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九月
大改造! 屹立パワーで大☆学祭! その4
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ざわつく生徒たちに「どいてくれ」と控えめに頭を下げながら、太刀根は会長たちの元へ歩いていく。
「どうした、太刀根攻。貴様がオレの名を呼ぶなど、随分と久しいではないか」
「はひね……(多分太刀根って言っている)」
益州先輩が床に涎を垂らしながら太刀根を見上げる。とりあえずその竹刀を抜いてやればいいのにと思ったが、これ以上巻き込まれたくもないので黙っていることにする。
「聞いたぜ。護の護を奪うつもりだって」
「言い方! それ語弊有りまくりだからやめろ!」
つい声を上げてしまった。しかし二人は構わず話を続けている。
「なんだ、今さらオレが恋しくなったのか? 太刀根攻」
「んなわけねぇだろ! 今でも忘れるわけがねぇ……、あの屈辱的な日々を。壱に恥辱を受けたあの日を!」
「もしもーし。俺帰っていいっすかー」
二人の世界で話すなら大歓迎だ。俺はそうっと立ち上がろうとして、観手に腕を引っ張られ無理矢理座らされた。舌打ちと一緒に睨みつけたがどこ吹く風だ、このクソ女神め。
「だけど! 護にはあんな思いはさせねぇ! ついでに部長の仇も俺が取ってやるぜ!」
「はひね……」
益州先輩が泣いてるのは、多分感動じゃない。ついで扱いされたことに泣いてるんだろうな。
つか、何。結局お前も俺絡みなの!? 勘弁してほしい。
「部長、竹刀お借りします」
「ぅ……」
益州先輩の手に握られていた竹刀を半ば無理矢理引き抜くと、太刀根はそれをしっかりと握りしめ、ゆっくりとした足取りで二人から距離を取る。
「……構えろよ」
太刀根が竹刀の先を会長に向ける。会長は息をひとつ吐くと、益州先輩の口から竹刀を抜き、血を払う剣士の如く竹刀を払った。ただ床に散ったのは血ではなく益州先輩の唾液だ、汚い。
「全く。だから貴様は、駄目なのだ。いつまで経っても、な」
そう言うと会長は竹刀を左手で持ち、その手を後ろへと引いた。なんとも辛そうな格好だが、何か意味があるのか……?
しかし会長は特に辛そうな顔をするわけでもなく、逆に愉しそうにその口元を緩めた。
「来い。貴様に、統べる者とはどういうことか、教えてやろう」
「……っ」
太刀根が床を蹴った。下段に構えた竹刀の先が、ガリガリと床を削っていく。削られた木片が、まるで鉛筆削りで削られた木のように丸まっていき、それが剣先に綿あめみたいに引っついていく。
なんでそうなっているのか。俺にもわからん。これは剣道じゃなかったのか?
「食らえ! 魅惑の飴玉!」
「ふっ。まだまだ巻き取りが甘いな」
会長は余裕の表情を崩すことなく、太刀根の竹刀を凪ぐように受け流す。そして益州先輩にもやったように、あの凄まじい風を剣先から放ちながら右に左にと竹刀を振っていった。
風に舞う布切れ。それが太刀根の着ていた道着だと気づいた時には、もう全てが遅かった。
「ほう……?」
あろうことか、俺に背を向けているのは会長。つまり、俺が正面から見ている、いや見たくもないのに視界に入ってきたのは、太刀根の真っ裸(もちろん正面)だ。しかも恥ずかしがるわけでもなく、堂々と立っている。
「少しは隠せ、馬鹿!」
「鍛えてるから大丈夫だって」
「そういう問題じゃねぇ!」
俺は隣の観手に目隠しをしてやりながら、早く隠せと太刀根に叫ぶ。だが変な自信があるのか一向に隠そうとしない。
観手が「どけてください!」と手の甲をつねってきた。めちゃクソ痛かったが、そこは見せるわけにはいかないと根性で耐える。
「ふっ、見直したぞ、太刀根攻。貴様に敬意を評し、オレも貴様と同じ条件で相手してやろう」
「同じ条件って……、まさか」
「変身」
パチン。
会長が指を鳴らすと、パァン! と音が鳴って服が弾け飛んだ! どういった原理かはさっぱりわからんが(わかりたくもない)、文字通りブレザーが弾けたのだ。
ちなみにパンツだけは残っている。いや、パンツというより……。
「フンドシかよ!」
「安心したまえ、護くん。一人二人に見られたところで何も変わらん」
「一人二人じゃねぇよ! 周りよく見ろ!」
最初にも言ったが、溢れんばかりの生徒たちが集まっているのだ。流石に警察案件だ。お巡りさーん、ここに変態がいますよー!
「お、いたいた。壱」
「鏡華ちゃん!?」
生徒たちの合間からひょっこりと顔を出したのは鏡華ちゃんだった。
「ん? 鏡華か。貴様がわざわざ保健室を離れたということは、アレか?」
「なんだ、わかってんなら早く行ってやれ。面倒くせぇ」
「それは手間をかけたな、ご苦労だった」
「へいへい」
来た時と同じように、のらりくらりと白衣を翻しながら鏡華ちゃんは武道場を出ていった。
「太刀根攻、勝負はお預けだ。あぁ、貴様の覚悟に免じて経費は引き上げておいてやろう。精々有意義に使うことだ」
「会長はいつもそうだ。いつも俺を馬鹿にしやがって!」
「貴様がそう感じ続ける限り、それは何も変わらん。貴様がどれだけ吠えようが、護くんを守ろうとしようが、な」
「……くそ」
なんかカッコいいこと言って出ていったけど、会長……。あんた、服着てねぇよ……。
「どうした、太刀根攻。貴様がオレの名を呼ぶなど、随分と久しいではないか」
「はひね……(多分太刀根って言っている)」
益州先輩が床に涎を垂らしながら太刀根を見上げる。とりあえずその竹刀を抜いてやればいいのにと思ったが、これ以上巻き込まれたくもないので黙っていることにする。
「聞いたぜ。護の護を奪うつもりだって」
「言い方! それ語弊有りまくりだからやめろ!」
つい声を上げてしまった。しかし二人は構わず話を続けている。
「なんだ、今さらオレが恋しくなったのか? 太刀根攻」
「んなわけねぇだろ! 今でも忘れるわけがねぇ……、あの屈辱的な日々を。壱に恥辱を受けたあの日を!」
「もしもーし。俺帰っていいっすかー」
二人の世界で話すなら大歓迎だ。俺はそうっと立ち上がろうとして、観手に腕を引っ張られ無理矢理座らされた。舌打ちと一緒に睨みつけたがどこ吹く風だ、このクソ女神め。
「だけど! 護にはあんな思いはさせねぇ! ついでに部長の仇も俺が取ってやるぜ!」
「はひね……」
益州先輩が泣いてるのは、多分感動じゃない。ついで扱いされたことに泣いてるんだろうな。
つか、何。結局お前も俺絡みなの!? 勘弁してほしい。
「部長、竹刀お借りします」
「ぅ……」
益州先輩の手に握られていた竹刀を半ば無理矢理引き抜くと、太刀根はそれをしっかりと握りしめ、ゆっくりとした足取りで二人から距離を取る。
「……構えろよ」
太刀根が竹刀の先を会長に向ける。会長は息をひとつ吐くと、益州先輩の口から竹刀を抜き、血を払う剣士の如く竹刀を払った。ただ床に散ったのは血ではなく益州先輩の唾液だ、汚い。
「全く。だから貴様は、駄目なのだ。いつまで経っても、な」
そう言うと会長は竹刀を左手で持ち、その手を後ろへと引いた。なんとも辛そうな格好だが、何か意味があるのか……?
しかし会長は特に辛そうな顔をするわけでもなく、逆に愉しそうにその口元を緩めた。
「来い。貴様に、統べる者とはどういうことか、教えてやろう」
「……っ」
太刀根が床を蹴った。下段に構えた竹刀の先が、ガリガリと床を削っていく。削られた木片が、まるで鉛筆削りで削られた木のように丸まっていき、それが剣先に綿あめみたいに引っついていく。
なんでそうなっているのか。俺にもわからん。これは剣道じゃなかったのか?
「食らえ! 魅惑の飴玉!」
「ふっ。まだまだ巻き取りが甘いな」
会長は余裕の表情を崩すことなく、太刀根の竹刀を凪ぐように受け流す。そして益州先輩にもやったように、あの凄まじい風を剣先から放ちながら右に左にと竹刀を振っていった。
風に舞う布切れ。それが太刀根の着ていた道着だと気づいた時には、もう全てが遅かった。
「ほう……?」
あろうことか、俺に背を向けているのは会長。つまり、俺が正面から見ている、いや見たくもないのに視界に入ってきたのは、太刀根の真っ裸(もちろん正面)だ。しかも恥ずかしがるわけでもなく、堂々と立っている。
「少しは隠せ、馬鹿!」
「鍛えてるから大丈夫だって」
「そういう問題じゃねぇ!」
俺は隣の観手に目隠しをしてやりながら、早く隠せと太刀根に叫ぶ。だが変な自信があるのか一向に隠そうとしない。
観手が「どけてください!」と手の甲をつねってきた。めちゃクソ痛かったが、そこは見せるわけにはいかないと根性で耐える。
「ふっ、見直したぞ、太刀根攻。貴様に敬意を評し、オレも貴様と同じ条件で相手してやろう」
「同じ条件って……、まさか」
「変身」
パチン。
会長が指を鳴らすと、パァン! と音が鳴って服が弾け飛んだ! どういった原理かはさっぱりわからんが(わかりたくもない)、文字通りブレザーが弾けたのだ。
ちなみにパンツだけは残っている。いや、パンツというより……。
「フンドシかよ!」
「安心したまえ、護くん。一人二人に見られたところで何も変わらん」
「一人二人じゃねぇよ! 周りよく見ろ!」
最初にも言ったが、溢れんばかりの生徒たちが集まっているのだ。流石に警察案件だ。お巡りさーん、ここに変態がいますよー!
「お、いたいた。壱」
「鏡華ちゃん!?」
生徒たちの合間からひょっこりと顔を出したのは鏡華ちゃんだった。
「ん? 鏡華か。貴様がわざわざ保健室を離れたということは、アレか?」
「なんだ、わかってんなら早く行ってやれ。面倒くせぇ」
「それは手間をかけたな、ご苦労だった」
「へいへい」
来た時と同じように、のらりくらりと白衣を翻しながら鏡華ちゃんは武道場を出ていった。
「太刀根攻、勝負はお預けだ。あぁ、貴様の覚悟に免じて経費は引き上げておいてやろう。精々有意義に使うことだ」
「会長はいつもそうだ。いつも俺を馬鹿にしやがって!」
「貴様がそう感じ続ける限り、それは何も変わらん。貴様がどれだけ吠えようが、護くんを守ろうとしようが、な」
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