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第5話 今後について話し合います
しおりを挟むコンコンコン
「失礼します。遅くなって申し訳ありませんお母様。」
「いいえ、いいのよセレナちゃん。今回は大変だったわね。
それに、遅くなった理由は大方見当がつくしね。」
執務室に入ると、お母様が一人で優雅にお茶を飲んでました。
屋敷の前でひと悶着あったために来るのが遅くなったので謝ると、お母様はいつものことと、わかっているように、お父様をチラッと見ました。
「いやぁ、まいったな。ごめんねアリス、アリスを待たせるつもりなんてなかったんだよ。」
「父上、母上とイチャイチャしてないで話を始めますよ。」
お兄様がそう言うと、みんな真剣なおもむきになり、最初に口を開いたのはお父様でした。
「ああ、まずセレナ、今回の婚約は苦労を掛けた、すまん。」
それに続いてお母様もわたくしに謝罪を口にする。
「私もごめんね、大変な思いをさせちゃったわね。」
「お母様もお父様も、お気になさらないでください。そもそも、わたくしと殿下との婚約は、先代の国王陛下の王命によりなされたものです。お母様もお父様も断ることができなかったのはわたくしもわかっております。」
「ああ、あの時は国を捨てようかとも思った。」
お父様があまりに真剣に言うので少し驚いた。わたくしの婚約のためにそこまで悩んでくれるなんて。
「はい、謝罪も済んだところで、王家に対してどのような対応をするかですが…..」
お兄様のその言葉に、お父様が答える。
「それについてなんだが、わが公爵家はサンフロール王国から独立しようと思う。」
お父様がそういうと、みな神妙な顔つきになります。
「お父様、よろしいのですか?」
婚約破棄で独立となれば、たとえ王家に非があったとしても、戦争になることは避けられません。そうなれば、多くの民が犠牲になるかもしれません。
「セレナ、私は本気だよ。すでに、ミカルネス王国とソラリアス帝国には使者を送ってある。おそらく、2ヶ国ともこちらについてくれるだろう。」
お父様は自信をもってそう答える。
わたくしもその意見には賛成ですし、たとえ味方にならなくても、サンフロール王家につくということはありえないでしょう。
「それと、この件が片付いたら、私は引退して、あとのことはフィーベルトに任せることにする。」
お父様の言葉にわたくしもお兄様も驚く。お父様はすでに50を超えており、年齢からみれば引退することに何ら不思議なことはありません。
しかし、お父様は豪傑と言うにふさわしい方で、これまでも数々の武勲を立ててきており、いまだにそこら辺の兵士などには負けないくらいの力があります。
また、お父様はその手腕によって、もともと豊かだった公爵領をさらに発展させ、多くの領民から慕われております。
そんなお父様が、引退を宣言したことに、わたくしたちは驚きを隠せないのです。
唯一、お母様だけはこのことを知っていたのでしょう。お父様の宣言を微動だにせず聞いております。
「父上、本気なのですね?」
「もちろんだ。フィーベルト、領主として十分な力がある。私が退いても大丈夫だろう。」
「わかりました、謹んでお受けいたします。」
お兄様は覚悟を決めた目をしています。
また、お父様もお兄様を信頼しているのでしょう。
「はいはい、じゃあ今後の予定を詳細に検討しましょう。」
お母様が声をかけ、わたくしたち3人はうなずきました。
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