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七章 冒険編

百八十四 アルラン.......と龍神の正体だよね

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 巫女の宮殿では【ある】調味料が使われている。それを毎日食すのはもはや習慣でロニエの作った料理に最後の下ごしらえとしてその調味料を入れたのには他意は無かった。

 そもそも。食材から食器、水に至るまでロニエは光の料理を作るとき必ず信頼できる物しか使わない。それをセレナの異次元収納によって持ち歩き仕入れもセレナかロニエしかしない事にしている。

 料理担当の栄誉につけるのはたった一人、光の食生活を支えるのは天野ロニエただ一人だからだ。
 セレナはロニエがどうしても料理担当を出来ないときのみ台所に立つ。
 つまり。天野光の料理は天野ロニエと天野セレナしか作ることを許されていない。
 
 それ程安全管理を厳しくしたうえで更にセレナが最初に毒味をしているのだ。
 よって光が食べる料理には毒は入り込むことはけしてない。筈だった。

 そう。巫女神殿でロニエが殆ど最後まで料理をしそれを、部外者の水の巫女ルルが最後の味付けをする。というイレギュラーが起きてしまわない限りは。
 
 巫女ルルがが使った調味料はロニエが用意した物ではなかった。
 それを毎日食しているルルに悪意がある訳でもない。だからセレナの警戒網からも外れていた。
 更に厳密にいえば巫女ルルが使った調味料は毒ではない。

 ルルが使った。調味料、それは水の都にしか生育されていない【インランラン】と言われる赤い果実から出来た粉だった。
 これは、料理に使えばコクとまろやかさがでるものだ。
 更にこれには隠された効能がある。それは女性の妊娠を手伝う作用だ。代々の巫女がこれを食してきたのにはそんな理由もあったのだ。

 だが、実は副作用もある。
 個人差で稀にではあるが、インランランには強力な媚薬効果があるのだ。
 身体にマッチしてしまうと、感度が異常に強くなり、性欲が止まらなくなる。

 その副作用に引っ掛かったのが天野ロニエであった。身体の体温上昇は風でなく男を受け入れる事を身体が求めていたからだ。
 風邪と判断したセレナは間違ってはいない。体温上昇を下げたセレナの処置は完璧だった。他に異常も無いためロニエはすぐに通常状態に戻ることが出来た。

 が。

 朝のエッチで気絶した。ロニエと同じ遺伝子を持つイリアは布団の中でその効果を諸に受けていた。

 「はぁ......ん、はぁ~はぁ~はぁ~」

 熱い吐息がイリアの口から冷たい外気へと流れていく。
 止まらない汗はイリアの着替えたばかりの服を濡らして既に湿ってしまっていた。

 「ちょっとぉ~大丈夫なのぉ?」

 そんなイリアの乱れた息で目を覚ましたデリカはイリアの事を心配そうにさすっている。
 その振動でイリアは熱い息を吐く。

 「ぁ......んっ! はぁ.......はぁ......はぁ。デリカ様......大丈夫ですよ。少し風邪を引いてしまったようです。はぁ......はぁ......」
 「そう。なら体温を下げてあげちゃっても良いわぁ」
 「いえ......お構いなく。風邪は気からと言います。アマノ様に今日もお相手して貰う光栄......の為にこれくらい私で......治す必要があります」
 
 イリアもまたその症状を風邪と誤認しそれを自らの不徳として恥じていた。
 最近。本当に光に選ばれる頻度多かった為に身体を冷やしてしまったのでしょう。
 そう結論づけた。

 これに、デリカもなんでも魔法で解決するのは良くない事だと思いイリアを気遣っていると。

 「デリカ様......はぁッン!」
 「辛くなっちゃったのぉ?」
 「いえ......風邪が移ると悪いです。今からでもアマノ様の所へいってください」
 
 正直行きたい。けれどこの状態のイリアを置いて行っちゃうのはどうだろうか?
 デリカが迷っているとイリアが言った。

 「では、アマノ様に私の容態を伝えてください。あの方は知らないほうが怒ると思いますので」
 「......分かったわぁ」

 こうして、デリカは光の元へと転移した。
 残されたイリアは熱くなる身体を疼きを抑えて辛うじて理性を保ちながら長い時間目をつぶっていた。

 そんな中の様子を知らずに勇者アルランは光に言われたように扉を死守していた。
 しかし、巫女の宮殿。に誰かが入ってくる訳でもないのでアルランは暇を持て余していた。

 そんな中アルランはあることを思い出す。
 自分が犯した罪だ。

 それから解放されようとしたアルランに光が語った真実。

 「僕のせいでまさか、イリア様とデリカさんが死のうとしたなんて......くっ!」

 アルランは自らに深い深い憤りを感じる。
 
 「それに......セレーナと光さんが......」

 その光景は見ていて嬉しいものでは無かった。
 でも幸せそうに光に抱かれるセレーナ......セレナの幸せは全て天野光のおかげだと理解している。

 今の僕に出来ることはたった一つ。
 光さんに恩を返すことそれだけ......

 愛した人が自分ではない男と絡み合っている姿......

 ゴトン!

 ! アルランが深く思慮にくれていると突然扉が開いた。
 中から金の麗人、イリアが虚ろな表情で這いながら現れる。

 そのままイリアはアルランを視線で捕らえると。

 「アマノ様! こちらにいらしたのですね!」

 と言った。もちろんアルランの他に人はいない。天野光はそこにはいなかった。
 大量の汗と湿った服。紅潮した表情。アルランはそれをすぐに異常自体だと判断しイリアに近づいた。

 「大丈夫ですか! イリア様!」
 「アマノ様!」
 「......っ!」

 イリアの身体を支えようと近寄るとイリアはアルランに突然キスをした。
 アルランは目を見開く。

 ーーー僕と光さんを勘違いしている?

 とろける様な舌使いから必死に離れてアルランは後ろ汗をかきながら焦る。
 
 「アマノ様! お願いいたします。アマノ様ぁ......私我慢出来ないのです、私をめちゃくちゃにしてください」

 すぐに距離を詰めてイリアはアルランにもう一度キスをする。そのキスはアルランの性欲を刺激する物だった。何しろイリアはヒムートには一歩及ばないまでも、その成熟した身体と容姿は通常とは一線を越すものがある。

 誰がとったか、覇王の王妃で抱きたい人ランキング。二位に居るのは何時もイリアだ。

 そんなイリアに濃厚なキスをされればいくらアルランと言えども大きくなるのは致し方ないだろう。
 何より、イリアとキスした事でアルランはインランランの成分を身体に取り込んでしまったのだった。

 そして、アルランもインランランで媚薬効果が現れる人種だった。
 それでもアルランは膨大な精神力でその誘惑を打ち負かした。

 「は! 離れてください!」
 「っ!」

 多少乱暴にイリアを突き飛ばしたアルランは自分の何故か強くなる性欲と大きくなった息子に頭を傾げながら警戒を強くする。

 が。イリアからみてアルランは強い媚薬効果で光と完全に誤認していた。
 イリアは光に突き飛ばされたと思い込み固まってしまう。イリアにとって光に拒絶されることは何よりも辛い事だった。だから。

 「アマノ様......アマノ様......はしたない女で申し訳ありません。でも身体が......アマノ様。アマノ様。いっそ殺してください」
 「!」 

 脈絡も無いイリアの台詞にアルランは恐怖を覚える。イリアに死ぬと言われるのはアルランは絶対に避けないといけないことだ。
 なぜなら、アルランは一度イリアを殺しかけたのだから。

 「イリア様......僕で良いのですか?」
 「貴方様で無かったら駄目なのです」
 「わかりました。イリア様の望なら仕方ありません」

 アルランはイリアを受け入れることにしたのだった。
 まず普通の思考ならありえないがアルランはインランランの効果に犯されてしまっていた。

 「アマノ様ぁ! もっと激しく、いつもみたいに!」
 「ああ、ああ、イリア様。僕、もう!」
 「膣に! 膣に! 貴方様の子種を私に!」

 とびゅーっと勢いよく発射されるアルランの精液にイリアは快楽を覚える。

 「そこまでよ!! 凍りつきなさい!!」

 直後。到着したイリアの手によって二人の記憶の抹消とアルランの半殺しが行われたのだった。 (これ以上のイリアとアルラン、ネタは自粛)

 ■■■■■■■■

 「ダーリン。様子を見てきたわよ」
 「どうだった? 辛そう? 俺も戻ろうかな?」

 デリカにイリアの様子が変だと報告されたのでとりあえずセレナに見てもらう事にした。 
 デリカの治療は断ったみたいだが、セレナの治療ならイリアも断らないだろう。

 「............そうね。正気には戻してきたわ」
 「ん? 何かあったの?」
 「......その話は後でロニエに話しておくわ。ダーリンはロニエから聞きなさい」
 「ん? うん。分かったよ。取り合えず大丈夫なんだね?」
 「もう大丈夫よ。そこは断言するわ」

 何か腑に落ちないがセレナが大丈夫と言うなら大丈夫だろう。
 しかし、イリアもロニエも風邪か......エッチするとき少し気をつけることによう。
 
 「今すぐ戻りたいけど」
 「はい。遺跡の下見はしなければ行けません。姉様なら大丈夫ですよ。続けましょう」
 「そうだね。ルル。大丈夫そうだから案内続けて」
 「分かったゾ」

 ルルが頷いて遺跡へと案内を再開してくれる。
 後ろでセレナとロニエがコソコソ話しているけど後でロニエに教えてもらおう。

 因みに今はメルディを抱っこしている。なんか構って欲しそうだったからだ。ヒムートはルミアの背中の上でスヤスヤ眠っている。昨日の疲れが残って居るのかな?

 しばらく海沿いを歩いていくと入江に出た。そこでルルが足を止めた。

 「ここだゾ」
 「何処だよ」
 「ここダ」
 「何処だ」

 俺とルルが鋭く視線を交差させる。
 因みにここには海しかない。本当に何処だと言うんだよ。

 と、俺の疑問はすぐにロニエが解決してくれた。うん。何時も道理だよね。
 ロニエはちょんちょん袖を引いて手の平で海の中を指した。

 「ヒカル様。あれではないですか?」

 ロニエの視線誘導にしたがって海を見つめて日の反射の奥を見ると、海中に巨大な建物が埋まっていた。

 「なるへそ。海底神殿か」

 日本にもこんな鳥居があった気がする。いって見たかったけれど異世界に転移してロニエに会えたんだから文句は言うまい。

 「凄いです! 凄いです! 天野様! 天野様。何故あのような所に建物があるのですか?」
 
 メルディが大はしゃぎで成り立ちを聞いてくる。が知る訳が無い。けれどメルディの期待の眼差しを裏切るわけにはいかないので少し考えて言ってみた。

 「多分、ツネキの一族が滅びる理由がこれなんだろうね。仮説一。温暖化による海面上昇によってってのが現実的だけど、俺的には仮説二此処に住むっていう龍神の仕業な気がするな。大方龍神が水を操れたりするんじゃないかな」

 と適当に仮説を建てて見ると、ルルが反応した。

 「そうだゾ、年々の海面上昇も問題だし、此処に住み着く龍神の加護でもあるゾ」
 「流石はヒカル様です。直感だけは誰にも負けませんね」
 「褒めてるの?」
 「勿論褒めていますよ。それよりヒカル様。問題はこの中をどう調べるかです」

 ロニエが俺を絶賛......うん。絶賛しつつ現実的な意見を言ってくれる。
 いや、俺もこれが何故沈んで居るかは余計な事だとは思ったよ。どうでもいいし。でもメルディの好奇心はどうでも良くは無いじゃん......

 「因みにその辺ルル達水の一族がアシストしてくれたりしないの?」
 「潜るんじゃないのカ?」
 「あ......うん。分かった。何も無いのね」

 さてと。本当にどうするか、こんな所超人しか入れない。メルディなら行けるかも知れないが。
 
 「まあ、セレナ。やれる?」
 「ふふん。任せなさい」

 まあ、困ったときのセレナだ。てっいうかそれなら今からでも突入しようかな?
 でも一応龍神って奴の巣みたいだし駄目か。神の名を持ってるんだ罰が当たりかねない。此処は大人しく儀式の日まで待つとする......

 「ロニエ」
 「なんですか?」
 「龍神って奴のせいでツネキの一族が滅んだの?」
 「そうですね。龍神伝説は有名です。海の支配者として君臨し続けて来ましたから」
 「と、なるとルミアが独りなのはそいつせいじゃん」
 「そうですね......分かりました。どうぞヒカル様の望のままに」

 ロニエが俺の考えを理解してくれた。
 
 そもそも。俺がわざわざフラグを一つ一つ解決していく必要は無い。そんなお約束は無視する。
 え? 儀式? ルル? 何それ? しらんがな。

 俺は、メルディを降ろしてロニエを抱き直す。その変化に気付いたセレナがすかさず俺の前に転移して来る。

 「やるのね、ダーリン」
 「うん。セレナ。ルミアの故郷を滅ぼした敵だよ、此処でどんな扱いをされているか知らないけれど俺はそれを許さない」
 「ふふん。そうね。ダーリンの身内に手をだしたこと後悔すらさせないわ」
 
 空中に浮かび上がりセレナが海底神殿に視線を向ける。

 「ヒムートも俺の近くにいて」
 「はい。王様」

 呼ぶ前から既に俺の近くに来ていたヒムートが腰に抱き着く。
 メルディ。ルミア。デリカが呆然としている中。近くにいたルルをロニエと一緒に抱き上げる。

 「な! な! なするんだナ!」
 「ごめん。ルル。龍神はむかつくから今から退治する。危ないかも知れないから俺の近くいな、それが一番安全だよ」
 
 ルルの返事を待たずしてセレナが言霊を放った。

 『浮き上がりなさい』

 ドボボボボ。

 セレナの言霊は海底神殿を海底から空中へと引き上げた。海底神殿の全長はかつてのツネキ一族の遺跡だ広大な遺跡を丸ごと海底から引き上げた事により大量の海水が滝のように落ちていく。
 一つの小さな国ぐらいある海底神殿か何億年もの時をへて日の光を浴びたのだった。

 「ナニをしたんだナ!?」
 「ふふん。ちょっと浮かせただけよ。それより龍神なんていないじゃない」
 
 驚くルルにセレナが鼻を鳴らしながら答えながら肝心の龍神が出て来ないことに不満を垂らした。
 が。いきなりルルが震えはじめた。

 「なんて事をしたんだナ! 皆殺しされるゾ!」
 
 そのルルの言葉を聞いていたかの様にそれは現れた。

 「オギァアアアアア!!」

 海の中から山の様に大きな七ツの首を持つ龍が現れたのだ。
 その龍。龍神の猛々しい泣き声はアトランティスに住む水の民全ての人が聞いていた。
 ある人は悲鳴をあげ。ある人は泣き叫んだ。またある人は悟りを開く。

 アトランティスに住む人たちはその声が滅びの前兆であることを理解していたのだ。

 が、俺には関係ない。

 「五月蝿いな! あと息が海臭い! それとロニエの耳が潰れる」
 
 俺はロニエの鼓膜を守るために耳を塞いであげていた。至近距離で叫ばれるとうるさくてしかない。

 「ルルが身を捧げればなんとかなるかも知れないカナ?」
 「身を捧げる? あれに? 食われるよ?」

 ルルが身体を揺すって俺から降りて龍神の前に走って行った。全く恐れずに。
 流石は巫女か、でも龍神は理性のある目をしてはいない。このままでは確実に食われるだろう。

 「ヘワタ! お前の惚れた女は自分で命をかけて守れ」
 「ビックボスは?」
 「俺より、好きな女の方が優先だよ、行け!」
 「へい!」

 ここらでヘワタに格好つけて貰わないとフラグが建たなさそうなので頑張ってもらう。セレナも成り行きを見守っている。

 「龍神。ルルが巫女だゾ。ルルを食べて怒りを納めるんだナ!」

 龍神に恐れもせずルルがそういった。
 
 すると龍神は七つの首の一つをルルに向けて伸ばした。牙を立てて。
 あわやと言うところで今回のヒーローヘワタが割り込んでルルを龍神の牙から救い出した。

 やれば出来るじゃないか。

 「ルルちゃん。俺に任せるっす」
 「お前! 誰だったカナ?」
 「へい! ルルちゃんを守るヘワタっす!」

 ルルに名前すら覚えて貰えて無いようだがヘワタはめげずに剣を抜いた。
 そのまま、ルルを背に龍神の首を切り付けた。

 だがヘワタの剣は龍神の鱗に弾かれて根本からへし折れる。
 龍神はそんなヘワタにふたつめの首を伸ばして留めを刺そうとした。

 それを割り込んだメルディが龍神の首を殴り飛ばしてヘワタを助け出す。メルディ、スゲー。
 だが龍神の首は七つ。すぐに他の首が牙を向けてメルディに襲いかかる。

 流石にメルディが傷つくのは見てられないのでセレナに仕留めて貰おうと思った時には俺の近くを七本の尻尾が弾丸のように通りすぎて龍神の七つの首を押さえ付けた。

 ルミアの尻尾だ。メルディはヘワタを助けるために、ルミアはメルディを助けるために身体が勝手に動いたんだろう。

 「ぐぎぁあああ!!」
 「グルルルル!!」

 ルミアと龍神が雄叫びをあげあって力比べをしている。
 若干ルミアの方が部が悪いように見える。

 「ヘワタ。ルルをつれて下がれ」
 「へい!」
 
 ヘワタがルルを俺の位置までつれ戻した事によりメルディも後退した。それによりルミアも抑えている必要がなくなったことで尻尾を離した。

 「ふふん。案外強いわね」
 「龍神......なるほど、ヒカル様。昔文献で呼んだことがあります。七ツの首を持つ龍、あれは三代魔龍。地龍王グランドドラゴンに並ぶ龍。海龍王オーシャンドラゴンです」

 冷静に龍神の正体を見破ったロニエは結論を言った。

 「龍神なんて存在ではありませんよあれはただの魔物です。人間を食料とする。この国の人々は巫女を龍神の餌にでもしていたのでしょう。全く何が解任の儀式ですか。期待して損しました」
 
 解任の儀式......なるほど、巫女をやめる儀式だと思っていたが違うみたいだ。ルルはさっき自らを龍神に食わせようとした。それが儀式だと言って。
 
 解任の儀式は、巫女が龍神に食われて死ぬ事で巫女というものから解任される儀式何だろう。
 中なかに洒落の効いた儀式だ。

 「光。アレやっ~ゃって良いのぉ?」
 
 デリカが既に特大火炎玉を作りながら甘えた声で言いながら俺のとなりに浮いている。
 俺はチラリとヘワタに守られているルルに視線をおくって見る。
 ルルの様子は恐怖というより諦めかな? いや、良くわからない。
 
 「まあ.......良いやそっちのナイトは俺じゃないし。やっちゃって良いよ」
 
 誰かの事情なんてもの俺は知らない。俺に関係あるのはルルの境遇をどうするか。ではなく、ルミアの一族を滅ぼした目の前の七ツ首の龍神、海龍王、オーシャンドラゴンの殲滅今はそれで良い。余計なことは考える必要は無い。

 俺の了承にデリカが挑発的に笑った。戦うの好きだなぁ。
 また独りで戦うのかな?

 と、危惧していたらデリカの隣にセレナが並んだ。そしてセレナがデリカに手を伸ばした。
 それをデリカは一瞥しそして。

 「真理の魔女。助かるわぁ」

 手を取った。直後火炎玉の大きさが爆発的に上昇した。いままでの比ではない大きさまで膨れ上がる。
 バチバチと猛々しく燃える火の玉は龍神の約十倍以上、というか俺も暑い。海水が次から次に蒸発して海が干上がっていく。

 「ふふん。やれば出来るじゃない、やりなさい」
 「.......真理の魔女」

 俺にはその時のデリカの気持ちが分かった。かつて憧れたセレナと共に強敵に向かい合うそんな高揚するデリカの気持ち.......
 
 デリカは少し強くセレナの手を握り締めそして超特大火炎玉を龍神に放った。
 それは龍神の身体すべてを焼き焦がした。

 龍はそもそも炎に耐性を持っているらしいがそんなのはお構いなしと言ったように、海の龍の王。何千年もの間討伐されることのなかった、神とまで称される【龍神】海龍王、オーシャンドラゴンを焼き殺した。
 デリカがだ。
 
 「デリカ。凄いよ!」
 「ふん.......」
 
 俺はデリカに対し謙遜無く褒めるとデリカは顔を赤くしてそして、俺に寄りかかるように意識を失った。
 俺が慌てる前にセレナが転移してきてデリカに触る。そして。

 「大丈夫よ。いきなり力を使い過ぎたみたいね、身体が驚いただけよ」
 「って! セレナ。デリカが倒れるほど力を渡したの?」

 それはいくらなんでもやり過ぎではないか?
 わざわざデリカに倒させなくても良かったのに.......

 「酷いわね。私は何もしてないわよ。ただ隣で手を繋いだだけじゃない。あぶなかったら助けようとおもってね」
 「じゃあ!」

 じゃあ。デリカは!

 「ふふん。そうよ、ダーリン。倒したのはその子の力よ。後でちゃんと労ってあげるのよ?」
 「うん」

 こうして。三大魔龍、オーシャンドラゴンが一人の魔女によって討伐されたのだった.......
 何これ。確か俺遺跡を調べに来たんじゃなかったかな?
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