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本編
ほっと一息。
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「まさか、高一にもなって喧嘩する人がいるとは……」
「何歳になっても怒りっぽいってことだね。しょうがないんじゃない」
「そうですね……よし、行きましょうか」
文化祭一日目の午前の部が終了し、昼食も食べ終わってホッと一息ついた二人。目立つ生徒会の専用Tシャツも手伝って、まさか二人が一緒に文化祭を周っているとは誰も思わなかった。
「縁日行きませんか?」
「混んでると思うけど、大丈夫?」
「友達のクラスなんで、大丈夫です!」
「え、それやっていいんだ……まぁいっか」
歩き出した海月の後ろをついていく翔悟。
「あ、海月ー! 先輩?」
「見回りついでに寄ってみたんだ。賑わってる?」
「ちっちゃい子がよく来る! めっちゃ可愛い!! あ、みたらし団子食べる?」
「えっ、いいのー!? じゃあ、先輩の分ももらっていいかな」
「お安い御用っ!」
少し長い列をするりと抜け、こっそりと団子を受け取った。外見さえももちもちとしている美味しそうなみたらし団子──海月の大好物だ。
「あ、俺の分ももらってきたんだ……悪いな、ありがとう」
「いえいえ。……あっ」
「ん? ……おっと」
二人の視線の先には、仲が良さそうに歩く凪沙とその隣の男子生徒──おそらく、理人だろう。陸上部のクラブTシャツに身を包んでいる。
「……退散した方が良さそうだな」
「そうですね」
言うが早いか、二人はみたらし団子を持ったまま駆け出した。
「はーっ……だいぶ走りましたねー」
「多分バレなかっただろうな……お、もうすぐステージ部門も半分くらい進むな」
腕時計を見た翔悟が、みたらし団子を頬張りながら言った。
「最後の方はビンゴ大会だし、まだ大丈夫ですね」
「……あ、お化け屋敷」
息をついたその先には、黒と紫、赤の模造紙で包まれた教室。お化け屋敷と大きく書かれたその字体は異様に細くなったり太くなったりしている。
「……行ってみる?」
「いいですけど……大丈夫なんで」
***
「うわぁっ!?」
「あれ、大丈夫じゃなそうだねぇ?」
まるで調子に乗った凪沙のような笑みを翔悟は浮かべている。
「だ、大丈夫ですっ!」
「じゃ行きますよー」
「──あの、先輩……なんか、踏んでません?」
「えっ? おぉ、こんに──」
「うっ、うわあああーっ」
「……かなり怖がってたね」
出口のドアにかかったのれんのような黒いビニールを潜り抜け、少し休憩をした。
「う、げほっ……喉が痛いです」
「司会できる?」
「そこはなんとか……」
二人を見つめる四つの目が、壁から覗く。
──人のモノではないと、気づくものは誰もいない。
「何歳になっても怒りっぽいってことだね。しょうがないんじゃない」
「そうですね……よし、行きましょうか」
文化祭一日目の午前の部が終了し、昼食も食べ終わってホッと一息ついた二人。目立つ生徒会の専用Tシャツも手伝って、まさか二人が一緒に文化祭を周っているとは誰も思わなかった。
「縁日行きませんか?」
「混んでると思うけど、大丈夫?」
「友達のクラスなんで、大丈夫です!」
「え、それやっていいんだ……まぁいっか」
歩き出した海月の後ろをついていく翔悟。
「あ、海月ー! 先輩?」
「見回りついでに寄ってみたんだ。賑わってる?」
「ちっちゃい子がよく来る! めっちゃ可愛い!! あ、みたらし団子食べる?」
「えっ、いいのー!? じゃあ、先輩の分ももらっていいかな」
「お安い御用っ!」
少し長い列をするりと抜け、こっそりと団子を受け取った。外見さえももちもちとしている美味しそうなみたらし団子──海月の大好物だ。
「あ、俺の分ももらってきたんだ……悪いな、ありがとう」
「いえいえ。……あっ」
「ん? ……おっと」
二人の視線の先には、仲が良さそうに歩く凪沙とその隣の男子生徒──おそらく、理人だろう。陸上部のクラブTシャツに身を包んでいる。
「……退散した方が良さそうだな」
「そうですね」
言うが早いか、二人はみたらし団子を持ったまま駆け出した。
「はーっ……だいぶ走りましたねー」
「多分バレなかっただろうな……お、もうすぐステージ部門も半分くらい進むな」
腕時計を見た翔悟が、みたらし団子を頬張りながら言った。
「最後の方はビンゴ大会だし、まだ大丈夫ですね」
「……あ、お化け屋敷」
息をついたその先には、黒と紫、赤の模造紙で包まれた教室。お化け屋敷と大きく書かれたその字体は異様に細くなったり太くなったりしている。
「……行ってみる?」
「いいですけど……大丈夫なんで」
***
「うわぁっ!?」
「あれ、大丈夫じゃなそうだねぇ?」
まるで調子に乗った凪沙のような笑みを翔悟は浮かべている。
「だ、大丈夫ですっ!」
「じゃ行きますよー」
「──あの、先輩……なんか、踏んでません?」
「えっ? おぉ、こんに──」
「うっ、うわあああーっ」
「……かなり怖がってたね」
出口のドアにかかったのれんのような黒いビニールを潜り抜け、少し休憩をした。
「う、げほっ……喉が痛いです」
「司会できる?」
「そこはなんとか……」
二人を見つめる四つの目が、壁から覗く。
──人のモノではないと、気づくものは誰もいない。
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