50 / 404
友宮の守護者編
一方その頃の……
しおりを挟む
「ふああぁ~、よく寝た…………アレ?」
アテナが作戦概要を説明してから、だいたい二時間ほど経過した頃、九木は見知らぬ河原で目を覚ました。
「ここ、どこ?」
記憶の糸を手繰ってみるが、結城と待ち合わせていた喫茶店に、急にアテナ達が現れてからの記憶が完全に抜け落ちてしまっている。
それもそのはず、アテナによって一瞬で気絶させられ、制裁として彼女の指示でマスクマンとシロガネに戸板に乗せられて河に流されたせいだ。
それから二時間後、九木が乗った戸板は奇跡的に傾くことも沈むこともなく、無事に河岸へと辿り着いていた。まったく知らない場所にいることが無事とは言い難いが。
未だぼんやりしている頭を覚ますかのように、九木の胸ポケットの携帯電話が鳴った。着信を確認すると、上司である佐権院からだった。
「はい、九木です」
『ようやく目を覚ましたようだね、九木刑事』
「警視、オレにあの後なにが起こったんですか? なぜだか知らないうちに知らない所にいるんですけど……」
電話を耳に当てつつ、九木は周囲に首を巡らせてみる。コンクリートも擁壁も見当たらない、小石と背の高い雑草しかない河原の風景だけである。
『今はそんなことはどうでもいい。それよりも早々に帰還してほしい。本日十七時三十分より、友宮邸へ潜入する』
「えっ!?」
記憶が途切れる前に話し合っていた、友宮邸への潜入作戦。結城が提案した通り当日中に敢行されると聞き、九木の脳は一気に覚醒した。
「ほ、本当にやるんですか!? 今日中に!? 例の儀式はどうにかできるんですか?」
『方法は見つかった。一縷の望みとも言うべきものだが、知略の女神が導き出した解答だ。試す価値は大いにある』
「だ、大丈夫なんでしょうか……」
アテナの実力は九木も充分に承知しているが、今回は事が大きいだけに不安の種は尽きることがない。無論、九木は作戦概要がどんなものか知らされていない。今の今まで気絶していたのだから。
『失敗した場合には私のプランに移行する。だが、その際には充実した戦力が必要になる。君の相方に出てきてもらうようにしてくれ』
「あ、相方って……」
佐権院の示す人物について思い当たった九木は、電話越しに渋い顔をした。
「君の相方がいざという時に最大の戦力となり得る。私が手配した機動隊と合流し、友宮邸へ向かうように」
佐権院からの電話は切られ、しばらく九木は物言わぬ携帯電話を見つめていた。作戦決行に別段意見があるわけでもないが、何やら大掛かりなことになってしまっているらしい。それも、飛びっきりの。
佐権院からの相方を連れて来いという要請が、それを裏付けている。だが、一警察官として職務を放棄するわけにもいかず、一霊能者として危険な儀式が行われているのを放置するわけにもいかない。
「たは~~~、ホントにもう……」
気が重くて仕方ないが、とりあえず九木は腰を上げ、携帯電話でGPSの位置情報を確認した。
「…………って、なんでオレ隣の県にいるんだよ!!」
時刻は午前十一時三十分。作戦決行まで、残り六時間と迫っていた。
アテナが作戦概要を説明してから、だいたい二時間ほど経過した頃、九木は見知らぬ河原で目を覚ました。
「ここ、どこ?」
記憶の糸を手繰ってみるが、結城と待ち合わせていた喫茶店に、急にアテナ達が現れてからの記憶が完全に抜け落ちてしまっている。
それもそのはず、アテナによって一瞬で気絶させられ、制裁として彼女の指示でマスクマンとシロガネに戸板に乗せられて河に流されたせいだ。
それから二時間後、九木が乗った戸板は奇跡的に傾くことも沈むこともなく、無事に河岸へと辿り着いていた。まったく知らない場所にいることが無事とは言い難いが。
未だぼんやりしている頭を覚ますかのように、九木の胸ポケットの携帯電話が鳴った。着信を確認すると、上司である佐権院からだった。
「はい、九木です」
『ようやく目を覚ましたようだね、九木刑事』
「警視、オレにあの後なにが起こったんですか? なぜだか知らないうちに知らない所にいるんですけど……」
電話を耳に当てつつ、九木は周囲に首を巡らせてみる。コンクリートも擁壁も見当たらない、小石と背の高い雑草しかない河原の風景だけである。
『今はそんなことはどうでもいい。それよりも早々に帰還してほしい。本日十七時三十分より、友宮邸へ潜入する』
「えっ!?」
記憶が途切れる前に話し合っていた、友宮邸への潜入作戦。結城が提案した通り当日中に敢行されると聞き、九木の脳は一気に覚醒した。
「ほ、本当にやるんですか!? 今日中に!? 例の儀式はどうにかできるんですか?」
『方法は見つかった。一縷の望みとも言うべきものだが、知略の女神が導き出した解答だ。試す価値は大いにある』
「だ、大丈夫なんでしょうか……」
アテナの実力は九木も充分に承知しているが、今回は事が大きいだけに不安の種は尽きることがない。無論、九木は作戦概要がどんなものか知らされていない。今の今まで気絶していたのだから。
『失敗した場合には私のプランに移行する。だが、その際には充実した戦力が必要になる。君の相方に出てきてもらうようにしてくれ』
「あ、相方って……」
佐権院の示す人物について思い当たった九木は、電話越しに渋い顔をした。
「君の相方がいざという時に最大の戦力となり得る。私が手配した機動隊と合流し、友宮邸へ向かうように」
佐権院からの電話は切られ、しばらく九木は物言わぬ携帯電話を見つめていた。作戦決行に別段意見があるわけでもないが、何やら大掛かりなことになってしまっているらしい。それも、飛びっきりの。
佐権院からの相方を連れて来いという要請が、それを裏付けている。だが、一警察官として職務を放棄するわけにもいかず、一霊能者として危険な儀式が行われているのを放置するわけにもいかない。
「たは~~~、ホントにもう……」
気が重くて仕方ないが、とりあえず九木は腰を上げ、携帯電話でGPSの位置情報を確認した。
「…………って、なんでオレ隣の県にいるんだよ!!」
時刻は午前十一時三十分。作戦決行まで、残り六時間と迫っていた。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる