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下世話疑惑
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三人──トルア王子兄弟がカヌラに来てから、既に数ヶ月が経過しており、季節は夏を迎えた。その照りつける光の中、とある四人は書庫に集まっていた。
「……思うんだけど」
とつ、とクラネスが呟く。
「何ですか? クラネス様」
「エルナリアと並ぶと、無彩色が集まっているみたいだね」
「え……そうですか?」
こてん、と首を傾げながらエルナリアと目を合わせるニーアリアン。
彼女の肌は雪のように白く、そしてエルナリアは色素が薄い。エルナリアの髪は灰色に近く肌の色も薄いため、無彩色が集まっているように見えるのだ。
「……そう見えなくもないわね、うん」
クラネスの横に立ち、うーんと唸るシレーグナ。そう言う彼女の肌色も薄いが、ニーアリアンほどではない。
「全く、書庫にこもりすぎるのよ」
呆れたようにニーアリアンに言う。彼女──シレーグナはあまり外に出たがらないアーリゼアやニーアリアン達とは違い、よく外に出たがる性格だ。
しかし全く本を読まない訳ではない。アーリゼアと並ぶ知識量は持っており、張り合えるほどだ。
「そういう姉様こそ色白なのでは……?」
「そんなわけないでしょう!? 全く……」
「あ、『全く』二回目。口癖?」
「っ、そんなわけないでしょう!?」
「その『そんなわけないでしょう』も、二回目。もう口癖なんじゃない?」
シレーグナをからかうように言うクラネス。彼の肌色はここにいる四人──ニーアリアン、エルナリア、シレーグナと彼の中で一番濃いと言える。しかし彼とて浅黒いわけでもなく、色は白い方だと言える。
「……クラネス、意地悪だ」
ムッとして、シレーグナが呟く。
「俺はいつも通りだけど? そういうレナだって素直じゃないじゃん」
「そういう意味じゃなくて……まぁいいや。で、ここに来てもらった理由なのだけれど」
扉に重いかんぬきをかけ、振り向いた。
「そういえば知らされていませんでしたね。このような場に私がいるのも不自然ですし」
「ニーア、あなたは普通に自然よ。それでね、集まってもらったのは」
「もらったのは?」
「……最近姉様と義兄上の仲がギクシャクしてしまっているからよ」
三姉妹の中間に存在しているシレーグナにとって、『姉様と義兄上』は一人しかいない──そう、アーリゼアとサニーラのことだ。
「あぁ、やはりそうでしたか。お互いよそよそしいなとは思いました」
「やっぱり? 何かあったのかしらね」
「姉様の方が避けているのかと。最近書庫にいても溜息ばかりですし、この間読んでいる本の題名をぼやりと見ていましたよ」
「読んでいた本の種類は何?」
「恋愛ものだったかと。しかしそんなに甘いものではありませんでした。確か悲恋だったと記憶しています」
「でも兄上と義姉上は悲恋とは言えないな?」
そしてクラネスの『兄上と義姉上』も、限定されている。
「まあ、とりあえず最近二人がおかしいのよね。だから元に戻してあげたいな、って」
にっこりと微笑むシレーグナ。今の彼女はニーアリアンに『気持ち悪い』と言ったことが疑わしく思えるほど、優しそうで暖かなオーラを放っている。
「なるほど。でもどうやってするのですか?」
「近々、リセク国の建国記念日があるでしょう? カヌラとの同盟によって国境線はなくなって、こっちの宮が『リセク国』の宮になる。その事は知らされたわよね?」
シレーグナの体は小刻みに揺れている。よく鼻歌を歌っている彼女は特有のメロディで体を揺らしているようだ。
「『リセク』は古代トルア語で世界という意味。父上も凝りましたね……えぇ、そのことは聞きました。それで?」
「……そのパーティーでどさくさに紛れ、二人にするおつもりですか? 義姉上」
「そのとおりよ、エル」
「…………」
一斉に四人が沈黙した。
「……どのように? 私達はこれから恐らくリセク国王族となるのでしょう? 挨拶に忙しいのでは?」
どことなくニーアリアンは腑に落ちていないような表情だ。
「私達が王族となった時には、二人は恐らく」
「えぇ、王と王妃でしょうね。だからこそ、一番人に顔と名前を覚えて頂かないと──」
「いいえ、王と王妃だからこそ、よ。沢山人がいるからこそ、一つ一つはすごく短いわ。それに同じ地区の貴族達は代表を決めて挨拶するし、ね?」
シレーグナは他の三人の顔色をうかがった。
「……うん、俺はいいと思うよ。エルは?」
「悪くはないが……まぁ、成功せずとも大丈夫だろう。更に悪くなることはなさそうだし」
「……じゃあ、やってみましょうか!」
果たしてそれは成功するのだろうか。
「……思うんだけど」
とつ、とクラネスが呟く。
「何ですか? クラネス様」
「エルナリアと並ぶと、無彩色が集まっているみたいだね」
「え……そうですか?」
こてん、と首を傾げながらエルナリアと目を合わせるニーアリアン。
彼女の肌は雪のように白く、そしてエルナリアは色素が薄い。エルナリアの髪は灰色に近く肌の色も薄いため、無彩色が集まっているように見えるのだ。
「……そう見えなくもないわね、うん」
クラネスの横に立ち、うーんと唸るシレーグナ。そう言う彼女の肌色も薄いが、ニーアリアンほどではない。
「全く、書庫にこもりすぎるのよ」
呆れたようにニーアリアンに言う。彼女──シレーグナはあまり外に出たがらないアーリゼアやニーアリアン達とは違い、よく外に出たがる性格だ。
しかし全く本を読まない訳ではない。アーリゼアと並ぶ知識量は持っており、張り合えるほどだ。
「そういう姉様こそ色白なのでは……?」
「そんなわけないでしょう!? 全く……」
「あ、『全く』二回目。口癖?」
「っ、そんなわけないでしょう!?」
「その『そんなわけないでしょう』も、二回目。もう口癖なんじゃない?」
シレーグナをからかうように言うクラネス。彼の肌色はここにいる四人──ニーアリアン、エルナリア、シレーグナと彼の中で一番濃いと言える。しかし彼とて浅黒いわけでもなく、色は白い方だと言える。
「……クラネス、意地悪だ」
ムッとして、シレーグナが呟く。
「俺はいつも通りだけど? そういうレナだって素直じゃないじゃん」
「そういう意味じゃなくて……まぁいいや。で、ここに来てもらった理由なのだけれど」
扉に重いかんぬきをかけ、振り向いた。
「そういえば知らされていませんでしたね。このような場に私がいるのも不自然ですし」
「ニーア、あなたは普通に自然よ。それでね、集まってもらったのは」
「もらったのは?」
「……最近姉様と義兄上の仲がギクシャクしてしまっているからよ」
三姉妹の中間に存在しているシレーグナにとって、『姉様と義兄上』は一人しかいない──そう、アーリゼアとサニーラのことだ。
「あぁ、やはりそうでしたか。お互いよそよそしいなとは思いました」
「やっぱり? 何かあったのかしらね」
「姉様の方が避けているのかと。最近書庫にいても溜息ばかりですし、この間読んでいる本の題名をぼやりと見ていましたよ」
「読んでいた本の種類は何?」
「恋愛ものだったかと。しかしそんなに甘いものではありませんでした。確か悲恋だったと記憶しています」
「でも兄上と義姉上は悲恋とは言えないな?」
そしてクラネスの『兄上と義姉上』も、限定されている。
「まあ、とりあえず最近二人がおかしいのよね。だから元に戻してあげたいな、って」
にっこりと微笑むシレーグナ。今の彼女はニーアリアンに『気持ち悪い』と言ったことが疑わしく思えるほど、優しそうで暖かなオーラを放っている。
「なるほど。でもどうやってするのですか?」
「近々、リセク国の建国記念日があるでしょう? カヌラとの同盟によって国境線はなくなって、こっちの宮が『リセク国』の宮になる。その事は知らされたわよね?」
シレーグナの体は小刻みに揺れている。よく鼻歌を歌っている彼女は特有のメロディで体を揺らしているようだ。
「『リセク』は古代トルア語で世界という意味。父上も凝りましたね……えぇ、そのことは聞きました。それで?」
「……そのパーティーでどさくさに紛れ、二人にするおつもりですか? 義姉上」
「そのとおりよ、エル」
「…………」
一斉に四人が沈黙した。
「……どのように? 私達はこれから恐らくリセク国王族となるのでしょう? 挨拶に忙しいのでは?」
どことなくニーアリアンは腑に落ちていないような表情だ。
「私達が王族となった時には、二人は恐らく」
「えぇ、王と王妃でしょうね。だからこそ、一番人に顔と名前を覚えて頂かないと──」
「いいえ、王と王妃だからこそ、よ。沢山人がいるからこそ、一つ一つはすごく短いわ。それに同じ地区の貴族達は代表を決めて挨拶するし、ね?」
シレーグナは他の三人の顔色をうかがった。
「……うん、俺はいいと思うよ。エルは?」
「悪くはないが……まぁ、成功せずとも大丈夫だろう。更に悪くなることはなさそうだし」
「……じゃあ、やってみましょうか!」
果たしてそれは成功するのだろうか。
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