上 下
19 / 100

19話 遊園地

しおりを挟む
朝、着物の帯を結んでいるとロクが入ってきた。
「おはようございます。カズハ様」 「おはよう、ロク」
「今日は、お出かけですか?」
「うん、ミズキさんが遊びに行こうって」
「そうですか。楽しんできてください。」
「ありがとう、ロク」
「それじゃあ行ってくるね」
「いってらっしゃいませ、カズハ様」
宿屋を出ると、ミズキさんが待っていた

「すみません、遅れて」
「大丈夫だよ」
「着物なんだね」
「え、ダメでしたか?」
「いや、いつもの服装じゃないから珍しいなと思って。その着物も綺麗だ」
「ありがとうございます」
「いつも気になってるけどその簪は?」
「これですか?」
私は頭にある簪を触る。
「これはロクがくれたんです。」
「へぇ」
ミズキさんは顔がにやけていた。
「どうかしたんですか?」
「男性が女性に簪を送る意味って・・」
「意味?」
「いやなんでもない。そろそろ行こ。」
そう言って歩き出す。
「どこに行くんですか?」
「最近できた遊園地があって。そこに行こうかなと」
(いつもの服装の方が良かったかな?でもミズキさん、袴だし、大丈夫かな?)
少し心配しながらも列車に乗り、20分ほど揺られていたらみえてきた目的地。
少しレトロな感じでおしゃれな遊園地だ。
観覧車にコーヒーカップ、
メリーゴーランドにミラーハウス
などがある。
「ミズキさん、どこに行きますか?」
「あの馬のやつ気になるな」
「なら、最初はあれにしましょう」
5分ほど並んで、私たちの番になった。ミズキさんは袴でまたがることができたが、私は着物だったので横向きに棒を掴み、片手でバランスをとりながら座った。
「カズハは何乗りたい?」
「わたしは・・・」
私たちはコーヒーカップに座っている。
カップが動き出し、ゆったり回っている。
「ミズキさん、回してもいいですか?」
カップの真ん中のハンドルに手を掛けながら聞く。
「いいよ、回して」
私は遠慮なく思い切り回す。
世界が勢いよく回り出す。
風が気持ちいい。
この数ヶ月、忙しくて大変ながらも凄く楽しい日常を過ごすことができた。
新しい出会いもあった。
これからも、こんな日常が続けばいいな。

私たちはベンチで休憩している。
コーヒーカップで私が調子に乗って回しすぎたせいでミズキさんが、酔ってしまった。
「ごめんなさい、ミズキさん。
調子にのりすぎました。」
「いや、平気。カズハ、三半規管つよいんだな」
「ありがとうございます?飲み物買ってきましょうか?」
「うん、お願い」
自販機で炭酸飲料を買いミズキさんに渡し隣に座る
「炭酸飲めますか?
あ、暖かいのがよかったですか?」
「暖かい炭酸は美味しいのかな?。それに雪女だから、普通の倍以上寒さに強いから大丈夫。・・・今日、ありがとうな付き合ってくれて。」
「いえ、私の方こそありがとうございます」
「アタシ、誰かとこうして遊ぶの久しぶりなんだ。カズハのこと振り回すかもしれない」
「私も初めてですよ。誰かと遊ぶの。ミズキさん、私のこと振り回してくれて構いません。目一杯楽しましょう。」
ベンチから立ち上がり、私に手を差し出す
「ああ、覚悟しとけよカズハ」
わたしは手を取り立ち上がる。
その手はとても暖かかった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

D×DStrike〜俺と悪魔の反乱物語〜

藤沢 世界
ファンタジー
あなたの大切な人は誰ですか__ 現代を舞台に繰り広げられるファンタジー これは、心狂わせられた人々の物語。

のぞまぬ転生 暴国のパンドラ

夏カボチャ
ファンタジー
逆恨みから1000回目の転生に繋がる異世界転生、全ての世界の経験が1人の元少女を強くする!

ひまじん
恋愛

転移失敗!!此処は何処?僕は誰?

I&Rin
ファンタジー
 世界最強と誰もが認めるスキルの持ち主である父を持つ息子のリンはその血筋を色濃く受け継ぐ超エリートの能力者ではあるが、年齢幼く自己中心的な性格によって周りからの評判は最悪! そんな彼が限界突破を目指して月へと転移しようと試みるがその結果、失敗して別の惑星に転移してしまう そこから始まるリンの新たな世界を描いています。   1話あたり1000文字位にしています  基本的に金土日の3日間の正午にアップしていますので、よろしくお願い致します  68話からヒロイン的な存在のエルフ登場!  モチベーションが続く限りアップして行きますので、誤字脱字にいろいろなご意見と御指摘お願い致しますm(_ _)m

悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。 女神『はい、あなた、転生ね』 雪『へっ?』 これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。 雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』 無事に完結しました! 続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。 よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m

底辺令嬢と拗らせ王子~私死んでませんけど…まあいいか

羽兎里
恋愛
祖父の借金を背負ったガルティア男爵家。現当主の娘エレオノーラは、たった一度、2歳の時にお城のパーティーに招かれた(らしい)その時第二王子のアレクシス様に見初められたが、本人は覚えのないまま年月は流れる。そしてある日突然王室から縁談が舞い込んだ。アレクシス様?私、全然覚えが無いのですが。恋愛・冒険・魔法・その他いろいろごった煮定食てんこ盛り。

処理中です...