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シレーグナと父
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「……父上?」
「おぉ……シレーグナ。二人で話すのは久し振りだな」
「長らく、逃げていました故……それで、お話とは?」
「……ニーアリアンには、参謀官長の位を与えた」
「はい、お聞きしました」
「アーリゼアには、侍女長の位」
「はい」
寝台に横たわる王のそばで座っている、娘のシレーグナ。少しだけ伸びた髪に、前までの面影がうっすらと残っている。
「……お前には、何を与えようかと思っていた」
「そんな……私には何も望みはありません」
「それも分かっている……だから、だ。私は死の床についても迷っている」
「っ……!? 父上!」
「老衰だ……私もそう長くはない」
悲しげに娘に微笑んで、また視線をそらす父。
「なぜそんな……私は姉妹を守れれば十分です」
「そう言うだろうとも思ったのだ……だからな」
「だから、とは?」
「お前には、二人の補佐を頼みたい」
「……補佐? あの二人に私がついても、何もすることはないような気がいたします」
「二人は抱え込みすぎる……いくらサニーラやエルナリアがいたとしても、同性にしか話せないこともあるだろう」
「…………」
黙り込んで、俯くシレーグナの唇は──真一文字に引き結ばれている。
「……頼むことはできないか?」
「……私に、つとまるとは思えないのです」
「何故だ」
「……自分でも、分からない」
「……自分が嫌いか?」
「嫌いだと、言っていいのですか?」
「発言は否定しない。お前にはお前の考えがあるだろう?」
「それは、そう、ですが……」
「……シレーグナ、お前にはクラネスもいる。こう言ってはなんだが、私はあの男が好きだ──あ、そう言う意味ではないぞ」
「ふふっ、分かっていますよ」
訪れた静寂。
「……私で良ければ、どうぞ」
「あぁ、これからもリセクが滅ばないことを祈って。おやすみ」
「おやすみなさい、父上」
「おぉ……シレーグナ。二人で話すのは久し振りだな」
「長らく、逃げていました故……それで、お話とは?」
「……ニーアリアンには、参謀官長の位を与えた」
「はい、お聞きしました」
「アーリゼアには、侍女長の位」
「はい」
寝台に横たわる王のそばで座っている、娘のシレーグナ。少しだけ伸びた髪に、前までの面影がうっすらと残っている。
「……お前には、何を与えようかと思っていた」
「そんな……私には何も望みはありません」
「それも分かっている……だから、だ。私は死の床についても迷っている」
「っ……!? 父上!」
「老衰だ……私もそう長くはない」
悲しげに娘に微笑んで、また視線をそらす父。
「なぜそんな……私は姉妹を守れれば十分です」
「そう言うだろうとも思ったのだ……だからな」
「だから、とは?」
「お前には、二人の補佐を頼みたい」
「……補佐? あの二人に私がついても、何もすることはないような気がいたします」
「二人は抱え込みすぎる……いくらサニーラやエルナリアがいたとしても、同性にしか話せないこともあるだろう」
「…………」
黙り込んで、俯くシレーグナの唇は──真一文字に引き結ばれている。
「……頼むことはできないか?」
「……私に、つとまるとは思えないのです」
「何故だ」
「……自分でも、分からない」
「……自分が嫌いか?」
「嫌いだと、言っていいのですか?」
「発言は否定しない。お前にはお前の考えがあるだろう?」
「それは、そう、ですが……」
「……シレーグナ、お前にはクラネスもいる。こう言ってはなんだが、私はあの男が好きだ──あ、そう言う意味ではないぞ」
「ふふっ、分かっていますよ」
訪れた静寂。
「……私で良ければ、どうぞ」
「あぁ、これからもリセクが滅ばないことを祈って。おやすみ」
「おやすみなさい、父上」
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