80 / 178
九月
大改造! 屹立パワーで大☆学祭! その10
しおりを挟む
爽やかな秋空。日差しは暑くもなく、時折吹いてくる風は心地よく髪を揺らしていく。そんな気分のいい日に、ここBL学園の学祭は始まった。
「あっという間に当日かよ……」
前夜祭という名の、理事長の有り難いお言葉を聞くために、俺たち生徒は朝から体育館に集められていた。壇上には、これまた立派な花輪が飾られていて、一瞬何かのオープニングセレモニーかと思ったくらいだ。
「ま。すぐ終わるって」
隣に立っている太刀根が、上機嫌に俺の肩に腕を回した。それを若干ウザったそうに解いてから、そういえば理事長の顔見たことないなとふと思う。
「なぁ、理事長ってどんなん? ジジイか?」
「どんなんって……」
「もしかして覚えてないのかい? まぁ、覚える必要もないと思うけどね」
相変わらず棘のある言い方で、前にいる猫汰がふんと鼻を鳴らした。この間のセンパイの件を後で知った猫汰は、それからというもの、ご機嫌があまりよろしくない。まぁ、特に害があるわけでもなし、好きにほっといてるけど。
「じゃあ、前夜祭を始めちゃうわね♪」
マイクを通して牧地の声が響いた。ざわついていた体育館内が、少しだけ静かになる。
「まずは、屹立中理事長からのご挨拶よぉ♪」
「……は?」
牧地に促されるまま壇上に上がったのは、どこかで見たことのある銀髪に、翠の目をした、初老の爺さんだった。微かに交じる白髪が、威厳を醸し出している、気もしなくはない。
「我がBL学園、高等部諸君。この日のために諸君らは、日々、勤勉に、時に情熱的に過ごしたことだろう――」
なんか理事長の爺さんが話しているが、俺は構わず猫汰の背中をつつく。
「なぁ」
「っ、なんだい?」
「まさか屹立ってさ、まさかのまさか?」
猫汰は少しだけ首を傾けるようにして、
「まさかのまさかだよ。会長のお祖父様だね」
と小声で返す。絵に書いたような設定に、俺は呆れて物も言えない。
「理事長の孫で会長とか、まじで会長気に食わねぇ。しかも容姿端麗、文武両道、欠点はムカつくことぐらいだな」
「それはお前ぐらいだろ」
いかに容姿が整っていようが、勉強も運動も出来ようが、俺には全く関係ないしどうでもいい。つか、最大の欠点は人外なことだと思う、わりと真面目に。
「――その悔いが一片も残ることがないよう、この三日間、有意義に過ごしたまえ」
「屹立理事長、ありがとうございましたぁ♪」
パラパラとまばらに鳴る拍手と共に、理事長の爺さんは壇上を降りていく。どうやら話は終わったようだ、聞いてなかったけど。
さて、これで前夜祭が始まるのか。これから三日間、生徒会の仕事に追われるのかと思うと憂鬱になる。
「じゃ、次に屹立会長からのご挨拶よ♪」
「は? なんで会長?」
再びざわつき始めた生徒たちに構うことなく、会長は堂々と壇上への階段を上っていく。そうして机の前まで来ると、ダンッと机を力強く叩いた。
「挨拶するまでもないとは思うが、通例に従い名乗るとしよう。高等部三年、生徒会会長、屹立壱だ。本日から三日間、学園祭を執り行う貴様らのために、我が生徒会、率いては屹立壱の力を以て、校舎にある仕掛けを施してもらった」
パチン。
会長の指パッチンの合図と同時に、体育館が縦揺れしだす。慌てだす生徒たち。ウイーンという音と共に体育館の天井が開いていき、綺麗な空が次第に見えてくる。
「まじかよ……」
縦揺れが収まった頃。体育館は全面ガラス張りの壁に覆われ、そして校舎もまた、どっかのアウトレットモールかと勘違いするほどに、その外見を変えていたのだった。
「あっという間に当日かよ……」
前夜祭という名の、理事長の有り難いお言葉を聞くために、俺たち生徒は朝から体育館に集められていた。壇上には、これまた立派な花輪が飾られていて、一瞬何かのオープニングセレモニーかと思ったくらいだ。
「ま。すぐ終わるって」
隣に立っている太刀根が、上機嫌に俺の肩に腕を回した。それを若干ウザったそうに解いてから、そういえば理事長の顔見たことないなとふと思う。
「なぁ、理事長ってどんなん? ジジイか?」
「どんなんって……」
「もしかして覚えてないのかい? まぁ、覚える必要もないと思うけどね」
相変わらず棘のある言い方で、前にいる猫汰がふんと鼻を鳴らした。この間のセンパイの件を後で知った猫汰は、それからというもの、ご機嫌があまりよろしくない。まぁ、特に害があるわけでもなし、好きにほっといてるけど。
「じゃあ、前夜祭を始めちゃうわね♪」
マイクを通して牧地の声が響いた。ざわついていた体育館内が、少しだけ静かになる。
「まずは、屹立中理事長からのご挨拶よぉ♪」
「……は?」
牧地に促されるまま壇上に上がったのは、どこかで見たことのある銀髪に、翠の目をした、初老の爺さんだった。微かに交じる白髪が、威厳を醸し出している、気もしなくはない。
「我がBL学園、高等部諸君。この日のために諸君らは、日々、勤勉に、時に情熱的に過ごしたことだろう――」
なんか理事長の爺さんが話しているが、俺は構わず猫汰の背中をつつく。
「なぁ」
「っ、なんだい?」
「まさか屹立ってさ、まさかのまさか?」
猫汰は少しだけ首を傾けるようにして、
「まさかのまさかだよ。会長のお祖父様だね」
と小声で返す。絵に書いたような設定に、俺は呆れて物も言えない。
「理事長の孫で会長とか、まじで会長気に食わねぇ。しかも容姿端麗、文武両道、欠点はムカつくことぐらいだな」
「それはお前ぐらいだろ」
いかに容姿が整っていようが、勉強も運動も出来ようが、俺には全く関係ないしどうでもいい。つか、最大の欠点は人外なことだと思う、わりと真面目に。
「――その悔いが一片も残ることがないよう、この三日間、有意義に過ごしたまえ」
「屹立理事長、ありがとうございましたぁ♪」
パラパラとまばらに鳴る拍手と共に、理事長の爺さんは壇上を降りていく。どうやら話は終わったようだ、聞いてなかったけど。
さて、これで前夜祭が始まるのか。これから三日間、生徒会の仕事に追われるのかと思うと憂鬱になる。
「じゃ、次に屹立会長からのご挨拶よ♪」
「は? なんで会長?」
再びざわつき始めた生徒たちに構うことなく、会長は堂々と壇上への階段を上っていく。そうして机の前まで来ると、ダンッと机を力強く叩いた。
「挨拶するまでもないとは思うが、通例に従い名乗るとしよう。高等部三年、生徒会会長、屹立壱だ。本日から三日間、学園祭を執り行う貴様らのために、我が生徒会、率いては屹立壱の力を以て、校舎にある仕掛けを施してもらった」
パチン。
会長の指パッチンの合図と同時に、体育館が縦揺れしだす。慌てだす生徒たち。ウイーンという音と共に体育館の天井が開いていき、綺麗な空が次第に見えてくる。
「まじかよ……」
縦揺れが収まった頃。体育館は全面ガラス張りの壁に覆われ、そして校舎もまた、どっかのアウトレットモールかと勘違いするほどに、その外見を変えていたのだった。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
この世界で唯一『スキル合成』の能力を持っていた件
なかの
ファンタジー
異世界に転生した僕。
そこで与えられたのは、この世界ただ一人だけが持つ、ユニークスキル『スキル合成 - シンセサイズ』だった。
このユニークスキルを武器にこの世界を無双していく。
【web累計100万PV突破!】
著/イラスト なかの
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
47歳のおじさんが異世界に召喚されたら不動明王に化身して感謝力で無双しまくっちゃう件!
のんたろう
ファンタジー
異世界マーラに召喚された凝流(しこる)は、
ハサンと名を変えて異世界で
聖騎士として生きることを決める。
ここでの世界では
感謝の力が有効と知る。
魔王スマターを倒せ!
不動明王へと化身せよ!
聖騎士ハサン伝説の伝承!
略称は「しなおじ」!
年内書籍化予定!
鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~
月見酒
ファンタジー
高校に入ってから距離を置いていた幼馴染4人と3年ぶりに下校することになった主人公、朝霧和也たち5人は、突然異世界へと転移してしまった。
目が覚め、目の前に立つ王女が泣きながら頼み込んできた。
「どうか、この世界を救ってください、勇者様!」
突然のことに混乱するなか、正義感の強い和也の幼馴染4人は勇者として魔王を倒すことに。
和也も言い返せないまま、勇者として頑張ることに。
訓練でゴブリン討伐していた勇者たちだったがアクシデントが起き幼馴染をかばった和也は命を落としてしまう。
「俺の人生も……これで終わり……か。せめて……エルフとダークエルフに会ってみたかったな……」
だが気がつけば、和也は転生していた。元いた世界で大人気だったゲームのアバターの姿で!?
================================================
一巻発売中です。
元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~
詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
最強キャスターズギルド『神聖魔術団』所属のSSSSS級キャスターとして魔王を倒し、英雄としてその名を轟かせたアーク・シュテルクストは人付き合いが苦手な理由でその名前を伏せ、レイナード・アーバンクルスとして引きこもりのニート生活を送っていた。
35歳となったある日、団のメンバーの一人に学園の魔術講師をやってみないかと誘われる。働くという概念がなかったアーク改めレイナードは速攻で拒絶するが、最終的には脅されて魔術講師をする羽目に。
数十年ぶりに外の世界に出たレイナード。そして学園の魔術講師となった彼は様々な経験をすることになる。
注)設定の上で相違点がございましたので第41話の文面を少し修正させていただきました。申し訳ございません!
〇物語開始三行目に新たな描写の追加。
〇物語終盤における登場人物の主人公に対する呼び方「おじさん」→「おばさん」に変更。
8/18 HOTランキング1位をいただくことができました!ありがとうございます!
ファンタジー大賞への投票ありがとうございました!
僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~
SHIN
ファンタジー
それは、ある少年の物語。
ある日、前世の記憶を取り戻した少年が大切な人と再会したり周りのチートぷりに感嘆したりするけど、実は少年の方が凄かった話し。
『僕の兄上はチート過ぎて人なのに魔王です。』
『そういうお前は、愛され過ぎてチートだよな。』
そんな感じ。
『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。
隔週日曜日に更新予定。
剣の世界のβテスター~異世界に転生し、力をつけて気ままに生きる~
島津穂高
ファンタジー
社畜だった俺が、βテスターとして異世界に転生することに!!
神様から授かったユニークスキルを軸に努力し、弱肉強食の異世界ヒエラルキー頂点を目指す!?
これは神様から頼まれたβテスターの仕事をしながら、第二の人生を謳歌する物語。
社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる