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第2章 異世界の男は鎮圧する
第7話
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人数は五人で全員俺をというか、秋臣の事を見下してる感じだな。
同じ吾郷学園の生徒なら俺がシスティーゾを倒してるところを見ていたはずなのに、こういう視線を向けてくるわけか。
「鶴見家の面汚しが何かの偶然で勝ったくらいで最近、調子に乗ってるみたいだな」
秋臣は優しすぎたせいで戦えず落ちこぼれになったわけだが、…………こいつら、パッと見で弱いとわかる程度なのに何を粋がってるだ?
「おい‼︎ 無視してんじゃねえぞ‼︎」
「ああ、すみません。あなたの話に興味がなかったので」
「本当に調子に乗ってるみたいだな⁉︎」
「身の程をわからせてやる‼︎」
五人が能力でそれぞれ武器を作り、刀、槍、弓矢、大鎌、金棒を構えた。
へえ、弓と矢をセットで作り出せるのか。
小型の弓でもかさばるし何より大量の矢を運ぶ労力を考えると、もっとも重宝される能力だな。
まあ、感心するのはここまでとして、あの五人が襲いかかってくる前に確認しておこう。
「鈴先輩、止めませんよね?」
突然俺が発した言葉に五人が疑問を持つと、鈴先輩が上から降ってきて俺のそばに着地した。
「お前は鈴麗華‼︎」
五人が鈴麗華の登場に動揺していたが、特に五人へ何も言わずに鈴麗華は俺を少し呆れた感じで見てくる。
「あなたは、あいかわらず騒動を起こすか、そのきっかけになるのね」
「システィーゾ関係の事は否定しませんけど、今回に関しては僕は無罪です」
「納得しづらいわ」
「納得してください。それより確認ですが止めませんよね?」
「大事になりそうなら止めるつもりよ。だから私に止められたくないなら、すばやく終わらせて」
「わかりました」
俺は鈴麗華へうなずいた後、ベンチから立ち上がる。
そして奥底に眠る秋臣の反応を確認するが、何の乱れも感じない。
どうやら俺なら大丈夫と思っているらしいな。
期待に応えるとしよう。
俺は鈴麗華の登場後、武器を構えたまま中途半端な状態になっている五人へ近づいていった。
「鶴見家の面汚しが、舐めるな‼︎」
まずリーダー格の弓矢使い以外の四人が俺を囲んだ。
勢いのまま俺に襲いかかってくると思ったが、攻撃的な言葉を使う割に自分達の有利を確保するという冷静さはあるわけか。
少しだけ俺の中の五人の評価が上がったので、様子を見るため立ち止まった。
「いまさら後悔しても遅いんだよ‼︎ 死ね‼︎」
弓矢使いが矢を放ってきたため、俺はパシッと矢を右手でつかみ取る。
「は……?」
五人……鈴麗華も合わせて六人か。
その六人が驚いている中、俺は初めて見たこの世界の矢をじっくり観察していた。
ほお……、矢羽根も矢じりも前の世界と、そんなに差がない。
これは世界は違っても人が作り出す道具の最終形は似てくるという事か?
「ぐ、偶然に決まってる‼︎」
弓矢使いが今度は二本連続で矢を放ってきたから、パシパシッと左手で二本ともつかみ取った。
「うそだ……」
お、この二本は一本目と違って連射用なのか短いな。
…………うん?
三本の矢をじっくり観察していたら五人が何もしてこない事に気づき周りを見ると、五人は俺を化物でも見るような目で見ていた。
矢つかみがそんなに驚く事か?
前の世界の俺が所属していた傭兵団だと古参の連中は宴会芸でやってたぞ?
…………あ、そういえば宴会で俺が弓矢使いから五歩くらいの距離で矢つかみをやったら、この五人と同じ目で見てきたが、それは今はおいておこう。
「こないなら僕からいっても?」
俺が声をかけると五人はビクッと身体を震わせて全力で構えていたが、俺から見ると隙だらけとしか言えない。
まあ、もう良いか。
俺は待つのを止めて弓矢使いに向かって歩き出す。
「お、お前ら、かかれ‼︎」
「「「「お、おおおおおおおお‼︎」」」」
…………こいつら勢いのない雑な突撃は敗北につながるって知らないのか?
俺は持っている三本の矢をそれぞれ、刀使い、槍使い、大鎌使いの顔へ向けて投げ動きを止めた後、一人で突出する形になった金棒使いに近づき金棒が振り下ろされるより先にみぞおちを全力で殴る。
次に倒れる金棒使いから離れて大鎌使いに近づくと、大鎌使いは俺の首を狙い大鎌を振ってきたため大鎌の柄をつかみ俺の方へ引いた。
大鎌使いは全く抵抗できずに体勢を崩したのでガラ空きになった横腹を全力で蹴って倒す。
お、さすがに気を取り直したのか刀使いと槍使いが走ってきていた。
おそらく槍使いが突いたところを刀使いが斬りかかると予想したら本当に槍使いが突いてきたため、俺は槍の刃を避けた後に槍の柄を両手でつかみ逆に突く。
すると槍使いは俺の突きにより自分の槍の柄の端を胸に叩き込まれ呼吸困難になったのか、口をパクつかせながら膝から崩れ落ちる。
俺は四人で残り一人となった刀使いが恐怖で顔を歪ませながら放ってきた突きを、身体を回転させながら刀の刃を横から押す事で避けた。
そして自分の突きに対して思わぬ力が加わえられ身体が流れた刀使いへ近づき側頭部を蹴り気絶させる。
次の瞬間、俺の隙を狙ったつもりなのか弓矢使いが三本の矢を連続で放ってきたから、蹴りを放った体勢のまま右手で二本、左手で一本つかみ弓矢使いを見た。
「これであなただけですね」
「落ちこぼれのお前に、ここまでやれるわけが……」
「僕に幻覚を作り出す能力はないので、あなたの目の前で起こった事が事実ですよ」
「うそだ……。こんなのはうそに決まってる……」
ズドンッ‼︎
ゴウッ‼︎
「よ……っと」
そろそろ終わらせるかと思っていたら突然弓矢使いが爆発し、俺に向かって炎が飛んできたから跳んで避ける。
こういう事をやりそうな奴は一人しか知らないが、もしそいつだとしたら連戦になるぞ。
ただでさえ授業をサボっているのに、どうするべきだ?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるのっ……!」
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同じ吾郷学園の生徒なら俺がシスティーゾを倒してるところを見ていたはずなのに、こういう視線を向けてくるわけか。
「鶴見家の面汚しが何かの偶然で勝ったくらいで最近、調子に乗ってるみたいだな」
秋臣は優しすぎたせいで戦えず落ちこぼれになったわけだが、…………こいつら、パッと見で弱いとわかる程度なのに何を粋がってるだ?
「おい‼︎ 無視してんじゃねえぞ‼︎」
「ああ、すみません。あなたの話に興味がなかったので」
「本当に調子に乗ってるみたいだな⁉︎」
「身の程をわからせてやる‼︎」
五人が能力でそれぞれ武器を作り、刀、槍、弓矢、大鎌、金棒を構えた。
へえ、弓と矢をセットで作り出せるのか。
小型の弓でもかさばるし何より大量の矢を運ぶ労力を考えると、もっとも重宝される能力だな。
まあ、感心するのはここまでとして、あの五人が襲いかかってくる前に確認しておこう。
「鈴先輩、止めませんよね?」
突然俺が発した言葉に五人が疑問を持つと、鈴先輩が上から降ってきて俺のそばに着地した。
「お前は鈴麗華‼︎」
五人が鈴麗華の登場に動揺していたが、特に五人へ何も言わずに鈴麗華は俺を少し呆れた感じで見てくる。
「あなたは、あいかわらず騒動を起こすか、そのきっかけになるのね」
「システィーゾ関係の事は否定しませんけど、今回に関しては僕は無罪です」
「納得しづらいわ」
「納得してください。それより確認ですが止めませんよね?」
「大事になりそうなら止めるつもりよ。だから私に止められたくないなら、すばやく終わらせて」
「わかりました」
俺は鈴麗華へうなずいた後、ベンチから立ち上がる。
そして奥底に眠る秋臣の反応を確認するが、何の乱れも感じない。
どうやら俺なら大丈夫と思っているらしいな。
期待に応えるとしよう。
俺は鈴麗華の登場後、武器を構えたまま中途半端な状態になっている五人へ近づいていった。
「鶴見家の面汚しが、舐めるな‼︎」
まずリーダー格の弓矢使い以外の四人が俺を囲んだ。
勢いのまま俺に襲いかかってくると思ったが、攻撃的な言葉を使う割に自分達の有利を確保するという冷静さはあるわけか。
少しだけ俺の中の五人の評価が上がったので、様子を見るため立ち止まった。
「いまさら後悔しても遅いんだよ‼︎ 死ね‼︎」
弓矢使いが矢を放ってきたため、俺はパシッと矢を右手でつかみ取る。
「は……?」
五人……鈴麗華も合わせて六人か。
その六人が驚いている中、俺は初めて見たこの世界の矢をじっくり観察していた。
ほお……、矢羽根も矢じりも前の世界と、そんなに差がない。
これは世界は違っても人が作り出す道具の最終形は似てくるという事か?
「ぐ、偶然に決まってる‼︎」
弓矢使いが今度は二本連続で矢を放ってきたから、パシパシッと左手で二本ともつかみ取った。
「うそだ……」
お、この二本は一本目と違って連射用なのか短いな。
…………うん?
三本の矢をじっくり観察していたら五人が何もしてこない事に気づき周りを見ると、五人は俺を化物でも見るような目で見ていた。
矢つかみがそんなに驚く事か?
前の世界の俺が所属していた傭兵団だと古参の連中は宴会芸でやってたぞ?
…………あ、そういえば宴会で俺が弓矢使いから五歩くらいの距離で矢つかみをやったら、この五人と同じ目で見てきたが、それは今はおいておこう。
「こないなら僕からいっても?」
俺が声をかけると五人はビクッと身体を震わせて全力で構えていたが、俺から見ると隙だらけとしか言えない。
まあ、もう良いか。
俺は待つのを止めて弓矢使いに向かって歩き出す。
「お、お前ら、かかれ‼︎」
「「「「お、おおおおおおおお‼︎」」」」
…………こいつら勢いのない雑な突撃は敗北につながるって知らないのか?
俺は持っている三本の矢をそれぞれ、刀使い、槍使い、大鎌使いの顔へ向けて投げ動きを止めた後、一人で突出する形になった金棒使いに近づき金棒が振り下ろされるより先にみぞおちを全力で殴る。
次に倒れる金棒使いから離れて大鎌使いに近づくと、大鎌使いは俺の首を狙い大鎌を振ってきたため大鎌の柄をつかみ俺の方へ引いた。
大鎌使いは全く抵抗できずに体勢を崩したのでガラ空きになった横腹を全力で蹴って倒す。
お、さすがに気を取り直したのか刀使いと槍使いが走ってきていた。
おそらく槍使いが突いたところを刀使いが斬りかかると予想したら本当に槍使いが突いてきたため、俺は槍の刃を避けた後に槍の柄を両手でつかみ逆に突く。
すると槍使いは俺の突きにより自分の槍の柄の端を胸に叩き込まれ呼吸困難になったのか、口をパクつかせながら膝から崩れ落ちる。
俺は四人で残り一人となった刀使いが恐怖で顔を歪ませながら放ってきた突きを、身体を回転させながら刀の刃を横から押す事で避けた。
そして自分の突きに対して思わぬ力が加わえられ身体が流れた刀使いへ近づき側頭部を蹴り気絶させる。
次の瞬間、俺の隙を狙ったつもりなのか弓矢使いが三本の矢を連続で放ってきたから、蹴りを放った体勢のまま右手で二本、左手で一本つかみ弓矢使いを見た。
「これであなただけですね」
「落ちこぼれのお前に、ここまでやれるわけが……」
「僕に幻覚を作り出す能力はないので、あなたの目の前で起こった事が事実ですよ」
「うそだ……。こんなのはうそに決まってる……」
ズドンッ‼︎
ゴウッ‼︎
「よ……っと」
そろそろ終わらせるかと思っていたら突然弓矢使いが爆発し、俺に向かって炎が飛んできたから跳んで避ける。
こういう事をやりそうな奴は一人しか知らないが、もしそいつだとしたら連戦になるぞ。
ただでさえ授業をサボっているのに、どうするべきだ?
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