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七月

夏だ! 海だ! 無人島だ!? その3

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 観手に連れられるまま屋外プールへ行けば、真っ先に気づいた太刀根が「護!」と水を掻き分けるようにしてプールサイドへと歩いてきた。
 さっきは遠目で見えなかったが、太刀根もブーメランだった。しかも会長のものより際どい。色々横から溢れそうで、よくそんなの履けるなと逆に感心したくらいだ。

「護も来てたんだな! やっぱ俺たち、惹かれ合う運命なんだな」
「いや、ないだろ」

 太刀根はそう言って、頬を恥ずかしそうに掻いた。俺の言葉は届かなかったらしい。つかそんな運命、歯車を抜いてでも捻じ曲げたるわ。

「わかった、御竿護。ボクに会いたくて壱に“お願い”したんでしょ」

 鏡華ちゃんに看病された甲斐あってか、多少回復したらしいセンパイが上半身だけ起こして俺を見る。

「いや、そんなことより、それ……なんすか」
「何って。水着に決まってるでしょ? 壱がボクのために選んでくれたんだ!」

 水着、ねぇ。俺には天狗のお面で、股間を隠しているようにしか見えんが。後ろはどうなってんだ。いや、考えないようにしよう。
 少し離れた場所から、下獄が俺たちを控えめに眺めていた。肌を晒すのが恥ずかしいらしく、持っているタオルで身体を隠しているが、如何せんタオルが小さくて隠しきれていない。
 いや。これは下獄がでかい、んだよな。

「よ。下獄も来てたんだな」
「は、はい! ウチが皆さんとご一緒していいのかわかりませんが、精一杯楽しもうかと……。でも、やっぱり泳ぐのは恥ずかしくて」

 もじもじと身体をくねらせる姿も、微かに染まってる頬も、ほどよく締まった身体も。これで落ちない男はいないんだろうな。
 だがこいつも男だ。ほだされてはいけない。てかお前もブーメランかよ。

「終、あんまはしゃぎすぎんなよ。俺様の手を煩わせんな」

 鏡華ちゃんに言われて、再びセンパイが横になる。心底嫌そうだったが、鏡華ちゃんには逆らえないらしい。
 それを見ていた牧地が「んもう」と呆れ顔で俺たちの横へと並んだ。全身にオイルを塗られまくったせいか、テカテカと光っている。てかなんで牧地はビキニなの? しかもなんで観手とお揃いなの?

「鏡ったら。素直に終ちゃんが心配だからついてきたって言えばいいのに」
「んなこと言ったら、こいつがまた調子に乗るからだよ」

 実際、鏡華ちゃんが釘を刺すまで、センパイの顔はキラキラしていたし、何も言われなければまた騒ぎ始めていたんだろう。煩いくらいに。
 俺は見ているのも疲れ、

「猫太、ここ座っていいか?」
「いいよ。もちろん観手さんも」

と猫太と同じテーブルに座る。観手も大人しく座ったところで、すぐに会長のSPがやってきて「お飲み物です」とブルーハワイの入ったグラスを置いてくれた。

「で、これ何?」
「ん? あれ、御竿くんも抽選に選ばれたんじゃないのかい?」
「抽選? つか猫汰は水着じゃないんだな」

 猫汰はブーメランどころか水着の“み”の字すらなく、ハーフパンツにTシャツというラフな格好をしている。

「あんなもの、会長からの好意だとしても着れるわけないだろう!」

 珍しく声を荒げた猫汰に、俺は多少気後れしながらも「お、おう。すまん」と返した。猫汰も「いや、こちらこそ」と手に持っていた本を閉じ、

「体育祭、優勝しただろう? 会長の計らいで、抽選で選ばれた何人かが船に招待されたんだよ」
「抽選、ねぇ」

 まさに抽選とは名ばかりの、明らかに運営の計らいである。だよな、レアだもんな。

「皆の衆、楽しんでいるようだな」

 噂をすればなんとやら。

「会長……」
「護くん、体調が良くなったようで何よりだ。まだクルーズは始まったばかり。楽しまなくては損だぞ?」
「いや、もう十分なんで」

 これ以上はご遠慮願いたい。俺は早くこの場から離れたく、猫汰に「じゃ」とブルーハワイの残りを押しつけ立ち上がり――

「大変だ! 高波が来たぞー!」

 それは誰が叫んだのか。
 こんな晴れた状況で来る高波なんぞ嫌な予感しかしないまま、俺は、いや俺を含むメインキャラたちは、その高波にあっという間に攫われてしまった。
 つか、ゲームとはいえ上手くいきすぎてんだよ! もちっとストーリー考えろ、運営!
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