上 下
8 / 100

8話 信頼

しおりを挟む
今、俺の膝にカズハ様の頭がのっている。あれからカズハ様が、泣き疲れたのか眠ってしまった。布団を敷こうにも動いたら、起こしてしまう。畳に頭をつけるのも痛いのでこの形に落ち着いた。信用してくれてるのはいいが長襦袢姿で寝るのは流石にどうかと思う。俺は羽織を脱ぎ、そっとカズハ様にかける。でもいつも着付けしてるし、今更か。足、痺れてきたなとのんびり考えていると部屋がノックされた。
「はい、どうぞ」
「ちょっといいかしら?」
「ナグモ様!」
俺が振り返ろうとすると、カズハ様がうめき声をあげた。
「そのままでいいよ。あんなことがあったのにすやすやと。よほど信頼しているのね。」
「そうでしょうか?」
「じゃなきゃ、いくら羽織をかけてるとはいえ長襦袢姿で使いの膝に頭を乗せて寝ないと思うけど」
「カズハ様は危機感というものが足りないんです。」
「ねぇ、ロク。」
「なんでしょうか?」
「カズハには言わないの?あのこと。
狙われることもあるんでしょ?」
「今はまだ言いません。隠しきれなくなったら言います。カズハ様に知られることなく
終わることが一番ですけどね」
「カズハのこと、大切なんだね」
「大切ですよ、主ですから。ナグモ様も他の方と比べると随分カズハ様のこと、目に掛けていると思いますが」
「親友との約束なんだ。それを私は最後まで守りたいだけだよ」
ナグモ様は立ち上がり
「カズハが起きたら散歩でもしてきたら?あとこれカズハのお給料、起きたら渡しといて」
「分かりました。」

「んっ」
「起きましたか?カズハ様」
すぐ近くで声がして、私は現状を整理した。すぐに起き上がり、謝罪をする。
「ごめんなさい、ロク。私ったらなにを・・・あ、羽織ありがとう」
自身にかけてあった羽織に目をやる。
「さすがに長襦袢姿で寝るのはどうかと思いますよ。カズハ様」
ロクは呆れながら言う。
「うっ、以後気をつけます」
「あとこれ、ナグモ様からカズハ様への給料です」
綺麗な紺色の丸いお金が二十枚ほど入った袋が、渡された。
「気分転換に散歩でもいきませんか?」
私は制服に着替え、ロクと一緒に外に出る。私たちは呉服屋に入る。
「ねぇロク、私の初のお給料で着物って買えるかな?」
「安いものなら10枚ほどで買えますよ」
「そうなんだ。・・・
決めた。これにする」
私が手に取った着物は、水色で桜の模様が施されてる。帯もセットになっており、帯は薄い桃色のものだった。
会計が終わるとずっと気になっていたことを聞いてみる。
「ねぇ、ロク。ずっと気になっていたんだけど何でずっと仮面をつけているの?」
「・・・仮面をつけている方が落ち着くんです」
「そうなんだ」
それ以上は言及しなかった。距離ができてしまいそうで。
「人間でも生粋の妖でもないマガイモノにこの世界は生きづらい」 
ロクがそう呟いていたのを私は知らない
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

未亡人クローディアが夫を亡くした理由

臣桜
キャラ文芸
老齢の辺境伯、バフェット伯が亡くなった。 しかしその若き未亡人クローディアは、夫が亡くなったばかりだというのに、喪服とは色ばかりの艶やかな姿をして、毎晩舞踏会でダンスに興じる。 うら若き未亡人はなぜ老齢の辺境伯に嫁いだのか。なぜ彼女は夫が亡くなったばかりだというのに、楽しげに振る舞っているのか。 クローディアには、夫が亡くなった理由を知らなければならない理由があった――。 ※ 表紙はニジジャーニーで生成しました

処理中です...