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第七章
指輪
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翌日、エリアスと日の出を見ようって約束したから、朝日が昇る前に起きて二人で甲板に行った。
そこには他の乗船客もちらほらいてて、日の出を楽しみに待っている感じが見てとれる。
地平線から日がゆっくり昇ってきて、空が藍色から徐々に明るくなっていってから、オレンジの光が見えだしていく。
海面が日の光を映し出して、辺りが段々明るくなっていった。
一日の始まりはいつもこうなんだなって、分かってはいる事なんだけど、実際こうやって見ると感慨深くなるなって言い合いながら、二人で昇る朝日を眺めていたんだ。
暫く朝日が昇るのを見てから、朝食を摂りにいった。
船に乗るのって良いもんだなって言いながら、温かいハーブティーで体を暖める。
エリアスと再会してから今までの、この少しの間で色々な事があったけど、こうして落ち着いてゆっくりしていられたのって初めてじゃないかな……
ノエリアの邸にいた時もゆっくりはしていたけれど、あの時はエリアスは怪我をしていたし。
こうやって誰かと一緒にいられるって、凄く気持ちが落ち着くんだな……
私を想ってくれる人がいるってだけで、こんなにも全てが違って見えるんだ……
自分に生きる意味が無いような、そんな気さえしていた一人の夜を思い出すと、こうやって心地良い日が訪れるなんて、あの時の私は考えられなかった。
私を好きだと言ってくれたエリアスと一緒にいると、私も自分自身の事を好きになれそうな感覚になっていく。
……もしかしたら……
私が自分の記憶を無くしたのって、私の事を大切にして愛してくれた人がいて……
その想いが私に伝わって、自分自身を愛する事が出来たからじゃないだろうか……
それが……ディルクなんだろうか……
「アシュレイ……?」
「え?」
「どうした?一点見つめてボーッとして。」
「あ、ううん、何でもない!早起きしたから眠たくなった…… のかな?!」
「そっか……ちょっと寝に行くか?」
「ううん!大丈夫!あ、リフレイムには今日の昼過ぎ頃に着くみたいだな!どんな島だろう?」
「後でジブリルに聞きに行こうか。錬金術師の事も聞きてぇし。昨日はつい聞きそびれてしまったからな。ジブリル、二日酔いになってねぇかな……」
「昨日あれだけ飲んでたから、グッタリしてるかも知れない。昼前位に会いに行こうか?」
「そうだな。」
朝食が終わってから、船にある売店で色々物色していた。
ここにはシアレパス国の名産品とリフレイム島の名産品が並んでいて、お土産を買い忘れた者でも安心できるようになっている。
少しだけど魔道具も売っていて、それらを見るだけでも楽しめた。
アクセサリーも売っていて、エリアスがマジマジとそれらを眺めていた。
「エリアス、何か気に入った物でもあったのか?」
「あぁ……アシュレイ、ちょっとこれ、はめてみてくれ。」
「え……指輪?」
「あぁ。」
エリアスが私の右手の手袋を外して、薬指に指輪をはめた。
透明の石が綺麗な、可愛らしいデザインの指輪だ。
「どうだ?」
「どうって……うん……デザインが可愛いと思う。石がキラキラしてて凄く綺麗だ。」
「そっか。サイズはピッタリそうだな。ゴツゴツした作りじゃねぇから、手袋をしても問題無さそうだし。じゃあこれ、くれ。」
「はい。」
いつの間にか後ろに来ていた店員に、エリアスが言うけど、イキナリそんな事を言われても……!
「エリアス!何?なんで……?!」
「え?まぁ、似合ってるしな。」
「そう言う事を言ってるんじゃなくて、何で私に……!」
「俺がそうしてぇんだ。……イヤか……?」
「嫌とか、そんなんじゃないけど……!」
「じゃあ、何も問題ねぇな。あ、袋とか要らねぇから。そのまま指にはめとくから。」
「畏まりました。」
エリアスはそう言って、代金を支払っていた。
戸惑ってエリアスを止めようとするけど、聞く耳を持ってくれなかった。
「エリアス!こんなの……貰えない!エリアスには剣も貰っているのに!」
「男が好きな女に物を贈るのは当たり前だろ?要は俺の自己満足なんだよ。ダメか?」
「ダメとか……そう言う訳じゃないけど……」
「じゃあそれ、貰ってくんねぇかな?」
「……うん……分かった……ありがとう……」
そう言うと、エリアスは凄く嬉しそうにニコニコした。
指輪なんて初めて貰ったし、今までつけた事もなかったから、なんだか嬉しいのか恥ずかしいのか、どっちか分からない感情が胸に湧く……
右手を目の前にかざして、薬指にはまった指輪を眺める。
透明の石が光に反射して、凄くキラキラして綺麗だ……
この指輪には、付与がかけられてある。
魔法と物理攻撃を回避する防御の付与。
私を守るようにと、エリアスが選んでくれたんだ……
「アシュレイ、手を見て何をそんなに嬉しそうに笑ってんだ?」
「え?あ、ジブリル。」
「よう!二日酔いにはならなかったか?!」
「大丈夫だ!海の男、舐めんなよ!と言いたいところだが、昨日は酔い潰れてしまったな!ハハハハっ!」
「楽しかったぜ!ありがとな!」
「しかしあれだけ飲ましたのに、アンタ達は全然酔わなかったな!俺に飲みで勝てる奴はなかなかいねぇぜ?流石、英雄だな!」
「やめてくれ、その英雄っての!」
「ハハハ!照れんな!」
「あ、そうだ、聞きてぇ事があったんだ。これから行くリフレイムって島は、どんな所なんだ?」
「行った事無かったのか?そうだな……海に囲まれてるから、やっぱり漁師が多いな。で、造船所もある。そこではドワーフなんかがよく働いてるな。手先が器用だから助かってるんだよ。だから鍛治も盛んだな。広い森もあって、そこにはエルフも住んでるな。」
「ドワーフにエルフか!すげぇな!」
「オルギアン帝国から南辺りの方じゃ少ないからな。見かける事も無かったかも知れんな。シアレパスの北の方にも、ちらほらいるぜ?」
「そうなんだな。なんか、ワクワクしてきたぜ!」
「けど、エルフはプライドが高いからな。迂闊に近づくと怪我すんぞ?まぁ、エリアスなら大丈夫だろうけどな!」
「忠告、聞いとくぜ!あと、俺達錬金術師を探してんだ。リフレイムにいるか?」
「錬金術師か……どうだろうな……」
「なんだ?その答え。」
「いや、いたんだよ。高度な技術を持つ錬金術師がな。けど、突然いなくなってしまってな。」
「え?なんでだよ?」
「それが分からん。もしかしたら、もう帰って来てるかも知れんし、そのまま行方不明かも知れん。俺もあまり帰れてないからな。」
「そうか……」
「まぁ、家の場所だけまた教えるさ。ま、島でもまた飲もうや!」
「あぁ!そうだな!ありがとな!」
ジブリルは朝飯食ってくるって言って去って行った。
ドワーフとエルフのいる島……
行方不明の錬金術師……
どんな島なのか、今から楽しみになってきた。
右手薬指にある指輪を眺めながら、島に着くのを心待ちにしたんだ。
そこには他の乗船客もちらほらいてて、日の出を楽しみに待っている感じが見てとれる。
地平線から日がゆっくり昇ってきて、空が藍色から徐々に明るくなっていってから、オレンジの光が見えだしていく。
海面が日の光を映し出して、辺りが段々明るくなっていった。
一日の始まりはいつもこうなんだなって、分かってはいる事なんだけど、実際こうやって見ると感慨深くなるなって言い合いながら、二人で昇る朝日を眺めていたんだ。
暫く朝日が昇るのを見てから、朝食を摂りにいった。
船に乗るのって良いもんだなって言いながら、温かいハーブティーで体を暖める。
エリアスと再会してから今までの、この少しの間で色々な事があったけど、こうして落ち着いてゆっくりしていられたのって初めてじゃないかな……
ノエリアの邸にいた時もゆっくりはしていたけれど、あの時はエリアスは怪我をしていたし。
こうやって誰かと一緒にいられるって、凄く気持ちが落ち着くんだな……
私を想ってくれる人がいるってだけで、こんなにも全てが違って見えるんだ……
自分に生きる意味が無いような、そんな気さえしていた一人の夜を思い出すと、こうやって心地良い日が訪れるなんて、あの時の私は考えられなかった。
私を好きだと言ってくれたエリアスと一緒にいると、私も自分自身の事を好きになれそうな感覚になっていく。
……もしかしたら……
私が自分の記憶を無くしたのって、私の事を大切にして愛してくれた人がいて……
その想いが私に伝わって、自分自身を愛する事が出来たからじゃないだろうか……
それが……ディルクなんだろうか……
「アシュレイ……?」
「え?」
「どうした?一点見つめてボーッとして。」
「あ、ううん、何でもない!早起きしたから眠たくなった…… のかな?!」
「そっか……ちょっと寝に行くか?」
「ううん!大丈夫!あ、リフレイムには今日の昼過ぎ頃に着くみたいだな!どんな島だろう?」
「後でジブリルに聞きに行こうか。錬金術師の事も聞きてぇし。昨日はつい聞きそびれてしまったからな。ジブリル、二日酔いになってねぇかな……」
「昨日あれだけ飲んでたから、グッタリしてるかも知れない。昼前位に会いに行こうか?」
「そうだな。」
朝食が終わってから、船にある売店で色々物色していた。
ここにはシアレパス国の名産品とリフレイム島の名産品が並んでいて、お土産を買い忘れた者でも安心できるようになっている。
少しだけど魔道具も売っていて、それらを見るだけでも楽しめた。
アクセサリーも売っていて、エリアスがマジマジとそれらを眺めていた。
「エリアス、何か気に入った物でもあったのか?」
「あぁ……アシュレイ、ちょっとこれ、はめてみてくれ。」
「え……指輪?」
「あぁ。」
エリアスが私の右手の手袋を外して、薬指に指輪をはめた。
透明の石が綺麗な、可愛らしいデザインの指輪だ。
「どうだ?」
「どうって……うん……デザインが可愛いと思う。石がキラキラしてて凄く綺麗だ。」
「そっか。サイズはピッタリそうだな。ゴツゴツした作りじゃねぇから、手袋をしても問題無さそうだし。じゃあこれ、くれ。」
「はい。」
いつの間にか後ろに来ていた店員に、エリアスが言うけど、イキナリそんな事を言われても……!
「エリアス!何?なんで……?!」
「え?まぁ、似合ってるしな。」
「そう言う事を言ってるんじゃなくて、何で私に……!」
「俺がそうしてぇんだ。……イヤか……?」
「嫌とか、そんなんじゃないけど……!」
「じゃあ、何も問題ねぇな。あ、袋とか要らねぇから。そのまま指にはめとくから。」
「畏まりました。」
エリアスはそう言って、代金を支払っていた。
戸惑ってエリアスを止めようとするけど、聞く耳を持ってくれなかった。
「エリアス!こんなの……貰えない!エリアスには剣も貰っているのに!」
「男が好きな女に物を贈るのは当たり前だろ?要は俺の自己満足なんだよ。ダメか?」
「ダメとか……そう言う訳じゃないけど……」
「じゃあそれ、貰ってくんねぇかな?」
「……うん……分かった……ありがとう……」
そう言うと、エリアスは凄く嬉しそうにニコニコした。
指輪なんて初めて貰ったし、今までつけた事もなかったから、なんだか嬉しいのか恥ずかしいのか、どっちか分からない感情が胸に湧く……
右手を目の前にかざして、薬指にはまった指輪を眺める。
透明の石が光に反射して、凄くキラキラして綺麗だ……
この指輪には、付与がかけられてある。
魔法と物理攻撃を回避する防御の付与。
私を守るようにと、エリアスが選んでくれたんだ……
「アシュレイ、手を見て何をそんなに嬉しそうに笑ってんだ?」
「え?あ、ジブリル。」
「よう!二日酔いにはならなかったか?!」
「大丈夫だ!海の男、舐めんなよ!と言いたいところだが、昨日は酔い潰れてしまったな!ハハハハっ!」
「楽しかったぜ!ありがとな!」
「しかしあれだけ飲ましたのに、アンタ達は全然酔わなかったな!俺に飲みで勝てる奴はなかなかいねぇぜ?流石、英雄だな!」
「やめてくれ、その英雄っての!」
「ハハハ!照れんな!」
「あ、そうだ、聞きてぇ事があったんだ。これから行くリフレイムって島は、どんな所なんだ?」
「行った事無かったのか?そうだな……海に囲まれてるから、やっぱり漁師が多いな。で、造船所もある。そこではドワーフなんかがよく働いてるな。手先が器用だから助かってるんだよ。だから鍛治も盛んだな。広い森もあって、そこにはエルフも住んでるな。」
「ドワーフにエルフか!すげぇな!」
「オルギアン帝国から南辺りの方じゃ少ないからな。見かける事も無かったかも知れんな。シアレパスの北の方にも、ちらほらいるぜ?」
「そうなんだな。なんか、ワクワクしてきたぜ!」
「けど、エルフはプライドが高いからな。迂闊に近づくと怪我すんぞ?まぁ、エリアスなら大丈夫だろうけどな!」
「忠告、聞いとくぜ!あと、俺達錬金術師を探してんだ。リフレイムにいるか?」
「錬金術師か……どうだろうな……」
「なんだ?その答え。」
「いや、いたんだよ。高度な技術を持つ錬金術師がな。けど、突然いなくなってしまってな。」
「え?なんでだよ?」
「それが分からん。もしかしたら、もう帰って来てるかも知れんし、そのまま行方不明かも知れん。俺もあまり帰れてないからな。」
「そうか……」
「まぁ、家の場所だけまた教えるさ。ま、島でもまた飲もうや!」
「あぁ!そうだな!ありがとな!」
ジブリルは朝飯食ってくるって言って去って行った。
ドワーフとエルフのいる島……
行方不明の錬金術師……
どんな島なのか、今から楽しみになってきた。
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