上 下
5 / 7

第5話 今後について話し合います

しおりを挟む


コンコンコン

「失礼します。遅くなって申し訳ありませんお母様。」

「いいえ、いいのよセレナちゃん。今回は大変だったわね。
それに、遅くなった理由は大方見当がつくしね。」

執務室に入ると、お母様が一人で優雅にお茶を飲んでました。
屋敷の前でひと悶着あったために来るのが遅くなったので謝ると、お母様はいつものことと、わかっているように、お父様をチラッと見ました。

「いやぁ、まいったな。ごめんねアリス、アリスを待たせるつもりなんてなかったんだよ。」

「父上、母上とイチャイチャしてないで話を始めますよ。」

お兄様がそう言うと、みんな真剣なおもむきになり、最初に口を開いたのはお父様でした。

「ああ、まずセレナ、今回の婚約は苦労を掛けた、すまん。」

それに続いてお母様もわたくしに謝罪を口にする。

「私もごめんね、大変な思いをさせちゃったわね。」

「お母様もお父様も、お気になさらないでください。そもそも、わたくしと殿下との婚約は、先代の国王陛下の王命によりなされたものです。お母様もお父様も断ることができなかったのはわたくしもわかっております。」

「ああ、あの時は国を捨てようかとも思った。」

お父様があまりに真剣に言うので少し驚いた。わたくしの婚約のためにそこまで悩んでくれるなんて。

「はい、謝罪も済んだところで、王家に対してどのような対応をするかですが…..」

お兄様のその言葉に、お父様が答える。

「それについてなんだが、わが公爵家はサンフロール王国から独立しようと思う。」

お父様がそういうと、みな神妙な顔つきになります。

「お父様、よろしいのですか?」

婚約破棄で独立となれば、たとえ王家に非があったとしても、戦争になることは避けられません。そうなれば、多くの民が犠牲になるかもしれません。

「セレナ、私は本気だよ。すでに、ミカルネス王国とソラリアス帝国には使者を送ってある。おそらく、2ヶ国ともこちらについてくれるだろう。」

お父様は自信をもってそう答える。
わたくしもその意見には賛成ですし、たとえ味方にならなくても、サンフロール王家につくということはありえないでしょう。

「それと、この件が片付いたら、私は引退して、あとのことはフィーベルトに任せることにする。」

お父様の言葉にわたくしもお兄様も驚く。お父様はすでに50を超えており、年齢からみれば引退することに何ら不思議なことはありません。
しかし、お父様は豪傑と言うにふさわしい方で、これまでも数々の武勲を立ててきており、いまだにそこら辺の兵士などには負けないくらいの力があります。
また、お父様はその手腕によって、もともと豊かだった公爵領をさらに発展させ、多くの領民から慕われております。
そんなお父様が、引退を宣言したことに、わたくしたちは驚きを隠せないのです。
唯一、お母様だけはこのことを知っていたのでしょう。お父様の宣言を微動だにせず聞いております。

「父上、本気なのですね?」

「もちろんだ。フィーベルト、領主として十分な力がある。私が退いても大丈夫だろう。」

「わかりました、謹んでお受けいたします。」

お兄様は覚悟を決めた目をしています。
また、お父様もお兄様を信頼しているのでしょう。

「はいはい、じゃあ今後の予定を詳細に検討しましょう。」

お母様が声をかけ、わたくしたち3人はうなずきました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の次は爵位剥奪ですか? 構いませんよ、金の力で取り戻しますから

ひじり
恋愛
「エナ、僕は真実の愛を見つけたんだ。その相手はもちろん、きみじゃない。だから僕が何を言いたいのか分かるよね?」  男爵令嬢のエナ・ローリアは、幼い頃にリック・ティーレンスからのプロポーズを受けた。  将来を誓い合った二人は両家公認の仲になったが、ティーレンス家が子爵に陞爵した日を境に、すれ違う日が増えていった。  そして結婚式を前日に控えたある日、エナはリックから婚約を一方的に破棄されてしまう。  リックの新しい相手――カルデ・リスタは伯爵令嬢だ。しかし注目すべきはそこじゃない。カルデは異世界転生者であった。地位や名誉はもちろんのこと、財産や魔力の差においても、男爵令嬢のエナとは格が違う。  エナはリックの気持ちを尊重するつもりだったが、追い打ちをかける出来事がローリア家を襲う。  カルデからリックを横取りしようとした背信行為で、ローリア家は爵位を剥奪されることになったのだ。  事実無根だと訴えるが、王国は聞く耳を持たず。異世界転生者と男爵家の人間では、言葉の重みが違う。貴族の地位を失った父――ロド・ローリアは投獄され、エナ自身は国外追放処分となった。 「悪いわね~、エナ? あんたが持ってたもの、ぜーんぶあたしが貰っちゃった♪」  荷物をまとめて王都を発つ日、リックとカルデが見送りにくる。リックに婚約破棄されたことも、爵位剥奪されたことも、全てはこいつのしわざか、と確信する。  だからエナは宣言することにした。 「婚約破棄の次は爵位剥奪ですか? 構いませんよ、金の力で取り戻しますから」 ※異世界転生者有り、魔法有りの世界観になります。

元婚約者は入れ替わった姉を罵倒していたことを知りません

ルイス
恋愛
有名な貴族学院の卒業パーティーで婚約破棄をされたのは、伯爵令嬢のミシェル・ロートレックだ。 婚約破棄をした相手は侯爵令息のディアス・カンタールだ。ディアスは別の女性と婚約するからと言う身勝手な理由で婚約破棄を言い渡したのだった。 その後、ミシェルは双子の姉であるシリアに全てを話すことになる。 怒りを覚えたシリアはミシェルに自分と入れ替わってディアスに近づく作戦を打ち明けるのだった。 さて……ディアスは出会った彼女を妹のミシェルと間違えてしまい、罵倒三昧になるのだがシリアは王子殿下と婚約している事実を彼は知らなかった……。

婚約破棄されました。あとは知りません

天羽 尤
恋愛
聖ラクレット皇国は1000年の建国の時を迎えていた。 皇国はユーロ教という宗教を国教としており、ユーロ教は魔力含有量を特に秀でた者を巫女として、唯一神であるユーロの従者として大切に扱っていた。 聖ラクレット王国 第一子 クズレットは婚約発表の席でとんでもない事を告げたのだった。 「ラクレット王国 王太子 クズレットの名の下に 巫女:アコク レイン を国外追放とし、婚約を破棄する」 その時… ---------------------- 初めての婚約破棄ざまぁものです。 --------------------------- お気に入り登録200突破ありがとうございます。 ------------------------------- 【著作者:天羽尤】【無断転載禁止】【以下のサイトでのみ掲載を認めます。これ以外は無断転載です〔小説家になろう/カクヨム/アルファポリス/マグネット〕】

もう我慢する気はないので出て行きます〜陰から私が国を支えていた事実を彼らは知らない〜

おしゃれスナイプ
恋愛
公爵令嬢として生を受けたセフィリア・アインベルクは己の前世の記憶を持った稀有な存在であった。 それは『精霊姫』と呼ばれた前世の記憶。 精霊と意思疎通の出来る唯一の存在であったが故に、かつての私は精霊の力を借りて国を加護する役目を負っていた。 だからこそ、人知れず私は精霊の力を借りて今生も『精霊姫』としての役目を果たしていたのだが————

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。

久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」  煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。  その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。  だったら良いでしょう。  私が綺麗に断罪して魅せますわ!  令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?

駒として無能なお前は追放する?ええ、どうぞ?けど、聖女の私が一番権力を持っているんですが?

水垣するめ
恋愛
主人公エミリー・ヘミングスは男爵家の令嬢として生まれた。 しかし、父のトーマスから聖女として働くことを強制される。 聖女という地位には大きな権力と名声、そして金が入ってくるからだ。 エミリーは朝から晩まで働かされ、屋敷からも隔離され汚い小屋で暮すことを強要される。 一度駒として働くことが嫌になってトーマスに「聖女をやめたいです……」と言ったが、「駒が口答えするなっ!」と気絶しそうになるぐらいまで殴られた。 次に逆らえば家から追放するとまでいわれた。 それからエミリーは聖女をやめることも出来ずに日々を過ごしてきた。 しかしエミリーは諦めなかった。 強制的に働かされてきた聖女の権力を使い、毒親へと反撃することを決意する。

家の全仕事を請け負っていた私ですが「無能はいらない!」と追放されました。

水垣するめ
恋愛
主人公のミア・スコットは幼い頃から家の仕事をさせられていた。 兄と妹が優秀すぎたため、ミアは「無能」とレッテルが貼られていた。 しかし幼い頃から仕事を行ってきたミアは仕事の腕が鍛えられ、とても優秀になっていた。 それは公爵家の仕事を一人で回せるくらいに。 だが最初からミアを見下している両親や兄と妹はそれには気づかない。 そしてある日、とうとうミアを家から追い出してしまう。 自由になったミアは人生を謳歌し始める。 それと対象的に、ミアを追放したスコット家は仕事が回らなくなり没落していく……。

処理中です...