上 下
12 / 231
一章 出会い

十一  無償の愛って良いものだよね

しおりを挟む
 「ヒカル。止まるなら今だぜ。きっとおめぇーの答は誰も幸せにしないぞ」
 「俺はロニエが好きだ。もうこの気持ちは変えられない」
 「ヒカル様」

 ジョニーが差し出した最後の赤信号も越える。
 
 「今ロニエを傷つけてでもこの不幸の連鎖は今! 止めないと行けないんだ」

 頭の中でほぼ出来上がってるパズルにピースを入れていく。不幸の答を見つけるために。

 「ロニエ。俺のことは好きか?」
 「はい。私はヒカル様の事が好きです」

 今までのように絶対に俺もだよとは答えない。
 これは終わらせるための確認だ。

 「ロニエ.......」
 
 聞くのが怖い。これがただの間違いであって欲しい。
 そんな怯える俺の顔に手を当ててロニエは優しく笑った。

 「ヒカル様。大丈夫ですよ。ヒカル様が怖いのなら私は三度この言葉を言います。私。ロニエ・ノースカロライナは生涯ヒカル様を愛します」

 ーーーロニエ、その気持ちがまやかしかも知れないんだぞ。
 きっともうロニエも何と無くわかっているはずだ。それでもなをそういってくれるロニエをやっぱり.......

 深呼吸して暴れる心臓を押さえる。
 その間。誰もしゃべる事は無かった。

 最初におかしいと思ったのはどこか。
 それはイゲルとジョニーの話だった。
 その話はこうだった。
 俺とロニエは偶然出会った。
 そうだ偶然だった。
 それだけならよかった。けどまだ偶然は続く。
 俺とロニエは偶然、最高の相性だった。
 そうだった。俺とロニエは本当に最高の相性だった。
 だってお互いのやりたいことは全て重なるのだから。
 それは全てに当てはまった。普段の生活から性癖まで全てだ。
 俺はロニエの好きな物が好きで、ロニエは俺が好きな物が好きだ。
 これが偶然なのか。それが最初の疑問だった。
 そんな偶然あっていいだろう。だけどそれだけでも終わらなかった。
 ロニエの呪いはが何故か俺といると弱まる。
 そもそも、ロニエの呪いって何だ?

 「ロニエ、君の呪いの事を教えてくれないか?」
 「はい。もうヒカル様はそれくらいで私のことを嫌いにならないのは分かっていますから」

 ロニエは教えてくれた。
 原因不明の呪いで治す方法は見つかっていない。
 安静にしていれば、死ぬことは無く、ただ体が虚弱になって、体の成長が滞ってしまう。そしてその呪いは俺と一緒にいると弱まる.......そんな偶然あるか?

 全て偶然だと言える程、俺はお花畑ではない。偶然が重なることはあることだ......石を投げたら人に当たる。でも流石にこの偶然は人為的過ぎる。
 まるで、誰かが意図的に俺とロニエをくっつけようとしている様に。

 「ロニエ。俺達はきっと誰かに心を操られているよ」

 そしてそれは、俺とロニエの事を操っている。心を身体を相性を全て最高にしている。

 「そうでみたいですね」

 肯定されてどこかで納得した。

 「やっぱり分かってたんだね。何時から?」
 「私には、ヒカル様の気持ちがわかりました。最初から。いくら私がヒカル様を愛していてもヒカル様の気持ちがわかるはずありません」

 言われて思い出す。俺がロニエと最初に会ったとき。俺はすぐにお腹が減ってると分かった。
 その時は、自分と同じだったと思ったが違う。
 腹が減っているのかも知れないと思うなら分かる。けど俺は確信してたあの子は腹が減っていると。

 「そのあともずっとヒカル様の気持ちが伝わって来ました。私をヒカル様が好いてくださる事も。キスしたいと思ってたことも。下着を盗みたいと思った事もですよ」
 「そりゃあ。悪かったよ」
 「フフフッ。私はヒカル様の物ですから何しても良いんですよ」

 この気持ちは、ロニエと俺の互いへの、この気持ちは間違っている。
 ロニエを好きという気持ちも、ロニエが俺を好きという気持ちも全て、誰かに操れているものだ。
 そんなものは。

 「君のその気持ちは全部偽物だ。君は俺を好きに何かなるはず無かった。そんな君とキスをしてしまった。君は好きでも無い人とキスをしてしまった。それだけじゃないよね?」

 どうしようもなく、歪んでいて、汚くそして醜い。

 「はい。私のしたい事ヒカル様は沢山してくれました」
 「ああ、俺は俺のしたい事を沢山君にした」

 俺がしたいこと、それはそのままロニエがしたいこと。ロニエがしたいことは俺がしたいこと。
 そうきっとこれもおかしい。

 「きっと俺達の好きな物も変えられてるね」
 「そうですね」

 なら、間違っている。なら、正さなければいけない。
 この、間違った想いを.......終わらせ無ければいけない。

 「君は俺以外とキスしたい?」
 「絶対に嫌です」

 俺もロニエ以外とキスなんてしたくない。

 「何で?」
 「ヒカル様が好きだからです。ヒカル様だけが好きだからです」

 でもそれはそのまま。

 「俺達がキスすることは、愛し合う事は、俺達以外の人と、してる事と一緒なんだよ」

 操られなければ好きにならなかった。ロニエは俺を好きになどならなかった。
 つまり、ロニエは俺を本当は好きじゃない。

 「それは違います」
 「違わない」
 「違います」
 「頑固だね」
 「私はヒカル様の事を好きなのですよ」

 それでもロニエは頑なに俺を好きと言う。
 その一途なロニエの気持ちすら利用した奴が居る。
 俺の大好きなロニエを嵌めた奴が居る。

 「だからその気持ちが間違っているんだよ」
 「間違ってはいません。ただ操られていただけです」

 ーーーロニエ、違いが分からないよ。

 「じゃあロニエは、今この瞬間それが無くなったらどうするの?」

 俺とロニエの繋がりは何時消えてもおかしくない、その時、後悔するのは好きでもない化け物の俺を好きだと言っていたことを後悔するのはロニエだ。

 「ヒカル様を愛します。私はヒカル様の事が好きですから」

 ロニエは分かってない。

 「だから、君は俺を好きじゃ無くなっちゃうんだよ。イゲルさんとジョニーも言ったよね。俺は醜いんだよ。ロニエはその価値観も変えられているみたいだけど」

 間違っても俺をカッコイイなどと言うわけが無い。

 「落ち着いて考えてくださいヒカル様。私はヒカル様の最初のお顔を知っています」
 「だから醜い姿でも愛せると?」
 「違います。思い出してくださいヒカル様。私は前に答えましたよ」

 言ったけ? そんなこと。

 「ロニエわかんないよ。俺は何時も適当に生きているから、そんな話したっけ?」

 ロニエはニコリと笑ってお腹の前で両手を組んだまま、背筋をキッチリと伸ばしたまま、言う。
 まるで、態度で、俺を励まそうとしているように。

 「良いですか? ヒカル様。私はヒカル様を王城で見たときただの血まみれの奴隷にしか見えませんでした」
 「え? そうなの? すぐに俺だって気付いて治療してくれたって言って無かったっけ?」
 「言ってません。一生の不覚なのであまり言いたく無いですが、最初見たときヒカル様だと気づく事ができませんでした」

 ああ言ってた気もする。その時はロニエが可愛以外、頭に無かったけど。

 「じゃあロニエは俺を本当の姿で見えてるってこと?」
 「当たり前です。ヒカル様の姿を見間違えるわけありません」
 「つまり、ロニエはジョニーが化け物と、イゲルは醜いと、ギルドの受付嬢は失神した俺の姿を、かっこいいと言ってくれたの? 嘘でしょ」
 「これも前に言いましたが。私はヒカル様が例えゴキブリになっても愛せます。ヒカル様は違うのですか?」
 「ロニエがゴキブリに? 嫌いにはならないけど、愛せるかわわかんないよ」
 「そうですか.......残念です。ヒカル様は私の顔をが好きなだけなのですね」
 「断じて違う。許してお願い」
 
 ロニエはすべてが可愛い。仕種も声も言葉も行動も、嫌いな所なんて無い。ロニエのゴキブリか、ん?可愛いかもしれない

 「やばい。人としてどうかと思うけどロニエがゴキブリになっても愛せるかもしれない」
 「フフフッ。ありがとうございます。でもヒカル様の為にできる限りゴキブリにはならないようにします。なっても大丈夫なのは分かりましたが」
 「ロニエ。無償にキスしたくなるから辞めて。そういうあれじゃ無いから」
 「したいならすれば良いんですよ。私はヒカル様の物ですから。それに私も我慢してるんですよ」

 許されのなら抱きしめたい。

 「辞めて辞めて。誘惑しないで駄目だから。きっとこれも洗脳のせいだから。そうだよ洗脳だよ。俺はアンジェリカに操られて君を殺しそうになったから分かるんだ。どれだけ自分の意思が捩曲げられるかを」

 そうあの時、俺はロニエを本気で殺そうとしてた。
 それが普通だと真剣に思ってた。

 「それもありえません」
 「何で?」
 「あの時ヒカル様は、最高の洗脳である奴隷紋にあらがっていました。だから私は生きていますよね」
 「そうだっけ? 殺そうとしてたような気がするけど?」
 「イゲルさんが気絶させたから覚えて無いんでしょう。......イゲルさんはひどい人ですね」

 プイッとロニエは視線を外して共感して欲しそうに呟く。

 「姫様。私を弄るのは良いですが時と場合をわきまえてください。今、私。真剣に姫様達の話を聞いているので」
 「そもそも。ヒカル様、私と話し合う必要など無いのですよ?」
 「何でよ? 話し合いは大事だよ」
 「ヒカル様はさっしが悪いです。ヒカル様も私の心が分かるのですよね。私達は心ま繋がっているのですよ。素敵です」
 「分かるってそんなに簡単に分かるんだったら、苦労は無いよ」
 「大丈夫です。ヒカル様私の心の声を言って見てください」
 
 ニコニコと笑顔を向けて来るロニエは可愛いけどそれ以外は分からない。
 
 「私は分かりましたよ。私の笑顔が好きと聞こえましたね」
 「やばい合ってるよ。ん? だから笑ってたんだな」
 「はい。何でも使い用はありますね。お陰でヒカル様の好きな私でいられます」

 ーーーロニエはすべてが可愛んだけどな。
 
 「ありがとうございます。私は幸せです」
 「すご! ほんとに便利だね。言葉いらずじゃん。でも俺は分からないんだけど」
 「分かります。というか、もう分かってます。これは伝わって来る物ですから」
 
 伝わって来るもの? まさか!?

 ーーーヒカル様が好きです。ヒカル様が好きです。ヒカル様が好きです。ヒカル様が好きです。ヒカル様が好きです。ヒカル様が好きです。ヒカル様がーーーー

 「ロニエ。まさか、ずっと俺の事が好きって考えてたりする?」
 「正解です。私がどれだけヒカル様を愛しているか伝わりましたね」
 「ロニエ。違う事も少しは考えようよ。もし本当に今のがそれならロニエからは俺が好きって言葉しか聞こえないんだけど」
 「私の心はヒカル様だけですからね」
 「こら! ロニエキスしたいって考えたな。今真面目な話だって言ってるのに」
 「それはヒカル様もじゃないですか。ヒカル様の欲望は全部ロニエが叶えてあげますよ」
 「いやーやめて読まないで。プライバシーの侵害だ」
 「分かってます。嬉しいんですね。任せてください」
 「なるほど分かった。これ感情をそのまま送信してるんだな。理性で押さえる前の」
 「そうなんですか。じゃあ私の小さいおっぱいを触りたいって言うのは心のそこの本心なんですね」
 「.......ロニエ。俺を好きなら本心だけじゃなくて理性の方も好きになって」
 「もちろんヒカル様の全てが好きですよ」
 「駄目だ。完全にロニエにペースを握られた。ちょっとイゲルさんチェンジで」
 「私か!? 私に姫様を押さえる事はできないぞ」
 「俺とロニエの今の状況だいたい分かってるでしょ。その危ない点を論理的に説明して。俺だともう話す前に終わっちゃうから」
 
 純粋な所で俺を好きと言っている彼女にこのこんがらがった状況を説き伏せる事はできない。俺達がどんなに間違った恋愛をしているのか分かって貰えない。

 「姫様。まず。確認させて欲しいです」
 「良いですよ」
 「では一つ。姫様とヒカル殿はなんらかの方法で誰かに意図的に恋仲にされたという事で大丈夫ですね」
 「すげー分かりやすいよイゲルさん」
 「では二つ目。姫様の呪いとヒカル殿は関係している」
 
 そうだよなそれも合った。

 「では三つ目。姫様とヒカル様はお互いの望みが同じになるようにされている。そして四つ。姫様とヒカル殿はお互いの心が読める。今のところヒカル殿と姫様の話を聞いて分かった事はこの四つですが他にありますか?」
 「うーんそれだけかなロニエは他に知っている事ある?」
 「私はヒカル様が分かった事以外でわかっている事はありませんよ」
 「では、この四つのうちヒカル殿は一つ目と三つ目があるから姫様と別れたいと言うことですね」

 別に別れたいわけじゃない。むしろ一緒にいたいでもそれは全てまやかしで.......

 「.......そうなるのかな」
 「それは、姫様がヒカル殿を本当は好きでは無い可能性があるから、という理由で良いですね」

 ーーー好きでもない人を好きになっていた時の対処方法なんて分からないよ

 「姫様。ここまでは分かってますね」
 「はい」
 「姫様はそのことをどう思ってるのですか?」
 「全く何とも思っていません」

 この話の中で1番分かってほしい所なのに、ロニエはキッパリと言った。

 「そうですか。じゃあヒカル殿は?」
 「俺は。好きじゃないかもしれない人とロニエがそういうことするのは絶対に嫌なんだ」
 「ヒカル様。私はヒカル様が好きなので大丈夫です」
 「だからその気持ちは本来俺に向けられる物じゃ無かったんだよ」
 「いいえ。私は何があろうとヒカル様が好きです」

 悲しくなってきた。否定を重ねる度に泣きそうになる。
 
 ーーー何が悲しくてロニエが好きって言ってくれてるのにそれを否定しなければならないんだろうか?
 
 「ヒカル殿。落ち着いてください」 
 「落ち着けないよ。ロニエがまさに今。好きでもない俺にここまで言ってくれてるんだぞ」

 本来なら、ロニエは違う誰かに愛を注いでいた。その誰かがロニエの本当に愛すべき人だ。

 「ヒカル殿。姫様を信じてください」
 「え?」

 イゲルの説得は俺に向かっていた。ロニエでは無く俺を説得する。
 俺が間違っているみたいに。

 「ヒカル殿は、姫様の気持ちを嘘だと言い。姫様はヒカル殿の事を好きだと言う。今の状況はただそれだけです」
 「それだけって、紛れも無く嘘なんだ。悲しいし認めたくないけど。ロニエの俺への気持ちは全てが誰かに作られたものなんだよ」
 「姫様は、それでもヒカル殿を好きなんです。それは心を共有しているヒカル殿が一番分かってるはずです」
 
 嘘でも俺が好き?
 意味が分からない。痛いほど本当に痛いほどロニエの気持ちは伝わって来る。でもそれは間違っているもので操られているもので、作られている物で嘘だ。だから嘘の上から俺を好きになっていたとしてもそれは嘘だ。

 例えるのなら、メロンパンのメロンの下にカレーが詰まっているような物だ......違うか。何でもいいや。

 「分からないよロニエは俺のことが好きじゃないのに好きなの? そしたらロニエは結局誰でもよかったの? あの時ロニエに俺じゃない人がご飯をあげてたらロニエはその人を好きになったの? ああつまりそういうことか! ロニエにとっては俺が助けただけで、本当はだれでも良くて.......だからロニエはあの時、たまたま助けた俺を好きになったって事か。俺じゃなくてもよかった.......か」

 気持ちが暴走する。言わなくて良いことまで全てツルツル口から滑り出る。

 ーーー心が痛い。ロニエを助けたのが俺じゃなくてもよかった何て考えたく無かった。でもそれが事実だ。

 「俺は結局ロニエにも選ばれていたわけじゃなかったって事か」

 そして、結論に至った。
 俺はこの世界で唯一ロニエだけは俺を選んでくれたと思った......でも違った。
 ロニエは選んでなといなかった。
 ロニエに選ばれてなどいなかった......

 「ヒカル殿。叩きます」
 「どうせ痛く無いけど叩きたいなら叩い.......」

 バチンと叩かれた。
 そして驚いた。久しぶりに驚いた。
 だって。

 「ハハハ。ロニエに叩かれるとこんなに痛いとは」

 叩いたのはロニエだったからか。両目に涙を浮かべて小さい手で俺を思いっきり叩いたのだ。
 心の声が聞こえた。

 ーーーヒカル様。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

 俺に謝り続けるロニエ。そして泣いているロニエ。何時もなら頭を撫でながらすぐに気にしなくて良いよと言っただろうが。その時は動けなかった。ただじんじんする頬を感じた。

 心で荒れ狂っている筈なのに、ロニエはしっかりと俺を見つめて問いを放った。

 「ヒカル様は。私を嫌いなのですか?」

 その問いだけはーーー

 「好きだ」

 ーーー即答した。できた。その問いだけは反射的にできた。

 「それは嘘です」
 「そんなことは無い.......!」

 そして気づく。この問いは俺がロニエにしていたことと同じだ。
 
 ロニエはもう一度言った。

 「うそです」
 「俺がロニエを嫌いになること.......は.......絶対に.......無い」

 何故無い?
 俺も嘘で無理固められた上でロニエを好きなったのに......
 それなのに、俺はロニエの言葉を否定できる。
 絶対に無いと。

 「ハハハハ分かった。ロニエの気持ちが今更ながらに分かったよ。嘘でも好きね。確かに俺はロニエの事が好きだ。間違いない。それはそうだよ当たり前だよロニエが否定して。俺のことを叩くわけだよ。ロニエ。ゴメン」

 つまりはそういう事だったのか、ロニエはずっと言っていた俺を好きと。ただ俺はロニエが好きだったという事だけだった。それだけだった。だからそれに嘘は無い。間違ってなどいなかった。

 「私はヒカル様の事が好きです。嘘だと思いますか?」
 「ああ思う。でもロニエは俺のことが好きだ」
 「嘘じゃありません」
 「そこは譲らないのね」
 「ヒカル様!! 私は怒っているんですよ」

 笑う俺に対して、ロニエは怒る。
 でもそれは。

 「ああ当然だ」
 「でも好きです」
 「俺も好きだよロニエ。うん。これでよかったんだ。俺達はこれでよかったんだ、俺のこの気持ちが嘘な分けない。俺は何を一人で焦ってたのかな」

 納得する。安心する。理解する。

 「ヒカル様!! 私は怒ってます」
 「ロニエは俺を選んでくれたんだよね」

 嘘の上からでも俺を選んでいてくれた。
 それがすごく嬉しい。全てに見放されたと思ったけれど、ロニエだけは俺を選んでいてくれた。

 「当たり前です。私がヒカル様を選ばずとして誰を選ぶんですか?」
 「もちろん俺だよ。俺以外選ばないな。そんなことはわわかってるよ」
 「ヒカル様。私はまだ怒ってます」
 「許してくれないの? 俺はどうすれば良いの、ロニエに怒られたままなんて嫌だよ」
 「ヒカル様がしたいことをすれば良いのです。だって私はヒカル様の物ですから」

 俺がしたいことをそんなのは決まっている。ずっとしたかった。ロニエが可愛いしね。
 やることなんて.一つだ。

 俺はロニエの頭を撫でて言う。

 「ロニエ。謝んなくて良いよ。今回も俺が悪かった」

 ロニエが謝っているんだからそれを励ます。それが俺のやりたい事だ。
 
 心の声が聞こえる。

 ーーーヒカル様が好きです。

 ロニエは本当に俺の事が好きだった。今回もそれだけの話だった。

 
 「ヒカル様のしたいことはそれだけですか?」
 「もちろんまだ沢山貯まってるけど今は言葉でロニエのしたいことを聞きたいな」
 「意地悪です」
 「じゃあロニエに意地悪したい」
 「ううー。じゃあヒカル様私にキスしてください」
 「いただきます」
 「ヒカルさまーんんっんー激しいッんッーーーんん」
 「嫌なの?」
 「ヒカル様の意地悪。もっとしてください。んっんーんーんんんっんーんーヒカルんんさまんんんーーーーんだいすきっんーーーーです」


 俺は、ロニエのために生きる。この世界でロニエのためだけに生きる。
 その想いがまた一段と強まった。


 ーーーーーーー



 イゲルはその光景をただボー然として見ていた。ただの普通の光景だ。ロニエと光の光景だ。
 

 「全く。ヒカル殿にも困った物だな」
 「ヒカルの話は結局、何も解決してないけどな。それにしても今回はロニエ様の乙女力に助けられたなヒカルの奴」
 「今回もだ。あの二人はやっぱり最高の相性みたいだな」
 「何にせよ。俺もヒカルは味方だって分かったぜ。ただヒカルとロニエ様の呪いの関係だけは気になるな」
 「あの二人なら何とかしそうだがな」
 「そうわみえねぇーのにな」
 
 

 
 


  ーーーー以下コメントーーー

 一章中盤戦終了!!
 読んでくれてるかな?
 さてと、ここからは、十八歳以下お断りです。回れ右ですよ~

 
 次から一拍置いてから一章中盤戦、その二。をお送りします。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。 ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。 そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。 しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。 自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。 アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

処理中です...