慟哭の時

レクフル

文字の大きさ
上 下
71 / 363
第三章

魔法の練習

しおりを挟む

翌朝、朝食の用意をしていると、マリーがテントから出てきた。

「おはようございます。」

「おはよう。よく眠れた?」

「あまり寝付けなくて、なんか色々考えちゃって、でも気づいたら寝てました。」

「まぁ、こんなテントじゃ寝つきも悪いのは仕方ないな。」

「あ、いえ、そう言う事じゃなくて…」

「あ、そこのボウルに水を貯めておいたから、顔を洗うといい。そこに置いてある布を使って顔を拭いて。」

「あ、ありがとうございます。」

マリーが顔を洗っている間に、野草とトムトとハムをパンに挟んだ物と、キノコと野草と牛鴨の肉をバターで炒めて小麦粉を入れ、牛鴨のミルクを入れてよく混ぜて、塩と香味で味を整えて作ったスープを用意する。

焚き火の所まで顔を洗ったマリーがやってきた。

「はい、どうぞ。」

マリーに朝食を渡す。

「スゴイ…」

「え?何が?」

「もう、完璧ですよね。アシュレイ様。」

「な、何が完璧?!」

「女子力高いです。完全に私、負けてます。」

「何の事だ?!」

「もっと私、頑張ります!」


何か1人で燃えているマリー。

また私は何か間違ったのだろうか……

そうして、3人で朝食をとった。

マリーは、私の作った朝食も、凄く美味しいと言ってくれていた。

良かった。

レクスも、旨い!って言ってくれてた。

レクスは、朝には昨日の変な感じじゃなくなってて、いつものレクスに戻っていたので安心した。

全く、人付き合いとは難しいものなんだな…




朝食が済んでから、テント等を片付け、早速東に出発した。

マリーに案内されながら進んでいく。

道中、魔物に出くわすと、私が剣で対応する。

それを見たマリーは、何故か顔を赤らめて私を見ていた。

魔物が殺されるところを見るのが怖かったのだろうか。

盗賊の類いにも出合う。
 
昨日と同じ様にして倒す。

その時はマリーの前だから魔法の詠唱は欠かさないように心掛ける。

盗賊の持ち物は倒した者の物となるので、持ち物を探って必要そうな物は持っていく。

そんな事が数回あった。



「この辺りはやけに盗賊が多いな。」

「本当だな!こんなに盗賊と出くわす事って、あんまりないよな!」

「そうなんですか?私がこの辺りにいた時もそうでしたが、これが普通じゃないんですか?」

「そんなに盗賊に合うなんて事はないな。よく逃げられたものだ。」

「私、実は魔法が得意なんです!で、土魔法で大きな壁を作って逃げてたんです。でも、昨日の3人の時は、もう魔力が無くなっちゃって…」

「そうだったんだな。」

「あの、私も魔物とか、盗賊とかと戦うときに魔法で手伝った方が良いですか?」

「今のところは問題なく倒せているから、それは大丈夫なんだが。」

「良かった!私、魔法の練習はいっぱいしてたんですけど、実践したことがなくて、魔法をあてるのが怖くって……」

「そうか…でも、少しずつ慣れた方が良いかもしれない。次魔物に出合ったら、魔法を使ってみるか?」

「えっ!でも…」

「無理にとは言わないけど、倒した後に魔法を使ってみるとかはどうだろう?」

「…はい。それなら。やってみます!」

「分かった。」

そう言って微笑む。

マリーは緊張しつつも、私に笑顔で答える。




それから少しして、魔物にあった。

アウルベアーだ。

私が雷魔法で感電させた。

レクスの前で、氷の矢は出したくなかったからだ。

心臓あたりを感電させたので、素材と食材としては問題なく使えるだろう。

ただ、この使い方はコントロールが結構難しいので、今までは氷の矢にしていたのだ。

マリーの方を見る。

緊張した顔で、私に頷く。

マリーが詠唱し始めた。

大きな魔方陣が組み立てられ、それが発動した。



ドッガァァァァァァーンッッッ!!!



大きな音がして、一瞬のうちに辺りは半径5m程の大きなクレーターが出来ていた。

アウルベアーの姿はどこにもなく、周りに木も全く無くなっていた。

恐らく、粉々になって吹き飛んだんだろう。

魔法が発動するときに、威力が強そうだった為、私は咄嗟に自分達に結界を張ったので、こちら側は無傷だったが。



レクスと茫然として見ていると

「やりました!ちゃんと魔法があてれましたよ!」

マリーは嬉しそうに私の方へ振り向く。

「マリー……」

「はい!」

「やり過ぎだ。」

「えぇっ?!」



それからマリーに、魔法の制御についての話や、倒し方等の話を説いて聞かせた。

マリーは難しそうな顔をしながら聞いていた。

しかし……



やはり、マリーはナディアと同じ、銀髪の部族なんだろうな。

魔法の威力が、普通の者とは桁違いだ。

そう感じつつも、村に着くのが楽しみになってきていたのだった。








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

処理中です...