14 / 129
第1章 異世界の男は転生する
第14話
しおりを挟む
こいつは……秋臣の知っている奴だな。
氷を操る精霊級の名前は鈴 麗華。
システィーゾと同じ海外からの留学生で秋臣の1学年先輩で特記するべき事を1つあげるなら、学園上層部直属の実行部隊である「聖」に選ばれるほどの実力者という点か。
秋臣の知識によると、本来なら実技の授業の補助に聖のメンバーがなる事はない。
そのありえない存在が、すぐさま俺とシスティーゾの間に割って入ったという事は、どうやら始めから俺とシスティーゾは監視されていたらしい。
「どういうつもりだ? 鈴 麗華。なぜ、俺の邪魔をする? 返答によっては消し炭にするぞ」
「そちらの鶴見君は察しがついてるみたいだから率直に言うと、君達2人は要警戒対象として監視されているのよ」
「監視だと……?」
「主にシスティーゾ、あなたが鶴見君に襲いかかり、あの激しい決闘の再現をしないかの監視ね」
「くだらん」
「精霊級の私闘は厳禁よ。周りの被害を考えなさい」
なるほど、だいたい予想通りの内容だな。
俺は木刀を消した後、落ち着いた声でシスティーゾに話しかけた。
「システィーゾ、次に流々原先生から許可が出るまで待ってくれませんか?」
「なんだと?」
「鈴先輩、闘技場で戦うなら問題ないんですよね?」
「うんうん、物分かりが良いし頭の回転も速くて助かるわ。その通りよ」
「ありがとうございます。どうですか? システィーゾ」
「……チッ、良いだろう。首を洗って待っていろ」
イラついた表情のシスティーゾが離れていく。
気になるのはシスティーゾの足跡が焦げ付いて黒く地面に残っている事。
明らかに能力の影響なのは確かだが……。
「私達、精霊級の着ている服は魔導級が総力をあげて作った物だから大丈夫よ」
「え?」
「システィーゾの能力で彼の服が燃えないのか気になったんでしょ?」
「はい……」
「耐火性、耐熱性を極限まで上げてる素材でできてるから問題ないわ」
「そうなんですか」
「それでも戦意っていう熱は消せないから私が後でシスティーゾと戦わないといけないんだけどね」
「それは……」
「力がある者ほど、きちんと制御する責任があるわ。ましてや欲求不満で能力を暴発させたりしたら笑えない」
厳しい目をシスティーゾの背中に向ける鈴 麗華から冷気を感じる。
「えっと、先輩も冷気が漏れてると思いますが……」
「あ……、内緒よ?」
「もちろんです」
少し気まずげな鈴 麗華は、しっかりと俺に口止めした後、システィーゾを追っていった。
二人の戦いを見たいが、見たら俺も歯止めが利かなくなりそうなので俺は木刀を出して素振りを始める。
やはり俺は戦闘狂なのだろうか……?
その日は実技の授業が終わった後も改めて自分について考えていたが、けっきょく寝る直前になっても結論が出なかったので考えるのをやめた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるのっ……!」
と思ったら
お気に入りの登録を、ぜひお願いします
また感想や誤字脱字報告もお待ちしています。
氷を操る精霊級の名前は鈴 麗華。
システィーゾと同じ海外からの留学生で秋臣の1学年先輩で特記するべき事を1つあげるなら、学園上層部直属の実行部隊である「聖」に選ばれるほどの実力者という点か。
秋臣の知識によると、本来なら実技の授業の補助に聖のメンバーがなる事はない。
そのありえない存在が、すぐさま俺とシスティーゾの間に割って入ったという事は、どうやら始めから俺とシスティーゾは監視されていたらしい。
「どういうつもりだ? 鈴 麗華。なぜ、俺の邪魔をする? 返答によっては消し炭にするぞ」
「そちらの鶴見君は察しがついてるみたいだから率直に言うと、君達2人は要警戒対象として監視されているのよ」
「監視だと……?」
「主にシスティーゾ、あなたが鶴見君に襲いかかり、あの激しい決闘の再現をしないかの監視ね」
「くだらん」
「精霊級の私闘は厳禁よ。周りの被害を考えなさい」
なるほど、だいたい予想通りの内容だな。
俺は木刀を消した後、落ち着いた声でシスティーゾに話しかけた。
「システィーゾ、次に流々原先生から許可が出るまで待ってくれませんか?」
「なんだと?」
「鈴先輩、闘技場で戦うなら問題ないんですよね?」
「うんうん、物分かりが良いし頭の回転も速くて助かるわ。その通りよ」
「ありがとうございます。どうですか? システィーゾ」
「……チッ、良いだろう。首を洗って待っていろ」
イラついた表情のシスティーゾが離れていく。
気になるのはシスティーゾの足跡が焦げ付いて黒く地面に残っている事。
明らかに能力の影響なのは確かだが……。
「私達、精霊級の着ている服は魔導級が総力をあげて作った物だから大丈夫よ」
「え?」
「システィーゾの能力で彼の服が燃えないのか気になったんでしょ?」
「はい……」
「耐火性、耐熱性を極限まで上げてる素材でできてるから問題ないわ」
「そうなんですか」
「それでも戦意っていう熱は消せないから私が後でシスティーゾと戦わないといけないんだけどね」
「それは……」
「力がある者ほど、きちんと制御する責任があるわ。ましてや欲求不満で能力を暴発させたりしたら笑えない」
厳しい目をシスティーゾの背中に向ける鈴 麗華から冷気を感じる。
「えっと、先輩も冷気が漏れてると思いますが……」
「あ……、内緒よ?」
「もちろんです」
少し気まずげな鈴 麗華は、しっかりと俺に口止めした後、システィーゾを追っていった。
二人の戦いを見たいが、見たら俺も歯止めが利かなくなりそうなので俺は木刀を出して素振りを始める。
やはり俺は戦闘狂なのだろうか……?
その日は実技の授業が終わった後も改めて自分について考えていたが、けっきょく寝る直前になっても結論が出なかったので考えるのをやめた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるのっ……!」
と思ったら
お気に入りの登録を、ぜひお願いします
また感想や誤字脱字報告もお待ちしています。
0
お気に入りに追加
102
あなたにおすすめの小説
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
【短編】冤罪が判明した令嬢は
砂礫レキ
ファンタジー
王太子エルシドの婚約者として有名な公爵令嬢ジュスティーヌ。彼女はある日王太子の姉シルヴィアに冤罪で陥れられた。彼女と二人きりのお茶会、その密室空間の中でシルヴィアは突然フォークで自らを傷つけたのだ。そしてそれをジュスティーヌにやられたと大騒ぎした。ろくな調査もされず自白を強要されたジュスティーヌは実家に幽閉されることになった。彼女を公爵家の恥晒しと憎む父によって地下牢に監禁され暴行を受ける日々。しかしそれは二年後終わりを告げる、第一王女シルヴィアが嘘だと自白したのだ。けれど彼女はジュスティーヌがそれを知る頃には亡くなっていた。王家は醜聞を上書きする為再度ジュスティーヌを王太子の婚約者へ強引に戻す。
そして一年後、王太子とジュスティーヌの結婚式が盛大に行われた。
平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。
平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。
家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。
愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる