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六月

掴み取れ! 勝利をこの手に! その後

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 体育祭が終わった。
 いや、正式には終わっていない。チームの健闘を称え合うという名目の元、広い校庭のど真ん中でキャンプファイヤーが開かれていた。なぜキャンプファイヤーなんだろう、わからん。

「みーさおさん!」
「なんだ駄女神」
「うわぁ、酷い言い様ですね~」

 石段に座る俺の隣に、観手が「よいしょ」と無遠慮に座ってきた。遠くで燃えるキャンプファイヤーの周りでは、生徒たちがはしゃぎ回っている。

「結構楽しめましたね、体育祭」
「全然、どこがだ。ただ走るより疲れた」
「いえ、私がですよ」
「あぁそうかよ」

 どこから聞こえてきた陽気な音楽に合わせて、生徒たちが思い思いに踊りだす。その中に下獄がいて、周囲を男子共に囲まれていた。

「なぁ、あれはどっちに見えてんの」
「見えてるものが全てに決まってるじゃないですか」
「そうか、すまん」

 あんまり深く考えないほうがいいんだろう。下獄のためにも、俺のためにも。

「そういや、なんで俺は勝ったんだ?」

 優勝してから、あれよあれよという間に閉会式があり、すぐにキャンプファイヤーと洒落込んだため、正直なんで勝ったのか納得していない。
 もちろん負けたかったなんて、一ミリも思ってないけどな。

「あれはですね、大将が大将を討ち取ったからですね。本来なら大将は前へ出ないので、相手の大将を自軍へ引きずり込むんですよ」
「あぁ、そういう……」

 最初から会長は狙っていたのか? あの会長の考えることはよくわからん。

「それにほら、益州虎さんに御竿さんが寝取ら……おっと、私、メイン以外との絡みは好きじゃないんですよね~」
「今なんつった?」
「やっぱり御竿さんは会長推しですか!?」
「お前も人の話聞かねぇなぁ」

 燃え上がるキャンプファイヤーの火が、薄暗くなっていく校庭を明るく照らしていく。ふと隣を見れば、観手が憂いげにその火を眺めていた。

「観手?」
「え……?」

 こっちを見る観手の視線とぶつかった。

「……」

 呼んだのは俺のほうなのに、いざ正面から見つめられると、何も言葉が出てこない。代わりに心臓が強く打った気がして、俺はそれを誤魔化すように、慌てて視線をキャンプファイヤーへと戻した。

「あー、いや、た、楽しかったなぁ、なんて……」
「御竿さん……」

 キャンプファイヤーの近くにいた太刀根が「護!」と俺を呼ぶ。太刀根ナイス! 太刀根のくせに!

「俺たちも踊るか! あー、ほら、ヨサコイとか」
「ヨサコイって……、御竿さん踊れるんですか~?」
「盆踊りでもいいけど。だからほら、そんな表情かおすんなよ。勝ったんだからさ」
「勝ったから悲しいって思ってるのかもしれませんよ?」
「流石駄女神」

 そう笑って手を取ってやる。力を込めてやれば、微かに握り返してくれた。その際に心臓が飛び跳ねたことには、頼むから気づかないでくれと、俺はそう願っていた。

 そして俺は来月、七月から始まる夏休み中に、なぜか無人島に行くはめになるのだが――
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