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十月
そこはそれとない都会の出来事 その1
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高校生の修学旅行といえば、どこを思い浮かべるだろう。
住んでる地域にもよるが、北は北海道から南は沖縄まで。大阪や京都辺りも候補に含まれそうだ。あと広島や長崎か?
この世界、いやゲームが、はたして現実とどこまで同じなのかはわからないが、なんだか見覚えのある風景に、俺は反射で額を押さえた。
御竿護の住む地域が関東だとするならば、新幹線で二時間で着いたここは――
「おー! 人がたくさんいるいる! 見ろよ護、おにぎりが天井から吊るされてるぞ!」
がやがやと改札を集団でくぐると、太刀根の言う通り、広い構内の天井からおにぎりのマスコットが吊るされていた。立派な兜、ごつい鎧、その手にはおにぎり。それを見ただけで、ここがどこかなんて、俺には一発でわかってしまった。
少し前を歩く太刀根が、興奮した様子でマスコットをしきりに指差している。
「あれ、なんつーキャラだ? にぎりマンか?」
「違う、むすび○だ」
「へぇ、詳しいんだなー」
太刀根の質問に即答してやる。そのまま構内を眺めていると、知らずのうちに頬が緩んでいたらしい。猫汰が横に並び、
「知ってて当たり前だよ。御竿くんは前に、こっちに住んでたんだからね」
とその口元にうっすらと笑みを張りつけた。女子がいたら喜びそうなものだが、生憎俺は喜ばないし、むしろ鳥肌が全身に立ったくらいだ。
「うん? え? なんで知ってんの?」
確かに俺の前世はここ住みではあったが、それを誰かに話したつもりはない。あの駄女神なら知っているかもしれないが、そんなことを話すような奴ではない……はずだ。
訝しむ俺に、猫汰は「知ってるも何も」と俺から視線を外して話を続ける。
「御竿くんは外部からの編入組だったからね。結構目立ってたけれど、覚えてないかな? それに、気になる人のことは全部知りたいし、ね」
最後の台詞を囁くように言われ、俺は寒イボが出る。お前の“全部”は常識の範囲を越えてんだよヤンデレめ、とは言わないが。
しかしそこで俺は疑問に感じたことが。歩くスピードを緩め、後ろを歩いていた観手に並ぶようにする。
「おい」
「はい?」
「俺って転校生だったのか?」
「そうですよ。まぁ設定を説明しますと、最初にプロフィール作成があるんですが、そこで出身地を決められるんです。その出身地が、修学旅行先になるわけですね~」
「お前勝手に設定しただろ!」
いつもの癖で頭を叩いてしまい、牧地からは「こら、御竿ちゃん」とお叱りの声を受け、周囲の生徒からは冷ややかな視線を受けてしまった。
観手は叩かれた頭を押さえて「酷いです~」と少し俯いたが、その目は“ざまぁみろ”と俺に訴えかけてきている。それに怒りが込み上げなかったわけではないが、今は駄目だ。
どうせ今日から五日間、こいつとは一緒に過ごすことになるのだ。俺と太刀根と猫汰、それから観手の四人という、誰得かわからない(観手得か)グループでな。
住んでる地域にもよるが、北は北海道から南は沖縄まで。大阪や京都辺りも候補に含まれそうだ。あと広島や長崎か?
この世界、いやゲームが、はたして現実とどこまで同じなのかはわからないが、なんだか見覚えのある風景に、俺は反射で額を押さえた。
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少し前を歩く太刀根が、興奮した様子でマスコットをしきりに指差している。
「あれ、なんつーキャラだ? にぎりマンか?」
「違う、むすび○だ」
「へぇ、詳しいんだなー」
太刀根の質問に即答してやる。そのまま構内を眺めていると、知らずのうちに頬が緩んでいたらしい。猫汰が横に並び、
「知ってて当たり前だよ。御竿くんは前に、こっちに住んでたんだからね」
とその口元にうっすらと笑みを張りつけた。女子がいたら喜びそうなものだが、生憎俺は喜ばないし、むしろ鳥肌が全身に立ったくらいだ。
「うん? え? なんで知ってんの?」
確かに俺の前世はここ住みではあったが、それを誰かに話したつもりはない。あの駄女神なら知っているかもしれないが、そんなことを話すような奴ではない……はずだ。
訝しむ俺に、猫汰は「知ってるも何も」と俺から視線を外して話を続ける。
「御竿くんは外部からの編入組だったからね。結構目立ってたけれど、覚えてないかな? それに、気になる人のことは全部知りたいし、ね」
最後の台詞を囁くように言われ、俺は寒イボが出る。お前の“全部”は常識の範囲を越えてんだよヤンデレめ、とは言わないが。
しかしそこで俺は疑問に感じたことが。歩くスピードを緩め、後ろを歩いていた観手に並ぶようにする。
「おい」
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「そうですよ。まぁ設定を説明しますと、最初にプロフィール作成があるんですが、そこで出身地を決められるんです。その出身地が、修学旅行先になるわけですね~」
「お前勝手に設定しただろ!」
いつもの癖で頭を叩いてしまい、牧地からは「こら、御竿ちゃん」とお叱りの声を受け、周囲の生徒からは冷ややかな視線を受けてしまった。
観手は叩かれた頭を押さえて「酷いです~」と少し俯いたが、その目は“ざまぁみろ”と俺に訴えかけてきている。それに怒りが込み上げなかったわけではないが、今は駄目だ。
どうせ今日から五日間、こいつとは一緒に過ごすことになるのだ。俺と太刀根と猫汰、それから観手の四人という、誰得かわからない(観手得か)グループでな。
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