上 下
260 / 391

炊き出しボランティア その6

しおりを挟む
炊き出しボランティア その6
『パブリックブレイク現象』とは。
ストレスの積み重ねによって、普通の社会人がある日、突然、発狂して怪物や異能者になってしまう現象の事である。
政府は、このパブリックブレイク現象で怪物もしくは、異能者になってしまった人間を、『パブリックモンスター』と命名した。
 
モンスターエリアでの炊き出しボランティア終了後、学生寮の俺の自室に、意識を取り戻した竹田と部長と副部長が、ノックもせずに入ってきた。
大鍋を両手に持った部長が一言。
「ただいま」
「いや、おめぇの家じゃねぇし‼」
竹田はまたスーパーでまたムァンビキをしてきたのか、両手にパンパンになったビニール袋を持っている。
「おい、山神ィ!最高記録更新だぜ‼」
「なにの?」
両手にカセットコンロを持っている副部長の杉原ヒカリが俺に挨拶をする。
「おじゃまします...」
「つーか、お前ら、また俺の部屋で鍋パーティーすんのか!お前らって、いつもそうだよなァ!俺の部屋なんだと思ってるんですかァ!」
「うるせーわよ!テレビの音聞こえないでしょ!」
PGSの監視任務でこの部屋で生活しているヨシノが俺を叱責する。
テレビ画面には、セイバーズのリーダー『フューラー』とPGSを管理する政府長官『宮本テツヤ』が握手を交わしていた。
政府長官・宮本テツヤはマスコミとテレビの前の人々に対して、『新社会宣言』を発表した。
『新社会宣言』
それは、今ままで、モンスターエリアに隔離されていた自我のあるパブリックモンスター達が人間たちと共に人間社会で生活することを意味している。
おそらく、『フューラー』は政府長官『宮本テツヤ』に、自我のあるパブリックモンスター達の人間社会の移民を認めなければ、モンスターエリアで起きたPGSのアズマによる無差別銃撃事件の証拠映像を世間に広めると脅迫したのだろう。
PGSが自我の有無に関係なく無差別にパブリックモンスターを殺害したことが世間や世界中に広まれば、PGSとPGSを管理している政府は世界中からバッシングを受けるのだ。
『フューラー』と『宮本テツヤ』が再び握手を交わす。
この映像を見ている人々のほとんどが、将来への不安を抱いているに違いない。
これから、この人間社会は、人間とパブリックモンスター達が共に生きていく世界になるのだ。
部長がカセットコンロに火をつけながら、ぼやく。
「あーあ、やっぱり、こうなったわね」
「ひどい話だぜ、パブリックモンスター達の人間社会への移民が決定したってことは、アズマの無差別銃撃事件の真相は一生、闇に葬り去られたままってことだろ!」
俺の言葉にヨシノが答える。
「仕方ねーわよ、先にモンスターエリアの食料配給を停止したのはPGSの方なんだから...それをフューラーはパブリックモンスターの人間社会への移民を実現させるために利用したのよ...」
竹田が鍋を食いながら、疑問を口にする。
「お前ら、なんの話してんだ?」
「そっか、竹田は、部長の豚汁飲んで、ずっと気絶してたから知らないんだっけ?」
俺はモンスターエリアでの炊き出しボランティアの最中に起きた銃撃事件について竹田に説明した。
「なんか色々大変だったんだな、つーか、部長の豚汁飲んだモンスターエリアのやつらはよく無事だったな、まぁ、パブリックモンスターだもんなァ...あっちぃなァッ!ちょっと、部長ォ!鍋の煮汁、顔にかけるのやめてくださいよォ!」
「どっちかって言うと、竹田君の味覚がおかしいのよ!私の豚汁、モンスターエリアのやつらに大好評だったんだからァ!」
副部長が補足する。
「私も作るの手伝ったんですけど...」
「まぁ、とりあえず、みんな無事でよかったぜ、いただきます、うん、おいしい!」
とりあえず、アルティメットメディアクリエイター部のみんなで何かを成し遂げたあとに食べる、鍋はうまかった。
人間とパブリックモンスター、二つの種族が共に生きていく世界が俺たちを待っている。


次回予告 アイドルイベント その1
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

彼女の母は蜜の味

緋山悠希
恋愛
ある日、彼女の深雪からお母さんを買い物に連れて行ってあげて欲しいと頼まれる。密かに綺麗なお母さんとの2人の時間に期待を抱きながら「別にいいよ」と優しい彼氏を演じる健二。そんな健二に待っていたのは大人の女性の洗礼だった…

【R18】禁断の家庭教師

幻田恋人
恋愛
私ことセイジは某有名私立大学在学の2年生だ。 私は裕福な家庭の一人娘で、女子高2年生であるサヤカの家庭教師を引き受けることになった。 サヤカの母親のレイコは美しい女性だった。 私は人妻レイコにいつしか恋心を抱くようになっていた。 ある日、私の行動によって私のレイコへの慕情が彼女の知るところとなる。 やがて二人の間は、娘サヤカの知らないところで禁断の関係へと発展してしまう。 童貞である私は憧れの人妻レイコによって…

【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)

幻田恋人
恋愛
 夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。  でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。  親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。  童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。  許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…  僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

処理中です...