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第六章
外れた腕輪
しおりを挟むアシュリーが帝都にやって来た。
しかし、おかしな事を言う。
依頼で来た場合、まずはギルドに行く筈だ。
それを門番が違う場所へ行く様に言う事は、まずあり得ない。
なぜなら門番には、依頼の事等、そんな情報が与えられる事はないからだ。
「コルネール!」
外で待機していたコルネールを呼び出す。
「はい!何でございましょう?!」
「ゾランとジルドを大至急呼べ!」
「只今っ!!」
「カルレス、ここの事を頼む!」
「え?!あ、はい、畏まりました!」
「リドディルク様、どうなさいましたか?!」
「ゾラン、アシュリーが帝都に来た。しかし、不審な事がある……!門番がアシュリーを騎士舎に行く様に伝えたそうだ……!」
「騎士舎……?……っ!あそこには地下通路があります!そこから人知れず城内へ行けるようになっています!」
「どうなっているか、直ぐに調べてくれ!」
「はいっ!」
「リドディルク様、いかがなさいましたか?!」
「ジルド、門番を拘束せよ!これは即座に動いてくれ!」
「畏まりました!」
「ではカルレス!頼んだぞ!」
「はいっ!」
嫌な予感が胸に渦巻く……
なぜアシュリーに依頼を出した?!
なぜ門番ごときが騎士舎に行けと指示を出す?
城内に来させてどうする?!
いや、まずは気になっている事を聞きに行く……!
「ラリサ王妃!」
俺は扉をノックもせずに勢いよく開け放った。
「リディっ!どうしたのです?!」
「貴女は父上の記憶を無くしたのではなかったのですか?!」
「え?!……えぇ……ここに連れてこられて、私を見たベルンバルトは直ぐに私と気づいたのですが、その時にベルンバルトから私の記憶を消しました。」
「では、アシュリーの事は分からない筈ですよね?!」
「その筈です……」
「聞きますが、何故貴女は俺達が赤子の時……父上が後宮に俺達に会いに来る時、父上に忘却魔法で自分達の事を忘れさせようとしなかったんですか?!」
「それは……!……怖かったからです……もし忘却魔法が効かないのであれば……貴方達を取り上げられてしまう……その可能性があるかも知れないと……」
「なぜその可能性があると思ったんです?!」
「え……?何故……?……なぜなのかしら……?」
「……っ!」
すぐにラリサ王妃の部屋を飛び出した。
もしかしたら、父上には忘却魔法が効かないのではないか?!
いや……あのラリサ王妃の様子を見ると……
もしかしたら……
父上は忘却魔法が使える……?
いや、今はそんなことはどうでも良い!
アシュリーは父上の元にいるかも知れないっ!
空間移動で、父上の部屋までやって来るが、そこには誰もいなかった。
「どこだ?!アシュリーっ!」
ピンクの石を握る。
けれど、アシュリーの声は聞こえない。
門番がいる所まで飛んでいく。
ジルドが門番を拘束している所だった。
その門番を見る。
違う……彼の意思ではない……別の何か……
ウーログ!
人形遣いのウーログに操られたか!
すぐに騎士舎へ飛ぶ。
するとそこにはエリアスがいた。
「ディルク!」
「エリアス、どうした?!」
「いや、アシュレイの様子がなんか気になってよ、送り出したけどやっぱり気になって来てみた。アンタはどうしたんだ?!」
「アシュリーの身に危険が迫っている!」
「なんだって?!なんでだよ!」
「もしかしたら、父上に連れて行かれたかも知れないんだ!」
「なんでだ?!自分の娘連れ去ってどうすんだよ?!」
「アシュリーを……自分のモノにするつもりかも知れない……っ!」
「んだよっ!それっ!!」
俺の胸ぐらを掴もうとするエリアスの腕を防ごうとした瞬間、左手首の腕輪同士がぶつかった。
腕輪は光輝いて、俺達の腕から抜け落ちた。
「外れた……」
途端に身体中に力が溢れ出す様な感覚に襲われる……
それはエリアスもそうだったようで、暫く二人でそこから動けないでいた……
腕輪を拾って確認すると、壊れた訳でもなく、ただ抜けただけで、元の状態のままだった。
一つをエリアスに渡す。
「それをまた着けるかどうかは自分で決めてくれ。アシュリーは城内にいると思われる。城内は俺でないと自由に動けん。気になるとは思うが、ここは俺に任せてくれ……!」
「……分かった……アシュレイを……頼む……っ!」
地下通路へ行き、残留思念を読み取る……
そこではアシュリーの思念も少しだけ読み取れた……
腕輪を外したからか、今までよりも思念が読み取りやすくなっていた。
「夢見の……間……?」
どこだそれは?!
思念を辿って行くと、浴場へと続いた。
中にいる女官達を見詰めると、アシュリーに湯浴みをさせたのが分かる。
「父上っ!自分の娘だぞ……!」
女官から情報を読み取り、夢見の間の場所を確認する。
急いで夢見の間へ行く。
そこには何人も従者がおり、人形遣いウーログもいた。
「リドディルク様!」
「どけ!」
「いけません!何方も通すなと言われております!」
全ての者を雷魔法でその場で倒す。
扉を開けようとするが、強力な結界に阻まれて開けることが出来ない!
身体中に漲る力を操る様に、右手に集結させる。
すると、触れた扉にヒビが入っていき、結界もろとも粉々になって崩れ落ちた。
急いで中に入ると、アシュリーに覆い被さっている父上がいた。
「アシュリーっ!」
「リディ!なぜ破って来れた!いや、ここには誰も入るなと言っていた筈だ!すぐに出て行けっ!!」
「あ……ディ……ク……」
涙を流しながら俺を見る、全裸のアシュリーがそこにはいた……!
「なにを……っ!」
その時、俺の理性はぶっ飛んだ。
父上の頭を左手で鷲掴みにし、強く力を入れる。
「リディ……!何をする……っ!やめ……」
みるみるうちに、父上の老いた体は更に老いて行く……
「ディ……ク……や……」
ハッとしてアシュリーを見る。
すぐに父上を離して、アシュリーを抱き締めた。
「アシュリー!すまない!遅くなった!アシュリー!」
「あ……ディ……ク……」
「怖かったな?ごめんな?遅くなって、ごめんっ!」
「あ……ぅ……」
側にあったアシュリーが着ていたと思われるドレスでアシュリーを包み、抱き抱える。
それから、空間移動で俺の部屋まで飛んでいく。
ベッドに、アシュリーを抱えたまま腰掛ける。
すると少しずつ、アシュリーが動ける様になってきた。
「ディ、ルク……こわ…か……た……」
まだ涙を流して震えるアシュリーの体を撫でて、落ち着かせる様にする。
「アシュリー、もう大丈夫だ……大丈夫だから……」
暫くそうやって、ただ俺はアシュリーを抱き締めていたんだ……
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