色のない世界に入ってない通常の速さなら反応されてしまうか。
この感じだと才歪も同じと考えておくとして、とにかくこのまま紋綴りへ近づく。
同じ速さを持っていても俺とお前らにある差を見せてやろう。
俺が最速最短で紋綴りへ直進していくと、紋綴りは振り下ろしで砕いた路面の瓦礫をつかみ俺へと投げる。
全ての瓦礫を斬り捨てたり最小限の動きで避け無駄なく詰め寄っていけば、紋綴りは苦々しげな顔を俺をにらみながら強引に身体を俺の方へ向けた。
そして手をつきながら丸太以上に太い脚で蹴ってくる。
俺の顔よりも大きな靴の裏が迫ってくるが、俺は路面に服が擦れるほど身体を倒して紋綴りの蹴りをかい潜った後、一瞬手で路面を叩きその反動で身体を起こすと同時に肩で紋綴りの脚を跳ね上げた。
「なんだどっ⁉︎」
「雑な攻撃は効かないと何回言えば理解するんです?」
片足を跳ね上げられたためにその勢いで下半身も浮き空中で泳ぐような形なり、すぐには次の行動を取れなくなった紋綴りの顔に狙いを定める。
すると才歪が紋綴りの身体に飛び乗り、そのまま俺めがけて何発も伸びる突きを放ってきたので、俺は才歪の突きを避けながら紋綴りの顔へ近づいていく。
「…………なんで当でられないの?」
「どうしてでしょう、ね‼︎」
「ぬ、ぐっ‼︎」
加速の勢いと体重を完全に乗せた木刀の一撃を紋綴りの顔へ叩き込もうとしたものの、避けられないと悟った紋綴りが両腕で顔を包んだため紋綴りの左前腕を叩き折っただけで終わってしまう。
追撃は……、才歪が突きを放ってきそうになっているからいったん引くか。
俺は才歪の伸びる突きの間合いからさらに二歩離れた場所に移動して、さっきまでの攻防を思い返す。
「問題ないですね。次で決めさせてもらいます」
「なぜだ⁉︎」
「はい?」
「おれだぢば、おまえどおなじばやざをでにしだのに、なぜかでない⁉︎」
「ああ、それは僕とあなた達に決定的な差があるから当然の事ですよ」
「…………どういう意味?」
「確かに速いですが、その速さは少し前に手に入れたもの。あなた達は単純に動き慣れてないから僕に負けているんです」
「…………ありえない。私ば運動神経も上振れざぜだわ」
「紋綴りさんが身体を強化して才歪さんが制御力を上振れさせても、その状態の身体を動かした経験値が圧倒的に足りてません。同じくらいの速さなら、より上手く身体を動かせる方が勝つのは当然です。さらに言えばあなた達の身体はいつ壊れても同じくない状況に対して、僕はここまで動き続けた疲労はあっても健康で安定しています。どちらが有利かは言うまでもないですよね?」
「…………う」
「いのうりょぐずがん」
「あと三分ほどである……」
「…………紋綴り」
「わがっだ……」
うん? 覚悟を決めた顔の紋綴りが前に出て才歪は歯を食いしばりながら下がったな。
距離ができたなら俺は音と色のない世界へ入るだけなのにどういうつもりだと一瞬迷うものの、その間にも異能力図鑑の準備完了が近づくため俺は深呼吸をしようとした。
ボッ‼︎
今まで以上の速さで今まで以上に伸びてくる才歪の突きが顔に迫ってきたため、俺は深呼吸を中断し軽く身体を回転させて才歪の突きを避ける。
「ぶんっ‼︎」
予想通り紋綴りが接近してきたが、今までのような大振りの攻撃ではなく指先で払うように細かく何度も腕を振ってきた。
まあ、見上げるほどの巨体である紋綴りの太い指先ならかすらせるだけでも強力な武器として通用するのは間違いないが、わざわざ自分の利点を消す動きをするのは本当にどういうつもりなんだろうな?
疑問は消えないまま紋綴りが攻撃パターンを変え混ぜてきた鋭く細かい前蹴りを狙って横から膝を砕こうとした。
ボッ‼︎‼︎
俺のほぼない攻撃時の隙を狙い、さらに速さが増した才歪の突きが伸びてきたため紋綴りへの攻撃を止め迎撃しようとしたら、才歪は攻撃を止めて突きを戻す。
肩透かしを喰らいほんのわずかに硬直した俺へ、今度は体勢を整えた紋綴りが拳を振り下ろしてきたので一瞬迷い回避を選択し跳び退くと紋綴りは攻撃を止めて構え直し俺に鋭い視線を向けてくる。
その後、攻め方を少しずつ変えて攻撃してみても才歪と紋綴りはわずかな隙をつかれた俺が回避をした時には、いっさい追撃を選ばず攻め切ってこない。
ふむ、なんというか、俺に仕切り直しを選ばせる戦い方をしている気がするな。
「ああ、なるほど。僕を倒す事から時間稼ぎに切り替えたんですね」
「「…………」」
「無言は肯定と受け取ります」
「「…………」」
「こうしている間にも時間は過ぎて、残り時間が二分半を切ろうとしている。仕方ありません。僕も無理をします。ここからの二分は皆さんにとって人生で一番長いものになるので覚悟してください。それでは始めます」
俺は深呼吸をし音と色のない世界へ入ろうとしたものの、やはり才歪が高速で腕を伸ばしてきたため身体を前に倒しながら踏み込み最短で加速する。
そして、そのまま異能力図鑑へ狙いを定めて突進していく途中で、もう一度音と色のない世界へ入ろうとしたが、今度は才歪の伸びてくる突きに加えて紋綴りの瓦礫の散弾も俺の集中しようとした瞬間を邪魔してきた。
この才歪と紋綴りの俺を絶対に音と色のない世界へは入らさないという執念にはイラつきながらも感心してしまう。
まあ、イラつきの方が強いのは確かだが、そればかりに意識をさくのは許されない。
今は元々の最優先の撃破対象である異能力図鑑へ突進していく。
「ごごば、どおざんぞっ‼︎」
「邪魔です」
「なにっ⁉︎ ぐおっ‼︎」
紋綴りが俺の前に立ち塞がり右の前蹴りを繰り出してきたので脛あたりでたたっ斬り、さらに股の下をくぐりながら左脛も切断して先を急いだ。
しかし、俺の視界に迎撃の構えをとっている才歪が入った時、何かが俺に覆いかぶさってくる気配を感じた。
この何かというのは当然紋綴りで叫びながら俺をつかむか巨体で押し潰そうとしてきているんだろうが、ここは無視する。
優先するべきなのはあくまで異能力図鑑の撃破であり、もしくはそれを邪魔する存在。
つまり今なら才歪だ。
残り二分くらいだから、このまま才歪を倒してさらに異能力図鑑も倒すとしよう。
才歪も俺が紋綴りを無視すると認識した途端、目をギラリと光らせて獰猛に笑った。
お互いにやる気になっている中、俺の一歩目と同時に才歪が突きを放ってこようとしたから、俺は腕を斬り落とすという殺気を放ち牽制する。
しかし、才歪はそれならそれで構わないとばかりに全く気にせず、今までで最速の左の突きを伸ばしてきた。
「シッ‼︎」
「どれだけ速くても来るのがわかっているなら無意味です。当然、二撃目も通じません」
「ぐ……」
俺は才歪の狙いが左の突きを迎撃した瞬間の俺の隙を狙った右の突きで仕留める事だと判断し、足を止めずに身体を回転させ才歪の左拳に横から肘を叩き込む。
その結果、バキッという骨の折れた音と感触とともに才歪が一瞬硬直したため、一気に踏み込み木刀の間合いまで入って才歪の首を狙った。
「やらぜるがあああああっ‼︎」
不意に横から叫び声と殺意を感じたので攻撃を止めて横へ数歩ズレたら、俺の顔のあった位置で紋綴りの口が閉じられガチンッと歯と歯を打ち鳴らした音が響く。
…………どう考えても、あのままあの位置にいたら頭蓋骨ごと食いちぎられたな、って考えるのそこじゃない。
何で両足を斬られた紋綴りが俺の横に回り込めた?
いくら本体が別にある器物で身体を作り直せるとしても、このごく短時間での修復は無理なはず。
俺は紋綴りの状態を確かめるため走りながら数瞬観察すると、紋綴りの今にかける執念と歯で攻撃して理由を感じ取った。
「まさか、斬られた足を元に戻さず断面をコブ状した後、手足を使った四足歩行で移動してきたとは思いませんでした」
「ぜっだいに、ぜっだいにやらぜんぞっ‼︎」
「…………無茶をずる。でも、今ば無茶をずる時」
「いのうりょぐずがんっ⁉︎」
「あと一分半である‼︎」
「ぬう……」
「…………長いげれど死力を尽ぐずわ」
「どうぜんだっ‼︎」
こいつらはこの瞬間にも身体が壊れながらも俺の前に立ち塞がっているんだよな……。
こいつらのやりたい事には全く興味がわかないが、必死さは見習うべき点と言える。
俺は本当に勝つためだけの行動を取ると決めチラリと吾郷学園の方を振り向いた後、足もとの影を見下ろす。
時間がない中で俺の取った行動に異能力図鑑達は困惑している気配を感じるが、俺は無視したままつぶやく。
「黒鳥夜 綺寂、悪いがここからの時間はお前らを巻き込む。死にたくないなら全員に気合いを入れさせろ」
『鶴見君、待ちなさい‼︎ 何をするつもりなの⁉︎』
「すぐにでも始めるぞ。通達しなくて良いのか?」
『少しで良いから時間をちょうだい‼︎』
「もう遅い」
『まっ……』
俺は激しく波打つ影と黒鳥夜 綺寂を頭の中から消し、異能力図鑑達を見ると明らかに変わった俺の雰囲気に気づいたのか、三人とも顔をひきつらせていた。
その顔を見て前の世界での最後の戦場を思い出すと同時に、いっさい何も考えずただただ殺気をあふれさせる。
「う、ぐ、ば、ばげものめ‼︎」
「…………今までのば何だっだの?」
「いのうりょぐずがん、まだなのが⁉︎」
「残り一分を切ったのは確かだ‼︎」
へえ、まだ余裕があるみたいだな。
それならこうするか。
俺は絶対に斬るという殺気を異能力図鑑へ叩き込んだ。
「がはっ、く、ぐげえ……」
「異能力図鑑⁉︎」
「おい、いのうりょぐずがん⁉︎」
今まで見えていた異能力図鑑の姿が霧散し、数十歩奥に新たな異能力図鑑が現れる。
いや、新たなというかあれが正真正銘の異能力図鑑なんだろう。
「やっとあぶり出せたな。異能力図鑑、お前を斬れば終わりだ。死ね」
異能力図鑑の光線を斬り捨てた時のように全力で木刀を振り切り斬撃を飛ばした。
「ぬがあああああっ‼︎ ぐぶっ……」
チッ、防がれたか。
俺の斬撃は全身を極限まで力ませた紋綴りの身体を深く斬っただけで終わる。
紋綴りは吐血しながら崩れ落ちたものの、俺はその身体を両断できなかった事からやはり直接斬らないとダメだなと反省して走り出す。
しかし、すぐに俺の前に血の気の引いて身体を震わせている才歪が立ち塞がる。
「この状況で勝てると思ってるのか?」
「…………異能力図鑑が無事なら勝でる」
「くはは、面白い冗談だな」
「…………絶対に負げないわ」
どう考えても俺の殺気にやられている才歪を見て、これは今が攻め切る時と判断した。
まずは才歪の眼前へ跳び込み木刀を一閃したが、それは必死な顔の才歪に避けられたため追撃として体勢の崩れた才歪の横腹を本気で蹴る。
うん? へえ、内臓を潰すつもりで蹴りを叩き込んだのに、才歪が地面を転がった後でも意識を保って立ち上がったのは意外だな。
俺が無意識に手加減しているのか、才歪が強いせいなのか、他に理由があるのかわからないが、それならそれでさらに勝つために全力を振り絞るだけだ。
俺は才歪と紋綴りがすぐ動ける状態じゃないのを確認した後に再び異能力図鑑へと走り出すと、異能力図鑑は苦々しげに俺を見てくる。
「くう……、ここまで来てやられるつもりはないのである‼︎」
「残りは数十秒、ここで決める」
自分を奮い立たせる異能力図鑑に届くまで踏み込み一歩分まで来た時、俺に大量の瓦礫が飛んできた。
瓦礫の飛んでいく範囲は完全に異能力図鑑を巻き込んでいるが、どうやら少しでも俺を抑え込む事を優先した結果らしい。
「はあっ‼︎」
バキンッ‼︎
俺の殺気を受けた瓦礫がボロボロに崩れて、さらにすぐそばで俺の殺気をくらった異能力図鑑が白目を剥きて倒れかけたので、一歩踏み込み木刀を振り下ろした。
…………しかし、俺の斬撃は空振りに終わる。
「さ、才歪、助かったのである……」
「…………私が腕を伸ばじでつがみ異能力図鑑を引き寄ぜられだのば、紋綴りのほんの一瞬注意を逸らじでぐれだおがげ」
「そうか。紋綴り、感謝するぞ」
「ぎにずるな。だが……」
「…………ぞうね。もう時間ばないわ」
「くそ、準備が終わるまで残り三十秒もないというのに……」
「あいづのあれを、どめられるぎがじねえ」
話している異能力図鑑達を見て思うのは怒りだ。
とにかく決めきれない自分に怒りが起きてしょうがない。
今の俺なら音と色のない世界へ入らなくても攻め切れるはずだったのに、ここぞという場面であいつらに粘られているのは最悪だ。
「絶対に、絶対に次で決めてやる」
「…………異能力図鑑、発動ざぜで」
「ぞれじがない」
「致し方ないのである。才歪、我輩が発動させた後の追撃は任せたぞ」
「…………わがっでるわ」
あいつらは何か決意をしているよだが関係ない。
俺は殺気をあふれさせながら深呼吸を繰り返し自分へのイラつきを鎮める。
そして自分の中のグチャグチャした感情を消し去れたと感じた瞬間、俺は音と色のない世界へ入った。
◆◆◆◆◆
しかし、気がつくと俺は奥底にいた。
「…………は?」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
「面白かった!」、「続きが気になる、読みたい!」、「今後どうなるのっ……!」と思ったら、お気に入りの登録を、ぜひお願いします。
また感想や誤字脱字報告もお待ちしています。
まあ、静かと言っても動きがないだけで、お互いに先制する機会を狙って相手の動き出そうとした時の隙をうかがっている状況だ。
俺もあの二人も一瞬で間合いを潰せる速さを持っているため、全く油断ができない。
ただこのにらみ合っている時間は長く続かないとあいつらも理解しているだろう。
なぜなら、まず俺の立場からするとにらみ合いを続ける時間は、そのまま異能力図鑑が切り札の準備を完了させるために使える時間という事になるから異能力図鑑を邪魔する意味でもこの状況を打破しなければならない。
また才歪と紋綴りからすれば、異能力図鑑が自滅と叫んでしまうほどの無茶な強化と調整を自分達に施した状態なわけで、何もせず立っているだけで高負荷が身体を押し潰しかねない状態だ。
俺を倒すための無茶な強化と調整を無駄にしないためにも、このまま棒立ちで終わらせる気はないだろう。
「才歪、紋綴り、体感で残り五分ほどである」
「…………わがっだわ」
「ようやくかよ……」
本当に時間がないな。
しょうがない、俺からきっかけを作るか。
そう決めた俺は深呼吸をして音と色のない世界へ入ろうとした。
ボッ、ボボッ‼︎
ズガンッ‼︎
予想通り才歪が異常に太く長くなった腕を伸ばして突きを連続で放ってきて、紋綴りも俺のそばまで接近し拳を振り下ろしてくる。
俺は跳び退きながら全てを避け着地と同時に身体を前に倒しながら踏み込み加速して、拳を振り下ろした体勢の紋綴りに斬りかかった。
ニイ……。
加速している俺の目に俺の方を向いて笑っている紋綴りが写る。
チッ、俺と同等の速さを手にしている紋綴りには、いくら加速しても音と色のない世界に入ってない通常の速さなら反応されてしまうか。
この感じだと才歪も同じと考えておくとして、とにかくこのまま紋綴りへ近づく。
同じ速さを持っていても俺とお前らにある差を見せてやろう。
俺が最速最短で紋綴りへ直進していくと、紋綴りは振り下ろしで砕いた路面の瓦礫をつかみ俺へと投げる。
全ての瓦礫を斬り捨てたり最小限の動きで避け無駄なく詰め寄っていけば、紋綴りは苦々しげな顔を俺をにらみながら強引に身体を俺の方へ向けた。
そして手をつきながら丸太以上に太い脚で蹴ってくる。
俺の顔よりも大きな靴の裏が迫ってくるが、俺は路面に服が擦れるほど身体を倒して紋綴りの蹴りをかい潜った後、一瞬手で路面を叩きその反動で身体を起こすと同時に肩で紋綴りの脚を跳ね上げた。
「なんだどっ⁉︎」
「雑な攻撃は効かないと何回言えば理解するんです?」
片足を跳ね上げられたためにその勢いで下半身も浮き空中で泳ぐような形なり、すぐには次の行動を取れなくなった紋綴りの顔に狙いを定める。
すると才歪が紋綴りの身体に飛び乗り、そのまま俺めがけて何発も伸びる突きを放ってきたので、俺は才歪の突きを避けながら紋綴りの顔へ近づいていく。
「…………なんで当でられないの?」
「どうしてでしょう、ね‼︎」
「ぬ、ぐっ‼︎」
加速の勢いと体重を完全に乗せた木刀の一撃を紋綴りの顔へ叩き込もうとしたものの、避けられないと悟った紋綴りが両腕で顔を包んだため紋綴りの左前腕を叩き折っただけで終わってしまう。
追撃は……、才歪が突きを放ってきそうになっているからいったん引くか。
俺は才歪の伸びる突きの間合いからさらに二歩離れた場所に移動して、さっきまでの攻防を思い返す。
「問題ないですね。次で決めさせてもらいます」
「なぜだ⁉︎」
「はい?」
「おれだぢば、おまえどおなじばやざをでにしだのに、なぜかでない⁉︎」
「ああ、それは僕とあなた達に決定的な差があるから当然の事ですよ」
「…………どういう意味?」
「確かに速いですが、その速さは少し前に手に入れたもの。あなた達は単純に動き慣れてないから僕に負けているんです」
「…………ありえない。私ば運動神経も上振れざぜだわ」
「紋綴りさんが身体を強化して才歪さんが制御力を上振れさせても、その状態の身体を動かした経験値が圧倒的に足りてません。同じくらいの速さなら、より上手く身体を動かせる方が勝つのは当然です。さらに言えばあなた達の身体はいつ壊れても同じくない状況に対して、僕はここまで動き続けた疲労はあっても健康で安定しています。どちらが有利かは言うまでもないですよね?」
「…………う」
「いのうりょぐずがん」
「あと三分ほどである……」
「…………紋綴り」
「わがっだ……」
うん? 覚悟を決めた顔の紋綴りが前に出て才歪は歯を食いしばりながら下がったな。
距離ができたなら俺は音と色のない世界へ入るだけなのにどういうつもりだと一瞬迷うものの、その間にも異能力図鑑の準備完了が近づくため俺は深呼吸をしようとした。
ボッ‼︎
今まで以上の速さで今まで以上に伸びてくる才歪の突きが顔に迫ってきたため、俺は深呼吸を中断し軽く身体を回転させて才歪の突きを避ける。
「ぶんっ‼︎」
予想通り紋綴りが接近してきたが、今までのような大振りの攻撃ではなく指先で払うように細かく何度も腕を振ってきた。
まあ、見上げるほどの巨体である紋綴りの太い指先ならかすらせるだけでも強力な武器として通用するのは間違いないが、わざわざ自分の利点を消す動きをするのは本当にどういうつもりなんだろうな?
疑問は消えないまま紋綴りが攻撃パターンを変え混ぜてきた鋭く細かい前蹴りを狙って横から膝を砕こうとした。
ボッ‼︎‼︎
俺のほぼない攻撃時の隙を狙い、さらに速さが増した才歪の突きが伸びてきたため紋綴りへの攻撃を止め迎撃しようとしたら、才歪は攻撃を止めて突きを戻す。
肩透かしを喰らいほんのわずかに硬直した俺へ、今度は体勢を整えた紋綴りが拳を振り下ろしてきたので一瞬迷い回避を選択し跳び退くと紋綴りは攻撃を止めて構え直し俺に鋭い視線を向けてくる。
その後、攻め方を少しずつ変えて攻撃してみても才歪と紋綴りはわずかな隙をつかれた俺が回避をした時には、いっさい追撃を選ばず攻め切ってこない。
ふむ、なんというか、俺に仕切り直しを選ばせる戦い方をしている気がするな。
「ああ、なるほど。僕を倒す事から時間稼ぎに切り替えたんですね」
「「…………」」
「無言は肯定と受け取ります」
「「…………」」
「こうしている間にも時間は過ぎて、残り時間が二分半を切ろうとしている。仕方ありません。僕も無理をします。ここからの二分は皆さんにとって人生で一番長いものになるので覚悟してください。それでは始めます」
俺は深呼吸をし音と色のない世界へ入ろうとしたものの、やはり才歪が高速で腕を伸ばしてきたため身体を前に倒しながら踏み込み最短で加速する。
そして、そのまま異能力図鑑へ狙いを定めて突進していく途中で、もう一度音と色のない世界へ入ろうとしたが、今度は才歪の伸びてくる突きに加えて紋綴りの瓦礫の散弾も俺の集中しようとした瞬間を邪魔してきた。
この才歪と紋綴りの俺を絶対に音と色のない世界へは入らさないという執念にはイラつきながらも感心してしまう。
まあ、イラつきの方が強いのは確かだが、そればかりに意識をさくのは許されない。
今は元々の最優先の撃破対象である異能力図鑑へ突進していく。
「ごごば、どおざんぞっ‼︎」
「邪魔です」
「なにっ⁉︎ ぐおっ‼︎」
紋綴りが俺の前に立ち塞がり右の前蹴りを繰り出してきたので脛あたりでたたっ斬り、さらに股の下をくぐりながら左脛も切断して先を急いだ。
しかし、俺の視界に迎撃の構えをとっている才歪が入った時、何かが俺に覆いかぶさってくる気配を感じた。
この何かというのは当然紋綴りで叫びながら俺をつかむか巨体で押し潰そうとしてきているんだろうが、ここは無視する。
優先するべきなのはあくまで異能力図鑑の撃破であり、もしくはそれを邪魔する存在。
つまり今なら才歪だ。
残り二分くらいだから、このまま才歪を倒してさらに異能力図鑑も倒すとしよう。
才歪も俺が紋綴りを無視すると認識した途端、目をギラリと光らせて獰猛に笑った。
お互いにやる気になっている中、俺の一歩目と同時に才歪が突きを放ってこようとしたから、俺は腕を斬り落とすという殺気を放ち牽制する。
しかし、才歪はそれならそれで構わないとばかりに全く気にせず、今までで最速の左の突きを伸ばしてきた。
「シッ‼︎」
「どれだけ速くても来るのがわかっているなら無意味です。当然、二撃目も通じません」
「ぐ……」
俺は才歪の狙いが左の突きを迎撃した瞬間の俺の隙を狙った右の突きで仕留める事だと判断し、足を止めずに身体を回転させ才歪の左拳に横から肘を叩き込む。
その結果、バキッという骨の折れた音と感触とともに才歪が一瞬硬直したため、一気に踏み込み木刀の間合いまで入って才歪の首を狙った。
「やらぜるがあああああっ‼︎」
不意に横から叫び声と殺意を感じたので攻撃を止めて横へ数歩ズレたら、俺の顔のあった位置で紋綴りの口が閉じられガチンッと歯と歯を打ち鳴らした音が響く。
…………どう考えても、あのままあの位置にいたら頭蓋骨ごと食いちぎられたな、って考えるのそこじゃない。
何で両足を斬られた紋綴りが俺の横に回り込めた?
いくら本体が別にある器物で身体を作り直せるとしても、このごく短時間での修復は無理なはず。
俺は紋綴りの状態を確かめるため走りながら数瞬観察すると、紋綴りの今にかける執念と歯で攻撃して理由を感じ取った。
「まさか、斬られた足を元に戻さず断面をコブ状した後、手足を使った四足歩行で移動してきたとは思いませんでした」
「ぜっだいに、ぜっだいにやらぜんぞっ‼︎」
「…………無茶をずる。でも、今ば無茶をずる時」
「いのうりょぐずがんっ⁉︎」
「あと一分半である‼︎」
「ぬう……」
「…………長いげれど死力を尽ぐずわ」
「どうぜんだっ‼︎」
こいつらはこの瞬間にも身体が壊れながらも俺の前に立ち塞がっているんだよな……。
こいつらのやりたい事には全く興味がわかないが、必死さは見習うべき点と言える。
俺は本当に勝つためだけの行動を取ると決めチラリと吾郷学園の方を振り向いた後、足もとの影を見下ろす。
時間がない中で俺の取った行動に異能力図鑑達は困惑している気配を感じるが、俺は無視したままつぶやく。
「黒鳥夜 綺寂、悪いがここからの時間はお前らを巻き込む。死にたくないなら全員に気合いを入れさせろ」
『鶴見君、待ちなさい‼︎ 何をするつもりなの⁉︎』
「すぐにでも始めるぞ。通達しなくて良いのか?」
『少しで良いから時間をちょうだい‼︎』
「もう遅い」
『まっ……』
俺は激しく波打つ影と黒鳥夜 綺寂を頭の中から消し、異能力図鑑達を見ると明らかに変わった俺の雰囲気に気づいたのか、三人とも顔をひきつらせていた。
その顔を見て前の世界での最後の戦場を思い出すと同時に、いっさい何も考えずただただ殺気をあふれさせる。
「う、ぐ、ば、ばげものめ‼︎」
「…………今までのば何だっだの?」
「いのうりょぐずがん、まだなのが⁉︎」
「残り一分を切ったのは確かだ‼︎」
へえ、まだ余裕があるみたいだな。
それならこうするか。
俺は絶対に斬るという殺気を異能力図鑑へ叩き込んだ。
「がはっ、く、ぐげえ……」
「異能力図鑑⁉︎」
「おい、いのうりょぐずがん⁉︎」
今まで見えていた異能力図鑑の姿が霧散し、数十歩奥に新たな異能力図鑑が現れる。
いや、新たなというかあれが正真正銘の異能力図鑑なんだろう。
「やっとあぶり出せたな。異能力図鑑、お前を斬れば終わりだ。死ね」
異能力図鑑の光線を斬り捨てた時のように全力で木刀を振り切り斬撃を飛ばした。
「ぬがあああああっ‼︎ ぐぶっ……」
チッ、防がれたか。
俺の斬撃は全身を極限まで力ませた紋綴りの身体を深く斬っただけで終わる。
紋綴りは吐血しながら崩れ落ちたものの、俺はその身体を両断できなかった事からやはり直接斬らないとダメだなと反省して走り出す。
しかし、すぐに俺の前に血の気の引いて身体を震わせている才歪が立ち塞がる。
「この状況で勝てると思ってるのか?」
「…………異能力図鑑が無事なら勝でる」
「くはは、面白い冗談だな」
「…………絶対に負げないわ」
どう考えても俺の殺気にやられている才歪を見て、これは今が攻め切る時と判断した。
まずは才歪の眼前へ跳び込み木刀を一閃したが、それは必死な顔の才歪に避けられたため追撃として体勢の崩れた才歪の横腹を本気で蹴る。
うん? へえ、内臓を潰すつもりで蹴りを叩き込んだのに、才歪が地面を転がった後でも意識を保って立ち上がったのは意外だな。
俺が無意識に手加減しているのか、才歪が強いせいなのか、他に理由があるのかわからないが、それならそれでさらに勝つために全力を振り絞るだけだ。
俺は才歪と紋綴りがすぐ動ける状態じゃないのを確認した後に再び異能力図鑑へと走り出すと、異能力図鑑は苦々しげに俺を見てくる。
「くう……、ここまで来てやられるつもりはないのである‼︎」
「残りは数十秒、ここで決める」
自分を奮い立たせる異能力図鑑に届くまで踏み込み一歩分まで来た時、俺に大量の瓦礫が飛んできた。
瓦礫の飛んでいく範囲は完全に異能力図鑑を巻き込んでいるが、どうやら少しでも俺を抑え込む事を優先した結果らしい。
「はあっ‼︎」
バキンッ‼︎
俺の殺気を受けた瓦礫がボロボロに崩れて、さらにすぐそばで俺の殺気をくらった異能力図鑑が白目を剥きて倒れかけたので、一歩踏み込み木刀を振り下ろした。
…………しかし、俺の斬撃は空振りに終わる。
「さ、才歪、助かったのである……」
「…………私が腕を伸ばじでつがみ異能力図鑑を引き寄ぜられだのば、紋綴りのほんの一瞬注意を逸らじでぐれだおがげ」
「そうか。紋綴り、感謝するぞ」
「ぎにずるな。だが……」
「…………ぞうね。もう時間ばないわ」
「くそ、準備が終わるまで残り三十秒もないというのに……」
「あいづのあれを、どめられるぎがじねえ」
話している異能力図鑑達を見て思うのは怒りだ。
とにかく決めきれない自分に怒りが起きてしょうがない。
今の俺なら音と色のない世界へ入らなくても攻め切れるはずだったのに、ここぞという場面であいつらに粘られているのは最悪だ。
「絶対に、絶対に次で決めてやる」
「…………異能力図鑑、発動ざぜで」
「ぞれじがない」
「致し方ないのである。才歪、我輩が発動させた後の追撃は任せたぞ」
「…………わがっでるわ」
あいつらは何か決意をしているよだが関係ない。
俺は殺気をあふれさせながら深呼吸を繰り返し自分へのイラつきを鎮める。
そして自分の中のグチャグチャした感情を消し去れたと感じた瞬間、俺は音と色のない世界へ入った。
◆◆◆◆◆
しかし、気がつくと俺は奥底にいた。
「…………は?」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
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