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友宮の守護者編

一方その頃の……

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「ふああぁ~、よく寝た…………アレ?」
 アテナが作戦概要を説明してから、だいたい二時間ほど経過した頃、九木は見知らぬ河原で目を覚ました。
「ここ、どこ?」
 記憶の糸を手繰ってみるが、結城と待ち合わせていた喫茶店に、急にアテナ達が現れてからの記憶が完全に抜け落ちてしまっている。
 それもそのはず、アテナによって一瞬で気絶させられ、制裁として彼女の指示でマスクマンとシロガネに戸板に乗せられて河に流されたせいだ。
 それから二時間後、九木が乗った戸板は奇跡的に傾くことも沈むこともなく、無事に河岸へと辿り着いていた。まったく知らない場所にいることが無事とは言い難いが。
 未だぼんやりしている頭を覚ますかのように、九木の胸ポケットの携帯電話が鳴った。着信を確認すると、上司である佐権院からだった。
「はい、九木です」
『ようやく目を覚ましたようだね、九木刑事』
「警視、オレにあの後なにが起こったんですか? なぜだか知らないうちに知らない所にいるんですけど……」
 電話を耳に当てつつ、九木は周囲に首を巡らせてみる。コンクリートも擁壁も見当たらない、小石と背の高い雑草しかない河原の風景だけである。
『今はそんなことはどうでもいい。それよりも早々に帰還してほしい。本日十七時三十分より、友宮邸へ潜入する』
「えっ!?」
 記憶が途切れる前に話し合っていた、友宮邸への潜入作戦。結城が提案した通り当日中に敢行されると聞き、九木の脳は一気に覚醒した。
「ほ、本当にやるんですか!? 今日中に!? 例の儀式はどうにかできるんですか?」
『方法は見つかった。一縷の望みとも言うべきものだが、知略の女神が導き出した解答だ。試す価値は大いにある』
「だ、大丈夫なんでしょうか……」
 アテナの実力は九木も充分に承知しているが、今回は事が大きいだけに不安の種は尽きることがない。無論、九木は作戦概要がどんなものか知らされていない。今の今まで気絶していたのだから。
『失敗した場合には私のプランに移行する。だが、その際には充実した戦力が必要になる。君の相方に出てきてもらうようにしてくれ』
「あ、相方って……」
 佐権院の示す人物について思い当たった九木は、電話越しに渋い顔をした。
「君の相方がいざという時に最大の戦力となり得る。私が手配した機動隊と合流し、友宮邸へ向かうように」
 佐権院からの電話は切られ、しばらく九木は物言わぬ携帯電話を見つめていた。作戦決行に別段意見があるわけでもないが、何やら大掛かりなことになってしまっているらしい。それも、飛びっきりの。
 佐権院からの相方を連れて来いという要請が、それを裏付けている。だが、一警察官として職務を放棄するわけにもいかず、一霊能者として危険な儀式が行われているのを放置するわけにもいかない。
「たは~~~、ホントにもう……」
 気が重くて仕方ないが、とりあえず九木は腰を上げ、携帯電話でGPSの位置情報を確認した。
「…………って、なんでオレ隣の県にいるんだよ!!」
 時刻は午前十一時三十分。作戦決行まで、残り六時間と迫っていた。
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