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六月に書いた短編

温泉6

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 リヒトが来る前に、お湯ではなく水にして。
 座る場所が隣になるよう、隣以外は椅子も全部片付けて。
 想定外だったのは、リヒトから背中の傷について謝られたことぐらい。
 それもさらりと受け流して、俺は押しつけられたシャワーヘッドからお湯を出した。自分の手にかけながら、リヒトが一番好きな温度に調節する。

「どう? 熱くない?」
「ん、大丈夫……」

 いつもみたいに髪を濡らして、優しく揉むように洗ってやる。頭頂部から髪を梳くように指を滑らせながら、その白髪混じりの黒髪に視線を落とした。
 リヒト自身気づいてないようだけど、この一年で、たいぶん色が変わった。白髪が増えた、というより、前世むかしに戻っているといったほうがいい。

「……リヒトは、生まれた時から白髪だったの?」
「な、なんだよ、藪から棒に」
「いや、聞いたことなかったなって」

 別に白髪だろうが黒髪だろうが、そんなのどうってことはない。もしリヒトが、自身の髪色が嫌になって引きこもりになっても、むしろそれはそれでアリだと思っているし。
 髪の泡を流してから、今度は手にボディソープをつけて直に触れた。リヒトが小さく震え、口から甘く息を漏らす。まぁ、ここで抱くつもりは毛頭ないから、気付かないフリをして肌に手を滑らせた。

「で、どうなの?」
「んぅ……っ、黒、髪、だったと思う、けど、なんで……っ」

 後ろから手を伸ばして、胸あたりを円を描くように洗っていく。リヒトの耳が赤くて、抱きはしないけれど虐めたくなってくる。だから耳元に唇を寄せて、囁くように軽く息を吹きかけた。

「じゃあ、今みたいな感じ?」
「ひ、あっ」
「あ」

 リヒトの小さな竿がびくびくと震え、お湯と一緒に白濁がトロトロと股の間を伝っていった。力が抜けたように俺にもたれかかるリヒトが、恥ずかしそうに口元を右手で隠す。

「は、はあ……っ」
「触ってないのにイけちゃったね。俺のこと変態って言うけど、リヒトのほうが変態でしょ」

 鏡に映るリヒトが、鏡越しに欲情した目で俺を見つめている。

「ユー、リ……」
「しないよ」

 今のリヒトにすればさぞ残酷な言葉だったろうな。

「ぁ、や、やだ、なんで」
「なんでって、声出ちゃうでしょ? 忘れてそうだから言うけど、ここ、外だよ」

 俺は伸ばした手をリヒトの内ももに沿わせ、まだ芯を持ち、トロトロと白濁を垂れ流す竿の先端を緩くつついてやった。

「ひ、んっ……、でき、る、からっ」
「出来るの? でも残念。俺が嫌だからしない」

 蛇口をひねりお湯を出す。それをリヒトの頭、肩、腕、腰、最後に足についた泡を洗い流してから「はい、終わり」とリヒトに立つよう促した。けれどリヒトは腰が立たないのか、それともまたグズってるのか、なかなか立つ素振りを見せない。

「リヒ――」
「もう、いいっ」

 涙声のリヒトが、振り向き様に俺に全体重をかけて押し倒してきた。咄嗟にリヒトを右手で受け止め、床に左手をついて体勢を整える。途端左手首に痛みが走るが、顔には出さずに「リヒト?」と上半身を起こした。

「僕が、声、出すのが嫌なら、ユーリが出せばいい……」
「ん!?」

 俺の足の間に顔を埋めたリヒトが、その小さな口に俺自身を含んだ。

「ちょっ、と、リヒト、さん?」
「ん、ひもひいい?」
「んー……」

 痛い。正直、痛い。
 リヒトの口には大きすぎるのだ、俺のが。それを必死に咥えるものだから、微妙に奥歯あたりに当たって、それが痛い。たまに喉の奥につっかえて餌付いてるし。
 けれどそれ以上に、リヒトが俺のを必死に咥える姿が可愛くて、痛さよりも愛しさのほうが勝ってしまう。リヒトが自分からするのもなかなかないし、この姿だけでクるものがある。

「……っは、リヒト、可愛い、最っ高」

 右手を伸ばして、労るように頭を撫で、手の甲でリヒトの頬を擦ってやる。

「ん、んっ、う……っ」

 リヒトの身体が小さく震え、隙間から見える床にまたぱたぱたと白濁が零れていく。

「俺の咥えて、撫でられて、それだけでこんなにして」

 まぁ、仕込んだのはオレなんだけど。
 そう、俺じゃない。オレなんだよな。リヒトの身体は転生してまで覚えてるとか、むしろオレ自身に嫉妬しそう。

「んんん、ぷは……、はっ、ね、ユーリ」
「ん?」

 そしてこんなトロットロのリヒトが言うことはひとつしかない。
 “ご褒美ちょうだい”だ。

「ご褒美、ちょうだい……?」
「……」

 ずく、と胸が傷んで、急激に熱が冷えていく。

「ユーリ?」

 首を傾げるリヒトに「ん?」と取り繕った笑顔を見せてから、

「あげないよ。しないって言ったでしょ」

と少し強引にリヒトを引き離した。それから少しだけグズるリヒトを抱き上げて、先に湯船に入れてやれば、さっき床についた左手が痛んだ気がした。
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