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六月に書いた短編

春休み

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 大学も春休みに入った。リヒトが「流石に一週間くらい帰る」と言い出したから、俺はそれを快く承諾、するわけもなく。

「んぁ……っ、いま、なんに、ち……?」
「んー? 何日かなぁ」

 居酒屋バイトのほうは、帰る日程に合わせて休みを取ったし。実家のほうには連絡を事前に入れていたみたいだけど、こっそり俺のほうからお断りの連絡を入れておいた。
 帰省する当日の朝食、いつも飲むブラックコーヒーに睡眠薬を仕込んで、スマフォも遮断して、そうしてリヒトを完全に軟禁して、はや四日。
 一日目は流石に怒っていたから、媚薬を無理やり飲ませてよがらせた。薬が切れる頃に見計らってまた飲ませて、を繰り返して、三日目には仕上がった。

「ユー、リ、からだ、あつい……っ」

 ベッドで隣に寝転ぶリヒトが、砕けた腰を微かに動かして、俺に必死にお強請りをしてくる。それに口元が歪むのを、隠しもせずに表面に出してから、でも声色は至極優しく、リヒトの腰を撫でる手つきも労るようにしつつ、俺は「ん?」とその小さな唇を啄んだ。

「熱い? どうしてほしい?」

 腰を撫でていた手を後ろに回し、柔らかくなったままのそこに指先を少し埋めた。

「ひ、あっ、あああっ」
「まーた甘イキして。これじゃもう、何も考えられないね」
「ぁ……っ」

 七日目には酷く怒鳴られるだろうが、それでも俺はリヒトが手元から離れるのが嫌だった。もしこれで別れを告げられたら、それこそリヒトを閉じ込める覚悟でいたし。

「ほら、リヒト。言わないとこのままだよ?」

 ぐちゅぐちゅと指を抜き差しし、時折中を擦ってやる。指を増やして広げるようにすれば、リヒトは身体をガクガクと震わせてまた達した。

「あ……、なか、なかにユーリの……だして」
「ん。よく言えました」

 リヒトを組み敷いて、抱きしめるようにその身体を強く抱いて、自身を中へと埋めていく。柔らかくてうねるそこはすっかり俺の形に馴染み、さらに奥へと誘ってくる。

「ね、わかる? リヒトの中、トロットロ」
「んん……っ、あ、はあっ、んっ」
「ふふ、聞こえてないか」

 何度出したかわからないそこからは、中に溜まったままの俺の欲と混じり合って、ぐちゅぐちゅと音を立てて溢れ出していく。その細く白い首にまた吸い付けば、リヒトは小さく身体を震わせ、腹にぱたぱたと色がなくなった欲を吐き出した。

「流石にマズいかな……」

 リヒトのお世話をして四日目。
 お風呂場でリヒトをぐずぐずに甘やかして、着替えも一応して、ご飯も俺が食べさせて、睡眠も取らせてはいるけれど、人間になったリヒトは前よりも無理が効かなくなった。
 リヒトを大事にして甘えさせて閉じ込めておきたいけれど、死なせたいわけじゃない。リヒトが腹に出したそれを指先ですくい、ぺろりと舐め取る。

「……薄い」

 これは本格的にヤバい。

「んー、今日はこれで終わろっか」
「ひぁ……、んっ」

 意識があるようでないリヒトの足を開かせて、腰を打ち付けその奥にまた熱を吐き出した。
 いつも通りにリヒトの身体を拭いて服も整えてから、今日は何を作ろうかなとキッチンへ向かう。最初は料理なんて出来なかったけれど、今でこそリヒトのために色々と作れるようにはなった。まぁ、俺がリヒトのご飯を食べたいから、なかなか作りはしないけれど。

「何しよっかなー」

 適当に鮭粥を作り、それを持って再び寝室へと向かう。

「リヒ……あ、起きた……?」

 ベッドの上には、布団を頭から被った丸い塊があった。これは第一声がなかなかに恐いな、と思いつつ、熱いお粥をサイドテーブルへと置く。
 片膝を乗せ、ベッドに身を乗り出すようにしてリヒトに手を伸ばす。と、その手を払われ、代わりに胸元を掴まれて引っ張られた。

「なかなか熱いお誘いだね」

 冷たい光を宿した目を正面から見つめる。リヒトは本気で怒る時、その金色がひと際輝く。前世むかしみたいに蔑むその色が俺は結構好きで、ぞくりとした感覚が走るのも嫌いじゃない。

「何日目だ」

 最初の質問がそれか。慣れたもんだなと思いながら「四日目」と額にそっと口づける。リヒトがため息をついてから、なんの前触れもなく俺の頬を力いっぱいぶん殴った。

「痛い」
「痛くしたんだ。なんでお前は……、はぁ」
「まだ優しくしたほうだと思うんだけどな。気に入らなかった?」

 自分の頬を冷やすのも後回しにして、リヒトの身体を抱きしめてから一旦離れた。ベッドの縁に座り直してから、

「お粥、食べるでしょ?」

と容器を膝に乗せて、スプーンですくった鮭粥に息を吹きかける。不意に背中に重みを感じて、俺は「リヒト?」と首だけ少し回して、視界の端になんとかリヒトの頭を捉えることが出来た。

「言えって言ったよな?」
「え?」
「言わないと、僕だってわからないって。僕はお前みたいに察しが良くないんだ。帰ってほしくないなら、最初からそう言えよ」
「……ぇ、ぁ、ごめ、ん」

 かたん、と手からスプーンが落ちた。
 リヒトが拾おうと手を伸ばしたけれど、流石に腰が痛いのか「ぃ゙っ!?」と変な声を上げてまたベッドに沈んでいく。

「……怒るかと思った」
「もう慣れた」

 リヒトがもぞりと布団を頭まで被った。それを横目に容器をサイドテーブルへと置いてからスプーンを拾い上げた。新しいもの持ってこないとなぁと「あのさ」と立ち上がる。
 と、服の端を掴む指先が見えて、思わず顔が緩んだ。

「リヒト?」
「あと三日。お世話よろしく」
「ふふ、うん、喜んで」

 俺はリヒトの指先を絡めて、そっと唇を寄せた。
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