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七月
夏だ! 海だ! 無人島だ!? その5
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パチパチと枝が弾ける。それに合わせるように、焼き魚のいい香りが辺りに漂ってきた。
「焼けたぞ。おら、食え」
棒に刺さったイワシを突き出され、俺は渋々それを受け取ると、小さく腹の部分をかじる。微妙な塩加減が美味い。料理上手な奴は、何を作っても美味いんだろうな。
ただ、これがどこから出てきたのかを考えると、素直に美味いと言えないのも事実である。
「おら終、お前も食え」
「やだ。そんな野蛮なこと、このボクがするわけないでしょ」
魚を吐き出すのは野蛮じゃないのか? いや、野蛮というより、もう変人の域なんだけど。
「うだうだ言ってねぇで食え。夜のことも考えなきゃならんし、他の奴らも心配だからな」
そう言って、鏡華ちゃんは焼けたイカを割いた。イカを食べ始めた鏡華ちゃんに、
「なぁ、鏡華ちゃん。ここはどこだろう?」
と構わず聞けば、鏡華ちゃんは「さてな」とイカを平らげた後、
「わかるのは、人気がねぇってことくらいか。だから少しでも早く、他の奴らと合流しねぇとな」
とセンパイの口に無理矢理アジを頭から突っ込んだ。いいか、棒の先端部分は危ないからな。センパイ以外にやっちゃいけないぞ? 俺との約束だ。
「といっても、拠点を作ったほうがいいか……? おし、御竿。お前はあっちに見える森から葉っぱやら蔓やら拾ってこい。なるべくデカくて、立派なやつを、な」
「っす。センパイは?」
「火の番でもしてろ。アテにならん」
「……」
アジを突っ込まれたままのセンパイを見る。頭の部分が苦いのか、なかなか飲み込めずに嫌な顔をするばかりだ。
「なんかあれば声を出せよ。生徒を守るのは保健医である俺様の役目だからな。死んでなきゃどんな怪我でも治してやんよ」
「はは、は……」
頼りになるのかならないのか。まず怪我する前提で話されても困る。
とりあえず俺は、動かないことにはどうにもならないと考え直し、鏡華ちゃんに示された森へと入ることにした。
――が。
蔓に身体を絞められ、枝からぶら下がっている太刀根を見つけた俺は、心底森に来たことを悔やんでいた。
「護! 良かった、無事だったか!」
「お前は無事じゃなさそうだな。まずは自分の心配しような、な?」
「あぁそうだ護。会えて嬉しいのは山々なんだけど、この森ヤバいぜ! 早く離れ……んあっ」
俺に注意喚起をしようとした太刀根の身体を、巻き付いていた蔓が更に強い力で絞め上げたのだ。
「ぁ、あ……。そこ、は……っ」
太刀根が苦しそうに息を吐くが、俺はそんなことより、この立派な蔓が気になった。
「なかなか良さそうだな(蔓が)」
「よ、良くねぇよ! こんなの、こんなの……ひぁっ、変なとこに触れて……」
「やっぱ太いほうが喜ばれるよな(蔓が)」
「ま、待ってくれ……。こんな太いの、無理、だろ、んんん」
「何本くらいいるかな。やっぱ十本くらい? いや、もっとか(蔓が)」
「じゅっ……!? 護、お前、俺にどんなこと、させる、つもりで……ひうっ」
「よし、太刀根。しばらくそうしててくれ。すぐ終わらせるからさ」
「すぐ!? 十本以上あるのにか!? あっ……」
たぶん、太刀根と意思疎通は出来ていないと思う。この数ヶ月で学んだことだ。つか俺も、あいつの話はほとんど聞いてないしな。
俺は鏡華ちゃんが持たせてくれたカッターの刃を出すと、一番近くにあった蔓にそっと触れる。蔓自体に意思があるように見えたが、こうして触れてみた感じでは大丈夫そうだ。
「まずは一本目、と」
ぶちり。続けて二本目、三本目を切ったところで、蔓のバランスが崩れたらしい。
「あっ……、そこ、そこは……!」
「うるせぇ、黙ってやらせろ(蔓を)」
身体に食い込んでいくようだが、そんなもの知ったことかとばかりに、俺は更に蔓を切っていく。そうして太刀根が地面に倒れ込む頃には、結構な数の蔓が集まった。
「焼けたぞ。おら、食え」
棒に刺さったイワシを突き出され、俺は渋々それを受け取ると、小さく腹の部分をかじる。微妙な塩加減が美味い。料理上手な奴は、何を作っても美味いんだろうな。
ただ、これがどこから出てきたのかを考えると、素直に美味いと言えないのも事実である。
「おら終、お前も食え」
「やだ。そんな野蛮なこと、このボクがするわけないでしょ」
魚を吐き出すのは野蛮じゃないのか? いや、野蛮というより、もう変人の域なんだけど。
「うだうだ言ってねぇで食え。夜のことも考えなきゃならんし、他の奴らも心配だからな」
そう言って、鏡華ちゃんは焼けたイカを割いた。イカを食べ始めた鏡華ちゃんに、
「なぁ、鏡華ちゃん。ここはどこだろう?」
と構わず聞けば、鏡華ちゃんは「さてな」とイカを平らげた後、
「わかるのは、人気がねぇってことくらいか。だから少しでも早く、他の奴らと合流しねぇとな」
とセンパイの口に無理矢理アジを頭から突っ込んだ。いいか、棒の先端部分は危ないからな。センパイ以外にやっちゃいけないぞ? 俺との約束だ。
「といっても、拠点を作ったほうがいいか……? おし、御竿。お前はあっちに見える森から葉っぱやら蔓やら拾ってこい。なるべくデカくて、立派なやつを、な」
「っす。センパイは?」
「火の番でもしてろ。アテにならん」
「……」
アジを突っ込まれたままのセンパイを見る。頭の部分が苦いのか、なかなか飲み込めずに嫌な顔をするばかりだ。
「なんかあれば声を出せよ。生徒を守るのは保健医である俺様の役目だからな。死んでなきゃどんな怪我でも治してやんよ」
「はは、は……」
頼りになるのかならないのか。まず怪我する前提で話されても困る。
とりあえず俺は、動かないことにはどうにもならないと考え直し、鏡華ちゃんに示された森へと入ることにした。
――が。
蔓に身体を絞められ、枝からぶら下がっている太刀根を見つけた俺は、心底森に来たことを悔やんでいた。
「護! 良かった、無事だったか!」
「お前は無事じゃなさそうだな。まずは自分の心配しような、な?」
「あぁそうだ護。会えて嬉しいのは山々なんだけど、この森ヤバいぜ! 早く離れ……んあっ」
俺に注意喚起をしようとした太刀根の身体を、巻き付いていた蔓が更に強い力で絞め上げたのだ。
「ぁ、あ……。そこ、は……っ」
太刀根が苦しそうに息を吐くが、俺はそんなことより、この立派な蔓が気になった。
「なかなか良さそうだな(蔓が)」
「よ、良くねぇよ! こんなの、こんなの……ひぁっ、変なとこに触れて……」
「やっぱ太いほうが喜ばれるよな(蔓が)」
「ま、待ってくれ……。こんな太いの、無理、だろ、んんん」
「何本くらいいるかな。やっぱ十本くらい? いや、もっとか(蔓が)」
「じゅっ……!? 護、お前、俺にどんなこと、させる、つもりで……ひうっ」
「よし、太刀根。しばらくそうしててくれ。すぐ終わらせるからさ」
「すぐ!? 十本以上あるのにか!? あっ……」
たぶん、太刀根と意思疎通は出来ていないと思う。この数ヶ月で学んだことだ。つか俺も、あいつの話はほとんど聞いてないしな。
俺は鏡華ちゃんが持たせてくれたカッターの刃を出すと、一番近くにあった蔓にそっと触れる。蔓自体に意思があるように見えたが、こうして触れてみた感じでは大丈夫そうだ。
「まずは一本目、と」
ぶちり。続けて二本目、三本目を切ったところで、蔓のバランスが崩れたらしい。
「あっ……、そこ、そこは……!」
「うるせぇ、黙ってやらせろ(蔓を)」
身体に食い込んでいくようだが、そんなもの知ったことかとばかりに、俺は更に蔓を切っていく。そうして太刀根が地面に倒れ込む頃には、結構な数の蔓が集まった。
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