妖の街で出会ったのは狐の少年でした

63話 デート

「・・・は？」
「デート！・・・だめ？」
あからさまにしょんぼりしている。　
「え、別にいいけど」
「じゃあ行こ！今から！」
「今から！？」
そうしてオレたちは近所の公園へ
「でも、なんでいきなりデート・・・」
「ジュンさっき言ったでしょ？
嘘ついてるって」
スルーされた。まぁいいけど
「え、ああ」
「嘘ついてた、ごめん。
遊びに来たのは本当。でも学校に来たのは
驚かせたかったからじゃない。というか
学校に来ること自体、憂鬱だった。」
どうして、と言いかける言葉を飲み込んだ。
「私は自分勝手にこの町に来て学校に通った。でもたった2週間という短い期間だけ輪に入っておいて学校を辞め街を出た。
どこまでも自分勝手な私をどう思うかなってのこのこと学校に顔を出して門前払いされたらどうしようとか、いろいろ考えちゃってさ」
「ふーん、後悔してるか？学校に行ったこと」
「いや、全然。」
その顔は晴れ晴れとしていた。
「ナツキ。」
「何？」
「罵詈雑言吐いていい。殴ったっていい。
それでナツキの気が晴れるならオレは
気にしない。自分を押し込んで本音を隠して薄っぺらい笑顔で嘘つかれる方がオレは嫌だ。」
「ジュン」
「オレは要領が悪い。成績も良くない。
将来やりたいことは本当にやりたいことなのか、って聞かれたらはっきりそうだって言えないくらい曖昧になったけど・・・。
でも大切な親友達に嘘つかれる存在にはなりたくない」
「ジュン・・・ありがとう。」
「ナツキの用はもう済んだ？」
「え、うん付き合ってくれてありがとう
途中まで一緒に帰ろ？」
「え、何言ってんだ？付き合ったんだから
今度はオレに付き合ってよ」
「いいよ。」
気のせいかな。ジュンの言葉使いが柔らかくなった気がする

「やっぱ美味しい、これ。ずっと食べて
みたかったんだ」
「それはよかった、」
私たちは公園の後にカフェにきた。
なぜカフェなのかというと
「ジュンが甘いもの好きだって知らなかった。ちょっと意外」
「そうか？でもありがとう、
付き合ってくれて」
ジュンが食べているのはチョコレートパフェ
「さっきの抹茶パフェも美味しいけどこの
パフェも好きだな」
「よく入るよね」
(さっきの抹茶パフェもなかなかの大きさだったけどチョコレートパフェも大きいな)
「ナツキは食べないのか？」
「うん、甘いものはあんまり」
そう言ってわたしは紅茶を口に含む
「ジュン、私ちょっとお手洗い行ってくる」
「ああ」
席を外し戻ってくるとジュンはパフェを食べ終える頃だった。
「ジュン、これは？」
テーブルにあるお皿を指さす。
「お店の人がさっき来て、サービスだって」
「そうなんだ」
席につきドライフルーツの盛り合わせを
いただく。
「おいしい」
「そっか、よかった」
ジュンは安心したような息をついた。
紅茶と共にドライフルーツをのんびり食べる私を急かすことなく待っていてくれた。
「そろそろ出るか」
「そうだね」
「紅茶代は私が、」
「いいよ、付き合ってくれたお礼。
奢らせてよ」
「ありがとう」
私は先に店の外で待つことにした。

ナツキは甘いものが好きじゃないらしい。
悪いことしたな。
オレはもう一度メニュー表を手に取る。
オレはあるものを見つけ、店員に頼んだ。
すると1分もしないうちにきたので
あらかじめ備蓄していたのかもしれない。
ナツキが戻ってきて食べるとおいしいと
言ったことに安堵した。
ナツキは紅茶と共にゆっくりと食べている。
それを見ているだけで幸せを感じる。
オレは会計を済ませ外に出る。

ナツキがこの街にいるのは後２日。
短い時間でオレはナツキに何ができるだろう